個人的に聴いてほしい新藤さんのギターがやばい曲8選+α

 Q:ギターのことわかるんですか?
 A:弾けないし全然わかんないです。でも好きなギターソロの話をしたいのでします。全部主観です。

 

 

 

01.サウダージ

 わかりやすいところから。サウダージのアウトロなんてわかりやすいでしょ、あんなの歌ってるでしょ。新藤さんのギターは「歌う」んですよ。ポルノのおたくたちはよく「ポルノはツインボーカル」って言うけど、ポルノをよく知らない人でもこのアウトロを聴いてくれたらなんとなくわかるんじゃないかと思う。
 最後、サビのメロディがアウトロ含め3回繰り返されるけど、普通のサビ(「許してね恋心よ」)→転調したサビ(「あなたのそばでは」)→ギター、というように全く同じパターンではないのでしつこさを感じない。しかもギターソロは岡野さんのフェイクものっかってきて、なんていうかもうそこが「世界」。これこそ「ポルノグラフィティ」。言葉をぎゅうぎゅうに詰め込んだような曲が、ギターの歌声とボーカルのフェイクで終わるの、強くない?
 しかもこのアウトロのギター、最初は「寂しい」と「大丈夫」でいったら「大丈夫」のほうで、メロディを繰り返していくうちに最後に「寂しい」のほうになるの。ずるい。主観です。

 

 

02.カメレオン・レンズ

 「サウダージ」は雄弁に歌うギターだったが、今度は静かに歌うギターを。「カメレオン・レンズ」です。
 僕と君は同じ世界を見てはいなんだね、わかりあえないね、という歌詞を歌うなかに入ってくるギターソロ。決して長くはないんだけれど、楽曲のもつ「寂しさ」とか「悲しさ」とか「後悔」みたいな(本当はそんな言葉では語り切れないような感情なんだけど便宜上そういう言葉にする)ものを背負ってる音がする。だって僕が君の空に放した青い鳥は不吉な声で鳴くカラスになっちゃったんだよ?もうやりきれなくてしんどいじゃん。
 で、そのしんどさを背負うのがギターソロ。そのあとのCメロは「わかり合おうとすればするほど なぜ僕たちは傷つけあってしまう?」という歌詞のまとめみたいな部分がくるから「僕」の背負ったいろんな感情はこのパートまでに一旦整理しといたほうがいい。で、そこでこのギターソロが活きる。「サウダージ」のように情熱的ではなく、どちらかというと淡々としていて音がシンプルで、そんなに長くもない。でもこの短くて淡々としているなかにものすごく感情が詰まっている。
 極めつけはCメロの「通じ合えるもの」に少しずれて同じメロディを被せてくるギター。あ~~~だから同じ世界を見てないからメロディも重ならないんだって~~~って気持ちになる。しんどい。あと「Black or White 月蝕の夜」や「Love or Not 待ち続ける」のあとにくるギターもいい。岡野さんの歌う部分への応答みたい。でもふたつの世界は重ならない。なんともメンタルにくる音。

 

 

03.月飼い

 物語的に展開していく歌詞で、(私の解釈では)ここではない世界へと旅立った「君」とそれを見送った「僕」の曲。
 2番では「君」がいなくなったあとの「僕」を描いている。2番サビでは過去に「君」が言っていた「朝が嫌い」ということを思い出していて、そのあとに間奏のギターソロがあり、「窓の外に水を捨てた 月を空にかえした」と続く。
 2番サビではまだ「君」がここにいないことに納得のいっていない「僕」だが、間奏後のCメロでは「窓の外に水を捨てた」と、「僕」自身も前に進むことを決めたような歌詞が展開する。「僕」の心はいつ変わったのか。間奏のあいだで、だ。
 私には、この曲のギターソロは、「君」がつかまえた月とともに過ごす日々を「僕」がその手で終わらせることを決めるまでの心の動きのように思える。「窓の外に水を捨てた」という行動に出るためには「僕」が心を整理するための時間が必要だと思うから少なくともなんらかの間奏はあってほしい。そしてできることなら「僕」の心の動きとシンクロするようなものであってほしい。このふたつがばっちり叶えられているばっちりなギターソロ。ちょっと迷うような、でもその場の勢いで結論を出すのではなくしっかり考えて、そのうえですっと力が抜けたところで結論が出るような、そんな感じがする。歌詞で書かなくても、ギターが歌う。ね?ポルノはツインボーカルなんですよ。

 

 

