ペンギンブックガイド ―「少し・不思議」な生き物としてのペンギン―

 こう見えて(?)一度も図書委員になったことがない。でも図書委員が作っている図書だよりを私も作ってみたかったから勝手に作る気持ちでこの記事を書いています。

 

 お題は「ペンギン」。

 

 ペンギンはしばしば小説のモチーフとして登場する。犬や猫ほどの頻度ではないが、犬や猫のようにペットとして描かれることは少ない。「なぜそこにいるのだろう」と思うような不思議な存在として描かれる。そういうワンダーなモチーフとしてペンギンが使われる作品は意外とある。

 それと、おそらく相性が良いのだろう、なぜかペンギンはSFに多く登場する。ということで、「日常を少し不思議にするいきもの」であるペンギンの登場する小説を紹介します。

 

 

 

 

 

ペンギン・ハイウェイ森見登美彦(KADOKAWA)

 

あらすじ(Amazonより引用)

 ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした―。少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。第31回日本SF大賞受賞作。

 

 

 出てくるペンギン:おそらくアデリーペンギンがモデル

 

 小学4年生のアオヤマ少年と、歯科医院に勤める謎のお姉さんの話。SFであり、ファンタジーであり、ラブストーリーでもある。初恋より強烈な初恋未満の初恋の物語。

 ノートを持ち歩き、日々研究に明け暮れるアオヤマ少年の目を通して、郊外の街に起きた不思議な事件が描かれる。小学生らしいところもあれば、大人びているところもあって、なんだかくすぐったくなる。

 ラストには胸がぐっと締め付けられる。このラストの鮮やかさには、夏であることが必要条件に思えてくる。夏で、海で、ペンギンでからこそ、こんなにもいい。今は立派な大人を目指すアオヤマ少年も、もしかして将来は京都の四畳半で大学生しているのでは……と、なんとなく想像したくなる。いつか他の小説に出てきてほしいなぁ、アオヤマ青年。

 この作品におけるペンギンはなかなか謎な存在である。お姉さんがコーラの缶を投げたらペンギンになったりする。この不思議さは、ペンギンだからこそいいのだ、と思う。感情のわからない表情はミステリアスだし、だからといってTHE鳥という見た目ではなく、どことなく哺乳類っぽさがある(たぶん二足歩行で手のようなフリッパーがあるからかな。あるいはぬいぐるみになりがちなので親しみがあるということかも)。群れをつくる生き物だからいっぱいいてもかわいくて、様々なキャラクターのモチーフになっていて親しみがありながらも身近にはいない。この絶妙な立ち位置が、ペンギンがSFに似合う理由ではないかと個人的には思っている。

 スタニスワフ・レムの『ソラリス』を読んだ感動から生まれた作品ということを作者が言っているので、そっちも併せて是非。

 映画もめちゃくちゃよかったから見てね!綴夫妻は二人して映画館で2回見たよ!Blu-rayも買ったよ!映画のほうが話はわかりやすい。音楽も色彩もすごくよくて、ラストは何度見ても泣く。

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

 

 

 

『さよならペンギン』大西科学(早川書房)

 

あらすじ(Amazonより引用)

 塾講師の南部観一郎は、今日も好意を寄せる谷一恵の誘いを断り、ペンダンと共に自分たちの同類を探しに夜の街を彷徨った。ペンギン姿の似合うペンダンは口の減らない奴だが、頼りになる相棒でもある。その日、ふとした隙にペンダンを襲った黒い闇の男こそは、長い間探していた彼らの同類に違いなかった。そう、この世界の観測者南部は、延長体ペンダンと共に1500年以上生きる存在だったのだ―。哀愁の量子ペンギンSF。

 

 

 出てくるペンギン:おそらくアデリーペンギンがモデル

 

 ペンギンの姿だったり少女の姿だったりする謎の存在「ペンダン」と、1500年あまりを生き続ける男・南部の物語。なので正確に言うとこの作品に出てくるペンギンもペンギンではない。ペンギンの姿をしたなにかである。でもわざわざペンギンの姿であることが重要なのだ。

