ミツルのスピンオフも最高すぎてしまった #ゼロ一獲千金ゲーム

 9月23日配信のスピンオフ後藤ミツル編(後編)をもって、3ヶ月ほど楽しんだ「ゼロ一獲千金ゲーム」が終わってしまった。めちゃくちゃ寂しいけど、とりあえずミツル編の感想を書くことで毎週書いてきたドラマ感想記事を一旦終わりにしたいと思います。

 

 

後藤ミツル編・前編

大親

 もし私がNEWSについて何も知らないでこのドラマを見ていたら……というのはifの話でしかないのでできないのだけれど、でも私はNEWSをよく知っていて、ゼロを演じる加藤さんとミツルを演じる小山さんが17年来のつきあいでずっとシンメで親友で、というのを知ってしまっている。いやいやしんどい。前の記事にも書いたけど、ゼロとミツルはコヤシゲだっていう、その事実が何よりしんどい。はぁしんどい。
 ペンションを経営するミツルと、そこに毎年星の研究をしに訪れるゼロ。ここの二人の親しそうな様子を見ていると「親友」という言葉に嘘偽りはないんだなと感じる。ミツルの恋人である恵も含めて、楽しそうに笑っている三人。
 このスピンオフを見る前に本編の「俺の前から消えろ」と叫ぶミツルや思い詰めた表情のゼロくんを見ている状態で、この仲の良さそうな3人を見るの、あまりにもしんどい。
 なんとなくだけれど、「毎年限られた期間を密に過ごす」というスタイルはゼロが誰かと仲良くなるのにベストな条件だったのではないかと思う。それに、ゼロとミツルの目指す分野が全く違ったことも大きいのではないか。たとえば常に顔を合わせるような環境で、目指すものが同じで、それこそ学校のような環境にあったら、カズヤのように自分とゼロを比べてしまっていたかも。ゼロがカズヤにアンカーを譲ったことを「優しさ」と思っていたのだとしたら、常に一緒に過ごす環境ではその「優しさ」に出会う可能性も高く、ゼロとミツルのように親しくなることはなかったかもしれない。宇宙物理学と写真では比べようもないから、どちらがすごいかを競うこともない。だから、対等な関係性を築くことができた。
 ずっと一緒にいるのではなく、一年のうち限られた期間を親しく過ごしていたからこそ、ゼロとミツルは互いを親友と呼べる関係性になったのだろう。

 

・地獄

 ミツル編の何が地獄かって、ミツルにもゼロにも悪意や悪気がなく、ていうか誰も悪くないのにひたすら事態が悪い方向へ転がり続けていくところだ。この大親友という関係性の二人を地獄に突き落とす恐ろしい脚本。最高。
 ゼロの撮った恵の写真は、忘れ物をしたミツルに対する愛しさが溢れた笑顔で、つまりあの笑顔を引き出したのはミツル。でもミツルはそれを知らない。
 コンクールで賞を取ったときの「おめでとう」も、悩むミツルに対しての「もっと自信もてよ」も、「愛しき君へは本当に俺が撮ったものなのか」という問いかけに対しての「当たり前だろ」も、自暴自棄になるミツルに対しての「まだ何も失ってない」とか、そう言った慰めの言葉たち。ゼロがミツルを思って放った言葉が、ミツルを傷つけ、そしてミツルを傷つけたという事実がゼロへと返っていく。
 ミツルが浮かれていたのは確かだと思う。夢が叶うと思って舞い上がっていた。もしかしたら、「愛しき君へ」以外の写真も評価されていたら、ペンションを経営しながらカメラマンへの道を目指せたかもしれない。このままではダメになってしまうかもという焦りが、ミツルを追いつめたのかもしれない。
 何より一番地獄だなと思ったのは、ミツルがコンクールに応募した写真を自分が撮ったものかどうかわからなかったこと。そのとき沢山撮っていたからとか、自分のカメラに自分以外の人が撮った写真が入っているなんて思わないとか、恵がミツルに向けるような笑顔だったとか、いろんな要素はあるにしても、プロのカメラマンを目指しているのに自分の撮った写真かどうかもわからないなんて、しかも自分が撮った写真ではないものだけが評価され、そのほかは全然ダメだなんて、そんなの地獄だ。芸術や創作への憧れを持っている身だから、その地獄がなんとなくわかる。自暴自棄になっても仕方がない、と思ってしまう。「ゼロの嘘のせいで何もかも失った」と、そう思わないとあのときのミツルはやってられなかったのかもしれない。本心からそう思っていたのかどうかはわからない。でも、未来が一気に崩れ去り、もしかしたら恋人さえ奪われてしまっていたのかもしれない、それも親友に、なんて思ったら自暴自棄にもなる。ミツルのことを自業自得と言ってしまうのは、あまりにもつらい。才能がないことを罪というのは、そんなの、かなしすぎる。
 「嘘でも夢が叶えばいいと思った?」「俺の夢をなんだと思ってるんだ」という台詞があんまりにもつらい。このころのゼロは、相手の思い描く理想の形が実現するのなら、その手段が自分の手のなかにあるのなら、それを選べてしまう人だったのかもしれない。カズヤにアンカーを譲ったのが、本当に譲っただけだったんだとしたら、カズヤの理想の形を最短距離で実現させたわけなのでそういうふうな考え方を持っていた可能性もある。「夢」を実現させるには、自分の力でそこにたどり着かないと意味がないということを、このときのゼロはわかっていなかったのかもしれない。自分ができることがあるならしたいと思っていたのかも。でもそれって相手を思う気持ちの現れであって、だとしたらもうそんなのめちゃくちゃつらい。誰も悪くない。相手が幸せになってほしいって気持ちだけしかもっていないのに。つらい。もしかしたら、ミツルの言葉を聞いてゼロは過去にしてきたことを思い出していたのかもしれない。しんどい。

