#読書週間だからRTされた数だけお勧め本プレゼンする

 読書の秋です。読んでますか?私は元気に読んでます。
 Twitterでやったタグの本紹介、長くなるのでブログに書こうと思います。なんとなくジャンル別にしています。よければ読む本を選ぶ際の参考にどうぞ。全17冊です。

 

 

タイプライターズ出演作家さんの本

 毎回面白い作家さんを紹介してくれるタイプライターズ。出演したすべての作家さんの本を読めているわけではないけれど、読んだ中で特にいいなと思った本を紹介します。

 


『ままならないから私とあなた』朝井リョウ

 記念すべき第一回ゲスト、朝井リョウさんの作品。「レンタル世界」と表題作「ままならないから私とあなた」が収録されている。
 人間って全然わかりあえないなぁと思う2作品が収められている。「自分はこの人のことをわかっている」とどんなに思ったって、その人本人ではないんだし、すべてを知っているわけではないのだと突きつけられる。誰かのことを想うとか誰かのことを理解するとか、めちゃくちゃ傲慢で、そういうのって結局エゴでしかないんだろうなと思ってしまう。あなたのためにと思ったことが、全然あなたのためじゃなかったり。そういうことってきっと日常に溢れている。
 他者のことなんてわからない。私の思い通りになることなんてない。つまり、「ままならない」。そんな私とあなたのわかりあえなさこそが、私とあなたがそれぞれ違う人間であることを際立たせ、人間を人間たらしめているのかもしれない。
 もっと優しい朝井リョウさんから読み始めたい人は是非『星やどりの声』を!

 

ままならないから私とあなた

ままならないから私とあなた

 

<こんな人にオススメ>
  ・人と人との関係性に思うところがある人
  ・きれいごとじゃない物語を読みたい人

 


『何もかも憂鬱な夜に』中村文則

 レギュラーメンバーである中村さんの作品。文庫版の解説はピースの又吉さん。
 とにかく暗く、鬱々とした描写が続く。表紙と同様に、ずっと雨が降り続いているかのような雰囲気。ただの紙のはずなのに、ページをめくるのがひどく重たく感じられた。しかしその暗さゆえに、ラストに射すひとすじの光を、美しく受け止められる。
 登場人物の内面に近づくことは、自身の内面に近づくことでもある。どんどん内面に潜っていくような小説なので、静かな環境で読むのがいいかもしれない。
 何かが劇的に解決したわけではない。状況が一変するわけでもない。けれど、今この瞬間確かに光が射している。そう感じられるような終わり方だ。個人的な読後感としては、映画「そこのみにて光輝く」を見た後の気持ちと似ていると思った。映画も小説もエンタメ性の強いものを好みがちなので、どちらも貴重な体験だった。

 

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

 

<こんな人にオススメ>
  ・暗い話が好きな人
  ・静かな日に読みたい本を探している人

 


『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』島本理生

 最新回(10月放送)のゲスト、島本理生さんの本。まだそんなに沢山読めているわけではないけれど、この本がとても気に入ったのとこの本が刺さる人って結構いるんじゃないかなと思ったので紹介したい。
 主人公の恋愛を主軸に置きながら、主人公の友人たちが抱える悩みも掘り下げられていく。何についての悩みかと言うと、概ね「人生」について。この先どうやって生きていこうか、ということについて。多分どうやったって生きていけるけれど、それでも悩みは尽きない。私もそうだし、私以外の多くの人もそうなんじゃないかと思う。
 そんな悩みを抱える女性たちと、美味しいごはんと素敵な旅先の物語。美味しいものを食べるって、多分生きることと繋がっているんだろうなっていう気がしてくる。ちゃんと食べようとする人たちを見ていると、この人たちは悩みながらも生きることに前向きなんだなと思えるし、美味しいものが食べたいなと想像している今の私も、少なくとも生きることに後ろ向きではないなと感じられる。

 

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

 