 南部にも自分が何者なのか、なぜこんなにも生き続けているのか、わかっていない。何かを成し遂げる物語でもない。なので読んでいてぼんやりしている部分もあるけれど、その「わからなさ」の不気味な感じがページをめくらせる。自分が何者でなぜ生きているのかなんて普通わからないし、成し遂げたいものも特にない。そういう「普通」のはずの男がなぜか老いないままで長生きしてしまっているのだ。作中ではその理由は「確率」として語られる。私は、南部はサイコロを振ると絶対に1しか出さないような人生を送っているようなものだ、と解釈している。たぶんそういうことだろうと思う。だとすれば、もしかしたら今ここにいる私も実はサイコロを振ったら1しか出さないような人生を生きているのかもしれない。そう考えたら少し怖いし、わくわくする。この怖さであったりわくわくが読書の醍醐味だなぁと思った。

 なんてことのない文章が終盤でぎゅーっと回収されていくのはなんだか心地が良かった。それとペンダンがとにかくかわいいので、もし私が超絶長生き人生を送ってしまうとして、そのときは私もペンダンみたいなペンギンの姿の存在が一緒にいてくれたらいいな、と思う。

 

さよならペンギン (ハヤカワ文庫 JA オ 9-1) (ハヤカワ文庫JA)

さよならペンギン (ハヤカワ文庫 JA オ 9-1) (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

 

『ペンギン鉄道なくしもの係』名取佐和子(幻冬舎)

『ペンギン鉄道なくしもの係 リターンズ』名取佐和子(幻冬舎)

 

1作目のあらすじ(Amazonより引用)

 電車での忘れ物を保管する遺失物保管所、通称・なくしもの係。そこにいるのはイケメン駅員となぜかペンギン。不思議なコンビに驚きつつも、訪れた人はなくしものとともに、自分の中に眠る忘れかけていた大事な気持ちを発見していく…。ペンギンの愛らしい様子に癒されながら、最後には前向きに生きる後押しをくれるハートウォーミング小説。

 

 

 出てくるペンギン:ジェンツーペンギン

 

 表紙がかわいくてもう優勝。上の2作はSF色が濃いが、これは全く経路の違う作品。ここに挙げているペンギン本の中では最も読みやすいので、とりあえず手に取ってみたい人にはこれをオススメしたい。

 悩んだり迷ったりしている人たちは、ものをなくしやすいのか「なくしもの係」に辿りつく。でもちゃんと前を向いてなくしもの係の部屋を出ていく、心があったかくなる優しい小説だ。

 この本に出てくるペンギンは正体不明の何かではなくちゃんとペンギン。とある私鉄のなくしもの係の事務所で生活していて、時々電車に乗ったり(ちゃんと帰ってきたり)する。電車とペンギンの相性がいいのはSuicaで証明されているが、このペンギンはSuicaのペンギンのモデルとなったアデリーペンギンではなくジェンツーペンギンである。ちなみにこのペンギンは特に何かを語ったり訴えかけてきたりするわけではない。だが、「駅や電車で見かけるはずのないペンギンがいる」という非日常が登場人物たちの心に変化をもたらすのだと思う。

 2作目のほうが話にまとまりがあるので読みやすい気がするが、1作目から読んでいないと伝わらないこともあるので是非1作目からどうぞ。2作目のラストは胸がじーんとしました。

 

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ペンギン鉄道なくしもの係 *3

 
ペンギン鉄道 なくしもの係 リターンズ (幻冬舎文庫)

ペンギン鉄道 なくしもの係 リターンズ (幻冬舎文庫)

 

 

 

 

 ほかにもペンギン小説は沢山あるのだけれど、私の特に好きな作品を挙げました。個人的にはペンギンがファンタジックな感じで、人々の日常に「不思議」をもたらすような、そんないきものとして描かれている作品が好きです。

 

 こんな感じで定期的に図書だよりを書いていくのが今年の目標だけど忘れそうです。今までもこういう記事を書いたことがなくはない(前回の記事もそうっちゃそう)けれどNEWSの話題が絡まないものってあんまり書いたことないかもな~と思ったので。このブログは私の好きなものを書きためたブログなのでこういう記事もありだよなと。