自担が平成最後の金田一耕助なので金田一耕助シリーズ作品読んだ

 2018年の年末、自担が平成最後の金田一耕助となったために『犬神家の一族』を読んだ。おそらくは中学生か高校生の頃に読んだことがある気がするのだが、改めて読んでみたらめちゃくちゃ面白かった。昔に読んだときはあんまりちゃんとわかってなかったんだろうな……
 ということで最近読んだ金田一耕助シリーズの感想です。物語の核心部分はネタバレしていない(はず)です。ミステリは好きだけど不勉強なもので、お手柔らかにお願いします。

 

 

 

犬神家の一族

 イメージとしては古い小説という認識だったが、こんなに読みやすいの?と改めて読んでみてまず驚いた。昔に書かれた話は読みにくいのではという理由で敬遠している人がいたら是非手に取ってみてほしい。1950年~1951年に書かれた作品(Wiki参照)のようだが、全然そんな気がしなかった。なんだかふしぎ。でもそのくらいに書かれた作品って今読んでもあんまり変わらないよね。乱歩とか太宰も別に読みにくくないもんね。相性がよくなくて読みにくい作家はいても、それはたぶん時代のせいではないし。嬉しいことに、横溝正史作品とは相性がよかったみたい。

 犬神家の当主が亡くなったことにより起きる遺産相続争い。家宝である斧(よき)、琴、菊をモチーフにした見立て殺人。さまざまなドラマや小説などでパロディを見てきた、その元がここに。ミステリに多少触れてきた人なら一度はパロディを目にしているのではないだろうか。ドラマ「TRICK」とか何度かやってるような気がする。
 加藤さんが金田一耕助を演じた2018年ドラマ版では人間関係がだいぶスッキリしていたが、原作ではドロドロ。人と人のつながりが濃密すぎるほど濃い。そこも?ここも?ってくらいつながる。そんな偶然ある!?みたいな偶然もあって、えーそんなのずるい……と思うのに全然興醒めせずむしろ興味深く読み進めてしまう。たぶんこの設定をそのまま現代版に置き換えたら違和感が出まくってしまって難しいのだけれど、それを可能にしているのが戦後まもないという時代設定。
 私が好んで読むミステリは大抵、最後は事件の後日談で終わるというかたちが多いので、あっさり終わる感じも面白いなと思った。なんだかまだ事件のなかに取り残されているような気持ちになって印象的だった。 

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

 

 

 

『獄門島

 犬神家に続いて読んだ。なんとなくタイトルを知っている……という気持ちで手に取ったが面白かった。「ご存知より」はこの作品だったのか。
 さくっと読めるが密度は濃い。バサバサ死ぬ。『犬神家の一族』同様、見立て殺人が行われる。これらの見立てにはどんな意味が……と考えているうちに次の殺人が起こる。割と大がかりな見立ての細工やどのように犯行を行ったのかわからない場面もあって、びっくりしているうちに話が進むからそれが密度の濃さにも繋がっているのかも。もしかしてこうなんじゃないか?と考えながら読み進めるものの、わかりそうでわからない。おかげで気になって途中でやめることができずに朝4時まで読んでしまった。夜中にミステリを読み始めてはいけない。
 
 結末は、個人的にはそんなのありかよ!という気持ち(言いたいけどネタバレになるから言えないので読んで)。でもこういう犯人のパターンは嫌いじゃない。ただ、今回もやはり後日談的な部分は少ないので事件解決のアドレナリンが出たまんま終わって全然眠れなかった。夜中に読んだのがいけない。
 おそらくだけど、金田一耕助はこれから起きてしまいそうな殺人を防ぐタイプではなく一通り起きてから解決するタイプなんだなと思った。これはこれでひとつの様式美というか、その型がありながらも様々な手法でいろんな話を書くのってすごい。

獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

 

 

 

『八ッ墓村』

 頭に懐中電灯さしてる人の元ネタ。この人がスケキヨ的にめっちゃ活躍するのかと思ったらそういうわけではなかった。
 同じ属性のもの(「双子」や「尼」「医者」など)の片割れを殺していくという頭のおかしい殺人事件と、そこに絡んでくる宝探しの話。途中、冒険活劇の要素が強くなって殺人事件のことを忘れてしまいそうになった。事件&洞窟内の冒険っていうと江戸川乱歩にもそういうのあったなぁと思い出す。『孤島の鬼』とかも洞窟でピンチになったりしてたよね。
 この作品、金田一耕助は思ったほど出てこない。この物語においては、主人公は辰弥さん(事件の主要な関係者ではあるものの金田一に事件解決を依頼したりしたわけではない)なので、探偵がガツガツ活躍する感じではない。映像化ではどうなっているんだろう。

  Amazonのリンク貼ったけど今はこの表紙ではないです。

八つ墓村 (角川文庫)

八つ墓村 (角川文庫)

 

  

 