 

・相手の心に残り続けること/相手を心に残し続けること

 真っ暗な山のなかで怪我をしたミツルと恵を見つけたゼロが、恵の怪我の状況を把握して逡巡したうえでミツルに駆け寄ろうとしたことで、ゼロにとってミツルと恵のうちどちらが大切かが表現されているように見えた。しかし、ミツルがそれに気づく余裕はない。でも、「早く恵を連れて行け」という台詞からはミツルの優しい部分がにじみ出ていたのかなとも思えた。自分よりも恵が助かることを優先してほしかったのかな。
 ミツルは自分が姿を消すことがゼロに対してできる唯一の復讐だと思っていた。しかし、それは自分の心に傷を負うことでもあった。相手の心に残り続けるということは、自分の心にも残し続けるということでもあり、どちらも同じような苦しみを背負い続ける。ミツルがかけたのは、自分も相手も苦しみ続ける呪いだ。「俺の前から消えろ」と言っておいて、消えたのはむしろミツルのほうで、あんなひどい怪我をして、もはや執念ともいうべき感情で地面を這ってでもその場を離れようとするなんて、あんまりにも地獄すぎる。
 今のゼロと昔のゼロが全然違って見えるのは、ミツルとの一件で変わってしまったからなんだろう。昔のゼロは至って普通というか、表情がよく動いて、にこにこしていて、正直なところこの事実だけでもうだいぶくらっている。じゃあ今までドラマで見てきた宇海零って誰だったの?と。その答えは「一度死んだ宇海零」で、働いている塾で子供たちに「ユーレイ」なんてあだ名をつけられてしまうような男で。
 きっと、ミツルの4年間も決して明るく楽しいものではなかったのだろう。ミツルはミツルで苦しんでいた。しかし、時が経つごとに冷静な気持ちも取り戻してきたのか、ゼロのせいだと思う気持ちは薄れていったように見える。あるいは、自分よりも姉のほうがゼロを恨んでいたから冷静になれたのだろうか。
 本編の最終回でゼロが呪いを解いて、二人の仲は今までに近いものに戻った。前と同じものにはもう戻れなかったとしても、わだかまりのない関係になれたように見える。救うことで救われたかったゼロと、救われることで救いたかったミツルというか。二人を縛り続けた鎖が二人を繋ぐ絆に変わったというか。二人が地獄から救われてくれて、本当に良かった。

 

 

スピンオフ後藤ミツル編・後編

 後編の配信前に本編は完結したし、想像の余地は残していても続きは配信で!というタイプの終わり方ではないので、一体どんな話になるのかと思っていたけれど、あまりに良すぎる恋愛映画だった。恋愛を主軸としたストーリーとしてもすごくいいし、人生を主軸としたストーリーとして見てもすごくいい。

 