04.ライン

 私が新藤さんのギターの話をするとき、「ライン」「ルーズ」は外せないんですよ。この2曲が特にわかりやすくやばいので。
 「ライン」というのは、思春期(であろう)の主人公が相手に思いを伝えることなく恋を秘めたままにする失恋未満の失恋の曲だ。月光を思わせるような静謐さをもつイントロから静かに始まる。1番サビもまだ静かに進み、サビ終わりの「好きになりたくなかった」の後にギターが大きく入ってきて物語が盛り上がっていく。そして2番サビ後にくるギターソロ。これがやばいんですよ。
 この曲は「君」のことが好きだけれど「君」は「僕」のことを「気の合う友達」だと思っているから気持ちを告げることができない「僕」が主人公の曲で、「僕」は「好きになりたくなかった」と思っている。2番サビの最後は「何も最初からなかった」とさえ思ってしまうほどだ。思いを伝えらえない、という言葉では生ぬるいほど、とても重たい感情を秘めている。「スニーカー」や「友達」という単語からなんとなく思春期が想像できるが、思春期の「僕」が思う「好きになりたくなかった」はあまりにも重たい。それこそ世界が終わってしまうような、そんな感情が詰まっている。
 これは「僕」視点の曲だから、「君」がどう思っているかは描かれていない。「気の合う友達」とは言うけれど、もしかしたら「君」だって好きだと言えない状況にいるのかもしれない。しかし、「僕」の視点からはそれはわからない。ただただ優しく、その優しさが残酷なだけかもしれないし。それは描かれていないからわからないところだ。
 けれど、そんな「僕」の気持ちも「君」の気持ちも包み込むような、そんなギターソロが展開する。今までの物語は「僕」の部屋や回想のなかで繰り広げられていたのに、急に視点が変わるような印象を受ける。物語を俯瞰で見ているような感覚。壮大でドラマチックで、たったひとりの「好きになりたくなかった」という思いはこんなにも大きなものなのだと思い知らされる。そして俯瞰で物語を見つめるギターソロは、再び「僕」に寄り添って終わり、最後のサビへとつながる。
 私は新藤さんのギターは吟遊詩人のギターだってずっと言い続けているんですが、こういうことです。新藤さんのギターは「歌う」。歌って楽曲を表現するんですよ。

 

 

05.ルーズ

 「ライン」の話したんで次は「ルーズ」ですね。
 この曲はすべての歌詞が終わったアウトロまでギターソロが出てこない。そこまでギターは割と控えめで、最後の最後で爆発する。
 そもそもこの曲の歌詞がやばいので一旦その話をしますね。
  ①「僕」「君」を一度も使わないで「僕」と「君」の関係を描く
  ②「街」の描写から始まり二人の関係を描き「街」の描写で終わる
  ③ワンフレーズごとに明確なつながりがないのに物語が展開する
  ④パワーワードならぬパワーリリックだらけ 特に比喩
 こういうやばポイント満載のやば歌詞なんですよ。誰が「夜を抜けた街」を「飴細工」に喩えますか?その心は「恋人たちの想い 巻き込んだまま 歪んで捻れ 混ざって溶けてゆく そしてすぐに形作る」。最高。
 「愛が壊れてしまった」と直接的に言わずに「一度壊れた愛は戻らないと 綻びのないルールがある」って言っちゃうのが新藤さんです。つまり愛によって結ばれていた二人が別れることになる曲。しかし、歌詞の中にはなぜ別れることになったのかは一切書かれていない。何が原因だったのかはわからない。この歌詞からわかるのは、二人は互いを愛していて、それでも別れることになったのだということだけ。それがどれほどのことかというのを、さまざまな表現を用いて描いている。
 で、その曲の最後にギターソロがくる。「繰り返す夜は 束の間の舞台」で歌詞は終わるが、歌詞の中に込めきれなかった愛とか後悔とかそういうものがギターソロに乗って爆発する。それまで抑えていたギターと歌詞に収まりきらない感情がリンクしている。ここまで語られてきたふたりの物語そしてすべての「恋人たち」の物語、そこに込められた感情すべてがこのギターソロで奏でられているといっても過言ではない。歌詞に入りきらなかった切実すぎる想いが音となり、胸を突き刺してくる。
 このギターソロは、語り手の感情をのせた慟哭なのだ。

 

 

06.It's on my mind

 ポルノのギターを語るならこれも外せない曲。ポルノってボーカルとギターのツインボーカルでやってるんですよ~って何度も言ってるけど、言ってる意味がわからなかったらとりあえずこれを聴けばわかるから聴いて。
 歌い出しのAメロからBメロまではアコギがメインボーカルを務める。そしてサビから岡野さんの声が入ってくる、というつくり。これをやれる時点でもうすごいんだけど、歌詞との親和性もすごい。
 サビの(つまり岡野さんが歌い始める)歌い出しは「言葉につまる恋ばかりをしてきたけど」。今までギターが奏でていたメロディは「言葉につまる恋」だったのかもしれない。言葉にはできないから、代わりにギターが歌っていたんじゃないか。そう思わせるほど歌うギター。言葉はのっていないんだけど、どこか言葉に聴こえるような気がしてくる。
 サビが終わると再びギターのパート。どこか懐かしい気持ちになるような音。私がどこかに置き忘れてきた昔のことを思い出させるメロディ。新藤さんは岡野さんの歌詞について「ボーカルにしか書けない歌詞がある」というようなことを言うけど、ギターと歌詞が一体となる感じを何度も味わっているからか「ギタリストにしか書けない歌詞がある」とも思う。歌詞にもたせた余白をギターで活かす。