<こんな人にオススメ>
  ・美味しいごはんが出てくる本が読みたい人
  ・作中の女性たちと同世代=アラサーの人

 

 

しんどい夜に読みたい本

 あるよね、しんどい夜。別に夜じゃなくてもいいけど。どう言葉にしていいかわからない夜。そんな夜に寄り添ってくれるような作品です。

 


『眠れない夜は体を脱いで』彩瀬まる

 彩瀬まるさんの本はどれも、悩みを抱えていたり思うように生きられない人たちを描いている。その中でも『桜の下で待っている』とこの作品が好きで、どちらにしようか迷って、こっちにしてみた。生きている誰もがもっている「からだ」についての連作短編集。
 私は外見のコンプレックスが強い。顔や肌もだけれど、身長もあまり好きではない。今はそこまででもないが、小学生のころはひとりだけ大きいのが嫌だった。けれど周りから見たら羨ましいと思われる部分でもあるし、その程度の身長で何を言うのかと思われる部分でもあるのだろう。だけど、私にとってはひどく重たい悩みだったし、身長が高かったことが引き起こしたある一件について、悩みに悩んだ気持ちは消えない。
 からだの悩みは、他者とわかり合うのが難しいのかもしれない。抱えている悩みは似ていても、からだは目に見えてわかるものだから些細な違いが浮き彫りになる。似ている悩みだとしても、同じではない。誰かと比べたらそのぶんだけ、その人のからだはその人だけのもので、その人固有の悩みであることが際立つ。
 だから、誰ともわかり合えない分、本を読んでみるのもいいんじゃないかと思う。彩瀬まるさんの小説は、今まで自分が気付かないふりをしてきた傷を照らし出す。暗いままなら見えなかったのに、そこにライトを当ててしまう。でも、そうやって傷を意識することは、自分を大切にするための一歩だともいえる。

 

眠れない夜は体を脱いで (文芸書)

眠れない夜は体を脱いで (文芸書)

 

<こんな人にオススメ>
  ・自分の外見、からだにコンプレックスがある人
  ・自分に対して優しい気持ちになりたい人

 


『ぼくのメジャースプーン』辻村深月

 『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞した辻村さんの初期の作品。『かがみの孤城』もしんどい夜にオススメなのだけれど、今の私の気分的には『ぼくのメジャースプーン』かな、と思ったのでこちらを選んだ。
 主人公は小学4年生の男の子で、「Aをしなければならない。そうしなければBになってしまう」と言葉にすると相手にAをさせる(あるいはAをしなかったことでBという結果になる)能力をもっている。ある日、彼の通っている小学校で飼っているうさぎが殺される。それを見た主人公の友達・ふみちゃんはショックで心を閉ざしてしまう。ふみちゃんに元に戻ってほしくて、主人公は力を使いうさぎ殺しの犯人と戦うことを決意する、というような内容。
 主人公は事情を知っている大学教授・秋山に協力してもらって力の使い方を勉強していく。子供にはそんなことは理解できないだろう、と思うような概念も出てくる。犯人と戦うということがどういうことなのか。罪に対する罰とは。法ではなく、自分の手で罰を下すとはどういうことなのか。秋先生は子供だからといって手は抜かない。対等に、ひとりの人間として接する。ネット上では簡単に誰かを断罪できてしまう時代だから、秋先生の言葉をよく考えたいな、と思う。
 読んでいてつらい場面もあるけれど、そのつらさをも包み込んでくれるような何かに出会えるかもしれないし、誰かを想うということについての理解が深まるかもしれない。そんな意味で、しんどい夜にオススメしたい。

 

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

 

<こんな人にオススメ>
  ・罪とか罰について、人を裁くということについて考えたことがある人
  ・『子供たちは夜と遊ぶ』『名前探しの放課後』を読んだことがある人

 


