『行きたくない』のための準備体操 執筆作家の本を読む

 

 加藤さんの最新短編が収録された書下ろしアンソロジー『行きたくない』が614日に発売になります。そのための準備体操として、執筆陣の本を読みました。各作家ごとに23作品ずつになります。

 

 

 

 

 

阿川せんり

『厭世マニュアル』

 ですますの喋り口調の文章に一瞬戸惑うけど、慣れるとそこまで気にならない。太宰治の「駈込み訴え」とか舞城王太郎みたいな感じだけど、あそこまでぶわーっと流れてくるわけではない、絶妙なバランス。落語ちゃんと知らないけど、書き起こしたらこういうふうになるのかもな~と思うなどした。

 マスクなしでは生活できない女の子「口裂け」と、彼女の周りにいる人たちの物語。話としては決して珍しいものではないけれど、「勝手に下に見られることのつらさ」「何も言ってないのに好き勝手に解釈されるつらさ」そして「それらのつらさを『そんなこと』と言われてしまうつらさ」が詰まっていて、ものすごく身に覚えがあった。この作品がフロンティア文学賞を受賞した際に選考委員の辻村深月さんが「この物語を必要としている人がどこかにいる」という理由で推したのもすごく頷ける。つらさを浄化してくれるような物語ではないと思うけど、つらいと思ってもいいんだと、抱えた痛みをほかの誰と比べることなくそれがまぎれもなく「痛み」であると認めてもいいと思わせてくれる。

 

厭世マニュアル (角川文庫)

厭世マニュアル (角川文庫)

 

 

 

 

『美女と竹林アンソロジー』収録「来たりて取れ」

 「美女と竹林」というやばいテーマのアンソロの一作目を飾るのが「来たりて取れ」。いきなり「北海道に竹林はない。」の一文で始まる。アンソロジーのテーマを揺るがすやばい一文である。パンチが効いたっていうかパンチしかない。内容を要約すると、北海道で暮らす女性カップルが竹林のために別れる別れないの喧嘩になった末、主人公は時代は竹林よりパンダだ!と上野動物園へシャンシャンを見に行く話。なんじゃそりゃ。やばい。やばいうえに面白い。めちゃくちゃ面白いので単著の既刊を差し置いてまでこの短編を紹介したいんですよ。

 全編通して主人公および登場人物の思考の展開が読めなくて「えぇ~!?」って思うことがどんどん起こっていくんだけど主人公カップルがかわいくて最終的に私はただただのろけ話を読んでいたのでは……?という気持ちになる。多分そうなんだと思う。目の前をすさまじい風が吹き抜けていった感じがしていっそ気持ちいい。短編という限られた長さでの展開の仕方が読者を置いてきぼりにするほどスピーディ&驚きに満ちていてすごく良かったので今回のアンソロではどんな短編なのか楽しみ。

 ちなみにこの美女と竹林アンソロ、有栖川有栖伊坂幸太郎恩田陸京極夏彦などなどすごいメンツが集まっているのでオススメです。

 

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

森見登美彦リクエスト! 美女と竹林のアンソロジー

 

 

 

 あまりにも竹林アンソロの短編が好きすぎてこれを絶対に推したい!!!と思ったので入れました。長編も面白いですが、短編のセンスがすごい。今のところ読んだ2作は書き言葉と話し言葉の中間のような文体で書かれていて、そのリズムがだんだん好きになってくる。主人公の痛々しさで主人公の痛みをカモフラージュして軽く見せるかのような文章もすごく新鮮だなと思う。好き。

 

 

 

 

奥田亜希子

『五つ星をつけてよ』

 「現代」を切り取った、絶妙に胸が痛くなる短編集。ぞわっとする話もあれば、しんと沁みるような話もある。

 「キャンディ・イン・ポケット」は思春期の女の子の話で、所属するグループが全然違うのに登下校で一緒になるからその時間だけは話せる、というような二人が登場する。私も派手でかわいいクラスメイトにスニーカーを誉められたことがあり、それが嬉しすぎて社会人になるまでぼろぼろになった靴を捨てられなかった思い出があるのでめっちゃ刺さる話だった。言葉にすると気持ち悪いな……でも靴誉められたのめちゃくちゃ嬉しかったんだよ……彼女が「かわいいねそれ」って言った瞬間に靴のもつ輝きが増したんだよ……