 

 

07.ワンモアタイム

 この曲は作詞作曲が岡野さん。疾走感のある曲で、東日本大震災のあとに一発目として出してくる曲がこれなのすごく「強い」なぁと思うし、岡野さんの歌詞だっていうのもなんだか納得する。「I bilieve one more time」「僕らは信じてる」という言葉が繰り返し出てきて、まっすぐな言葉で力強く明日への希望を歌う。
 まるでアニメのオープニングみたいな曲で、キャッチーで疾走感のあるメロディが特徴的。聴くだけで架空のアニメのOP映像が思い浮かぶ。実際は「スッキリ!」の曲だったけど。
 強くてストレートな歌詞に呼応するように、まるでヒーローみたいなギターソロ。入り方から展開の仕方から次のフレーズへの繋げ方まで完璧に恰好いい。ピンチのときに現れて希望を見せてくれる存在のことをヒーローというのだとしたら、この曲のギターソロは間違いなくヒーロー。今まではどちらかというと感情をのせるとかのほうのギターを語ってきたけど、もはやこの曲はギターソロそのものがヒーローなので……聴けばわかる。わかって。
 高揚する気持ちを保ったままCメロへと繋がる流れは鮮やかすぎてしんどい。あと最後のサビのところでジャジャッ!ジャジャッ!ってしてる音もヒーローだなぁって思う。その音がするだけで自分が助かることを確信できるような音。

 

 

08.君の愛読書がケルアックだった件

 イントロのギターでノックアウトされちゃう。ポップさと音のざらつき的なものがベストマッチすぎてやばい。きらきらした感じのアレンジの中でギターの音がざらっとしていて際立ってるの。アレンジに合わせたらもっと軽くなめらかにシャラランとかきゅるんって感じにしてもいいのになって思うけど、そうじゃなくてちゃんと存在感のあるギターが新藤晴一のギターって感じなんですよ。世界よこれが新藤晴一だ。
 サビの終わりは縦のリズムになって間奏ではまた横に流れるようなリズムになるところもいいし、ギターソロが最高潮まで達したところで「Your wish」に引き継ぎ、「普通の子ってまわりには演じていても」のフレーズにつながって次のサビにいくところでまた音が弾ける!は~~~たまらん。
 「ハネウマライダー」とか、あとは「Ohhh!!!HANABI」のトランペットから引き継ぐギターソロとか、ポップな曲は新藤さんのギターが光る。ポルノがポップでキャッチーな部分とロックな部分をうまく持ち合わせられるのはきっと新藤さんのギターも重要な要素だと思う。最初からそうだったのか後から身につけたものかはわからないけど、どっちにしろすごい。

 

 

番外編:LiAR、VS

 ギターソロ以外の部分のやばさでいうと個人的にはこの2曲が好き。わかりやすくやばいわけではないが、芯の通ったメロディを持ってサビのメインの裏で聞こえるギターがすごく気持ちいい。そりゃあ音はボーカルのほうが大きいんだけど、歌声とギターが聴こえてくると並び立つ「音」って感じがしてそうなんですよこれがポルノグラフィティなんですよ……って気持ちになる。普通に音源を聴いているとどうしてもボーカルに気を取られがちなので是非ギターにも注目し、この「並び立つ」感を味わってほしい。
 特に「VS」は、先日の東京ドーム公演の本編ラストにセンステでふたりが背中合わせに演奏していた姿を思い出して胸が熱い。

 

 


 あと新藤さんってギター弾いてる姿がめちゃくちゃ恰好よくない?ちょっと腰を落とし気味に弾く「ラック」、ぎゅいーんってやるやつ(名前がわからん)がかっこいい「ネオメロドラマティック」、俺のギターを聴け!「ジレンマ」、しっとりやさしく聴かせる「カゲボウシ」などなど、まだまだ沢山あります。音源にはないけどライブバージョンだとギターソロのある「ROLL」とか、ずるい楽曲も沢山ある。ほんとずるい。好き。
 基本的には音源でわかる部分をピックアップしたけど、ライブバージョンの話もしていいなら「THE DAY」の間奏が死ぬほどやばいです。「並び立つ」の極み。

 

 

 

 

 ちなみに本日、9月20日は新藤さんのお誕生日です。おめでとうございます。これからも恰好いいギターを弾いてください。