『傘をもたない蟻たちは』加藤シゲアキ

 NEWS担の皆様におかれましては別に薦められなくても読んでいるだろうけれど、でもどうしても入れておきたい本。しんどい夜に読むに相応しい、しんどい夜を過ごす人たちの物語が収められた短編集。
 どの短編も、突き詰めていえば「自分」について悩んでいる。自分と他の何かの、その関係性についてと言うべきか。登場人物たちは決して模範的ではなくて、誰も彼もエゴが見え隠れしている。でも、エゴとか自分勝手な部分って、自分をおろそかにせず大切にするために重要な部分だ。しんどい夜を過ごしていると、自分から遠ざかりすぎて見えなくなったり、あるいは近づきすぎて自分しか見えなかったりする。この作品を読んでいると、登場人物たちが自分に向き合うところを通して読み手も自分と向き合う機会を得られる。そして、ちょうどいいバランスが取れそうな気がしてくる。
 悩んだり迷ったりする登場人物たちは、それでも「生」を投げ捨てない。生きることを前提として生きている。悩んでも迷っても苦しくても悔しくても、生きている。ほとんどの場面では「生きるべきか死ぬべきか」ではなく「生きていかなければならないなかで、どうやって生きていくか」が問題となっている。彼らが生きていることは、同じようにつらさを抱えている人にとっては、もしかしたら希望となりうるのかもしれない。
 悩むことも迷うことも苦しいことも悔しいことも、決して珍しいことではなく、ありふれたことなのかもしれない。だけど「みんなそうだよ」と言われたところでつらさが和らぐわけではない。だってつらいものはつらい。だから、つらいことをちゃんとつらいと思って、悩んで苦しんで、それでも生きていく登場人物たちを見ていると、私だって自分のつらさを認めていいんだと思えてくる。頼りない夜に、ひとつの光が灯る。

 

傘をもたない蟻たちは (角川文庫)

傘をもたない蟻たちは (角川文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・自分と向き合う時間を過ごしたい人
  ・まだ加藤シゲアキ作品を読んだことがない人

 

 

伏線回収が秀逸な本

アヒルと鴨のコインロッカー伊坂幸太郎

 内容について触れようとするとネタバレになってしまいかねないのであまり深くは語れないのが難点。読めばわかる、としか言いようがないのだけれど、頑張って紹介する。
 物語はふたつの時間軸で進む。現在と2年前。一見つながっていないように見える2つの話がリンクして、真相がわかった嬉しさと物語に秘められた虚しさで、なんとも言えない読後感を味わうことになる。ミステリとしては読んでいて「なるほど~!」となる気持ちもあるのだけれど、それ以上に胸がしめつけられるというか。
 『重力ピエロ』は爽やかでどこかすっきりした気持ちで読み終われるけれど、この作品は爽やかだしすっきりするけど埋めようのない虚しさもある。冬の済んだ空気みたいな感じだろうか。空気が澄んでいるから、作中に何度も出てくる「風に吹かれて」のメロディがいつもよりきれいに響く。
 映画化もされていて、そちらもオススメ。

 

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・まだ伊坂幸太郎作品を読んだことがない人
  ・冬の冷たく澄んだ空気のような読後感を味わいたい人

 

魍魎の匣京極夏彦

 分厚すぎてまるでレンガのような本になってしまうことでおなじみの京極先生の本。なかでも私が一番好きなのがこの『魍魎の匣』。拝み屋・中禅寺(通称:京極堂)、探偵・榎木津、小説家・関口、刑事・木場らが登場するシリーズの第2作目である。1作目は『姑獲鳥の夏』。シリーズものとして最初から読みたいのであれば1作目から読むことをオススメするけど多分ここから読んでも大丈夫ではある。すごくざっくりと内容を説明すると、女の子が何者かに線路へ突き落とされる事件が起きたり連続バラバラ殺人事件が起きたり箱を祀る新興宗教の話が出てきたりする感じです。
 京極先生の作品は伏線回収が鮮やかなのでわかりにくいという印象はあまりない。これだけの文章量でありながら、ラストで事件の真相が明かされるときに「あの部分が実はこうだったのか」というのがわかりやすい。一見無関係に見えるものも、だんだんと繋がっていく。伏線の張り方も、回収の仕方も、どちらもすごく上手いのだと思う。京極先生、絶対めちゃくちゃ頭いい。分厚いので読み切ったときに「読み切った!」という感もあるし、なんだかぞわっとする終わり方もいいし、とにかくいい。ちなみに分冊文庫版では上中下の3巻です。
 ところで加藤さんか小山さんに久保を演じてほしいんですけどどうですか?