 そんな感じに心のやわらかい部分から思い出を掘り返すような話もあれば、読んでいてどこかぞわぞわする、怖くなるような話もある。語り口は決して「怖い」とは思わせないところが面白い。日常に潜む闇ってほどの闇でもない「もやもや」を、誇張するわけでなく「もやもや」のまま小説にしている。

 最後の「仕掛け」まで面白くて、満足度の高い一冊。文庫本のリンクがうまくいかないから単行本版貼っときます。

 

五つ星をつけてよ

五つ星をつけてよ

 

 

 

『ファミリー・レス』

 さまざまな家族を描いた連作短編集。強烈に歪んでいるとかそういうわけではなくて、誰もが通る可能性のあるもの/あるいは既に通ってきたものを描いていて、共感したりしんどくなったりするんじゃないかなという作品。

 働く妻と絵描きの夫の話「指と筆が結ぶもの」は、結婚するということについて改めて考えさせられる。結婚というのは、そう簡単に決められることではないのかもしれない。さまざまな条件があることもあるだろう。でも、いろんなものを差し置いて「好きだから」という理由でそばにいようと決めることだってある。

 中学生の初恋を、二週間だけ家で世話をすることになった曾祖母の言葉と薄く重ね合わせながら描く「さよなら、エバーグリーン」が特によかった。なかなか結び付かないもの同士が淡く薄く重なってきれいな模様を描く。とても清々しい気持ちになる話でもあった。私としてはこの話が一番好きかな。

 作品の中で描かれる家族と似た家族ってなかなかないんじゃないかな、とは思う。状況を重ねるというよりは、描かれている思いと重なる部分がある。多くの人にとって避けようがない家族というもの。嫌だけど、嫌いじゃない。好きなところも沢山ある。だけど疎ましい部分もある。そんな複雑な思いをそのまま言葉にしているというか。読んで沁みる部分のある作品だった。

 

 

ファミリー・レス (角川文庫)

ファミリー・レス (角川文庫)

 

 

 

 奥田亜希子さんの本は以前おたよりでご紹介いただいた(朝井リョウさんが注目している作家さんですよって教えてもらった)ので、『五つ星をつけてよ』は既に読んでいた。面白かったな~と思っていたら今回また名前を見かけたのでなんだか嬉しくなった。

 なんとなくだけど、『傘をもたない蟻たちは』に出てくるような、生きづらいと思いながらも生きるのをやめない人たちに共感してしまう部分がある人は好きな作家さんなんじゃないかなと思いました。

 

 

 

 

加藤シゲアキ

 感想記事をたくさん書いているので割愛。最新文庫かつ短編集である『傘をもたない蟻たちは』の記事だけ貼っておきます。

penguinkawaii.hatenablog.com

 

 

 

 

小嶋陽太郎

『友情だねって感動してよ』

 表紙イラストが浅野いにおってだけで、どうしてだろう、わかる。この本が描き出そうとしているものが、なんとなくわかる。しかもアジカンのごっちが帯の推薦文を書いている。わかる。あ~~~ここには「わかる」しかない。「わかる」あなたは是非読んで。

 青春をやりきれない人たちの青春が詰まった短編集で、すべてが「三人」の男女の話。「二人」では決して起こりえない歪みをもって広がる関係性。どの話も、短編に描かれている前後にも世界が広がっていると思えるような話ばかりだった。

 「甲殻類の言語」は歪な幼馴染三人の話。狡猾に見えて狡猾になりきれない女の子が出てきて、誰にでも彼女のような部分が少しはあるのではないかと思った。「或るミコバイトの話」はとてもかわいい。この不穏で歪な短編集のなかでは一番平和かもしれない。

 一方で「恋をしたのだと思います」「象の像」などの話はホラーテイストの趣がある。世にも奇妙な物語などで実写化されても違和感がないというか、されそうな話。どちらも読み進めるたびに不穏な気配が増していくので怖かったけれど、ぞわっとするようなラストも嫌いではない。それぞれ主人公の一人称で書かれているが、一人称の外側の世界がちっとも見えてこないところがとても怖い。ぞわぞわする。

 表題作『友情だねって感動してよ』も面白い。共感できるとは言い難い悩みを抱える少年と、なぜかそこに関わろうとしてしまう少年と、その彼女の話。この「なぜか関わろうとしてしまう」感じがよかった。彼もまた青春みたいなものをしてみたかったのかな。そんな青春モドキみたいなものが沢山詰まった短編集だ。

 痛々しい青春をお好みの方は是非。加藤さんもきっと好きだと思う。 

 

友情だねって感動してよ

友情だねって感動してよ

 

 

 

『悲しい話は終わりにしよう』

 読み始めてすぐ「加藤さん好きでしょ!」って思った。もう読んだ?まだだったら読んだらいいと思うよ!

