罪と救済と孤独と愛と罰 ー朗読劇「文豪、そして殺人鬼」ー

 

 

【要約】

 「文豪、そして殺人鬼」という激ヤバ朗読劇を見ました。まだアーカイブ配信チケ買えます。9/3、9/4まで見られます。見てください。

 

 

 

【どんな朗読劇?】

 今回で6回目、前日譚もある(こっちは未見)、人気のオリジナル朗読劇。主な登場人物は3人。キャストは固定されておらず、さまざまな組み合わせが見られる。同じキャストが違う役を演じることもある。私が見た回は濱野大輝さん、益山武明さん、小松昌平さんの初演キャスト。

 

 

【なんでそんなに狂っちゃったの?(ネタバレなし)】

 罪と救済と孤独と愛と罰の話(初見の感想)だったので。そんな話浴びたら気が狂うでしょ。現場で見たらもっとやばいことになってたと思う。こわい。でも絶対現場で見たい。

 

 

【どんなおはなし?】

 公式のあらすじを引用しておきます。 

 

時は昭和40年代。日本は後に「いざなぎ景気」と呼ばれる、好景気の真っ只中。
そんな明るく華やかな世にも影はあり、テレビからは各地で起こる心中事件が報道されていた。

若き才覚溢れるミステリ作家・菅 忠義(かん ただよし)と、あるハンディキャップを背負った少年・一糸 朱知(いっし あけとも)。
隣同士に住む青年二人は、各地の心中事件を追っているフリーの記者・尺 光輝(しゃく こうき)と出会う。

各地で起こる心中事件が紡ぐ、奇妙な友情の糸。
この出会いで、三人はそれぞれの《罪と罰》に対峙する事になる。

『文豪、そして殺人鬼』令和四年葉月公演(第6回公演) | イベント | READPIA

 

 

【ネタバレを含む感想メモ】

 以下、ネタバレを含むのでまっさらな状態で見たい方は今すぐ配信チケ買いに行って見てください。もうちょい知りたいよという方はもう少しお付き合いください。まとめようと思ったけど文章まとめる力がなさすぎてメモの断片にしかならなかった。

 

 

 

 

・死は救い 

 菅さんは死ななきゃ救われないひとだと思いました。私は彼らに対話しろ対話しろって言ってるけど、対話したってあのひとの罪は癒えやしないでしょう。朱知が彼を許しても(そもそも朱知は許す/許さないの視点で菅さんを見てない)、菅さん自身が許せないでしょうね。遅かれ早かれ、菅さんは自死を選んだんじゃないですかね。 

 かなしいことに、菅さんが自分を許せず罪の意識に苛まれ続けていることと朱知は無関係なんですよ。菅さんは罪を償いたいと思ってはいても、それは菅さん自身のためなので。朱知の幸せを願うのも、菅さん自身のため=それが償いであると思っているように、私には見えました。でも人間がとる行動ってぜんぶ自分のためじゃないですか?誰かのためと思う自分のためにすぎないんじゃないですか?そういう意味で菅さんはとっても人間くさいひとでしたね。 

 朱知に友達(=尺さん)ができて、自分から解放されてこの先幸せに生きていくであろう朱知を想像しながら池に飛び込んだんでしょうか。自分勝手ですね。ばかだなぁ。 

 

 朱知は朱知で、菅さんと一緒にいるor死じゃないですか。極端すぎるだろ。でもこの極端さが幼くて、10代半ば(と仮定する、小松朱知から受けた印象)ってそういう年頃だよなぁと思う。菅さんが離れていくことも、菅さんから離れることもない状況で死にたいって、めちゃくちゃかなしくていとしい希死念慮ですね……健気で痛々しい…… 

 尺さんについていったの、彼が自分を殺してくれるかもしれないという一縷の望みがあったんじゃないでしょうか。家に来ないかと言われた最初から死に方を知ろうとしていたんじゃないかな。家族が死んだから自分もではなくて、家族が死んでこのままでは菅さんといられなくなるから自分も。そんなことになるんだったら死んだほうがましだって、そういうことでしょう? 

 菅さんなしで生きていくって選択肢は最初からないんですよ。朱知にとって菅さんは光なので。光のない世界では生きていけないから。だから、菅さんを失ってしまったら、朱知はもう死しか選ばない。彼にとっても死は救いなんでしょうね。かなしいなあ。 

 ふたりとも、同じところに行けるといいですね。 

 

 尺さんにとっては、死は救いじゃないんでしょうか。今のところはそうなのかもなぁという印象です。生きるために人を殺すことはできても、自分から死を選ぶことはできないんでしょうね。そこにどんな感情があるのか、私には計り知れません。でも、生きてることも救いじゃないよね彼にとって。それでも、死ぬ理由も生きる理由も特にないなら生きていくんでしょうね。 

