#アイドル短歌:言葉の技法の話

 短歌、好きですか?私は好きです。31文字のなかにいろんな言葉の技法が詰まっているところが特に好きです。好きな人*1がめちゃくちゃ歌詞を書くので、その技法を分析するのが趣味でして。そういった技法は歌詞だけじゃなく小説にもそして短歌にも当てはまるなぁと思っています。なので、私の短歌を例にして私が好きな言葉の技法の話をします。

 なお、以下に述べる技法というのは私が勝手に思ってるものであり学術的・専門的なものではないのであしからず。私と話したら通じるけど他所で話したら通じないかもしれない。

 

 

 

・繰り返し

 よくある技法ですね。同じ言葉を繰り返すことです。繰り返すからにはなんらかの意味がありますね。

 

①強調

好きだから何度も言うよ好きだからあなたが好きと何度でも言う

 

 強めたいから繰り返す。「好き」が3回、「何度も」「何度でも」が2回、「言う」が2回。ほぼ同じ言葉の繰り返しでできていて、個人的にそこが気に入っているポイントです。さらに「何度も」という、それ自体が繰り返しの意味を持っている単語が繰り返されているのがまたいい。

 内容としては、言葉通りの意味のストレートな短歌です。強調したいから繰り返している、とにかくあなたが好きですっていう短歌。

 

「好き」だって認めてしまえば楽になる 楽になるのに 楽になるのに

 

 後半の577がほぼ同じ言葉でできてます。「楽になるのに」ということ自体が強調されているというよりも、「楽になるのに」→それができないから苦しい、ということが強調されています。繰り返した言葉の意味を強めることもあるし、そこに隠された意味を強めることもできる。面白いな〜!

 

②違う意味を並べる

明日など蹴散らしていく 僕らには「今」さえあればいいんだ今は

 

 なんていうか……ニュアンスなんですけどこの短歌のふたつの「今」はちょっと違うんですよね……説明するのが難しいな……

 「明日など蹴散らしていく 僕らには「今」さえあればいいんだ」まではJ-popの歌詞みたいに爽やかじゃないですか。爽やかなんですよ。けどそこに「今は」と付け加えることで「明日など蹴散らしていく 僕らには「今」さえあればいいんだ」って思ってるのは「今」だけ、その輝きが一瞬のものであることを知っている、みたいな刹那性が加わってんな〜って感じしません?しますね。同じ言葉を使いながらもニュアンスが違うの、うわ〜いいな〜!って思っちゃう。

 

③リズムがいい

僕たちは友達じゃない僕たちは出会ったこともないほど他人

 

 単純にリズムがいいから繰り返すこともある。「僕たちは」が繰り返されているけどなんかリズムがよくないですか?いいですね。「僕たちは」のあとは同じような意味・ニュアンスの言葉が続いているので収まりがいい感じがするんだろうか。わからんけどなんかいい。

 

 

・羅列

 言葉を並べることです。難しいのであんまり使えてないけど好きな技法です。ポルノの歌詞では「あなたがここにいたら」などで使われてます。

 羅列するにしても、同じニュアンスの言葉を並べる、同じニュアンスをいくつか並べて最後だけ変える、同じに見えて徐々に変えていく、などなどいろんな技法がありますね。

 

遠ざかる景色 静かになる車内 重ならない手 帰らざる夏

 

 夜に電車に乗って出かけるっていう「よるのぼうけん」という連作のうちのひとつです。視点が外(景色)→内(車内)→身体(手)の順に並んでいて、さらに「帰らざる夏」という心象風景、つまり広くも狭くもあるものへ続くところがうわ~センスいいな!って思います。自分の短歌めちゃくちゃ好きなので普通に褒めます。

 

 

 

・字足らず

 短歌などの定型があるものだからこそですね。私の場合、字余り(7のところに8入れるとか)はさほど意味なくやったりしますが字足らずは割と意味を込めます。

 

新鮮な魚もいつか腐るのに 見つめることしかできない 罪

 

 「見つめることしか」が8なのはさほど意味はないです。が、そこを8として読むと最後が足りてませんね。私の脳内では「罪」の前のスペースを休符みたいにして一拍置いて読んでいます。ここにスペースを入れること、そして字足らずであることで、「罪」という言葉が浮き上がってみえて強調されている感じになっているところが好きです。

 本当は「見つめることしか」が7だったらもっと最後がわかりやすくはっきりと強調されるのにな〜って思って言葉を探したけど、ちょうど良いものが見当たらなかった。悔しい。

 

 

 

 

発想の転換

 普段の視点と少しひねって、読んでてはっとするような短歌をつくるのが好きです。常識を疑う系短歌。歌詞とかにそういう部分が出てくると痺れちゃうんですよね……新藤晴一さんの歌詞はそういうのばっかりですよ……好き……

 

ここにいる私とそこにいるあなた 交わらぬことを運命と呼ぶ

 

