立ち上がれLiving dead ―「Zombies are standing out」感想―

 「Zombies are standing out」
 9月25日、急に発表された配信限定シングル。9月28日より配信されています。今回はこの曲の感想記事です。100%の主観です。聴きすぎてゾンビ化しているので支離滅裂かもしれません。でもゾンビ化しているから仕方ないです。なにせゾンビ化していますので。

 

 わけがわからないほどかっこいい曲です。騙されたと思ってまずは試聴してください。話はそれからだ。iTunes Storeはじめ各種DLサイトからもできると思うしYoutubeにショートバージョンのMVもあるので。

 


ポルノグラフィティ 『Zombies are standing out(short ver.)』

 

 聴いた?聴いたていで進めます。

 あなたの知ってる「ポルノグラフィティ」って「アポロ」「サウダージ」「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」、最近だと「オー!リバル」「THE DAY」、CMで聴いたことがあるだろう「ブレス」、このあたりではないだろうか。それを踏まえてこの「Zombies are standing out」を聴いてほしい。全然違うから。全然違うのにポルノだから。
 聴いてみると、きっと「こんなポルノもあるんだ!」って思うと思う。私も思う。「アポロ」からポルノを聴き続けてなお、「こんなポルノもあるんだ!」って思う。そのくらい衝撃的な新曲です。

 

 

・「哀愁」

 音の話をしたいのに詳しくないからあんまり語れないんだけど、重たくて恰好いいということはわかる。いろんな記事を見ると「骨太なロックチューン」って書いてあるからそうなんだと思うけど、そんな短い言葉で表現できてる気がしない。今までも多分「骨太なロックチューン」と呼べる曲はポルノにもあったはずで、それらとは全然別物というか、今回は「骨太なロックチューン(強)」みたいな感じ。
 そんな(強)みたいな曲、一度聴いたらお腹いっぱいになってしまいそうだけど全然ならない。もっともっとおかわりしたくなる。その要因のひとつとして、ポルノの曲がもつ「哀愁」があるんじゃないかと思う。今までに出してきた曲のなかにも漂っている「哀愁」みたいなものがこの曲にもあって、それが心を掴んで離さないんじゃないかと思う。こんな「骨太なロックチューン(強)」なのに、「サウダージ」とか「アゲハ蝶」みたいな楽曲のもつ「哀愁」と共通したものがある。

 歌詞の面からいうと、タイトルの通り「ゾンビ」をモチーフとして扱っている。ていうか曲がこんなに強くて歌詞のモチーフが「ゾンビ」だったらもう「ゾンビ怖い」みたいな内容の歌詞だって全然成り立つのにそうじゃない。1番までは「ゾンビ怖い」だけど、2番に入ると「ゾンビ悲しい」みたいな要素が出てきて、あぁこの哀愁がポルノグラフィティ……ってしみじみする。
 「ここじゃ誰も眠ってはならぬ」は、おそらくオペラ「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」を引用しているのだろう。とはいえオペラには明るくないため歌詞やあらすじを検索してみると、よりゾンビの哀愁が色を濃くする。
 そして何がやばいって「光がその躰を焼き 灰になって いつか神の祝福を受けられるように」という歌詞。この部分があるからこのゾンビは死ぬことを望んでいるのかなぁ……多分キリスト教的な文脈の「祝福」の意味もあるだろうから救いもあるとは思うけどでもやっぱりかなしいな……と思っていたらそのあとに「I still pray to revive」と続いている。revive=生き返る、つまり、このゾンビはまだ生き返ることを祈っている。死ぬことじゃなくて「生き返る」ことを望んでいる。そんなの……そんなのしんどいじゃん……ゾンビが望んでいるのは死ぬことじゃなくて……生き返ることじゃん……そんなの……しんど……「熱い血が流れていたときのことを 思い出そうとしても頭が割れそうに痛む」くせに……!個人的にはここに一番「哀愁」を感じる。このしんどさの正体は「哀愁」ではないだろうか。
 そんな「哀愁」をもつ曲だけれど、この曲が言っていることを一言に集約するなら「立ち上がれ Living dead」なのかなと思う。悲しい曲とか切ない曲ではなくて、前向きかって言われたらちょっと違うのかもしれないけれど、でも絶望の類ではない。生き返ることを祈るゾンビに「立ち上がれ Living dead」と歌うんだから、鼓舞するような意味が込められているんじゃないかと思う。無感覚と無関心が混じる街のなかを無目的に歩くゾンビを、醜態を晒し続けるゾンビを、何を探し彷徨っているのかもわからないゾンビを、それでも支えるような、そんな歌なんじゃないかと思う。
 そう思ってしまうのは、頭も心も殺して毎日何も考えずに感じずにただ死んだように生きていたかつての自分がゾンビに重なってしまうからかもしれない。そこからいろいろあって生き返ることができたので、このゾンビにも未来を信じてほしくなってしまう。祈りは届くよと思ってしまう。人生のうちでゾンビにこんなに感情移入するなんて多分この先もうないだろうな。