 私は朱知のことがかわいくてたまらないので、朱知と菅さんの背中を死に向かって押した尺さんのこと全然許せないし大嫌いです。嫌いだな〜!嫌いなので生きて苦しんでほしいですね……

 

 

・心中事件 

 尺さんが起こす事件が殺人事件ではなく心中事件と表現されるの、まぁ心中に見せかけて殺してるのでそりゃあそうなんだけど、そういう意味では本当の心中事件は菅さんと朱知の一件だけだったんじゃないかなと思いました。あのふたりは心中したんですよ。尺さんだけがそれを知っている。せっかく第一発見者になれるのに、記事にしなかったんですよねたぶん。人を殺すことと家畜を食べることを並べられる程度の倫理観で生きてきた尺さんに、あのふたりは何かを残したんでしょう。 

 

 

・朱知の光 

 朱知にとって、菅さんは光だったんだと思います。自分に優しくしてくれる唯一のひと。 

 朱知の孤独は大家族であることに根差しているように見えました。たぶん兄弟のなかでも朱知は頭が良くて聞き分けも良いんでしょうね、頭が良くて聞き分けも良い子は気にかけてもらえないんですよ。気にかけなくたって上手くやれるから。本当は上手くやれていない、気にかけてほしい場面があったとて、それは表に出せない。そんな子なんだろうなぁと思いました。だから、自身に怪我を負わせた相手が言う「大丈夫か?」に救われてしまった。たったそれだけで、と思う、正直。でも、そのたったそれだけ、が朱知の世界を変えてしまったんでしょうね。 

 菅さんは朱知の視力を奪ったこと(と、それを知りながら朱知と日々を過ごしていたこと)を自身の罪だと考えていましたが、朱知からしてみればそんなものはちっとも罪じゃなかったんじゃないですかね。すべてをわかっていながら全盲ではないことを隠して菅さんに構ってもらっていたことを罪に思っていたんですから。あえて「構ってもらっていた」と書きました。たぶん、朱知はそう思っていただろうから。自分が菅さんの自由と幸せを、奪っているのだと考えていた。かなしいね。何が彼をそんなに健気でかなしい子にしてしまったんだろう。誰からも省みられることのない日々、かなぁ。 

 菅さんの「大丈夫か?」、朱知が思うほどの重さはなかったんじゃないかな……。菅さんの独白ではすんごいさらっと「大丈夫かと近づいたら、」くらいに済まされてるし。朱知にとってはそれが光だったけど、菅さんにとっては全然違って、怪我をさせてしまった相手に咄嗟に出ただけの言葉だったかもしれない。でも朱知は声も間違えないくらいちゃんと覚えていて……本当に彼にとって光だったんだね……つらいね……朱知、菅さんが来るまでの4年間、ずっと「大丈夫か?」を抱えて生きていたんでしょう……

 それで声の主が隣に越してきたと知って、事故のことを言い出さずに近づいてきて、朱知はそれが嬉しかったのかもしれない。自分にとっての光がそばにいて、いろいろと構ってくれて。菅さんは朱知の視力を奪ったことを己の罪と思っていたけど、それ以上に朱知にとっては菅さんの言葉が存在が救いだったんだろうな。でも菅さんには伝わらなかったね。つらいね。

 視力を失った代わりに光を得たから、家族から何を言われても何をされてもちょっと愚痴るくらいで済んでしまうのかなぁと思いました。

 

 菅さんは菅さんで、自分が朱知の自由と幸せを奪っていると考えてるし、そこがすれ違っている以上もうだめなんだよ……入水エンドしかないんだ……

 

 

 

・罪と救済と孤独と愛と罰

 の話だと思いました。罪と罰、だけじゃ足りない。今のところの解釈ですけど、書いておきます。

 

 菅さんの罪は、朱知の視力を奪い、そのことを明かさずに朱知の世話を焼き救われ続けていたこと。朱知を自分に縛り付けていたこと。朱知は罪とは思ってなかったですけどね。

 朱知の罪は、全盲のふりをし続けたこと。菅さんに構ってほしいがために、嘘をついていたこと。

 菅さんの罪は、心中事件に見せかけて人を殺してきたこと。でも多分そこじゃないよな〜もっとなんか根深いものがあるよな……

 

 みんな孤独でしたね。菅さんは自分の罪を打ち明けられる相手がいなくて孤独だし、朱知は家族の誰にも顧みられることもなく友達もおらず孤独だし、尺さんは言わずもがな孤独というか菅さんと朱知のあいだに入れないこともまた孤独でしたね。朱知の孤独は菅さんの存在で癒される部分があったのに、菅さんとは友達になれないという一点が大きすぎますね。つらいな。

 

