#自選10短歌集2021 自作解説

f:id:penguinkawaii:20220112162233j:image

note.com

2021年の短歌から10首選んでみました。以下、解説となります。


雲ひとつない晴天にペン先を浸して書いたサヨナラは青
 ポルノグラフィティの楽曲「空が青すぎて」をテーマに詠んだ連作のひとつです。ガラスペンにインクをつけて書くようなイメージで詠みました。万年筆も一応つければ書けるし、歌の世界から離れすぎずに広げつつも私っぽい短歌だなと思って気に入っています。大きな文字で配置するならこれがいいなと思って最初のひとつにしました。
 連作全体はこちら。

f:id:penguinkawaii:20220112162215j:image

 

いますこしお待ちください 人生に鳴らし続けている保留音
 アニメ「SSSS.DYNAZENON」の二次創作短歌。33歳実家住み無職(大学中退)の山中暦というキャラクターがいるのですが、彼について詠んだものです。アイドル短歌や二次創作短歌を詠むときはなるべく普通の短歌としても機能するようなものがいいなと思って詠んでるんですが、だからといってアイドル短歌や二次創作短歌として薄いものにはしたくないし、これはそのちょうどいいバランスで詠めたもので気に入っています。
 2021年、慣れない育児に奮闘しすぎて記憶が飛んでるところがあって、ちょうどこの「SSSS.DYNAZENON」が終わった頃から記憶を取り戻し始めます。最終回に衝撃をくらいすぎて私のなかのメインメモリが再び稼働し始めました。それまではキャッシュ削除みたいに数日間で記憶消えてた感じです。2021年の私とこのアニメは切り離せないものなので、二次創作短歌からも選びました。


「欲しいな」を「でもいらない」にするたびにひとしずくずつ薄まるこころ
 反応が結構多かった短歌。そのままの通りで、特になんの裏とか深読みとかもない短歌です。表記的な話だと、ひらがなを多くすることで寂しさや悲しさが強まるかなと思ってひらがなが多めです。漢字に変換できるほど頭まわってない感じというか。
 「欲しいな」と思うものはいっぱいあったんですが、使う時間や置いておく場所がなくて結局「でもいらない」になっていくなぁと思って。そのたびに私のこころが薄まっていって、私ってなんだったっけって気持ちになっていくような感じがしました。ただ、買ったところで使う時間も置く場所もないから結局いらないものになっちゃって後悔するので、どっちにしろこころは薄まるような気がします。けど、時間をかけて本当に欲しいものを選んで買うとそれがいとおしくもなりますよね。


君が言うほどに世界は美しく見えないけれど生きててもいい?
 Twitter投稿時は普通の短歌のタグをつけてるけど、アイドル短歌とするのが痛々しかったからそうしたという背景があります。
 自担である加藤さんの見ている世界は、少なくとも今はとても美しいようで、彼の言葉の端々に「世界は美しい」と書いてあるような気がします(私の僻みかもしれませんが)(アイドルとして発信する以上ポジティブなメッセージであることのほうが望ましいと思っていますが)。でも私には世界がそうは見えないときも結構あるんですよね。そういう短歌です。痛々しいですね。
 「生きててもいい?」と訊ねるのがずるいなと思います。でも生きてていいなんて自分では言い切れなくないですか?私が生きていていいなんて私が言うなんて烏滸がましいような気がしてしまう。というのは建前で、本音では誰かに生きていることを許してほしいからなんでしょうね。だって許可してもらえたら、そのひとには許可した責任がありますもんね。あのひとがいいって言ったから生きてるんです私の意思じゃないですって言えるもんね。そういう短歌です。痛々しいですね。


なんとなく死にたい夜は少しだけ優しく見えるスマホのあかり
 出産後に生理が復活したあたりからそこそこ死にたくなってしまって(正確に言うと「なんで生きてるの?こんな使えない人間なのに?」という問いが浮かんで消えなくなる)、そんななかでスマホ触っててどなたかがくださったおたよりやリプがとても優しくてあたたかかった、という短歌です。それにしてもホルモンの力やばくないですか?操られてるなぁと感じるし、であれば普段の私が抱く感情とかについてもよくわからなくなってくるし、さらに言うと「私」というのはなんなのか、と疑問に思います。なんなんだろうな。ちなみに今は処方されている漢方が合っているのか、あまりミスをしないように生活に注力しているのが効果を発揮しているのか、以前ほどの死にたい夜は訪れていません。それはそれで「私」とは?って思うこともあるけどね。


笑ってる場面ばかりを思い出す 思い出したからには過去だ
 これも「空が青すぎて」連作のひとつです。「空が青すぎて」という曲は失恋をした曲なんですけど、「僕たちは確かに恋をしてた」という歌詞があって、過去形にできたのならもう過去なんだよな〜っていう短歌です。「Memories」という単語も歌詞にあるので、そこも絡めてひとつ詠めないかなと思ってつくりました。とてもストレートで文字通りの短歌ですが、歌詞に寄り添いつつこの短歌だけでも完成している感じがして気に入っています。というか「空が青すぎて」連作がめちゃくちゃ気に入ってる。