 登場人物たちは心を動かされることがほとんどないような、そんな感じ方で捉えた世界が描かれている。ところどころに見られる比喩もどこかシニカルというか、世界に対して肯定的でないような感じがして、なんだかぞわっとする。このぞわっとした感じが、『ピンクとグレー』を初めて読んだときの感覚に似ている気がする。話の構成も凝っていて、読み進めるうちにだんだんと不穏な気配が増して鳥肌が立つ。話すとネタバレになっちゃうから詳しくは読んで!

 物語を読み終わって、再びタイトルを見たとき、その意味に気付く。この物語はこの先明るくなっていくだろうと想像できて、希望に向かうための話なのだと理解する。これは悲しい話を終わりにするための物語。

 

悲しい話は終わりにしよう

悲しい話は終わりにしよう

 

 

 

 著作リストを見る感じ、児童書と一般書のあいだともいえるYA(ヤングアダルト)の分野での作品も書いている方のよう。今回読んだのは青春と鬱屈のあいだみたいな青春を過ごす若者たちの話なのでYA分野ではどういうタイプの話を書いているのかとても気になる。6月の頭あたりまでで読めた分まで記事にまとめようと思っていたので、以降の感想は読書メーターに書きます。

 

 

 

 

住野よる

『君の膵臓をたべたい』

 読んでみて、そりゃあ話題にもなるわと納得した。だって面白いもん。

 ヒロインが病気で……という話は割とよくある。あの映画もこの映画も、原作も思い浮かぶ。けれど、一度ヒットしたものを真似たところでヒットするとは限らない。これが売れるのはそれだけの理由があるんだと思い知った。

 似た題材を扱った小説のなかでも、特筆すべきは「軽さ」だと思う。ヒロイン・桜良がとても明るくて、彼女が病気への不安やつらさを主人公にほとんど見せない(作中で描かない)ことでものすごく明るく、軽いものになっている。近さでいうと、『重力ピエロ』の兄弟のお父さんが癌だけれどそこの描写が決して重たくはない感じと、印象が似ている。似た題材を扱う作品の中には「どう病気と向き合うか」を主題とするものもあるが、これはそうではなくて、正反対の少年と少女が病気をきっかけに出会って仲良くなって、というところに主眼がおかれている。ラストの鮮やかさも、その観点から物語が展開したからこそのものだと思う。

 それと、二人の関係性を「恋愛」としなかったところもすごくいい。もしかしたら(もしかしなくても)お互いに惹かれていたのだろうけれど、付き合う付き合わないの次元に話を持っていかない良さがあったように思う。恋人同士じゃないから、友達だからできることがあるのだと、そう思える関係性がすごく良かった。

 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 

 

 

『また、同じ夢を見ていた』

 どことなく童話っぽい雰囲気がある作品。人生とは、幸せとは、ということを真正面から問いかける。それゆえに若干青くさい感じはあるものの、説教がましいとかというような嫌な感じはしない。読みやすさ的に、普段本を読まない人にもオススメしやすい本だと思う。

 主人公は小学生の女の子で、彼女から見たら同級生は馬鹿に見えるし、だから友達はいらない。そんな彼女が3人の女性と出会い、人生や幸せについて考えるという構成。大雑把に言うとそういう話だけど、細部の描き方が丁寧だなと思った。

 仕掛けられた謎は読んでいるうちに想像がついてしまうけど、これは最後で謎が解けてすっきりするタイプの話ではなく、じわじわと読者に気づかせていくタイプの話だと感じた。じわじわ気づいてくるからこそ理解が深まるというか。

 

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)

また、同じ夢を見ていた (双葉文庫)

 

 

 