 愛、ありましたよね。菅さんと朱知、思い合いすぎて尺さんが入る余地なかった。嘘と秘密を伴う関係だったとしても、ちゃんとお互いを思い合っていたと思います。相手に好かれたいがために自分を許せなくなる気持ち……つらいな……

 

 

 

・役者込みの感想

濱野尺さん:

 人当たり良すぎて普通に出会ったらこのひとのこと嫌いになるひといなくないですか?嫌いになる要素がないんだもん。めちゃくちゃきらきらしている……生い立ちを感じさせないきらきら……なので「尺さんなら友達もたくさんできるよ」みたいなことを朱知が言ってたのもわかるというか……でもあのきらきらはたぶん作られたきらきらなんだよ……

 「喫茶店にでも行きましょうか」とか「さて、仕事です」みたいな、誰かに話してるわけじゃない、どこに向かってんのかわかんない台詞のストーリーテラー感めちゃ良かったです。この世のものじゃない感じがしました。

 あのアハハって笑い方、心の奥ぜったい笑ってねぇ〜〜〜!!!という感じがしてめちゃくちゃ好きです。表情も人智を超えたものみたいな顔してるときありましたね。人智を超えざるを得なかったというか、そういう感じがしてめちゃよかったです。好きです。「どうも、お兄さん」、夜のほうがヤバ度高く感じました。目ェやばいキレキレの顔を見せてくれて最高でした。

 菅さんが言うように根が優しいひとかどうかはわかんなかったな。どこまでが本心かわかんなかった。昼と夜だと夜のほうが菅さんのこと嫌いそうでしたね。夜の濱野尺さん、菅さんのこと小馬鹿にしてるような印象も受けました。嫌いなんだろうな……そこは本心だったのかもしれないな……

 濱野さん(私がTwitterで推しぴと呼んでいるのは濱野さんです)が出てるおかげで文殺見てみる気になったので本当にありがたいです。尺さんのことは嫌いですけど、この役をやる推しぴのことは大好きだな…………やってくれてありがとう…………

 

小松朱知:

 心を持っていかれてしまった。この3人のなかで一番心を持ってったのは小松朱知でした……めちゃくちゃかわいい少年だったので…………

 聡くて狡くて健気で痛々しくてかわいい男の子でしたね。昼と夜だと昼のほうが歳上に感じました。夜のほうがあどけなくて、初見が夜公演の朱知なのでめちゃくちゃつらかった。

 視線の演技がめちゃ良でした。音声だけじゃなくて映像で残してほしいよ……

 

益山菅さん:

 人間!めっちゃ人間だった!あ〜そりゃあこのひとは朱知の人生をぶっ壊した(と菅さんは思ってる)ことに耐えられないだろうな〜〜〜!!!って納得した。ふつうの人間……いたってふつうの……だから壊れてしまうんだよ……

 面倒見が良くて朱知のことも「もう〜!」みたいな感じで面倒見たくなっちゃう感じのいいひと感がありました。濱野尺さんが人間離れしたヤバさみたいなのを匂わせているので、余計に益山菅さんの人間度が高く感じました。

 

 

 

 

・メモ書き(基本的には21日夜公演)

 ストーリーテラー的な台詞が尺さんにだけあるのはやっぱこれが尺さんの物語だからなんだろうなと思うんだけど、だとしたら尺さんもかわいそうだな……自分の物語なのに菅さんと朱知がつくった閉じた輪を開くことはできなかったね……輪は閉じたまま沈んでいったね……

 

 尺さんから炭の匂いがすることに気付いてるのに(おそらくこの人が殺したことにうすうす勘付いているのに)自分の家族が死んだことを心中じゃないんですかって言っちゃう朱知……家族のこと、どうでもいいわけじゃないけど菅さんに比べたら全然どうでもいいんだろうな……

 

 「尺さんち来たはええけど暇や。うちではまだ雑用を言いつけられてたからな。そのおかげで菅さんに話聞いてもらえたし」朱知、家族にどやされたり雑用言いつけられたりするの、これでまた菅さんとおはなしできるって思ってたんかな……つらいな……なんもなくたってきっと何気ない話とかしたってよかったんだよ……本当にきみは聡くて狡くて健気で痛々しいな……

 

 尺さんの独白のあと、「それでもこうして仕事に行く僕は、少しは偉いんでしょうか」の言い方がかなしすぎた。尺さんもな……かなしいひとだよな……殺人を繰り返すうちにひとではないものになっちゃったみたいな感じがする……ひとの心がないひとの、ひとの心の残滓……

 

 「俺が良かれと思ってしたことが朱知を不幸にする、けど遠くに行かんでほしい」朱知だって離れたくなかったのにね。ばかだねふたりとも。ずっと一緒にいようって言えばよかったのにね。でも罪の意識に耐えられないもんね。かなしいね。

 

 尺さん、菅さんのことめっちゃ嫌いでは?このふたりなんかあるの?前日譚知らないからそのへんはわかんないんですけど……

 朱知が親戚に引き取られることについて菅さんが「目のことで疎まれなきゃいいが……だからって他人の俺が引き取るのもな」って言ったとき、尺さんめちゃくちゃ食い気味に「そうですね」って言ってきたので、え!?そこ押しちゃだめだよ!!!という気持ちになった。尺さん、菅さんのこと嫌いすぎない?割と意図的に自殺に追い込もうとしてない?なんでだろ……尺さんどこまで知ってるの?

