自担がふたたび金田一耕助になったので金田一耕助シリーズを読む

 前回の記事で加藤さんがやるなら次は『悪魔の手毬唄』がいい!って書いたらその通りになりました。やったー!

 で、前回の記事の後も金田一耕助作品は読んでいたので、その感想もまとめておこうかなと思います。前回の記事のときに名前を知っている5冊(犬神家の一族、獄門島、八ツ墓村、悪魔が来りて笛を吹く悪魔の手毬唄)を読んでしまったので、この先は割と手探りで選んでいます。有識者の方がいたら「これは面白いので読んでほしい」とか「加藤金田一にはこれをやってほしい」とかそういう観点からオススメしてほしいなって。待ってます。

 

 前回の記事はこちら。 

penguinkawaii.hatenablog.com

 

 

 

 

夜歩く

 ものすごく面白かったので誰かとこの作品の話したいのにネタバレになっちゃうから何も言えない。読んで。今までで一番「読んで」としか言えないかもしれない。読んで。

 『八ツ墓村』同様、事件に関わりのある人物が事件について書いているというスタイルなので、金田一耕助の登場は半ば以降になる。ほかの作品だと結構ドタバタしている印象があるけれど、今回は語り手が金田一に対して一目置いているからなのか事件解決へ向かう鮮やかさがすごくスタイリッシュで恰好いい。登場から解決までそんなに時間も(ページ数も)経っていないから余計スマートに見える。

 誰が殺したのかもわからなければ、何のために殺したのかもわからない。わかんなさすぎてすごくどきどきするし、全然わからないままに読み進めて真相が明らかになったときの快感といったらないのでほんとなんのネタバレも見ずに読んで。おそらく映像化しにくい作品だから読むしかないので……

 語り手である屋代(小説家)が友人の仙石直記と関わるなかで仙石家に招かれ事件に遭遇し……というような内容。詳しく語るとネタバレになりかねないので本当読んでほしい。ちなみに私は読み終わったときの「めっちゃ面白い~~~!!!」という気持ちが顔に出てしまい、夫から「何にやにやしてるの」と言われました。話の後味としてはそんなに良いものではないけれど、それ以上にこんな面白い物語を読んでしまった、という興奮がすごい。

夜歩く (角川文庫)

夜歩く (角川文庫)

 

  

女王蜂

 とある女性をめぐる血塗れの争い。なんていうか、美しい女性の周りにいる男の人たちがばたばたと死んでいくの、一種の様式美というか……なんかこう……あるよね……もうこの構図自体が美しいみたいな……

 月琴島という島で育った絶世の美女(絶世の美女!)・大道寺智子という女性を中心にして事件は起こる。彼女は東京にいる養父のもとへ引き取られることとなっていたが、彼女を東京に呼び寄せることを阻もうとする手紙が届いたりとあやしい雰囲気。そして彼女を島から連れ出して婚約者候補たちとの顔合わせをすると事件が……という感じ。しかも月琴島では実は智子の両親に関わる事件が起きていたりとか。

 過去の事件と現在の事件が密接に絡み合うタイプのミステリで、とても面白い。物語の舞台も、月琴島だったり修善寺だったり東京だったりと結構あちこち変わるので、閉鎖空間かつ陰惨な呪いの村……みたいな雰囲気とは異なる。女の子とその婚約者たちが出てくる話というと『犬神家の一族』とも近い設定ではあるけれど、物語の「色」が全然違って見える。どうなってるんだ?と思う謎ともしかしてこういうことなのでは?と勘づく謎とのバランスがちょうどよくて、気づくとどんどん読んでしまう。ミステリって話の中身が難しすぎると読んでてわけがわからなくなるし、だからといってわかりすぎてもつまらないから難しいなぁと思う。それをいいバランスで書ける作家さんってすごいなぁ……という語彙のない感想が浮かんできてしまう。

 これは比較的映像化されているっぽいので、いずれ加藤金田一さんでもどう?と勝手に思っています。

  

女王蜂 (角川文庫)

女王蜂 (角川文庫)

 

 

 

本陣殺人事件

 金田一耕助シリーズ第一作目の作品だそう。角川文庫のシリーズ番号は発表順じゃないんだね……!何基準なんだろう?

 昨年「犬神家の一族」の放送があった際に「加藤金田一なら本陣殺人事件が合いそう」みたいなツイートを見かけたので手に取ってみた。一冊のなかに「本陣殺人事件」「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」のみっつが入っている。「本陣殺人事件」「黒猫亭事件」は名前は聞いたことがある作品だったので一気に読めてお得感がある。

 本陣殺人事件のほうは岡山&お屋敷&夢遊病というこれまで読んだ金田一耕助シリーズに出てくる要素てんこもり。ここを起点に金田一耕助シリーズが始まったのか、と納得するような印象を受けた。あと単純に面白い!ミステリを読むときは一応犯人や動機を推理するつもりで読んでいるんだけど全然わからん。ミステリの型(事件が起きる→謎が深まる→調査する→探偵が謎を解く、的な型)にしっかりハマった感じの話という印象を受けた。

 黒猫亭事件は「顔のない死体」が出てくる。顔のない死体、館、雪山、密室、そういうのが出てくるとハッハー!って気持ちになってしまうね。ミステリーズハイみたいな感じ。これも名前だけは知っているという作品だったが、なかなか濃ゆい事件で面白かった。

  

本陣殺人事件 (角川文庫)

本陣殺人事件 (角川文庫)

 

  

 

