2019年に読んで面白かった本

 

 今年もよろしくお願い致します。

 2019年も沢山読みました。2018年は2月から読み始めて183冊だったのですが、2019年は1月1日からカウントして227冊でした。よう読んだな。一日平均0.6冊です。

 

 

 

 

 

『グラン・ヴァカンス』飛浩隆

 今年読んだなかで一番面白かった本を決めるならこれかなぁ。

 飛浩隆作品を読む前の自分には戻れない、と思うほどの作品。ていうか飛さんの作品全部最高すぎてびっくりする。なんで私いままでこの人の本知らなかったの?最高にもほどがあるよ。

 こんなに美しく残酷に絶望を描くなんて最高では?物語は人が訪れなくなったVR世界の話。ゲストが来ることが存在意義だったのに、そこにはもう誰も来ない。誰も来ないなかで、NPC(ノンプレイヤーキャラ。人が操作しないキャラクターのこと)たちを恐怖が襲う。誰も来なくなったVR世界が滅んだって誰も来ないんだからわからないじゃないですか。でもVR世界のキャラクターたちは精一杯抵抗するんですよ。でも抵抗したところで彼らを襲うのもまたNPCで、そもそもこのVR世界は自身の嗜虐性を発散するために作られた場所で、そんな世界にゲストが戻ったところで幸せなのか?ていうかNPCのキャラクター設定としてみんなひどい過去をもっているからゲストが来ても来なくても救われない。マジで全然誰も救われない。どん詰まりの地獄をさらに煮詰めたみたいな地獄。最高です。みんなもっと地獄を読もうよ。美しい地獄ですよ。

 私は本を読んで情景を思い浮かべることができない(というか視覚認知が弱くて「思い浮かべる」ことができない)のだけれど、緻密に計算されたとしか思えない飛さんの文章を読んでいるとなんとなく「あ、こういうことかな」というものが見えてくる。思い浮かべることができない人間の脳をこじあけて限界超えさせるやばい小説です。

 飛さんの作品は短編集も読んだけど全部やばい。この人の本はやばい。是非とも読んでほしい。『自生の夢』は伊藤計劃をモチーフに(モチーフって言い方もどうかと思うけどオマージュというよりはモチーフ)している作品もあってとても面白かった。

 

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

『自由なサメと人間たちの夢』渡辺優

 どこかダメな人たちの「夢」にまつわる話と、最後にサメの話が入った短編集。

 出てくる人たちがみんなどこかダメ。THE向上心!みたいな生き方をしている人から見たら全然理解できないんだろうけど、私のようなダメな人間は共感してしまう。だって私にもそのダメなところあるもんな……と頷いてしまう。ダメだけど、前向きに生きてるわけじゃないけど、まぁでも生きていこうかな、みたいな、そんな温度が心地いい。

 ホラーテイストな話もあるし、星新一的な世界観だなと感じる話もあるし、最終的にスカッとする話もあるし、さまざまな味のドロップのよう。そしてそれを締めくくるのがサメの話。

 サメが主人公の話で、「吾輩はサメである」的な雰囲気。サメが最終的に辿り着く「生きる意味」「生まれた意味」は、あまいにも清々しくて美しくてうっかり泣いてしまう。自分が思った以上に感情を動かされる一冊だった。

 

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

  • 作者:渡辺 優
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/01/18
  • メディア: 文庫
 

  

 

『かわいそうだね?』綿谷りさ

 綿矢りさといえば、比較的近い世代でありながら若くしてデビューした人、という印象だった。中高生の頃の私は人が死ぬ小説以外楽しめないってくらいにミステリとエンタメに傾倒していたので、綿矢りささんの小説にはのめりこまなかった。『インストール』『蹴りたい背中』は読んだけど、そこまで印象にも残らなかった。