 

 

・「ポルノグラフィティ」の「シングル」

 私はとにかく、この曲が「ポルノグラフィティ」の「シングル」として出てきたことが正直やばいと思っている。だってやばいでしょこんなの。
 「ポルノグラフィティ」として、これを、配信限定とはいえ「シングル」という位置でリリースするの、やばくない?ポルノってどちらかといわずとも大衆向けという意味でポップというか、人々に受け入れられやすかったりわかりやすかったりする楽曲が多い。
 まずタイトル。ポルノの楽曲のタイトルって基本的には短いカタカナのことが多い。上に挙げた代表曲と呼べるような曲もほとんどカタカナで、かつ1~2単語でできている。
 これまでのシングル、両A面含めて全52タイトルがどういう構成でできているかを調べてみると、最も多いのはカタカナのみの20(「・」などの記号が使われているものも含む)。アルファベットのみのタイトルは9あり、「Mugen」「ROLL」「DON'T CALL ME CRAZY」「Winding Road」「Love too, Death too」「EXIT」「THE DAY」「LiAR」「Montage」。基本1単語でできているものがほとんどで、長いタイトルは「DON'T CALL ME CRAZY」「Love too, Death too」の2つのみ。で、今回は「Zombies are standing out」。「Zombies are standing out」。1文じゃん。こんなタイトル今までなかったじゃん。こんなロックロックしたロックバンドみたいな……と思って聴いたらロックロックしたロックバンドの曲で……ちょっと待ってこんなのしんどい……ポルノグラフィティがロックバンドであることを20年目にして押し出してくる?やばい。やばいんだってば。
 でも、「Zombies are standing out」は確実にポルノの曲だ。岡野さんの「名前が書いてある声」で歌えばポルノになる感もあるけれど、捻くれつつも伝わりやすい歌詞もまたポルノだし、こんなの初めてだけど隅から隅までポルノ。これが「シングル」って呼ばれるのやばいし、きっといつか盤としてリリースされるであろうシングルにもこういう曲が、いやこの曲をも上回る曲が来るんだろうなって思うとわくわくがとまらない。

 

 今年のポルノのリリース作品はこれで3作目になる。順に貼るんでとりあえず見て。
 まずは3月の、薄暗く不穏なイントロから始まる「カメレオン・レンズ」。不倫を描いたドラマ「ホリデイラブ」主題歌で、歌詞の世界観もMVも非常に大人でシックなものに仕上がっている。

 


ポルノグラフィティ 『カメレオン・レンズ』(Short Ver.)


 続いて7月には爽やかで明るく背中を押すような曲「ブレス」、ポケモン映画主題歌。沢山の子供たちが遊んでいたりカメラを持って撮影したりする風景のMVでは、お二人のパパな顔を見ることができる。子供と目線の高さを合わせたり、優しく微笑んだりする様子はまさしくパパ。合法的にお二人のパパしている表情を見られる最高のMVだ。

 


ポルノグラフィティ 『ブレス』(Short Ver.)


 そして9月、この「Zombies are standing out」。ゴリゴリに恰好いい。MVの色合いも最高。ゾンビメイクのダンサーがぐねぐねと踊っていてなんだか怖い。船のなかで撮られたということで、絶妙な閉塞感があるのもいい。
 という3曲で、ポルノグラフィティって四季とともに移ろうものなの?ってくらい振り幅が大きすぎる。冬にまだ何か来たりしない?来年2月くらいをめがけてシングル出したりするのでは?今度は壮大で純でラブなバラードだったらどうする?確実に四季とともに移ろってるじゃん……
 今気付いちゃったんだけど前作「ブレス」と作詞作曲編曲の組み合わせが全部一緒なんだけどどういうことなの?同じ組み合わせで全然違う曲が生み出されてるの、すごくない?岡野さんの作る曲の幅は広すぎだしどんな曲でも歌いこなすし、新藤さんは曲の呼ぶ詞を書くといいながらがっつり「新藤晴一」のハンコ押してるし、なんなの……?今更ながら私はすごい人たちを好きでいるんだな……