迷路荘の惨劇

 金田一耕助パトロン・風見の友人である篠崎が買い取った、名琅荘といういわくつきのお屋敷。そのお屋敷にはかつて屋敷の夫婦を殺して片腕を切り落とされた犯人が未だ逃げ続けているという噂がある。そんなところに片腕の男がやってきて消えたという事件があって招かれたのが金田一さん。そしてそこで起こる惨劇……という感じ。

 主要関係者の全員が怪しく、ひとりひとりのアリバイを調べて、割と推理小説の型にそって書かれているのかな~という印象を受けた。でもその分、金田一さんと刑事さんのやりとりが軽妙というか、台詞回しが明るい部分が結構あってバランスがよかった。金田一さんの口調がやたら少年っぽいのもかわいい。だけどどんな場面でもへらへらした口調なのはちょっとこわくて、金田一耕助というひとについて考えたりした。

 金田一さんって多分、常人とは異なる常識のなかに生きている人で、だけど他者の常識に対しても理解がある。ただし理解はあるが自分もそれに則るというわけではない。だけど否定もしない。そういう他者への姿勢が、誰もが金田一さんを好きになってしまう理由なのかなぁと思ったりした。

 過去に金田一さんが解決した事件についても言及されているので、ある程度読んでからこの作品に取り掛かるとより面白いかもしれない。特に『悪魔が来りて笛を吹く』とか。

 調べてみると、この作品は横溝正史が70歳を超えて書いたものだとか。すごいね……歳取って衰えるとかないんだね……

迷路荘の惨劇 金田一耕助ファイル 8 (角川文庫)

迷路荘の惨劇 金田一耕助ファイル 8 (角川文庫)

 

  

 

 

幽霊座

 後述する『金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲』でこの「幽霊座」の続編を書く、というような作品があったので気になって読んでみた。KADOKAWAの読み放題サービスの中には横溝正史作品が沢山あって、これもそのひとつ。

 角川文庫でまとめられている「金田一耕助事件ファイル」の中には含まれていなさそうで、入手困難なもの以外まとめられてると思って油断していた。私はBook Walkerの角川文庫読み放題サービスで読みました。あのサービス、金田一耕助作品(というか横溝作品)がめちゃくちゃいっぱいあるのでオススメ!

 収録作品は「幽霊座」「鴉」「トランプ台上の首」。表題作「幽霊座」はとある歌舞伎小屋にて起こった事件の話。今まで読んだ金田一耕助シリーズにもあったようなゴタゴタでどろどろな人間関係が描かれるも、村で起こる感じのそれとは少し違って、歌舞伎という題材なおかげかなんだかオシャレな雰囲気もある。

 「鴉」は山の中の一家の話。人が消えたり鴉が死んだりする。人間関係というか人間のむずかしさを感じた。犯人以外のいろんなひとの思惑も入ってくるから事件が複雑になってしまっているが、犯人以外誰も悪くないのがしんどい。『迷路荘の惨劇』や『悪魔の手毬唄』もそうだけど、金田一さん割と温泉入ってない?お風呂入らないキャラが珍しくお風呂入ってるよ感を出すとお風呂シーンが多くなる的な……そういうこと?

 「トランプ台上の首」はその名の通りトランプの散らばった台の上に首が置かれている話。首から上だけが残されているなんてテンションが上がる。一体なぜ?なんのために?ってあれこれ考えてしまう。現代の科学捜査ではきっとすぐにわかってしまうようなトリックも、この時代ではわからないというのが面白かった。あと金田一さんの人懐っこさがすごい……ちょろいのですぐ好きになってしまう……

 今回の短編3作は割と視覚的にインパクトが強いものが集められていた。人が消えちゃったり、血塗れだったり。私は文章を読むときに視覚的イメージが伴わないからさらっと読んじゃうけど、見えるタイプの人だとうわー!ってなったりするのかも。

幽霊座 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫)

幽霊座 「金田一耕助」シリーズ (角川文庫)

 

 

 

 

 

 あと前回の記事で「こんなのもあるんだね~」って紹介したこちらも読みました。

 

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲

 京極夏彦有栖川有栖などそうそうたるメンバーの金田一耕助横溝正史アンソロジー。参加している作家たちの作品である時点でもう面白い。金田一耕助が過去に解決した事件に関する話やパロディもあるのでそのあたりは知っていたほうが楽しめると思うが、金田一耕助シリーズそのものには関係しない話も結構あるので身構える必要はないと思う。

 京極夏彦は自作からの抜粋ではあるものの、関口くんと横溝正史が言葉を交わしている場面はなんだかぐっとくる。あと久々に京極さんの文章を読んだせいでシリーズを読み返したくてたまらなくなってしまった……

 一番好きだなと思ったのは柴田よしきの作品。「書く人」と「書かれた人」との関係性に胸がぎゅっとしめつけられるような切なさとエモさを感じた。ドラマ「泣くな、はらちゃん」がすごく好きなのでこういう話が刺さりがち。

 

 

 

 

 

 

 起こる事件はどれも痴情がもつれたり人間関係がゴタゴタしていて決して明るくはない(そもそも人が死んでいる時点で明るくはない)が、事件以外の部分は割とやわらかい雰囲気に感じる部分も多い。まず、物語は作者が金田一から聞いたというていで書かれている時点でほんわかしちゃう。かわいい。もうその設定がかわいい!あと自分が書いたキャラクターと小説の中で話をするって……ねぇ……好きでしょそんなの……

 次回もまた加藤さんの金田一が続くことを期待して読んでいきたいなと思います。角川の読み放題で読めるのハッピーすぎるからみんなも読もう!