漫画「ここは今から倫理です。」が面白いので激推しする

 要約:「ここは今から倫理です。」めちゃくちゃ面白いのでみんな読みなよ!

 

 3巻が出るあたりから読み始め、激推ししている漫画です。現在4巻まで発売中。我慢しきれず掲載誌まで追っており、今とにかく私が狂っている漫画です。

 タイトルからわかる通り、テーマは「倫理」。高校の倫理の先生と、倫理の授業を選択した生徒たちの物語です。自分が高校時代に受けた倫理の授業を思い返すと、背がすごく高くてヒョロヒョロで頭はつるつるで白いヒゲを生やしたおじいちゃん、どう見ても「仙人」としか呼びようのない先生が担当していたことを思い出します。話が面白かったので前のほうの席に座っていたしちゃんと聞こうと思っていたのに、声の調子であまりに眠くなるためちょっと寝てしまうこともあったな……。

 まぁ、そういう倫理についての話です。

 

 

 

 倫理の教師である高柳先生と迷える生徒たちという構図なので先生が生徒を導く話ではあるんだけれど、強い言葉で指導するとかではなく、さまざまな哲学者の言葉を引用しながら生徒たちに気付きを与え、諭していく。

 概ね1話でひとつの話が完結するかたちになっている。1つの話に倫理の授業の中で扱われるような哲学的なテーマが1つ含まれる(と考えていいと思う)。高柳先生は哲学者の言葉をよく引用するのだけれど、勿論それが響くような状況で出てくるから悩める生徒を通り越して読んでいるこっちにも刺さりまくる。

 

 生徒たちの悩みも多種多様だ。SNS中毒の子もいるし、自分が「普通」であることに悩む子もいる。頭が良いがゆえに周りが稚拙に見えてしまう子もいるし、頭がそんなによくないものの親の期待に応えたいと思っている子もいる。自分が持っている悩みや、それが悩みであるとすら気づかなかったものについて考えさせられる、ということもきっとあると思う。私はぐさぐさに刺さりまくった。

 

 とあることをきっかけにして自殺未遂を起こしてしまう女の子の回がある。高柳先生と別の生徒がその場にかけつけ、一緒に来た生徒は「そんなことで死のうとするなんて」と言ってしまう。そこで先生は、どんな些細な絶望だって死に向かう力に変わりうるのだとはっきり言う。勿論「死ぬな」と考えているんだけど、自殺しようとする気持ちそのものを否定はしない。かつて死にたかった者としては、あの頃抱えていた気持ちを誰かが認めてくれるなんて、と驚きをもって読んだ。「死ぬな」と言う代わりに、先生は死にたい彼女の未来に自分ができることを必死に考えてくれる。

 

 先ほど例に出した、頭がそんなによくないものの親の期待に応えたいと思っている子の話。受験勉強を頑張る子と、それを支援する母親。構図としては、決して悪くないものだと思う。でもその子が受験勉強を頑張るのは、どこか特定の大学に行ってやりたい勉強があるからではなく、ちゃんと大学に行って将来いい仕事についてほしいという母の期待から。それだって現代にはありふれた構図で、そう悪いことじゃないのかもしれない。間違ったことは言っていないのかもしれない。その子だって、すごく思い悩んでいるというわけではないし。しかし高柳先生は「他者が干渉すること」について話す。これも私にはぐさぐさに刺さった。母親の言動は、大学に行っていい仕事について生活に苦しむことがないように、という思いやりなのだろう。でも、「思いやり」って誰のための?と思ってしまう。人生の主体は自分でしかない。子どもの人生の主体は親ではない。「あなたのため」が「あなたのため」だったことなんてきっとない。すべては「私のため」だ。親と子の関係だけでなく、いろいろな場面で当てはまることだなぁと沁みた。たとえば、アイドルとファンとかね。

 

 そんなふうに、「常識」とか「当たり前」とか、そういうものに囚われない高柳先生。生徒のことを好きになってしまうかもしれないと悩む同僚教師に対しても、それが単なる(性的)欲求ではなく本当に愛しているのであれば、周囲にバレなければ問題はないと言ってのける。学校内での生徒同士の性行為でさえ、互いに愛し合っていて切羽詰まっての逢瀬ならば場所と時間に対する注意にとどめる、と言う。単純な「倫理」のイメージとしては、そういうのはとにかくダメって言いそうなのにな~と最初は思った(私の偏見かもしれないけど)。高柳先生の言葉は、あらゆることを考えそして考え抜き、そのうえで出したものなのだと思う。だからか、すごく説得力がある。

 そんなの常識でしょ、と思ってしまう場面は私にもある。そういうときに出てくる「常識」というワードは思考停止の合言葉だ。すごくよく考えたうえで「常識」だと思うならいい。でもそうじゃないのなら、一度考えてみる余地がある。高柳先生は、自分の頭で考えることの重要さを改めて認識させてくれる。

 

