小山さんに朗読してほしい作品7選

 先日、小山さんがゲスト出演した坂本美雨さんのラジオ「ディア・フレンズ」を聴いたのですが、小山さんが良い声すぎて朗読CDが欲しくなりました(坂本さんの声もかわいいからマジで癒ししかない最高の時間だった)。あまりにも朗読CDが欲しすぎて勝手に読んでほしい作品を独断と偏見と私の趣味でピックアップしましたのでお納めください。全部青空文庫で読めるやつなのでリンク貼っておきます。

 

 

 

新美南吉「てぶくろをかいに」

 子狐はその光がまばゆかったので、めんくらって、まちがった方の手を、――お母さまが出しちゃいけないと言ってよく聞かせた方の手をすきまからさしこんでしまいました。

「このお手々にちょうどいい手袋下さい」

 「ごんぎつね」の作者としても知られる新美南吉の作品。教科書にも掲載されているので知っている人も多いのでは。ていうか「ごんぎつね」も読んでほしい。

 ところで小山さんと言えば狐みたいなところありません?私はあります。

 初めて見る雪にびっくりする子狐がとにかくかわいい。初めて見る町も、子狐の目には空の星が地面近くで輝いているように見えている。かわいい。子どもとは好奇心のかたまりなのだな……と思うような描写がなされていてとにかくかわいい。

 一方お母さんの狐は、過去の経験から人間を恐れている。たとえ坊やがうまく手袋を買えたとしてもお母さんはまだ人間を疑う気持ちを捨てきれない。でも、きちんと対価を支払って手袋を買っただけなのだから、それだけで人間を「いいもの」とも言い切れないよな……という、この絶妙にダークな感じがするところが、大人になってから読む新美南吉作品の醍醐味です。

 小山さんはすごくかわいいし、しかも好きなアニメが割とスタイリッシュ鬱作品な傾向もあるダークさも持ち合わせています。つまり、子狐のかわいさ、そして作品のもつ絶妙なダークさを小山さんならいい感じに表現してくれることでしょう。

 

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太宰治「駈込み訴え」

 私は今まであの人を、どんなにこっそり庇ってあげたか。誰も、ご存じ無いのです。あの人ご自身だって、それに気がついていないのだ。いや、あの人は知っているのだ。ちゃんと知っています。知っているからこそ、尚更あの人は私を意地悪く軽蔑するのだ。

 

 小山さんに限らず、アイドルに朗読してほしい作品第一位は「駈込み訴え」です。どのアイドルにも一度は朗読してほしくないですか?私は聞きたい。

 ユダがキリストに対して思っていることを、愛や憎しみがごちゃ混ぜになった感情をもって訴えるという内容で、太宰治が口頭で買ったものを妻が書き取ったもの。つまりもともとが口述筆記だから、リズムや言葉回しが朗読と相性がいい。

 しかも、この作品を読めばわかるけれど、ゆっくりまったり語られたような言葉ではない。一気に、激しく、言葉が雪崩を起こしたように口からあふれてくるような、そんな印象を受ける。勢いよく喋るには、喋ることに慣れていなければ詰まってしまったり噛んでしまったりということもあるかもしれないけれど、私は小山さんの「外郎売」をきいたことがあるからわかるのだ。小山さんなら詰まりも噛みもせずに読めると。圧倒的な勢いで、聴いている者が思考を挟む隙もないほどにユダの複雑に絡まった感情を叫んでほしい。聴いていて頭が痛くなるような、そんな朗読が聴きたい。

 あと長いから朗読はしなくていいけど、『斜陽』に出てくる「しくじった、惚れちゃった」も小山さんに言われたい。

 

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梶井基次郎桜の樹の下には

 桜の樹の下には屍体が埋まっている!

 

 「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」から始まる短い話で、なぜそう思うのかということを「俺」が「お前」に語る形式で書かれている。どことなくじっとりとしていて、それでいてからっとした語り口でもあり、読んでいるとなんとも不思議な気持ちになる。私としては(よくわかんないけど)ハイな気分になる。

 これも「駈込み訴え」同様いろんな人に朗読してほしいなぁと思う作品のひとつなのだけれど、小山さんが読んだらめちゃくちゃドラマチックだと思いませんか?あぁ~~~最高だなぁ。

 イメージとしては「グレートネイチャー」とか「NEWSICAL」のテンションの高い部分みたいな声色。「駈込み訴え」ほどの勢いは求めないが、むしろ落ち着いた速度でテンションの高い感じで朗読してくれたほうがこの作品の絶妙に狂った感じを表現できるんじゃないかと思う。いや……絶対にいいな……聴きたい……

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堀辰雄風立ちぬ

 風立ちぬ、いざ生きめやも。

 

 結核を患った婚約者・節子と「私」の生活を描いた作品。節子の病状は悪化していくし、決して明るい話ではないのだけれど、物語全体が暗い色を帯びているわけでもない。ふたりは確かに愛し合っていることが感じられる。「私」の目を通して描かれる節子はとてもかわいらしくて、こんなにも愛が静かににじみ出る文章があるのかと驚くほどだ。なんていうか、愛なんだよな……。二人が言葉を交わしている場面がとにかくぐっとくる。