『か「」く「」し「」ご「」と「』

 仲のいい5人の高校生が織りなす青春グラフィティって感じの物語。5人それぞれの視点で語られる話が描かれる。しかしそこで一筋縄ではいかないのが住野よるさんで、5人全員が他の人には隠しているふしぎな力を持っている。人の喜怒哀楽が見える、あるいは鼓動のリズムが聴こえる、好意の方向が見える、などなど。そんな5人の、優しくて不器用な高校生活が描かれている。誰かに本当の気持ちを打ち明けることの難しさに、読んでいて懐かしいような現在進行形でもそうだなぁと思い当たるような不思議な気持ちになった。主要メンバーが5人もいるし、誰と一番近いかな~とか考えるのも楽しいかも。

 そして何よりすごいのは、この作品が徹底的に「かくしごと」というコンセプトに沿って書かれているということ。5人がそれぞれ特殊な力を持っているというかくしごと5人がそれぞれ胸に秘めている周囲への想いというかくしごと。それら物語の「中」だけにとどまらず、それぞれの話はラストで何かが明らかになるような(いってみれば日常ミステリに近いような)話でありながら謎の答えを明確に示すわけではないという物語のかくしごと仕様、そしてそして裏表紙のQRコードを読み取ると作品の特設サイトに繋がり、作中のあれこれにまつわるクイズに答えると短いおまけが読めるという物語の外側のかくしごと仕様。こんなのすごいでしょ!楽しすぎるでしょ!

 何重にも仕掛けられた「かくしごと」の罠(っていうとなんか言葉が悪いかな、でも罠って感じがする。仕掛ける側もきっと楽しい罠)にまんまとひっかかり、とても楽しめる一冊になっている。

 

か「」く「」し「」ご「」と「

か「」く「」し「」ご「」と「

 

 

 

 今更改めて紹介するのも変かなって思うくらい。私はどちらかというと読んでて絶望するような話が好きなので、優しい雰囲気が表紙から醸し出されている住野よるさんの作品はなかなか手に取る機会がなかった。でも読んでみるとやっぱり面白いし、売れるのもすごくよくわかる。そして実は絶望もできる。決して暗くはないけれど、とても優しく心地よい絶望が描かれているように感じられた。そしてとても優しく心地よい絶望とは、ほとんど希望と見分けがつかない。その絶妙な「あわい」を描いているように思える。

 1冊どーんと売れるだけでなく、継続的に売れてるってすごい。普段あまり本を読まない人にも親しみやすい文章なのかなと思った。普段から本を読む人にとっても面白い。すごい人だなぁ。

 

 

 

渡辺優

『ラメルノエリキサ』

 やられたらやりかえす女子高生りなちゃんの話。とはいえグロとかではないので安心して読んでほしい。ラストには不思議と爽快な気持ちになる。復讐する女子高生が主人公で、こんなにも爽快なラストが待っているなんて思わなかった!

 とにかく、りなちゃんのキャラがめちゃくちゃに良い。かわいい。復讐といういささか厨二感の漂うモチーフを扱いながらも、りなちゃんが圧倒的にスクールカースト上位のキャラクターなのが新しい感じがする。かといって女王様なキャラでもない。女子高生をイメージしたときに浮かんできそうな、一般的な女子高生像というか。病的に復讐に執着してはいるものの、明るい。明るく病んでいる。明るさと陽のオーラでりなちゃんの闇の部分がうまく隠されている。だから、たまにこぼれる闇の部分がものすごくいい。

 それと、りなちゃん含めりなちゃんの周りの人たちが「自分の欲求に忠実」なのも好き。特にりなちゃんのお姉さん。自分の欲望を叶えるために最短ルートを計算している。欲深いわけではなくて、自分の欲求にまっすぐなのだ。しかも賢い。賢い人が欲望に忠実な様子を見ていると、なんだかすっきりした気持ちになる。

 タイトルでもある「ラメルノエリキサ」の謎はちょっと弱いかなぁとも思うが、それを補ってあまりある良さをもつ作品。

 

ラメルノエリキサ (集英社文庫)

ラメルノエリキサ (集英社文庫)

 

 

 