果たされぬ約束はいまポケットのなかで寝息を立てる おやすみ
 これも「SSSS.DYNAZENON」の二次創作短歌。この短歌について語るためにはアニメの話を知らないとなかなか難しいんですげー要約しますと……5000年前にお姫様とその国を守るよそものの青年がいて、姫と青年は将来を誓い合うけれど青年は死に姫も彼の後を追って死んで、青年は5000年後の世界に蘇りもしかしたらどこかにいるかもしれない姫を探すも姫は蘇っていないので会うことは叶わず青年も再び永い眠りについたかもしれない……という話のロボットアニメなんです。青年はこのアニメの主人公ですがこれが話の本筋って言うとなんかちょっと違うというか……まぁそのへん複雑なんですけど……私はこの青年とお姫様の関係性に狂ってしまったので私には本筋に見えちゃうんだなこれが……
 という背景があったうえでのこの短歌です。「約束」というのは私がよく考えているテーマでもあって、「約束はした時点でもうその役目を終えていて、果たされるかどうかは大きな問題ではないのではないか」という説が私のなかでは有力なんですが、このアニメの主人公はそうではなくて愚直なまでに約束を果たすことに重きを置いていてとても眩しかったです。だから果たされぬ約束は決して破られた約束にはならなくて、いつか果たされる日を夢見て眠りについたんだと思いたいです。


今日君に会えてよかった 死んだりはしてないけれど生き返れたよ
 加藤さんが2月の勝者でインスタライブやったときに詠みました。私自身、その日は死んだりはしてなかったんですが、加藤さんの笑った顔を見てたらなんだか生き返ったような心地がしたのでそういう気持ちをこめました。けどまぁ、死んでないって言えるのは生き返ったからで、生き返らなかったら死んでたかもしれませんよね。


殺しても殺しきれない恋なので連れて帰って寝床をあげた
 恋をしたので詠みました。私の2021年はポルノグラフィティ新藤晴一さんへの恋で締め括られたと言っても過言ではないです。新藤さんは私の初恋であり、2014年に失恋もしたのですが(これはまた別の話)、その後も恋心は抜いても抜いても生えてきていました。そして2021年、失恋をしたときに「これが失恋だ」と明確に思ったように「これが恋だ」と明確に思ってしまったんですよね。なのでもう恋をしたままでいることにしました。
 殺すという物騒な単語を使っていますが、以前は心のなかで恋心を殺していたんですよ。RPGで魔物を殺すようなイメージです。倒す、ではなく殺す、です。他の言葉に置き換えると違うなって感じがするので、あえて私のイメージのままにしました。違う受け取り方をされてもそれはそれで構いません。詠んだときは私のものだけど、読んだときはあなたのものでもあるので。
 「連れて帰って寝床をあげた」は新藤さん作詞の「ロマンチスト・エゴイスト」の「臆病な猫を連れて帰ろうかな/あたたかいベッドで寝かしつけようかな」という歌詞からの本歌取り(?)みたいなイメージです。


遠くから愛しています 僕たちのあいだに横たわるのは銀河
 今年、なにかのファンとして熱烈な感情を維持することをやめてただの生活者として生きていくことにしました。当面はそうやって生きていくつもりです。好きだけど、しがみつかなきゃいけないようならそれは違うなと思って。なので、しがみつかなくて大丈夫な程度に好きでいることにしました。そうすると雑誌やテレビやいろんなものを追わなくなって、追うためのHPやMPがあるものだけになっていきます。となるとやっぱり「遠いな」と感じることも多々あります。でも別に遠くてもいいなと、今は思います。私と加藤さんのあいだにあるのは、ただの距離ではなくて美しい銀河なので、じゃあいいか、と思うようになりました。「銀河」って「距離」と表現するよりずっとずっと果てしなく遠いものですが、だからこそ美しくもあります。それと私は永遠の愛読書として「銀河鉄道の夜」を挙げているので、この短歌もひとつめの短歌と同じように私の名刺となる短歌です。

 

 全体的に青いイメージの短歌が多かったので、サファイアブルーというカラーを指定しました。おまかせにもしてみたかったんですが、さわやかな青のイメージがあったのでそれにしとこうかなという感じです。来年もあったらおまかせにしてみたいな。
 あと私の短歌、見返してみるとほんとよく死ぬとか生きるとか言いがちなんですよね。厨二病とかそういう言葉がかっこいいと思ってるからとか、そういうことではなくて、私が常々考えていることだから短歌として表れやすいのだと思います。気づいたときには死にたい寄りの人間として生きていて、勿論そうじゃない時期も幾度かありましたが、ちょっとでも針が振れるとそっちに寄っちゃうんですよねどうしても。なので日々常々、自分が生きていることについて考えることになり、短歌にも影響してくる、といった具合です。
 今回選んだものはフィクションとノンフィクションの配分がいい感じだったなと思います。今まではフィクションの短歌を詠むほうが好きだし楽しかったんですが、2021年はノンフィクションの部分が増えました。普段の生活であまり感情が昂りすぎないようにしていて、それが難しいときもあるのでそういうときは短歌にして発散している面もあります。そういう意味で今年は感情が濃い短歌が多くなったのも特徴だなと思いました。

 今年もまた詠んでいけたらと思います。よろしくお願い致します。