WORLDISTAブックガイド

 始まりますねWORLDISTAツアー!

 WORLDISTAとは直接関係ないですが、VRや仮想世界を扱った作品を100%の主観で集めました。遠征のおともなどにどうぞ。例によって私が国内作家ばっかり読むので国内作家中心のラインナップです。

 

 

『断片のアリス』伽古屋圭市

・あらすじ(Amazonから引用)

狂った VR 内の殺人ゲーム 予測不能の脱出ミステリ。雪と氷に閉ざされた現実世界から離れ、人々は生活のほとんどを VR システム ALiS の中で過ごしていた。傷つくことのない穏やかで平和な仮想空間で。しかし突如、椎葉羽留は囚われた。痛覚も“死”も存在する恐怖の VR クラスタに。ログアウト不能の狂気の館で、連鎖する殺人。そしてたどりつく、この創られた世界の真相と、彼女の正体とは !? 衝撃の結末に驚愕する VR 脱出ミステリ。

 VR×脱出×バトロワ×ミステリ。VR世界に「閉じ込められる」系の話。聴き手が『WORLDISTA』に閉じ込められたり出られなかったりするのかどうかはわからないけど、VRを扱った話では定番(?)ではあると思う。ここに挙げている本のなかでは一番ライトで読みやすい(が、読みごたえも十分にある)。さすが新潮社文庫nex。

 現実世界は荒廃し、人口も激減している。人々はVR空間である「アリス」にログインし、そのなかで仕事や勉強をしたりして生活している。主人公・羽留はいつものように「アリス」にログインするが、突如ログアウトのできないフィールドに強制転送され、閉じ込められる。指示通り「赤エビ亭」という宿屋にたどり着くと羽留と同じような人たちがいて、今度は「赤エビ亭」に閉じ込められ、さらには殺人事件が起こり――という内容。設定はもりもりだけどどれもちゃんと活かされている。

 なぜ閉じ込められたのか?ここはどこなのか?誰か閉じ込めたのか?どうすれば出られるのか?誰が殺したのか?などなどいくつもの謎が読んでいるうちに浮かび上がる。ひとつが解決されて次へ、というかたちではなく、謎ばかりが積みあがる。そしてそれらが転がるように解けていく終盤はめちゃくちゃ面白い。そんなのありかよって思ってしまうような答えも、そこに辿りつくまでに綿密に練られた文章を読んでいるから納得してしまう。この、それまで何気なく読んできた文章に納得させられてしまった感じも読書の醍醐味のひとつだ。

  

断片のアリス (新潮文庫nex)

断片のアリス (新潮文庫nex)

 

 

 

 

『グラン・ヴァカンス ―廃園の天使―』飛浩隆
『ラギッド・ガール ―廃園の天使Ⅱ―』飛浩隆

・一作目のあらすじ(Amazonから引用)

仮想リゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。謎の存在“蜘蛛”の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける―仮想と現実の闘争を描く『廃園の天使』シリーズ第1作。

 人が訪れなくなって千年の時が経った仮想世界が突如壊され始める。こわいけものフレンズ。人が来なくなった仮想世界で、仮想世界にもともと設定されているAI(NPC)たちはどうしているのか?という話。もうこの時点でわくわくする。

 文章でありながらとても視覚的で、しかし視覚的でありながら読み手の想像力にその視覚的描写を委ねている。選び抜かれた言葉は美しく世界を規定するが、美しさの基準が人によって異なるように見える世界も異なる。夏の区界の情景はある程度共通しているとしても、蜘蛛が世界を襲うさま/蜘蛛とAIが戦うさまは想像力によってさまざまなものが見えることだろう。ということもあって、「想像することがみちしるべ」という今回の合言葉(合言葉?)にふさわしいうえに、仮想世界を扱った作品なので選んでみました。

 ただ、なかなかにひどい話で読み終わった後はTHE絶望って感じなので好き嫌いは分かれるかもしれない。なんていうか「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語」や舞台作品の「TRUMP」シリーズってめちゃくちゃ絶望するんだけど、絶望の質でいったらああいった作品たちと近いかも。絶望したい人は是非。個人的には超好き。

 『ラギッド・ガール』のほうは続編で、『グラン・ヴァカンス』では打ち捨てられた仮想世界のなかの話だったけれど、その仮想世界がどのようにして作られたか・どのようにして打ち捨てられたか・その背景に何があるのか、といった話が描かれている。『グラン・ヴァカンス』で味わった絶望が絶望でつくられていることが補強されてもうどう読んでも絶望なんだけどめちゃくちゃ美しい。どちらも人の感情を揺さぶって増大させるような作品で、私は頭の中が感情でいっぱいになりました。

 人を選びそうだけどすっごく面白いので、私が加藤さんと友達だったら間違いなく薦めている作品。でも友達じゃないからな~。 

 