 尺さんが朱知に言う「しっかりやり直せますって」も酷いよな……朱知と菅さんの今までの人生を否定している……

 「怖気付いていやしないかと思いまして」だからなんでそんなに尺さんは菅さんを殺したいんだ……3人の池のシーンの尺さんめちゃくちゃ苛立ってる感じがする すげー嫌いだよね「命乞いのつもりですか?僕が聞くわけないでしょう!」とか

 

 「俺にだって、菅さんが知らんことくらいあるで」の声……聡くて狡くて健気で痛々しいね……

 

 「俺、もっかい寝たら死ねる?菅さんから離れることも、菅さんが離れてくこともなく、死ねる?」つらいな……

 

 菅さんの告白を聞いてるときの朱知の顔……「知っとるよ」の声……「ついでに言うたら蓮さんの声も同じやね」の声……

 

 菅さん〜〜〜「俺のために」「俺のせいで」じゃないんだよ、朱知は朱知のために見えないふりをしていたんだよ…………

 朱知がほしいのは友達じゃないんだよ……菅さんだけなんだよ……朱知が「蓮さんしか友達がいない」って言うのは菅さんの友達にはなれないことへの寂しさだよ……朱知は友達がほしくて言ってたんじゃないよ……朱知がほしいのは菅さんだけだよ……朱知は尺さんには懐いてないよ殺して欲しかっただけだもの……

 「朱知!俺はお前を地獄に突き落とした張本人や。お前を救ってやれん。おおきにな、もう、俺を救ってくれんでええんや」菅さん!!!朱知が落ちたのは地獄じゃないんよ!!!!光だったんよ!!!!!!あなたが!!!!!!!!ばか!!!!!!!!あんたが死ぬことこそが朱知の地獄なんよ!!!!!!!!わかれ!!!!!!!!

 

 「根の優しさに朱知が懐いとるんわかるやろ」って言うけど、朱知全然尺さんに懐いてないよ……ばか……そんなこともわかんなかったの?だからお互いの気持ちが伝わりきらなかったんじゃないの……つらい……

 

 尺さんはたぶん朱知にシンパシーみたいなの感じてるけど、朱知は心を開いてはない感じがする。最初に朱知が尺さんに近づいたの、菅さんに友達を作りたかったからでしょう……

 

 朱知の「だから、さようなら」の明るさがつらい 泣き笑いの顔で言うな……

 

「ここで、僕も飛び込めたら良いのですが、これといって生きる理由もない僕には、死ぬ理由もないようです。友達も死んじゃいましたし」

 ここで「飛び込めたら良いのですが」って言えるのサイコパスすぎて好き、ここで尺さんのことちょっと好きになった。嫌いだけど(尺さんを演じる推しぴはめっちゃ良いけど尺さん自体は嫌いですね)

 「友達」、朱知のこと?朱知はあなたのこと友達なんて思ってないよ

 

 本当に似たもの同士だったのは尺さんと菅さんのほうだったのかもしれないね。似てなさすぎて鏡合わせみたいな存在なのかもね。

 

 昼公演の朱知の最期のシーンめっちゃつらい……「尺さんなら俺なんかやなくてもいろんな人と友達になれると思う」「でも、俺は……」の違いね、明るくしゃべっていたのに急に「でも」でつらそうになる朱知……朱知には菅さんしかいないもんね……

 「だから、」「さよなら」もつらかった。「だから、」までつらそうなのに「さよなら」を笑って言う……笑うな……笑うんじゃないよ朱知……笑うんじゃないよ……つらいでしょうが私が……朱知…………

 

 

 

 

 最後に、短歌詠んだので載せときますね。

 

 Twitterに載せたやつはバランスを見て一首削ってあるので、こっちが完全版です。

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許してと僕が頭を垂れてそのつむじを踏みつける僕の足

 

光とはあなたのことで罪なんか最初からない なかったんだよ

 

離れても元気でいろよ 新しい朝がお前を迎えるだろう

 

離れたら生きていけない 騒がしく蝉が鳴き出す朝にさよなら

 

罪と救済と孤独と愛と罰 友達にさえなれない僕ら

 

 

 

今ごろは荒れ果てた庭 この夏も池には蓮が咲くのでしょうね