『自由なサメと人間たちの夢』

 「夢」にまつわる物語と、それらを包括するようなサメの話が含まれた短編集。

 はじめは死にたがりの女性の話から始まって、これがもう最高にいい。ずるい。そうきちゃうのか~って読みながら唸った。で、読み進めると本当に「いい」って思う話しか出てこない。

 出てくる人たちがみんなどこかダメというか、でもそういうダメなところって誰にでもあるような気もするし、ダメじゃない人間なんてそうそういないんじゃないかと思う。自分のダメさも浮き彫りになる感じがするし、それでも生きているって実感する。読書という行為を通して、私が生きていることを実感するような不思議な本だ。

 そして最後に出てくるのがサメの話。まずはサメを飼いたい女の子の話があって、それもまたすごくいいのだが、そこからサメの話に派生する。「吾輩はサメである」である。これがいい。すごくいい。今までの話もよかったのにサメが本当にいい。サメが辿り着いた真理とも呼べるものがあまりに清々しくて涙が出る。この本を読んで、今後も渡辺さんの本は追っていこうと決めた。

 

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

 

 

 

『地下にうごめく星』

 タイトルと表紙からなんとなく想像がつく通り、地下アイドルの話。地下アイドルに突然魅せられてしまった40代女性、所属していたグループが解散した地下アイドル、自称天使、かわいくありたい女装男子などなど、それぞれの視点から物語が描かれる。地下に「うごめく」っていうのが、なんとなく生ぐさいにおいがしていいなと思った。

 いい意味で軽さのある作品だなと感じた。さくっと読める。難しい言い回しや複雑なシーンがあまりなく、表現としてつっかえる部分もないし場面もするすると想像できる。登場人物のキャラ設定の奇抜さと身近さもバランスがとれているなぁと思った。「なんだこいつは」と「わかる」のバランスがすごくよかった。「ありえない」と「あるある」のバランスがいい。

 アイドルを描いているから、アイドルについて「わかる!」という場面も沢山ある。初めてアイドルに心を動かされ「みんな最高に可愛いよー!」と叫んでしまうのも超わかる。かわいいんだよ……みんな最高にかわいいんだ……。アイドルオタクたちの気持ちも、初めてアイドルにはまってしまった人の気持ちもすごくわかる。愛するって苦しいことでもあるし、誰かを好きになったことで得られる救いとか幸せもある。それらはもはや「同じこと」なんだよな……わかる……しんど……

 どこかいびつでどこか爽やか、どこか軽くてどこかシリアス。そういう表裏一体なものを併せ持つ話で、とても面白かった。

 

地下にうごめく星

地下にうごめく星

 

 

 

 普段本を読まない人にも薦めやすく、かつ読書好きにも受けそうな作家さんだなという印象。『自由なサメと人間たちの夢』が特にものすごく面白くて、個人的には20195月末現在今年読んだ中で一番面白かったなと思っている。まだ3作しか出版されていない(ので全部読んでしまった)ようだけれど、今後も読んでいきたい。

 

 

 

 

 ざっと感想を書いたけど、普段本を読まない人でも読みやすそうな作家が集まっているなぁという印象を受けた。ちょっと読みだすと気になってそのまま最後まで読んでしまう作品ばかりだった。この「読み始めたらそのまま読んじゃう」ができるのは、個人的には厚すぎない厚さ・濃すぎない情報量が重要だと思っていて、ここに挙げている本はどれも当てはまっている。同時並行で濃厚なSFを読んでいるので、一気に読める本を読む爽快感ってあるよなぁと余計に思うのかも。

 

 「次世代を担うフレッシュな作家6人が集まりました。」と紹介記事にある通り、全員2010年代デビューの作家だ。ちなみに一番作家歴が長いのは2012年デビューの加藤さん。最もフレッシュなのは2016年デビューの渡辺優さん。また、執筆陣6名のうち加藤さんと住野よるさんは新人賞を受賞してのデビューではないという共通点があり、なおかつこの二人が売上的にも知名度的にもツートップであり目玉扱い(作品紹介記事でもあらすじが紹介されている)なのが興味深い。

 

 加藤さんの短編が読めるのも嬉しいし、今まで読んだことのない作家さんに出会えたことも嬉しい。『行きたくない』が出ていないのに既に楽しい!なのにまだ発売してないなんて!発売が楽しみ!

 

 

行きたくない (角川文庫)

行きたくない (角川文庫)