 

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・分厚い本/長い話が読みたい人
  ・ぞわっとするミステリが読みたい人

 

 

女の子たちの本

 女の子たちが活躍したり、女の子たちが悩んでいたりする本が好きです。

 

『あとは野となれ大和撫子』宮内悠介

 架空の国・アラルスタンを舞台にした物語。国名からわかるように中央アジアあたりにあることになっている。割合穏やかな日々が続いていたが、ある日国の偉い人が撃たれてしまい、無政府状態になる。役人はみんな逃げ出してしまって、こうなったらもう後宮(女の子たちの教育機関となっている)の女の子たちが臨時政府をつくりどうにかするしか……!という話。後宮に集う女の子たちの過去やアラルスタンの政治的事情など、設定としては重めの部分もあるものの、女の子たちの会話のテンポがいいし文章も決して硬すぎないので、気負わずに読むことができる。各章のあいだには日本人旅行者のブログがあり、それもまたこの作品にいい意味での軽さをもたらしている。
 主要な登場人物はほとんど女の子なのに、まるで少年漫画のような世界観。読めば読むほど、どこかで連載しているんだったっけ、という気分になってくる。女の子たちが国を動かそうとする様々な発想は多分もともといたおじさんの政治家たちでは出てこなかったものなんだろうなと思う場面も多々あって、そういうのもなんだか漫画っぽい。コミカルとシリアスのバランスが絶妙だし、女の子たちのキャラクターもいい。みんなかわいい。めちゃくちゃ重たい状況でありながら、女の子たちが明るくてかわいくて、決して諦めていないところがいい。
 芥川賞直木賞にダブルノミネートされたことで、本を読む人たちのなかでも注目度が高そうな作家さんでもある。

 

 

あとは野となれ大和撫子

あとは野となれ大和撫子

 

 <こんな人にオススメ>
  ・強くてかっこいい女の子が好きな人
  ・ラノベや漫画的に読める本が読みたい人


『終点のあの子』柚木麻子

 最近は女の子の話というと柚木麻子さんを挙げたい。
 女子校に通う女の子たちの、やわらかくて脆い心を描き出した作品。スクールカーストだとかグループだとか、そういう単語にピンときた人にオススメ。刺さります。
 特に好きなのが「ふたりでいるのに無言で読書」。クラスの派手な子と地味な子が夏休みに図書館で交流する話で、ふたりは仲良くなりました!というわけでは全然ないところが逆にいい。学校の外であれば交流ができる可能性がなくはない人たちが、同じ場所に集められていることで断絶する。それが教室なんだよなと思った。
 私はスクールカーストやグループの意識があまり強くない学校にいたけれど、それでもうっすらとしたカーストやグループというものはあって、あるとき全然違うグループの明るくておしゃれでかわいい子に履いていた靴(コンバースのハイカット、黒地に街の模様が描かれているもの)を「それ、かわいいね」と褒められて以来、ぼろぼろになるまで履き続けていた。多分彼女はそんなことを言ったことさえ覚えていないだろうけれど、私はずっと覚えている。そんなことを思い出すような、自分が高校生だった頃を振り返ってしまう作品だった。
 この作品はそこまで明るいわけではないので、もっと明るい女の子の話だったら『王妃の帰還』を是非。

 

終点のあの子 (文春文庫)