 グローブ座の舞台には椅子がひとつ、ぽつんと置かれている。開演のブザーが鳴ると、小山さんが歩いて登場し、長すぎるコンパスによってすぐに椅子まで辿り着く。お辞儀をし、一同拍手。ゆっくりと椅子に座り、そして朗読が始まる。

 ……みたいな朗読劇として最高なのが「風立ちぬ」。これは朗読CDではなく朗読劇として披露してほしい作品。ひとりでもいいし、ふたりくらいでもいいかな。うーんでもひとりでやってほしいかも。小山さんがひとりで世界を構築するところを聴いていたいし見ていたい。小山さんの声でかたちづくられる「私」も、その「私」から見た節子も、きっと美しいものになるだろうから。

 

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宮沢賢治よだかの星

 羊歯の葉は、よあけの霧を吸って、青くつめたくゆれました。よだかは高くきしきしきしと鳴きました。そして巣の中をきちんとかたづけ、きれいにからだ中のはねや毛をそろえて、また巣から飛び出しました。

 

 よだかは醜い姿から他の鳥には嫌われており、鷹からは改名しろと迫られたりと、つらい日々を送っている。それでもよだかは誰のことも責めずにいるし、むしろ自分が羽虫を取って食べることに対して罪悪感を抱いている。その健気さと、最後に力強く飛んでいく姿に胸を打たれる名作です。よだかいとしい。なんてピュアな鳥なんだろう。自己犠牲は決して美しくなんかないけど、いろいろ考えた末にそこに辿り着くしかないよだかの気持ちもすごくわかる。

 はじめの「よだかは、実にみにくい鳥です。」の時点で小山さんの慈愛あふれる声が聞こえてくる。きっとよだかに寄り添うように読んでくれるでしょう。この話は、よだかのこころに寄り添ってくれる人が読むのが一番いいと私は思います。

 決して雄弁ではなく、理不尽なことを強要されても強く言い返すことのできないよだか。醜い姿のうちに、美しいこころを宿したよだか。そんな彼の飛び立つ姿を、小山さんなら優しく読んでくれると、そう思うのです。

 

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宮沢賢治春と修羅」序

わたくしといふ現象は

仮定された有機交流電燈の

ひとつの青い照明です

 宮沢賢治が生きているあいだに出版された「春と修羅」。その序として書かれた詩である。アニメ映画「銀河鉄道の夜」のエンディングで朗読されているので、聴いたことがある人もいるかもしれない。あの静謐な朗読は、どこか恐ろしくも惹かれてしまうものがある。

 賢治の詩はふしぎな言葉が使われていたりするので、ぱっと読んだだけでは中身がいまいち掴みづらかったりもするのだけれど、それを耳で聴くという行為もまたいいものだと思う。小山さんの低くて聞きやすい声は、穏やかな喋り方も似合うし激しい喋り方も似合うし、たぶん無機質な喋り方も似合う。どこか冷たく、しかし人間の声が本来持つあたたかさは確かにある、そんな喋り方。言葉に自分の感情をのせるのではなく、言葉を言葉として読むような、そんな朗読がこの「春と修羅」の序には似合うのだ。「因果の時空的制約」とか「修羅の十億年」とか「あらゆる透明な幽霊の複合体」とか、小山さんの静かな声で聴きたい。 

 一方でめちゃくちゃ感情をのせた「青森挽歌」も聴きたい。「青森挽歌」は書き方自体もだんだんとひらがなが増えて言葉より先に感情があふれてくるように見えるので、それを是非とも小山さんの声で再現してほしいなぁと思う。

 

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宮沢賢治銀河鉄道の夜

 「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」

 

 Q:さっきから宮沢賢治ばっかりですね

 A:私は宮沢賢治のおたくなので……

 どうしたって「銀河鉄道の夜」を朗読してほしい。夏のある日の、お祭りの晩の話。ジョバンニはいつのまにか疎遠になってしまっていた友達・カムパネルラと銀河鉄道のなかで会い、ふたりで旅をする。運命的なシンメを持つ小山さんが朗読するのにぴったりすぎませんか?むしろふたりで朗読劇やってほしいけどそんなことされたら息の根が止まってしまうので勘弁してください。

 小山さんはカムパネルラとジョバンニをどんなふうに読み分けるのだろう。あるいは鳥捕りは、あるいは子ども二人を連れた青年はどうだろう。メインの登場人物はジョバンニとカムパネルラの二人だが、二人に出会いそして別れていく登場人物が結構多いので、どんなふうに表現するのか想像がつかない。あの場面はどうだろう、この場面はどうだろうと考えていると、そのたびに違った「銀河鉄道の夜」が浮かぶ。

 上に引用しているのはジョバンニとカムパネルラが銀河鉄道のなかで様々な人々と出会い、また二人きりに戻った場面の台詞。小山さんの声で是非とも聴いてみたい。

 

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 私はなにかを読んだときに映像的なイメージを想起することができないのだけれど、代わりに「この登場人物はこの人が演じているイメージだな」と思うとその人の声で読める、という聴覚的なイメージの再生はできる。なので「この人が朗読したらこうだろう」というのも頭の中で聴くことができる。でも実際に聴くのとは全然別の話だから小山さんの朗読が聴きたくて仕方がない。小山さんに声のお仕事来ないかな〜!