・和解から一ヶ月後のゼロとミツル

 ドリームキングダムでの死闘から一ヶ月後の時間軸の物語。ゼロくんがダサベストをやめてしまったことによって爆イケ具合が増し増しで「うだつのあがらない塾講師」という設定がどこかにいってしまったのだけれど、もう塾講師をやめて自分の人生をしっかりと生きることを選んだからなのだろうか。それともドリキンに連れて行かれた日が手持ちのなかでも一番ダサい服の日だったのか……。
 本編最後の一年後の時間軸ではミツルの姿はなかったので、ゼロがミツルと親しくしているようでまず安心した。あの握手から先、また親しい関係を築くことができたんだね……ゼロくんがタメ口で普通に喋る相手なんてミツルしかいないから……ミツル二はこの先もずっとゼロくんの親友でいてほしいよ……これは遠くからゼロくんのことを応援している身としての感想です。
 二人の仲は回復したとして、でも二人にはまだ解決していない問題がある。恵のことだ。恵は事故の影響からか、過去の記憶を失っていた。と思うと、ゼロくんは4年間のあいだ行方不明のミツルと記憶喪失の恵を背負って生きていたのかと思うと……つら……
 恵は事故で頭を打ったから記憶を失っているのか、それとも無意識下で過去のことを思い出したくないから思い出せないのか、その説明は特になかったけれど、もしかしたら後者の可能性も強いなぁと思った。婚約者に本当のことを言い出せなかったせいで傷つけてしまったことってきっとつらいだろうし、傷つけてしまったという事実が恵を傷つけてもいただろうから……つらい……地獄……

 

・素直さと愚かさと、隠れた才能

 恵が写真館で働いていることを知って、自分もそこで働きたいと言ってしまうミツル。これまでのミツルを見ていると、とっさに口から出てしまった言葉、という感じがした。ここで働こうと考えていたようには見えなかったし、恵と一緒にいられるならという気持ちがあったのかもしれない。ミツルがどんな4年間を過ごしてきたのかわからないけれど、カメラとは関わらないような生活をしていたんじゃないかな、となんとなく思う。あんな出来事があって、もうカメラを持つのも怖くなってしまっていても不思議ではないし。と勝手に思っていたので、あの場でミツルが「カメラマン募集してないですか」「撮れます」と言ったことが嬉しかった。
 なんていうか、ミツルってすごく素直で、その素直さって愚かさとイコールでもあって、だからスピンオフ前編を見ていてもミツルに対して愚かだなぁと思う場面がいくつもある。「カメラマン募集してないですか」という台詞は、ミツルの愚かさがいいふうに出た結果の言葉だなぁと思った。
 そうやってカメラマンとして写真館で働くことになって、ミツルは決して写真の才能がなかったわけではなかったんだな、と思った。かつてミツルが撮っていたのは風景を中心とした写真が多いように見えたし、前編でインタビューされているシーンでは「自然のなかで育った」「大自然」というのがキーワードになっていたし、ミツルが出版社(新聞社?)の人に見せていた写真も風景の写真ばかりだった。でも、本当はミツルは人物写真を撮るのに向いていたのだろう。相手の笑顔を引き出すことができる。そういった写真は、写真家として写真集を作るには向かないのかもしれない。でも、誰かにとってとても大切な一枚になることは確かだ。ミツルはそういった写真を撮る才能なら、あの写真館の主であろう遠坂よりもずっとあるという描写もされていた。ミツルが写真を始めようと思った原点が「恵が笑顔になってくれるから」だということも併せて考えると、笑顔の写真を撮る才能はあったんだなと思って、個人的に救われた気持ちになった。
 ミツルが自分には才能がないと写真を諦めてしまうのではなく、かといって昔のようにプロの写真家を目指すのでもなく、でも写真に携わって誰かの笑顔を引き出す仕事をして自分も笑っていることが、すごく嬉しい。

 