終点のあの子 (文春文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・スクールカーストという言葉がチクっと刺さる人
  ・女の子の友情についての話が読みたい人


青年のための読書クラブ桜庭一樹

 女の子の本を挙げるのに桜庭一樹さんを紹介しないなんてないので。
 桜庭さんの書く女の子はどことなくグロテスクだ。視覚的な話ではなくて、彼女たちの心の中の話。可憐さと暴虐さが両立している。異様なものが両立する様子は、グロテスクとしか言いようがない。この『青年のための読書クラブ』は、そんなグロテスクな女の子たちの、歪で愛おしい物語だ。無邪気さも残酷さも醜さも「少女」という器に入れば許されてしまうというか、無邪気で残酷で醜いものこそが「少女」というか。少女であることは、まだ大人ではないし、制限も多い。しかしその閉塞感こそが彼女たちの無敵感とも繋がっている。
 聖マリアナ学園というお嬢様女子校の異端児が集まる「読書クラブ」。彼女たちが綴る、さまざまな年代の物語が詰まっている。物語自体は全然リアル寄りではないけれど、少女たちが抱えている退屈とか閉塞感とか暴れたい気持ちとか無敵感とか、そういうものには覚えがある。高校生の頃は今考えたら全然面白くない遊びで盛り上がっていたが、そのときの気持ちはこの物語に描かれる少女たちが抱えている気持ちと似ている気がする。なんだかわからないけれど何にも負けない気がしていた。舞台の中心に躍り出るような人間ではなかったけれど、そんな私でも無敵なんじゃないかと思える瞬間があった。読書クラブの乙女たちを見ていると、なんだかそんなことを思い出す。
 さまざまな少女たちが、溢れんばかりどころか溢れまくっているパワーでエネルギッシュに時代を闊歩し、そしていつしか去っていく。ちょっとめんどくさくて痛い女の子たちの生きざまを是非。
 昨年新潮文庫nex版が出ました。表紙は志村貴子さん。最高。

 

青年のための読書クラブ (新潮文庫nex)

青年のための読書クラブ (新潮文庫nex)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・ねじまがった方向にパワフルな女の子が好きな人
  ・少女だった頃に閉塞感や無敵感を感じていた人

 

 

ジャンル分けできなかったけどオススメしたい本

 さまざまなジャンルで紹介してみたけど、ジャンル分けすると入らなくなってしまう本たち。でもオススメしたい。

 


『僕の好きな人が、よく眠れますように』中村航

 タイトルがもう好き。このロマンチックさに惹かれた人には是非手に取ってほしい一冊。
 こんなかわいいタイトルで、出てくるカップルもすごくかわいくて、あぁこの二人の恋が上手くいったらいいのになと思うけれど、そうもいかない理由がある。はるばる北海道から主人公のいる大学の研究室へやってきたゲスト研究員の女の子は、既婚者だった。
 いわゆる不倫なのだけれど、ドロドロした雰囲気は一切ない。ただただめちゃくちゃに互いに愛し合っている。付き合うまでの過程も、互いに惹かれ合っていた、の一言に尽きる。多分言葉にできることじゃないんだと思う。その言葉にできない部分を、丁寧に言葉にしている。
 言葉にしたら「バカップル」になってしまうのだけれどなんていうかとても文化的なバカップルで、相手のことをどれほど愛しているかをいろんな言葉で言い合ったりとかカップルの敵とは何かを考えたりしている。かわいい。でも彼女には夫がいる。
 人によっては煮え切らないと取れてしまうかもしれないラストだけれど、答えのない問いに対する答えのひとつとして、私はすごく好きだなと思う。中村航さんの書く、優しくてずるい男の子の優しくてずるいところが全面的にでている。単純に二人の恋が成就しないことに対する切なさとはまた違う、名付けようのない気持ちになる作品。

 

僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)

僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・恋愛小説を読みたい人
  ・人を好きになることについて考えたい人