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

グリフォンズ・ガーデン』早瀬耕

・あらすじ(Amazonから引用)

東京の大学院で修士課程を終えたぼくは、就職のため、恋人の由美子とともに札幌の街を訪れた。勤務先の知能工学研究所は、グリフォンの石像が見守る深い森の中にあり、グリフォンズ・ガーデンと呼ばれていた。やがてぼくは、存在を公表されていないバイオ・コンピュータIDA‐10の中に、ひとつの世界を構築するのだが…1992年のデビュー作にして、『プラネタリウムの外側』の前日譚、大幅改稿のうえ26年ぶりに文庫化。

 VRの話ではないが、現実世界と仮想世界というモチーフを扱っている作品。

 現実の世界と有機素子ブレード(バイオコンピュータ)の中につくられた仮想的な世界との境界が揺らぐさまが描かれている。今読んでいるのは現実の話?それとも有機素子ブレードの中の話?境界が曖昧になる。「世界」が揺らぐ。現実の世界と仮想的につくられた世界と、自分はどちらにいるのか。「世界」とはなにをさすのか、「世界」はどこにあるのか。そういう話。有機素子ブレードとかバイオコンピュータとか、そういうもののことはあんまりよくわかんないけど全然面白い。

 物語は「PLYMARY WORLD」と「DUAL WORLD」の二層構造で進む。「PLYMARY WORLD」が現実の世界、「DUAL WORLD」が現実世界の主人公がつくった仮想世界。私やあなたは「世界」に存在している?そもそも「世界」は存在している?そんな哲学的な問いが読んでいるうちに浮かんできて、なんだかちょっと怖くなる。もしかしたら私がいるこの世界も誰かがつくった仮想世界で、私が私と認識している私も世界とともにつくられたAIじゃないって証明なんてできなくない?なんて考えてしまったり。怖い。

 『WORLDISTA』を聴いていて、あのアルバムが描く現実世界/仮想世界の対比であるとか「世界」がどこにあるのかということを面白いと感じた人だったらきっとこれらの作品も楽しめるのではないかと思う。あと加藤さんはきっと好きだと思うので、加藤さんの近くの人がこの本を知っていたら是非薦めてください。頼んだ。

 

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

プラネタリウムの外側』早瀬耕

・あらすじ(Amazonから引用)

北海道大学工学部2年の佐伯衣理奈は、元恋人が友人の川原圭の背中を、いつも追いかけてきた。そんな圭が2カ月前、札幌駅で列車に轢かれて亡くなった。彼は同級生からの中傷に悲観して自死を選択したのか、それともホームから転落した男性を救うためだったのか。衣理奈は、有機素子コンピュータで会話プログラムを開発する南雲助教のもとを訪れ、亡くなる直前の圭との会話を再現するのだが。恋愛と世界についての連作集。

 『グリフォンズ・ガーデン』と連続する世界の話として書かれているのがこの作品。話は独立しているのでどちらから読んでも問題ない(私はこっちから読んだ)。『プラネタリウム~』は連作短編集なのでこっちのほうが読みやすいかも。

 『グリフォンズ・ガーデン』同様、現実と仮想の境が揺らぐ。ちょっと詳しく紹介すると、この作品の仮想世界には腕時計型のウェアラブル端末でアクセスするかたちになっている。姿かたちを「見る」ことはできない。しかし見えなくとも、仮想世界のなかには「ある」。そういう部分の描写もすごくいいし、それぞれの短編が誰かしらの恋愛と関わるかたちで描かれているのでSF以外の要素にも読みごたえがある。

 現実の世界で死んでしまった大切な人がなぜ死んでしまったのか知りたい。だから仮想世界に彼を蘇らせてその日彼が辿った道のりを明らかにする(表題作「プラネタリウムの外側」)。そんなことできちゃうのかよ、という感じはするけれど、とても論理的に説明されているのである程度はできるんだろうなと納得してしまう。そんな感じの話が詰まった連作短編集で、どの話も現実/仮想が揺らぐ。今読んでいるものはどの世界?

 論理的な一方で、ロマンチックでもある。感情が揺さぶられる、という意味でとてもエモーショナルでもある。最初と最後の話に仕掛けられたギミックも面白く、いろんな観点から楽しめる作品。

 

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

 VRをモチーフにした小説といえば「ソードアート・オンライン」シリーズみたいな印象あるけど未読なもので……申し訳ない……

 VRおよび仮想現実的なものが登場する小説を集めたけど、VR(仮想空間)って視覚的にインパクトがあるから漫画/アニメ/映画のほうが強いんだよな~!誰かWORLDISTAムービーガイド作って!俺はガンダムで行く!

 

レディ・プレイヤー1(字幕版)