・からっぽ

 婚約者としてではなく同じ写真館で働く同僚として親しくなる恵とミツル(偽名:サトシ)。恵は過去のことを思い出せないことや、一緒に事故にあって死んだ(と聞かされている)婚約者について何も感じないことで、自分のことをからっぽだと言う。4年前のミツルが「何もかも失った」と言っていたことと重なって、彼女がからっぽではないことを、自分が知っている過去の彼女のことを伝えようと決めるミツル。その決心をゼロに伝える場面がめちゃくちゃつらい。でもきっとあの4年間を通して「何もかも失った」わけではないとミツルが気づけたからこそ、恵に彼女がからっぽではないことを伝えようと思えたんだろうなと思うと、これがミツルの優しさなんだなって……つらい……
 ミツルが恵のために用意した写真は、どれもいい笑顔で笑っていた。ゼロが撮った「愛しき君へ」のように芸術的ではなかったけれど、日常を過ごす愛しさが溢れていた。写真を前に恵の過去を話す声も、感情を抑えようとしながらもちゃんと伝えようとする気持ちが伝わってきて、すごく切ない。ミツルは、ゼロや恵が「愛しき君へ」がミツルの撮ったものではない=伝えづらいことを伝えなかったことで傷ついた。だから、同じことはしないようにと思ったのかもしれない。伝えにくいこともちゃんと、相手に伝わるように話すこと。それがミツルの選んだ、相手を大切に思うやり方なんだなぁと思うと、ミツルのこと好きだなぁとさらに思う。
 あの事件のときには互いにうまく伝わっていなかった、互いを大切に思う気持ち。ミツルが恵のことを大切に思う気持ちは、今度はちゃんと恵に伝わった。うまく伝わらない場面を見ていたせいで、二人の気持ちが通じ合った場面が愛おしい。あまりにも良すぎて、これがHuluでしか配信していないスピンオフだということを忘れて、美しい映画を見たような気分になる。
 そして最後には、二人でゼロの写真を撮る。スピンオフ前編の最初のほうのような、仲の良さそうな雰囲気が戻ってきていて、ゼロの心に引っかかっていたものは全部取り払われたんだろうなと思った。
 ていうかこのときの「笑って!にーって」っていう小山さんのダブルピースの笑顔、さくらガールじゃん……ってなって唐突にコヤシゲ出てきてしんどい……

 

・100%なんてない

 ミツルと恵は再び親しくなっていったけれど、ミツルは「愛しき君へ」の話はしていない。恵の記憶も戻っていない。なにもかもが解決したように見える、ハッピーの兆しが見えるラストだったけれど、きっとこの二人にはまだ問題が降りかかるだろう。だからといって、このハッピーの兆しがまやかしというわけでもない。
 人生って、そういうものだと思う。何もかもすべて100%幸せなんてことはないし、逆に何もかもすべて100%不幸せなんてこともない。いろんな幸せといろんな不幸せが積み重なっていく。何もかもの問題が解決して手放しでハッピーな状態なんて、もしかしたら一瞬だったらあるのかもしれないけれど、決して長くは続かない。
 だからきっと、この二人にもこの先、いろんなことが起こるだろう。「愛しき君へ」の話をして、ミツルも恵も傷つくかもしれない。恵が忘れていることとミツルが覚えていることのギャップに、二人とも苦しむかもしれない。苛立ったり、悲しくなったりするかもしれない。大喧嘩をするかもしれないし、傷つけあうこともあるかもしれない。もしかしたらこの先うまくいかなくなって、二人は離れることになってしまうかもしれない。そうだったとしても、少なくとも今この二人は幸せに向かって歩き出したところで、そういう終わり方なのが良いなと思った。人生ってそういうものだよね。「ゼロ一獲千金ゲーム」という物語を締めくくるのにふさわしい物語だったと思う。


 

 ところで小山さんの演技良すぎない!?今頃小山さんに純愛映画のオファー来まくってるんじゃない!?何撮る?いつ公開?個人的には中村航さんの小説を推したいです!
 あと想像の余地がめちゃくちゃあるのもすごく面白いなって……だってミツルがなんであの若さでペンション経営しているのかとか全然わからないし……在全グループにかくまわれていたときに「他に頼る宛てがない」というようなことも言っていたからご両親はもう亡くなっていて、ご両親が遺したものなのかなとか、後藤家の長女(であろう)「峰子」の名前は山が好きなご両親がつけたのかなとか……いくらでも想像の余地があるところが楽しい。ドラマが終わってもまだまだ考える余地があって楽しめる。

 

 本当にこの3ヶ月楽しかった。加藤さんのゴールデンプライム枠初主演ドラマが「ゼロ一獲千金ゲーム」で本当に良かった。素晴らしいドラマを作ってくださった出演者・スタッフのみなさん、本当にありがとうございました!