 個人的に高柳先生のいいなと思うところは、先生自身が迷うこともあるということ。たとえば「異性なら救える手段があるとして、同じ手段が同性には通じないならそれは救いとはならない」と迷う場面がある。なんていうか、募金箱を目の前にして「でも自分はあらゆる募金箱にお金を入れることはできないし……」と迷う感覚とか、保護犬や保護猫を前にして「全部は引き取れないのに一匹だけ引き取るのか」と迷う感覚と似ているのかなぁと個人的には思った。私としては「やらない善よりやる偽善」(『鋼の錬金術師』)論も捨てがたいと思うので「手当たり次第救ってもいいじゃん」という気がしなくもないのだけれど、高柳先生はちゃんと迷い考える。ちなみに先生が迷う回、めちゃくちゃしんどくていいんですよね……それは「違う」と自分の中で答えを出しているのにそれしかないという状況……高柳先生が教え諭すことで救われる生徒もいるし、そこまで届かない生徒もいるんだなと。高柳先生は聖人君子ではなく、私や私じゃない誰かと同じただのひとりの人間なんだと思い知らされる。「悩んでいる人間にしか興味がない」って言ってのけたりするしね。

 それに、自分が知らないこと、未知のこと、自分にはできないことについては素直な反応を示すところが素敵だなぁと思う。「アレテー」についての回ではうさぎのぬいぐるみと話ができる子が出てくるが、それに対する高柳先生の理解が本当によくて……高柳先生はぬいぐるみとは話せないけど、ぬいぐるみと話せる女の子のことを決して否定したりしない。一時の気の迷いとか、逃げているだけとか、そういうふうにも捉えない。女の子が「アレテー」を実現できているのかもしれないと素直に関心している。生徒のことを「教え導く対象」として見てはいるけれど、自分よりも下位の存在ではなく、ひとりの人間として捉えているからこそ出る反応なんだろうな。私もそうありたい。

 全然喋らない男の子の回もあるんだけど、全然喋らない以外は全く問題がないので、他の先生は彼のことを結構扱いづらく感じている。でも高柳先生は彼のことも「厄介者」扱いせず気にかけている。教師なのだから生徒のことを教え導くとか守るという意識があって、そのうえで人と人として対等に接している感じがしてすごくいい。

 あと顔がいい。先生、顔がいいよね。顔がいいんだよな……。登場人物全員美形みたいな漫画ではないので、顔がいい人が際立つんですよ。先生は顔がいい。

 

 4巻では1~3巻で面倒を見てきた生徒たちが卒業していく回がある。この卒業式の回がまたいい。めちゃくちゃいい。第1話で先生を慕うようになった女の子が意を決して先生に告白する場面があって、マジでいい。「いい」以外何を言ってもネタバレになるような気がして言えない。マジでいいので……是非読んでほしい……。

 4巻の中には先生が学生だった頃の話も入っている。先生と、先生の先生の話。これもすごくいい。「正義」には流行りがあるという話で、あるときまでは正義とされていたものがいつのまにかそうじゃなくなったりする。自分の中の「正義」をアップデートしていくのは必要なことかもしれないけれど、その「正義」は誰かを救うものであっても別の誰かを傷つけるものでもあるのだろうな……ていうか正義なんてそんなもんだよな……と思ったりした。万人を救える「正義」はあるのだろうか、とぼんやり思った。でもよく言われるように、正義の反対は悪ではなく別の正義なんだろうなって思ったりもするし……難しいですね。でもそういう難しいことを考えてもいい時間を持てるのはいいことだ。時間短縮や効率化が流行る世の中で、唯一の正解なんかないかもしれないことについて自分の頭で考える時間があったっていいじゃないですか。ねぇ。

 

 卒業し、また人が入れ替わり、倫理の授業は続く。我慢しきれず掲載誌を買って読んだらシーズン2が開幕していて、これがまたいい回だった。あと先生が前髪切ってかわいくなってた。狂う……。

 今後はどんなふうに生徒たちと向き合っていくのか、どんな考え方が出てくるのか、とても楽しみです。と書いていてふと生命倫理に関しては大学でちょこっとやったな~と思い出したので、そういう話題も出てきたらより楽しめそう。

 

 これを書いている2020年2月28日現在、各種電子書籍配信サイトで1巻無料っぽいのでとりあえずみんな読んでね!とりあえずKindleでは無料版があったよ!

 

 

 

 

 なお、この作品はドラマ化が決まっている。キャストや放送時期は未発表。非常に個人的な感想としては、読み始めてすぐ「これは加藤シゲアキさん主演だ……」と思ってしまったので加藤シゲアキさんが主演でなければ自我が崩壊してしまいます。既に危ない。自我が揺らぎすぎてヘアアイロンの熱いところをなぜか触ってしまった(痛い)。自我を保つため、願掛けとしてこの記事を書きました。どうか加藤さんが高柳先生でありますように……!!!!!!!!

 キャストも放送時期もいつ発表になるかわからなくて自我が危ういので、もし加藤さんに決まっているとしたらできればラジオなどで「○○って哲学者の本を読んでるんだけど~」とか言ってください。ぶっちゃけフロムの『愛するということ』を読んでるって言われたときフラグだと思いました。

 

 

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 ちなみにこれは願掛けとして勉強しようと思って買った『現代倫理学入門』です。願掛けの意味がよくわからなくなってきました。

 

 

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 ちなみにこれはツアーで持つうちわ案です。

 

 

 

 ちなみにこちらは爽やかな色の服を着ているし色彩としても明るいはずなのに憂いがすごい加藤シゲアキさんです。

 

 

 はぁ~~~加藤さんであってほしいな~~~!!!!!それはおいといて「ここは今から倫理です。」めちゃくちゃ面白いので読んでね!!!!!!