 で、恋愛小説なども楽しめるようになった今、森見登美彦氏のエッセイにて綿矢りささんと再会し、「え!?あんな四畳半大学生を書く人も読むの!?」と謎の驚きを感じ、せっかくだし読んでみようと思い立つ。

 ……めちゃくちゃ面白い。私が思っていたのの100倍くらい毒々しくて、痛々しくて、ここには「ひと」が生きている。恋愛的修羅場に立ち会ったことがないのでこれがリアルかどうかとか、そういうことはわからないけれど、この作品に込められた感情は「生」だと思う。主人公が彼氏の元恋人に向ける感情や視線の生々しさは、そういう経験がない私にもわかる。

 綿矢りささんの作品はいくつか読んだけれど、どれも毒々しい生々しさに満ちていてすごく好き。まだ読んでいないものもあるので読んでいきたい。

 

かわいそうだね? (文春文庫)

かわいそうだね? (文春文庫)

 

 

 

『ウチらは悪くないのです。』阿川せんり

 渡辺優さんと同じくアンソロジー『行きたくない』で出会った作家さん。大学にてだらだらすごす二人の女の子の話。開き直るようなタイトルだが、実はそうではない。強がりでもない。単純な事実として「悪くない」のだ。

 これは別途感想を書いているのでそちらをご参照ください。

 

penguinlibrary.hatenablog.com

 

ウチらは悪くないのです。

ウチらは悪くないのです。

 

 

 

『天冥の標』 小川一水

 完結したら読もうと思ってたら完結したので読むことにした。シリーズがパート10まであり全部で17冊あるので頑張らないと読めないのではないかと思っていたが、各巻が割と独立した話なので比較的楽に読めたし、終盤は一気に読みたい感じだったので一気に読んだ。

 とにかくすごくて、このシリーズを読めたことが幸せだと思えるし、読んでいない人は何も知らない状態から読めるなんて幸せだな……とも思う。

 感想は別途書いたのでそちらをご参照ください。「つよいちからでまもっていこう。」は合言葉。

 別途感想を書いているのでそちらを。

penguinkawaii.hatenablog.com

 

 

八咫烏シリーズ 阿部智里

 前述の『天冥の標』がこの世に私が生まれたこととこの世にこの作品が生まれたことを静かに神に感謝するタイプの面白さなら、「は?面白いんだが?」とキレ散らかすタイプの面白さがこの八咫烏シリーズである(感じ方には個人差があります)。

 伏線というか、最後のほうまで明らかにせずに引っ張っている謎的な部分もあるが、大抵は途中でなんとなく気づくことも多い。が、そんなことは問題ではない。だから何?って感じ。先が読めたとして、この壮大なシリーズの面白さの本筋は邪魔されない。ファンタジーのもつ可能性に、ボコボコにタコ殴りにされる気持ちよさがある。タコ殴りにされながら「は?面白いんだが?」とキレ散らかすのが私である。

 それに、先が読めてもまだその先にこの作家特有の(いい意味での)意地の悪さが潜んでいることもあるし。何が嘘で何が本当なのかわからない意地の悪さ、好きです。シリーズ第二部も始まるらしいので楽しみ。

 これも別途感想を書いているのでどうぞ。

penguinkawaii.hatenablog.com

 

 

十二国記シリーズ 小野不由美

 天冥の標を読み始めたときに、「あ、これ私十二国記読めるな」って天啓を受けたんで再読しました。新刊も出ることだしね。中学時代にホワイトハートで出ているだけ全部読んだはず。

 改めて読んでみると、思ったよりも少女小説だったことに気づく。最初はいたって普通のひと(=愚かなところもあるし、自分勝手だったりもする)がだんだんと成長していくところを描いていて、恋愛をメインに置かないだけで全然少女小説の文脈なんだよな……と思った。だんだんと既刊が増えていくごとに少女小説の文脈から離れていくようにも思われたが、最新刊のひとつ前の話『黄昏の岸 暁の天』なんかも李斎の成長物語だったりする。

 で!最新刊の『白銀の墟 玄の月』ですよ。この話は「消えた王様を探す話」であり、なかなかミステリ要素が濃い。まるで『指輪物語』のような濃厚ファンタジー世界(かつめちゃくちゃ重い話)が展開する。泰麒という異例だらけの麒麟によって、今まで築かれてきた十二国記の世界が揺るがされていくのも面白かった。小山さんとか好きそうな感じするから再アニメ化しないかな~!