 しかも「Zombies are standing out」はソニーウォークマンとのタイアップでもある。これもまた企画がでかい。CMは勿論のことインタビューやCMメイキングもあったり、パンフレットに写真が使われたり、つまり全国の家電量販店などでもポルノがどどんと押し出されることになる。やばやばのやば。こんな恰好いい曲とこんな恰好いいビジュアルの二人がお近くの電器屋さんで観られるなんて!この調子でコラボモデルのヘッドホンとかも売ってください!


 この曲が配信限定だったことで、iTunes storeでランキング1位だったのを見ることができた。すごいねあれ、ランキングを検索して「¨」を押したらもう買えちゃう、そんな場所にいるの、ポルノグラフィティが。最高だね。普段はCDで買っている人もいるから分散するし、私も先行配信のときしかDLはしないから、多分そんな感じではランキング上位にはなかなか入ってこない。でも今回は配信一択だからみんな配信を買い、その結果ランクインする→気になった人が試聴する→脳が溶けて買う、の流れができる。すごい。
 配信ばっかりになってCDは廃れていくのかなぁと思うとコレクション欲のある身としては寂しく感じてしまうけれど、こんなふうに沢山の人の目にとまるんだったら悪くないのかもしれない。

 ポルノがすごいことなんて重々知ってて、知ったうえで好きでいたつもりだったんだけど、あの人たちは私が思っている以上にすごかった。知ってるつもりだったんだけど、「つもり」だっただけみたい。こうやってまだまだそのすごさで殴りかかってきてほしい。全力で受け止めたい。あぁ〜〜〜20年目のポルノグラフィティにわくんくしかない!楽しい!

 

 ポルノグラフィティの最高地点(10/3現在)「Zombies are standing out」、是非。

 

Zombies are standing out

Zombies are standing out

  • provided courtesy of iTunes

 

 

・一人称は誰を指す(2018/10/08追記)

 日本語では一人称が出てこないのであまり考えていなかったけれど、ふと気づいたことがあるので書き留めておく。
 「蠢いている My head」「I still pray to revive」「Zombies remember me」、この曲で一人称が出てくるのはこの3箇所。一体これらの一人称は誰のものなのだろうか。もちろん歌詞なので聞こえたときに良い感じになるように並べたりということはあるだろうから必ずしも意味があってその単語が選ばれているというわけでもないとは思う。だから最初はゾンビの一人称なのだろうと受け止めていたのだけれど、ゾンビについては「zombies」と表記しているのでもしかしたらまた別の何かなのでは?という疑問もあった。「蠢いている My head」「I still pray to revive」は「I/My」がゾンビを指していると考えても当てはまるのだけれど、「Zombies remember me」は当てはまらない気がしていた。この「me」とは誰のことなのか。
 私は「脳裏に残っている朧げな記憶」や「Glory days」「赤い血が流れていた時のこと」といった歌詞で表されている、「ゾンビがまともに生きていた頃」がこの一人称の正体なのではないかと思っている。ゾンビの中にある、ゾンビではない部分というか。「過去」に人格があるのかという疑問もあるが、「愛」を擬人化する人が書く歌詞なのでそういうこともあるのかなぁと思う。
 過去もゾンビの一部ではあるので「蠢いている My head」という歌詞も当てはまる。自分の頭が蠢いていることを思考できる、思考できている。ゾンビは感情や目的を失いただ歩くだけの存在として描写されているので、ゾンビより上の段階にいる存在が思考していると考えることができる。この曲の歌詞は第三者的な視点で描かれているのかと思っていたが、もしかしたらゾンビの中にある過去の記憶の一人称で歌われているのかもしれない。
 「Zombies remember me」=ゾンビは私を覚えているという。そのあとに「夢見た日を」と続くので「me」と「夢見た日」はイコールで結べそうに見える。思い出せない過去の日々(まともに生きていた日々)は、ゾンビにとっては「夢見た日」なのかもしれない。そんなふうに考えると、この曲はまた違った顔を見せる。つくづく思うけど新藤さんの歌詞って本当にすごいな……