 出逢うことだけが運命じゃなくないですか?出逢わないことだって運命です。けどそういうことを突然言われるとなんだかはっとしません?しますね。そういうのが好きです。

 

守るためではなく破るためでなく「する」ためだけに約束はある

 

 これもはっとしません?しますね。約束って、「する」ときに安心感とかがもたらされることもあるじゃないですか。「ずっと好きだよ」とか「いつまでも離れないよ」とか。そういう約束は「する」こと自体に意味があって、守られなくても破られてもどうでもいいんですよ。この発想の転換めちゃくちゃ気持ち良くて好きですね。

 

 

・言葉遊び

 いい見出し語が浮かばなくて言葉遊びとしました。小ひねりっていうか……まぁ言葉遊びなんだよな……

 

目を開けたままで見ている夢 今夜眠れないほど幸せな夢

 

 これはコンサートやライブに行ったときの気持ちを詠んだものなんですけど、「夢」って本来寝ているときに見るものなのに「今夜眠れないほど」という言葉で修飾されているところが気に入ってます。そういうのを「言葉遊び」って呼んでます。

 

 

・変わった比喩

 これもいい感じの言葉が浮かばんのだが……ちょっと変わった比喩っていい感じだなと思います。

 

冷凍のうどんでつくる簡単なレシピみたいな恋をしていた

 

 「簡単なレシピみたいな恋」、すごくお手軽で誰にでもできる(=私だけ特別ってわけじゃない)ような恋みたいなことが言いたかったんですよ。アイドルに恋をするって割とそういう側面もあるなって思ってて。そこに「冷凍のうどんでつくる」がつくと、さらに簡単なレシピなんだなって印象になりません?なりますね。ぱぱっとできちゃう、全部混ぜてチンするだけとかチンしたうどんにかけるだけとか、そういうインスタントでお手軽な恋。自分のアイドルへの恋心を皮肉った短歌です。ちなみに「うどん」というお題で詠んだもの。

 

手のなかのアルファ・ケンタウリは光る 君に好きだと伝えるために

 

 「ペンライト」というお題で詠んだ短歌。「アルファ・ケンタウリ」というのはケンタウルス座の星の名前です。銀河系の恒星のうち最も太陽に近い恒星ってウィキに書いてあった。まぁ単純にペンライトって星よねって言いたかったんですけど、それじゃつまらんので星の名前にしたっていう短歌です。そういう比喩も好きです。

 

冬の午後 乾いた風を射る陽光 あなたの声に少し似ている

 

 「声」=聴覚情報を「陽光」=視覚情報に喩えています。聴覚情報から受ける「印象」のみを引っ張り出して、その「印象」はどんな視覚情報から受け取ることができるか?っていうのを割と普段から考えていて、それを使って詠んだものです。他には「字」を「ライムの香り」に喩えた短歌もあったな。そういうのもすごく好きです。

 

 

・引用

 めっちゃ好きな技法です。ただ、受け取り手が引用元を知らないといまいち伝わらないものでもあるので諸刃の剣ですね。私は好きなので割と多用しますが。わかる人にだけわかればいい、みたいなところもある。

 

美しい蛾の標本として生まれ君のポケットで潰れたかった

 

 ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」からの引用です。中学生の国語の教科書に載ってるので比較的知名度は高いかと。すごくざっくり言うと昆虫の標本つくるのが趣味の主人公が友達のもってるクジャクヤママユという蛾の標本を盗んでポケットの中で潰してしまう話です。主人公は自分の標本も全部捨てて標本づくりもやめちゃうんですよ。その蛾に生まれたかったっていうんだから残酷な短歌ですよね。でもそういう感情が自分のなかに全くないって言えるか?という自問自答もこめて詠みました。

 ちなみに「標本」という既に死んでいるもの「として生まれ」って部分も気に入ってます。言葉遊びって感じがして好き。

 

きみの星(B612)が見えるから砂漠にいても迷わずに済む

 

 B612はサン=テグジュペリが書いた「星の王子さま」で星の王子さまが暮らしていた星です。自担が「星の王子さま」というソロ曲をやったからこそ詠める短歌。

 

君が死ぬ瞬間21g減るのを見届けたいから生きる

 

 これは引用というか、魂の重さの話。人間は死んだら21g減る、つまりその21gとは魂の重さであるってやつ。漫画とか小説とかでたまに見かけるやつです。

 アイドルがアイドルでなくなると、いくら本人が「何も変わらない」って言ったとしても全然違って見えるなぁと思って、それはその人から「アイドル」という21gが減ったからなんだろうかとか考えたりして生まれた短歌。

 

 

 ただただ私の好きな技法を並べただけですが、もし誰かの参考になれば嬉しいしそういうのいいよね!って話ができたらそれも嬉しいです。書ききれなかったことやこれから見つけるものもあるだろうし、またそのうちこういうの書けたらいいな。