 

月の影  影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: 文庫
 

 

 

金椛国春秋シリーズ 篠原悠希

 なんとなく面白そうだなと思って読んでみたら大当たり。完結していないシリーズものを読むのって個人的には博打な部分があるんだけど、これは思いきり当たりだったなと思う。

 中国風の架空の国、金椛国。この国には王の后に選ばれると外戚をつくらぬために一族が皆殺しにされてしまうという法がある。叔母が后に選ばれたため、星家は潰されることとなり、体の弱い少年・遊圭のみがかろうじて生き残った。走れば息が切れるしすぐに熱を出すし、そんな彼が以前助けた明々という女の子に連れられ、女装して後宮に勤めることになって……という話。4巻からは新章に突入し、今までは後宮のみでの展開だったのが世界がどっと広がる。

 設定だけ見てみるとなかなかラノベっぽい軽さを感じるが、文章が結構かためなのでラノベの軽さと歴史小説(架空の国の話だけど)のかたさのいいとこどりをしたような感じ。「十二国記」シリーズが漢文調でだいぶかたいのでそれに比べると多少のやわらかさはあるものの、すごくしっかりとした文章になっている。

 主人公の遊圭はできることが次第に広がるにつれて様々なことに興味が出てくるところが素直でかわいい(そして頭が良いので大抵のことはできる)。あれこれと興味をもつ彼につられて読者も好奇心をくすぐられる。

 

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

 

 

 

螺旋プロジェクト

 伊坂幸太郎さんを中心に、複数の作家が世界線とテーマを共有して書かれた作品群。伊坂さん・朝井リョウさん以外は初めて読む作家さんばかりだったので、新たな世界に触れられてとてもよかった。いろいろなタイプの「小説の面白さ」が詰まっているので、もし好きな作家だけ読んでいる場合には是非ともプロジェクトの作品を通して読んでみてほしい。以下、いくつかピックアップして紹介。

 『ウナノハテノガタ』大森兄弟:古代を描いた作品なので、固有名詞をあまり出さずに書いているところが面白い。たとえば海は「ウナ」、太陽は「オオキボシ」など。最初はよくわからない言葉も、読んでいくうちにこれのことか、とわかってくる。こういう体験は滅多にできるものではないと思う。そういう意味でもとても面白い作品。

 『月人壮士』澤田瞳子聖武天皇崩御したときの話を、聖武天皇の周囲にいた人々から聞くというスタイル(つまり書かれているのはインタビューした相手の言葉のみ)で書かれている。小説版FPSといった感じで、否が応にも物語に巻き込まれる感じがあった。人が語る言葉を文字で読むのはなかなかしんどい部分もあるし、時代が現代ではないからわからないことも結構出てくるものの、慣れてくると歴史上の人物たちから話を聞いている気持ちになって面白い。これも滅多にできない読書体験だと思う。

 『天使も怪物も眠る夜』吉田篤弘:時代的には螺旋プロジェクト最後の話。それ以前の作品は誰と誰が対立しているか割と明らかなのに対し、今作では漠然とした対立が描かれる。よく知らないけどなんか対立しているらしい、というような感じ。登場人物もページ数も多いが、それを感じさせないというか気づいたら読み終わっていて驚いた。文章の軽妙さも好き。文章も出てくる人たちもみんな飄々としているというかつかみどころがなく、ファンタジックでメルヘンな雰囲気を持っていてなんだかかわいい。

 

ウナノハテノガタ (単行本)