悪魔が来たりて笛を吹く

 あらすじはなんとなく覚えていたのだけれど、詳しい部分はすっかり忘れていた。多分読んだの中学生の時だったからなぁ……
 序盤に「これさえしていれば犯人がわかったのに」というような描写があるが、正直それだけ読んでもなんのことやらなのだが、最後に明かされるともう叫びたくなるというか……これが本当……面白くて……話したいからみんな読んで……読んだ人はこの気持ちよさ(と怖さ)について語り合おう……
 戦後間もないという時代設定がとても活かされているのも魅力的。犬神家もそうだったけど、もはや誰が誰だかわからないような……証明するものもろくにないというか……現代ミステリでやったらちょっと反則じゃない?と思うようなこともこの時代設定で片づけることができてしまうのがむしろ新鮮に感じられる。現代版にアレンジするとなると難しいだろうな。
 犯人やトリックが明らかになる経緯がすごく鮮やかというか、ここに挙げた5作品の中で一番気持ちよかった。謎解きのくだり、わくわくしすぎてアドレナリンがどばどば出てた。テンションが上がって目がさえてしまうので、読み終わってしばらく眠れなくなってしまうやつ。
 個人的には加藤金田一アキさんで映像化してほしいランキング暫定2位。NHKが2018年にやってるから望み薄かな……

悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)

悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)

 

 

 

悪魔の手毬唄

 これもタイトルだけは聞いたことがあった。手毬唄の内容に沿った見立て殺人なんだろうな……とタイトルから想像つくけどその通りで、しかしそれ以上の面白さが詰まっている。事件が終わった後に書かれたものとして語られるので、読者は最初に手毬唄の内容を把握することになる。作中ではなかなか手毬唄に辿りつかないのでそわそわする。
 なんとなく「もしかして……」と思いながら読んでいた部分が少しずつはまっていくというか、パズルのピースみたいにだんだんと事件が明らかになっていくのが面白かった。伝承や歌に関する見立て殺人といえば『獄門島』もそうなのだけれど、それとはまた趣が異なる。どちらも面白い。
 それと、先ほどこの作品は事件が終わったあとに書かれたものという形式であると書いたが、これが本当に……良くて……事件とは別の部分にある謎というか……明らかになったときの「そういうことか!!!!」という驚きで読み終わったあと「これやばくない!?」って誰かに話したい気持ちでいっぱいになったけど是非ご自身で読んでください。個人的には最後のこの仕掛けと金田一さんの最後の台詞のおかげで、今読んだ5冊のなかでは一番面白い作品を選ぶならこれ。
 加藤金田一アキさんで映像化してほしいランキング暫定1位。しばらく映像化もしていないようだし、端折られなければお風呂シーンもあるし、あの恰好で自転車に乗るし、話も面白いし、新元号最初の金田一耕助としていかがでしょうか。

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

 

 

 

 

 金田一さん、何かが掴めるまではあまり話してくれないので、結果「もしここで周囲の人に話をしたり聞いたりしておけばこの人は死なずに済んだのに」みたいなパターンが結構ある。周りの人を信用していないわけではないのだけれど、頭の中を整理するまでは表には出さないというか、今目の前で起こっていることに夢中という印象。個人的にいいなと思うのは、もっと早く解決できていたかもしれないのに……という場面があっても、その場ではショックを受けても決して引きずらないところ。メンタルの弱くない(かといって横暴でもない)人物を見ているとなんだか気持ちがいい。ひとつひとつの話は重いしドロドロだけれど、これらの物語すべてに関わっている金田一耕助が飄々としているから読みやすいというのはあると思う。物語のじめっとした雰囲気に対して、すごくからっとしている人だなという印象がある。場の雰囲気に流されすぎないというか、流れを断ち切る何かがある。
 加藤さんが演じた「犬神家の一族」にしても、殺人事件の顛末を明らかにする場面で生瀬さん演じる橘署長と金田一耕助の掛け合いはコミカルな部分もあって、原作を読んでいて金田一耕助から受けたからっとした印象が再現されていたようにも思えた。
 また、金田一耕助のもつ人懐っこさも加藤さんと重なる。しれっとタメ口で事件の関係者からするすると話を引き出す感じは、先日放送されていたドキュメンタリー「RIDE ON TIME」で執筆中の作品のヒントを得ようとスタッフに話しかける姿と重なった。こんなしれっと訊かれたら会話続けちゃうもんな。
 ということもあって加藤さんの金田一耕助が続くことを期待しています。

 それと、「呪い」的なワードがさまざまな作品に見られるなど、どことなくオカルトな雰囲気をもった作品もあるのだけれど、それが「人の仕業」であると明かされていく過程が気持ちいい。オカルトはオカルトで好きだけど、推理小説としてはそこに頼らず人間の所業であることが明らかになるとやっぱり一番怖いのは人間だよなぁと思ったりする。いやオカルトも怖いけど。呪いも祟りも怖いけど。

 あと、読んでいて思い出したけど京極夏彦百鬼夜行シリーズ(京極堂とか関口くんとか榎木津礼次郎とか出てくるやつ)と時代設定が近いのかな?出会う可能性あるかな?と思ってちょっと調べたら金田一耕助ではなく横溝正史と関口くんが出会ってる様子(『陰摩羅鬼の瑕』の冒頭)。こんな本もあるそうで……

 

 

 加藤さんはミステリの人ではないけど、いつかこういうのに呼ばれたら面白いだろうなぁ。演じた人が書く、って新しいし読んでみたい。演じた人が書く金田一耕助も見てみたいし、加藤さんなら一筋縄ではいかないものを書くだろうなという期待もある。どうですかKADOKAWAさん!

 まだまだほかにもいろんな作品があるので読んでいこうと思います。多分次は『夜歩く』と『本陣殺人事件』。