曲をモチーフにした短歌をつくる

 

 

 あくまで私がどうやってつくっているかという話です。「やってみたいけど、どうつくったらいいんだろう」「他の人はどうやっているのかな」というときの参考になれば幸いです。

 そもそも短歌って?って人は「短歌とは」って検索してみて!個人的には、57577のかたちに概ね沿っていて溢れ出る感情を詰め込んであれば大体短歌なんじゃないかなって私は思ってます。そういう前提で進めます。

 ちなみに私はなんらかに所属して短歌を詠んでいるわけでもどこかで短歌を学んだわけでもなく、ただ勝手にひとりで好きなように詠んでいるだけの素人です。

 

 曲をモチーフにした短歌、私は主に「#ポルノ短歌」というタグで詠んでいます。なので、この記事に出てくる短歌はすべてポルノグラフィティの曲をモチーフとした短歌になります。

 

 で、どうやって詠むか。モチーフにしたい曲が決まったら、私はだいたい3種類の視点から考えます。この曲で詠むのにどういう視点で組み立てていくのがいいかな〜っていう感じです。

 

 

①歌詞に書いてあることを自分の言葉に翻訳して詠む

 歌詞の言葉そのままだったらそれは作詞者の言葉に他ならないわけで、それを「私の短歌」にするためにどうやったら自分の言葉に訳せるか、という観点。

 自分の気に入っている歌詞や、この歌詞は要約したらこういうことだよな、みたいなことを自分の言葉にして詠みます。

 私は「言い換え」が好きなので割とこの視点から詠むことも多い気がします。

 

笑ってる場面ばかりを思い出す 思い出したからには過去だ

 ポルノグラフィティ「空が青すぎて」の短歌です。この曲の歌詞には過去形が多用されていて、過ぎ去っていった日々を思い返しているのだろうと想像できます。この多用される過去形と「僕たちは確かに恋をしてた」ってフレーズが好きなんですけど、それを私の言葉で要約したらどうなるかなって思ってつくった短歌です。思い出すということはもう過去の話なんですよね……でもこの曲に描かれる恋はたぶんそんなにかなしい恋じゃないんだろうなと想像できたので、その感じを言葉にしました。

 

遠くから夜明けの色が窓を染めキミじゃなければ駄目だ、と思う

 ポルノグラフィティ「憂色〜Love is you〜」の短歌です。「耳が痛くなるくらい重い静けさに閉ざされて 息をひそめてひとり朝を待っているよ」の部分を中心にこの曲の歌詞全体を要約したような短歌にしたいなと思って詠みました。おそらくはこういうことを歌っているんだろうな、という私の勝手な解釈ですが。

「朝を待っている」の部分から「夜明け」という語をもってきて、「キミ」は歌詞に倣いカタカナ表記、主人公があれこれ歌っているのは「キミじゃなきゃ駄目」ってことなんだろう、という感じで構成されています。たぶんこのふたりは別れてはなさそうだし、この先また同じ時間を過ごしていくんだろうな〜感を出したかったのでそんな感じになっています。曖昧な解説だな。

 

 

②歌詞から連想した物語を詠む

 ①は歌詞の世界観そのものを詠みましたが、②は歌詞には書かれていない(が想像できる)ことを詠む視点です。歌詞のおはなしの延長線上の場合もあるし、歌詞には書かれていないけどきっとこういうこともあるだろう、みたいなのもあります。

 

何度目のデートか数えるのをやめてこれが愛だとわかりはじめる

 ポルノグラフィティ「ラビュー・ラビュー」の短歌です。たぶん歌詞とは「愛」くらいしか単語も被ってないんじゃないかな。でもなんとなくラビュー・ラビューだなってわかるじゃないですか(わかるよね……?)、そういう短歌です。きっとこの曲の「僕」はそんなふうに思ったんじゃないかなって連想しました。

 

だめなのはわかってるけど「あなた」って呼びたかったな あなたのことを

 ポルノグラフィティ「ワン・ウーマン・ショー 〜甘い幻〜」の短歌です。この曲めちゃ好きなので割と気合い入れて詠みました。

 この曲の二人称は「あなた」だけど、「私」は「あなた」に向かって「あなた」と呼んだことはあるのかなと思ったところから詠みました。私はこの曲は家庭のある(ちょっと年齢差もあるかもしれない)男性と交際する女性の歌かなと思っていて、そのおはなしを端的に表現したくてこんな感じになりました。なんとなくだけど「○○さん」としか呼んでないんじゃないかなと思うんですよね……「あなた」と呼ぶのは「あなた」の配偶者にのみ許された特権みたいに思ってんじゃないかな「私」は……っていう想像です。

 