『求愛瞳孔反射』穂村弘

 歌人・エッセイストとして有名な穂村さんの詩集。以前、紀伊國屋書店で開催された「ほんのまくら」フェア(本の書き出ししかわからない状態で売られている)にて、「あした世界が終わる日に一緒に過ごす人がいない」という書き出しで売上1位になった作品。私もこの書き出しに惹かれて買った。
 詩集というものをまともに読んだことがなかったけれど、この本は折に触れて読み返している。小説よりは圧倒的に情報量が少ないなかで、一体どんな状況を表しているのだろうと考えてみたり、この詩の背景には何があるのだろうと想像してみたりする。与えられた物語を読むというよりは、自分の想像力で物語を広げていくような感覚で読んでいる。
 らぶらぶな詩もあれば、寂しさの漂う詩もあるが、収められている詩はどれもロマンチックでどこか変態的な愛が満ちている。多分、ロマンチックなことと変態的なこととは表裏一体というかほぼ一緒なんだろう。誰かを愛するということは、ロマンチックなことでもあるしちょっと気持ち悪いことでもある。

 

求愛瞳孔反射 (河出文庫)

求愛瞳孔反射 (河出文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・誰かのことを好きな人
  ・その「好き」の気持ちがちょっと変態的だなと気付いている人


『ロボット・イン・ザ・ガーデン』デボラ・インストール

 このかわいい表紙を見て心を掴まれてしまう人も少なくないだろう。この!愛らしいロボット!タングっていいます!超かわいい!表紙を手掛けているのは酒井駒子さん。
 うじうじしていたら妻にも愛想を尽かされてしまったダメ男・ベンの家の庭に、突如小さな古いロボットが現れる。「タング」と名乗るそのロボットは、古さゆえに壊れている部分があった。彼を修理するために、タングを作った人を探しにあちこち旅をする、という物語。
 タングが何かの役に立っているかといったら全然で、むしろわがままで言うことをきかずにベンを困らせることもある。しかし、そんな子供のようなタングと一緒だからこそ、ベンはだんだんと成長してダメダメな人間から脱却していくことができるのだ。わがままを言うこともあるけれど、タングのほうもだんだんと成長していって、読み進めるたびに愛しい存在になっていく。
 翻訳モノではあるが比較的読みやすいので海外作品に手を出してみたい人にもいいかも。続編の『ロボット・イン・ザ・ハウス』も是非。

 

ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)

ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・かわいいロボットが好きな人
  ・海外作品を読んでみたい人

 

 

加藤さんにオススメの本

 私は加藤さんの友達じゃないんでオススメできる立場ではないんですけど、それでもオススメできるならしたいな~という作品たちです。本を読んでいるとたまに「加藤さんも好きそう」「加藤さんがこういうの読んだらどう思うかな」と思ってしまう作品に出会ってしまってどうしようもない気持ちになるので、ここで発散します。

 

『ドレス』藤野可織

 幻想小説と呼ぶのか、不気味さと狂気に満ちた短編集。気持ちSF風味かもしれない。狂気って言葉を使いたくなるけれど、それは作品の外側から見ているからで、あの中の世界にいたらそうはならないのかなぁと思ったりもする。わかったと思えるほどわかるものではなかったけれど、全くわからないわけでもない、不思議な読後感だった。SF的なモチーフが多めだが、物語の根底は純文学といった感じ。
 最初の短編「テキサス、オクラホマ」はドローン専用の保養所で働く女性の話。まずドローン専用の保養所というアイディアからしてちょっと怖い。機械に意思が芽生えていることが怖いというよりは、機械に芽生えた意思についてどういう仕組みなのかがわからないところが怖い。「マイ・ハート・イズ・ユアーズ」はチョウチンアンコウがモチーフで、女性が出産するときは男性が女性に同化しなくてはならないという生殖の仕組みになっている。似たテーマの話は他でも読んだことがあるけれど、中でも不気味だなと思った。表題の「ドレス」はドレスという名前のブランドのアクセサリーに魅了される女性たちの話。全体的に女性が物語のメインとなっている。
 加藤さんがこれ読んだらどう思うんだろう、という感想を抱く部分が沢山あったので読んでみてくれたら嬉しいなぁ。どっかで加藤さんがこの本と出会ってくれますように。

