EPCOTIAブックガイド ―宇宙旅行を楽しむ冴えたやりかた―

 今週末からNEWSのツアー『EPCOTIA』が始まりますね!
 今回のアルバムはSF色が強いので、読んだらEPCOTIA気分が高まりそうな本を紹介しようと思います。小説のなかではSFという分野が好きなので、その知識が初めて役に立つときがきました。いつもの通り、非常に個人的な視点で、あるいは主観でお送りします。
 遠征時の移動時間に、グッズの待ち時間などに是非!

 

たったひとつの冴えたやりかた』ジェイムズ・ティプトリーJr

・あらすじ(Amazonから引用)

 やった!これでようやく宇宙に行ける!16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型スペースクーペを改造し、連邦基地のチェックもすり抜けて、そばかす娘コーティーはあこがれの星空へ飛びたった。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を、意外な驚きが待っていた。頭の中に、イーアというエイリアンが住みついてしまったのだ!ふたりは意気投合して〈失われた植民地〉探険にのりだすが、この脳寄生体には恐ろしい秘密があった…。元気少女の愛と勇気と友情をえがいて読者をさわやかな感動にいざなう表題作ほか、星のきらめく大宇宙にくり広げられる壮大なドラマ全3篇を結集!


 おそらく、「チャンカパーナ」におけるケルアックの『オン・ザ・ロード』、「EMMA」におけるチャンドラーの『ロング・グッドバイ』のような作品。
 主人公の名前は「コーティー」、作者の名前はジェイムズ・「ティプトリー」Jr。おそらくEPCOTIAライナー009便の機長の名前はこの二人から取られているのだろう。全然関係なかったらすみません。ちなみに主人公も作者も女性。
 「異星人とのコンタクトについて」で添乗員の小山さんが喋っている「異星人とのファースト・コンタクトを成功させる冴えたやりかたは、ひとつしかありません」という台詞もこの話を下敷きにしているように思える。
 中身の関連性が強いかというとそういうわけではないが、関連性から今回のツアー前に読んでおくと楽しいんじゃないかなと思う一冊。
 同じ世界を舞台とした、時代の違う三本の中編で構成されている。「たったひとつの冴えたやりかた」はそのうちの一本だが、主人公の少女とエイリアンが選んだ道筋に思わず心を打たれる。地獄のように美しいラストが脳裏に焼き付き、離れない。名作SFといわれるゆえんがよくわかる。
 海外作品なので翻訳の文章に慣れないと読みにくいかもしれないが、名作と呼ばれている作品なので読んでいる人は多く、ネット上で検索すれば感想や解説が出てくるので、それらを参考に読むのもいいかもしれない。

 

 

『青い星まで飛んでいけ』小川一水
『フリーランチの時代』小川一水
『アリスマ王の愛した魔物』小川一水

 三冊ともSF作家・小川一水さんの短編集。宇宙モノではない話も入っているが、どの短編集にも宇宙の話が一~数本入っている。
 日本の作家で、かつ短編集という読みやすい形式のものということでセレクト。あと単純に私が好き。
 『青い星まで飛んでいけ』この三冊の中では最も宇宙度が高く、どことなく恋愛が絡んだ短編が多い。人と人だけではなく、人と人でないもののあいだに生まれる恋愛すら描く。「静寂に満ちていく潮」は人類が不老不死になり身体も自在に作り変えられるようになった時代の、異星生物とのファーストコンタクトを描いた作品。表題作「青い星まで飛んでいけ」ははやぶさを思い出させる。
 『フリーランチの時代』の表題作は女性宇宙飛行士と宇宙人とのファーストコンタクトを描いている。全体的に「生きる」あるいは「死ぬ」ということについて描いた作品が多い。
 『アリスマ王の愛した魔物』には「星のみなとのオペレーター」を収録。人類が気軽に宇宙を行き来する時代、宇宙船を港へナビゲートするオペレーターの日常と突如訪れた非日常を描いている。軽めの文体ながら中身は濃く、ひとつひとつの文の粋な感じが目立つ素晴らしい作品。
 他にも長編だったりシリーズものだったり、様々な宇宙SFを書いている作家さんです。

 

青い星まで飛んでいけ

青い星まで飛んでいけ

 
フリーランチの時代

フリーランチの時代

 

 

 

星へ行く船新井素子

・あらすじ(Amazonから引用)

 森村あゆみ、19歳。“ちょっとした事情”で地球を捨て、火星へ家出中。無事に宇宙船が出航と思いきや、手違いで怪しげな男たちと同室に。男たちが関わるやっかいな事件に巻き込まれ―あゆみと太一郎の物語の出発点。表題作ほか短編「雨降る星 遠い夢」、書き下ろし「水沢良行の決断」、新あとがきを収録。

 「星へ行く船」シリーズの第一作(全部で5冊)。最近新装版が発売した。二巻以降は厄介ごとを引き受ける事務所で働くことになったあゆみの物語が描かれる。ラノベの元祖とも言われる新井素子さんの作品で、キャラクターの魅力も光る。特に女の子キャラがみんなすごく強くてかわいい!宇宙SFの要素だけでなく、恋愛モノとしても楽しめる作品。

 文体に癖があるが、その文体だからこそ若い女の子の心を描くのにぴったりだとも思える。ちなみにこの作品を書いたときの作者は主人公のあゆみと同年代。すごい。

 

星へ行く船シリーズ1星へ行く船

星へ行く船シリーズ1星へ行く船

 

 

『エピローグ』円城塔

・あらすじ(Amazonから引用)

 オーバー・チューリング・クリーチャ(OTC)が現実宇宙の解像度を上げ、人類がこちら側へ退転してしばらく。特化採掘大隊の朝戸連と相棒の支援ロボット・アラクネは、OTCの構成物質を入手すべく、現実宇宙へ向かう。いっぽう、ふたつの宇宙で起こった関連性のない連続殺人事件の謎に直面した刑事クラビトは、背景に実存そのものを商品とする多宇宙間企業イグジステンス社の影を見る。宇宙と物語に何が起こっているのか?

 宇宙間の行き来がある作品だが、冒険モノといえばその側面もあるしそうじゃない側面も多分にあるし……円城塔作品って感じの意味のわからなさや底知れなさに振り回される作品。意味を理解するのは難しいけれど、決して意味がないわけではなく、むしろありすぎるくらいにあるのではと思える場面もある。一見すると無関係に見える物語がいくつも連なり、読んでいくうちにひとつの物語へと収束していくところもすごい。あとロボットのアラクネがとてもかわいい。

 加藤さんが読んでいた作者の作品からもセレクトしようかなと思って選んだ。確かほかの円城塔作品は読んでたはず。

 

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

 

 

銀河鉄道の夜宮沢賢治

 SFかといわれたらちょっと違うような気もするけれど、星空の美しさを味わえる小説。序盤のシーンではジョバンニたちが宇宙についての授業を受けている場面もあり、賢治は想像力だけでなく宇宙についての知識を持っていたことがわかる。それに何より、銀河を描く美しい描写が魅力的。

 これについては昔書いた記事をご参照ください。

penguinkawaii.hatenablog.com

 

 

 

 国内作品ばかり読んでいることがバレるラインナップです。翻訳作品は未だに苦手意識が強くて……でも『たったひとつの冴えたやりかた』は面白く読めました。また何か面白い作品やこれはと思う作品があれば追加していきます。