ウナノハテノガタ (単行本)

 
月人壮士 (単行本)

月人壮士 (単行本)

 
天使も怪物も眠る夜 (単行本)

天使も怪物も眠る夜 (単行本)

 

 

 

『エンドオブスカイ』雪乃紗衣

 彩雲国物語の作者・雪乃さんの新刊。遺伝子操作が可能になり、ヒトがなかなか死ななくなった近未来SFのガールミーツボーイ。

 読み始めてすぐに「雪乃さんの文章だ……」と思った。『彩雲国物語』が好きすぎて『レアリア』には手を出せていなかったのでとても久しぶりだったが、ついこのあいだも読んだような親しみがあった。地の文にあらわれる癖が心地よい。それに、主人公・ヒナが出てきてすぐ雪乃さんの書く女の子はかわいいんだということを思い出した。最高にかわいい。

 物語に関しても、都合よく展開する部分はあるにしても私の好きな展開だった。『彩雲国物語』のふたりが出会い互いを変えていったように、あのふたりが運命に翻弄されながらも幸せな日々を過ごしたように、『エンドオブスカイ』のふたりもまた運命に翻弄されながらも決して負けない。打ち勝つのではなく、運命とともに生きることを選ぶ。そんなふたりの姿がとても愛おしく思える作品だった。

 私は雪乃さんの作品が好きなんだと改めて認識する作品だった。今年読んだなかで一番好きな本を決めるならこれ。

 

エンド オブ スカイ

エンド オブ スカイ

  • 作者:雪乃 紗衣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

 

『ガーデン』千早茜

 植物を愛し人間と距離を置く男と彼を取り巻く人々の話。主人公は周囲の人々をどこか見下したような目で見ている(多分無意識)のが文章からひしひしと伝わってくるのがやばい。会社の同期、後輩、仕事で出会ったモデル、仕事相手の愛人などなど様々な女の人が出てくるが、最終的にはみんな彼から離れていく。それは彼が彼女らとまともに向き合おうとしなかった結果でもあるんだけど、みんな離れていくんだ……みたいな方向になってしまってお前~~~!ってキレ散らかした。態度でわかり合うことができるなんてほんのわずかで、離れてほしくないんならちゃんと言葉で示さないと。主人公はめちゃくちゃにそれを怠りまくっていて、なんなら外部との接続をシャットアウトしちゃっているような人で、そんなのみんな離れていくに決まってるじゃん……それなのに置いてきぼりにされたような顔しちゃってさ……という気持ちになる。でも人間って多かれ少なかれそういうわがままな部分ってあると思う。私も。

 咲き乱れる花は美しくもあるがどこか毒々しく、グロテスクな部分もある。それって人間関係もそういうものだよね~って思った。 

 

ガーデン

ガーデン

 

 

 

 

 

 今年はファンタジー寄りの選書だったような気がする。多分ファンタジーが読みたい気分だったんだろうな。あと去年は避けていたシリーズものにも手を出すことができた。けれどシリーズものって大きくひとつの話として捉えちゃうから読んだ本の一覧を見返して「これしか読んでなかったっけ?」という気持ちになった。

 いろいろと読んできて、読書ってすればするだけ読み解く力がつくんだなと思った。別につけようと思って読んでいるわけではないけど、「ここでこういう描写を入れるところが上手い」とか「こういう構成って上手いよな~」とか、そういうテクニックの部分がわかるようになってきたというか。ただただ面白いなって思って読んでいるだけなのにいつのまにか身についていた。

 何冊読むぞ!とか思っているわけではなく、漠然とまぁ年間200はかたいでしょうと思っている程度なので冊数がどうこうというわけではないが、たくさん読んだという達成感はある。日頃そんな達成感あることなくない?読書の習慣を再開してよかったと思う一番はこれです。

 

 

 あと私の2018年ベスト本である『ゲームの王国』が文庫化されたので絶対読んでください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

 
ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)