 

ドレス

ドレス

 

 <こんな人にオススメ>
  ・不思議な世界観に浸りたい人
  ・純文学を読んでみたい人

 

『800年後に会いにいく』河合莞爾

 どう見てもタイトルがネタバレなのにセンスありすぎて優勝。
 恋愛・ミステリ・SFがごちゃ混ぜになったような小説。ちっとも先が読めないというか、ネタバレみたいなタイトルをしているのにどうなるのか全然わからない。こうなんじゃないかな、と思っても鮮やかに裏切られる。いやまさかそんな発想が出てくるとは!みたいな驚きがあって、でもその驚きが物語から浮いていない。物語性も、驚きも、どちらも楽しめる。
 就活がうまくいかず、なんだかあやしいIT企業(社員は3名)で働くことになった主人公。クリスマスの夜に800年後からのメッセージが届いて……という話。全体的にとても壮大な話になっていくのだが、それでも主人公が文系だからかSF的な要素は噛み砕いて説明してくれるのでわかりやすい。話の筋がSFに偏っているわけではなく、恋愛とミステリとSFがそれぞれ三本柱でどーんとあって、どれもバランスがよく配置され、結果的にとてもロマンチックなものに仕上がっている。壮大さとか純真さとか、そういうものをひっくるめてのロマンチック。
 個人的な読後感は『チュベローズで待ってる』を読んだときの気持ちに近い。『チュベローズ~』も予想だにしなかった展開が繰り広げられて終盤は驚きまくるし、あまりに話が広がりすぎなんじゃないかと心配にもなるけれど、広げた風呂敷はちゃんと畳んで終わっている。そういう物語が好きだったら是非。

 

800年後に会いにいく (幻冬舎文庫)

800年後に会いにいく (幻冬舎文庫)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・SFを普段読まない人
  ・タイトルを見て気になっちゃった人

 


『未必のマクベス』早瀬耕

 香港あたりを舞台としたビジネス・クライム小説でもあり、壮大な恋愛小説でもある。デビュー作から22年経って発売された第2作目という珍しい作品。
 タイトルにある「未必」とは、必ずしもそうなるわけではないけどなるかもしれない、的な意味で、「マクベス」とはシェイクスピアの「マクベス」のこと。主人公はマクベス王となるのかどうか、この物語はシェイクスピアの書いた「マクベス」の筋書きを辿るのかどうか、という部分が物語の軸となる。マクベスについて知らなくても大丈夫だけどWikipediaくらいは読んでおくとわかりやすいかもしれない。
 クライムノベルの趣もあり、銃も出てくるしオシャレなお酒(主に「キューバ・リブレ」というカクテル)も出てくるし、ハードボイルドな雰囲気が全体に漂っている。それでいて初恋の人を想い続ける恋愛小説でもあって、そのバランスがいい。さまざまな謎が明かされていく終盤は叫び出したい気持ちを抑えながら読んだ。
 同じ作者の『プラネタリウムの外側』も加藤さんに読んでほしい。こちらはSF恋愛小説といった感じで、淡々としていながらもウェットな部分がある小説。物語としてのギミックも面白い。

 

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

 

 <こんな人にオススメ>
  ・初恋が忘れられない人
  ・ハードボイルドな世界観に触れたい人

 


 前にも似たようなのやったなって探したら一昨年の記事が出てきた。去年やってないってことはきっと忘れてたんでしょうね。来年も覚えてたらやりたいです。
 17冊紹介したら10000字超えました。誰かがここに出てきた本たちを読んでくれますように!

penguinkawaii.hatenablog.com