夜にしか息ができない 午後1時私はどこで何しているの

 ポルノグラフィティ瞳の奥をのぞかせて」の短歌です。この曲の歌詞は基本的に夜と朝で構成されているので、「私」は昼間どうしてるんだろうというところから出発してこの短歌に着地しました。午前1時は詩的だけど、午後1時はあんまり詩的じゃないからそれを詠みたいという意図もありました。歌詞のなかから「私」の生活のにおいが全然しないので、このひとは夜以外どうやって生きてるんだろうか、というのを詠みたくて。曲の時代背景は現代じゃなくてもいいなと思ったし、「私」が昼間なにしてるひとなのか全然わかんないので、あまり具体的な単語は入れないようにしました。

 

 例に挙げた短歌も歌詞の物語の隙間を拾って詠んだみたいな感じになってますね。意図してそういうのばかり詠んでるわけじゃないですが、たぶん隙間を想像するのが好きなんだと思います。

 

 

③歌詞や楽曲の外側にいるひとを主体として詠む

 歌詞や楽曲の外側にいるひとは必ずしも自分とは限らないのでちょっとぼかした感じになりました。自分を主体にしてもいいし、別に自分じゃなくてもいいと思います。ようは、曲の「外側」に目を向けるという話です。曲を受け取ったときに何を考えたか、という視点です。

 

滴って落ちるピアノと降り注ぐギターがそれは恋なの?と問う

 ポルノグラフィティ「夜間飛行」の短歌です。この短歌自体は私の体験談ではありませんが、「滴って落ちるピアノと降り注ぐギター」はこの曲の演奏を指しています。あの滴り落ちる雫のようなピアノの音とピアノと少しニュアンスが違って降り注いでくるようなギターの音、歌詞の主人公に「それを恋だというの?」と問いかけてるみたいだなって思ったので、そういう短歌です。演奏を私がそう受け取ったという意味では体験といってもいいのかも。

 これは連作のひとつなので連作全体を見ると楽曲から連想したおはなしを描いているように見えますが、この短歌だけ見ると③として成立するなぁと思ったので例として挙げました。

 

どこまでも行けるよ私 擦り減った靴を履き替え歩いていこう

 ポルノグラフィティ「ロマンチスト・エゴイスト」の短歌です。これも別に私自身の体験ってわけじゃないんですけど、ロマエゴを聴いた架空の「私」を主体として詠みました。この曲は聴いた誰かの背筋をぴんと伸ばしてくれるような曲だと思うので、それを表現したくて。でも私の実体験を踏まえたいわけじゃないので、架空の「私」を詠みました。体験とは違うんですが、歌詞のなかのおはなしではなくて歌詞の外側に広がる世界を詠んだものです。

 踵鳴らして歩くには擦り減った靴じゃ駄目だよなと思ったので、そのへんは①のように自分の言葉に翻訳している部分でもありますね。

 

 とはいえ、私は短歌に「私」の感情を含ませるのがあまり得意ではないので、なかなか自分を主体とした短歌は(特に曲からイメージして詠む場合は)詠む技量がないな……と感じます。フィクションを詠むほうが圧倒的に得意だし好きなのでそればかりになりがちです。

 

 

 

 個人的には、①は曲の真下に向かって掘り進めるイメージ、②は曲の世界を広げるイメージ、③は曲の外側に世界を広げるイメージです。って書いてみたけど特に意味はないですね。なんとなくそういうイメージで捉えています。

 これら3つの視点、それぞれ独立してもいるし複数の視点からひとつの短歌を生み出すこともできます。②でやろうとしたけどちょっと物足りないから①の視点からもみてみる、その結果①の要素も②の要素もある短歌がうまれる、ということもよくあります。まぁそこまで深く考えずに、あーだこーだ練ってるうちに混ざってくることが多いですね。こういう観点で詠もうと意図してるわけではなくて、こんなふうに分類できるな〜と思って例示しただけなので。

 

 それと、全体を通じて、どこまで歌詞と同じ言葉を使っていいの?という疑問が生じるんじゃないかと思います。企画などで明確なルールがあるのであればそれに則るのが一番よいと思いますが、企画に参加するわけではなくひとりで勝手に詠んでるときは悩みますよね。私は悩むのが面倒なので「歌詞にある言葉をなるべく使わずにどれほどその曲を表現できるか」を考えて詠んでいます。それはそれで大変ですがうまくいったときはなかなか気持ちがいいです。「ラビュー・ラビュー・ラビュー・ラビュー・オー・マイ・ダーリン」と言わずに「ラビューラビュー」を表現できたら気持ちいいし、「あなたに逢えたそれだけでよかった世界に光が満ちた」と言わずに「アゲハ蝶」を表現できたら気持ちいいよねって話です。私はそっちのほうが好きです。でも「月飼い」を「月」使わずに詠むのは難しいしな〜

 

 いろいろ書いたけど、そんな難しく考えずに詠もうぜ!って話です。詠もうぜ!