スターゲイザーとスターライダー ―「応答セヨ」感想―

 新藤さんが関ジャニ∞の曲を作詞するときいたときは驚いた。全然信じられなかったけれど、実際に曲を聴いたらすぐにわかった。こんな歌詞を書くのは新藤さんしかいない。
 11/15、CDが発売されて、ようやくフルサイズが聴けた。ラジオでオンエアされていたサイズでも十分新藤さんのハンコが押してあったのに、フルで聴いたらさらにすごかった。でもこの歌詞は、新藤さんがポルノに書く歌詞にはあり得ない。あれだけ新藤さんっぽさ・ポルノっぽさが伝わってくる歌詞でありながら、確かに「関ジャニ∞のために書き下ろした歌詞」だった。そんな歌詞を見て何も書かないなんて無理なのでなにか書きます。いつも通り100%の主観です。特技はこじつけです。

 (応答セヨのAmazonリンク貼ろうとしたけど上手くいかないので後ほど追加します)

 

 

ポルノの歌詞との関連性

 1番は割とポルノっぽさを抑えたんだなぁ(しかしそれでもにじみ出るハルイチイズム)と思っていたら2番ではポルノ感が全開だった。というか、過去にポルノの歌詞で使ったフレーズやシチュエーションを引用しているかのような歌詞になっている。

 

ひとひら

屋根の上で見上げる夜空 変わったろ? あの日の僕と
今だって 地上でもがいているんだよ 飽きもせず

 一番およびサビでもっとも新藤さん濃度が高いのはこの辺かなぁと個人的には思う。「変わったろ?」って言うくせに、「飽きもせず」と続くんだから。
 新藤さんの歌詞は生きるために変わることを否定しない。社会にうまく溶け込むためには捨てなければならないものが沢山あったということを、それはいけないことだったとは言わない。変わらないままで生き抜くことの難しさを、生きるためには変わることを選択する場面もあるのだと、きっと知っている人だから。新藤さん自身が生きるために変わることを選んできた人で、だからこそこういう歌詞が書けるのだろうと勝手に思っている。
 「ひとひら」の歌詞でも「強くあろうと生きてきたから 変わらなけりゃいけなかったよ」という歌詞がある。しかし終盤で「あれは桜舞う春の真ん中で 笑いながら立っている君 同じ笑顔を作れるでしょう あの場所は君を待ってる」という歌詞も出てくる。たとえどんなに変わってしまったとしても、どこかに変わらないものがある。どうあっても変わらないもの、それはきっと、その人をその人たらしめるものなのだろう。「応答セヨ」の僕は「変わったろ?」なんて自嘲気味に言うくせに、でも「飽きもせず」もがいてしまうような人なのだ。

ひとひら ポルノグラフィティ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

 

 「変わる」と「変わらない」についての話は新藤さんの小説『時の尾』の感想文にも書いています。(変わること/変わらないこと、そして生き抜くこと ―新藤晴一『時の尾』感想文― - 来世はペンギンになりたい
 

「グラヴィティ」「何度も」

猫のあくびが 途絶えた頃には 三日月ライトの 紐をそっと引っ張る
暗闇の中 聞こえる鼓動は モールス信号みたい 自分へのメッセージ

 ポルノっぽさが全開になる2番。まず使われている言葉がポルノっぽい。

ねえ 三日月ライトをそっと消したら
ぎゅっと肩を抱いててね 一人落ちてしまわぬように

 言いたいことは以上です!という感じ。「グラヴィティ」のは暗闇の中で「私」のことを手を叩いて呼んでくれる「あなた」と引き合う柔らかで壮大なラブソングで、「応答セヨ」は自身の心臓の音に耳を澄ましているので状況は違うのだけれど、「三日月ライト」という言葉に関連性を見出してあああ~~~~~~ってうめきながら崩れ落ちるしかない。こういう憎いことするんですよ新藤さんって。

 また、「何度も」という曲もなんとなく「応答セヨ」の歌詞とリンクする部分がある。

楽しげな話が尽きたように黙った月の夜
ロリポロリと髭を弾いてる猫は屋根の上

 「何度も」はアコースティックな音色と新藤さんの美しくて優しい歌詞がそっと響きあう曲だ。正直、いまだに歌詞の真意がわかるかといったら全然わからない。不思議で、でもなんとなく訴えかけてくるものがある曲。
 「猫」と「屋根の上」という言葉に安易に引っ張られているだけかもしれないけれどだったら安易に引っ張られていたいなぁと思う所存。「何度も」にも過去を振り返るような場面があるから、余計に似た雰囲気を感じるのだろう。
 ポルノの名曲の雰囲気をまとわせることで「応答セヨ」がさらに深みのある曲に感じられる、ような気がするので是非聴いてみてください。

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何度も ポルノグラフィティ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

 

「Search the best way」

応答セヨ 流星 僕を信じてくれた遠い日の僕よ この声が届くかい
君が思うほどは まっすぐに歩いてこれなかったけど いつかまた逢えたら
その背中へと 飛び乗って 僕はスターライダー

 ポルノの歌詞は基本的に新藤さんまたは岡野さんによるものだが、一作だけ新藤さんと2004年に脱退した元ベースのTamaさんが作詞に参加した楽曲がある。それがこの「Search the best way」だ。しかもそれが道を分かつこととなった友とのことを歌ったような歌詞なので、私のようなポルノファンには刺さりまくる曲である。

未来まで待ちぶせしてしまうくらいに
光のにおい する方 走っていくんだ
その先でいつか君に逢えたなら
それが そう ひとつの正解かも…

 曲の疾走感とも相まって、「応答セヨ」のサビを聴いているとなんとなくこの曲を思い出す。「応答セヨ」の「僕」は「君」=流星と袂を分かつこととなったわけではないから、また逢えたらその背中に飛び乗ることができる。もしかしたら、「応答セヨ」の「流星」は今「僕」のそばにいる仲間のことも指しているのかもしれない、なんて思ったりもする。
 「Search the best way」では逢えたことがひとつの正解となるけれど、それ以上のことはない。でも「応答セヨ」はそうではないんだなぁと勝手に感慨深い気持ちになる、気持ち悪いおたくです。

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「ダイアリー 00/08/26」

さあ早く行かなくちゃ 約束という名の嘘になる前に

 以前別の記事(関ジャニ∞ファンにプレゼンしたい新藤晴一作詞楽曲 - 来世はペンギンになりたい)でも書いたけれど、過去の自分に話しかけるような歌詞だとどうしても「ダイアリー 00/08/26」を思い出してしまう。
 2000年8月26日に新藤さんが思ったことを書いた歌詞で、「近頃じゃTVの中、僕を見かけたりするかな?」というフレーズで始まるこの曲は、1999年9月にデビューして約1年が経った頃の心境を描いている。
 約束は、約束している時点ではまだ現実ではない。約束が果たされて初めて現実となる。果たされない約束は、「約束という名の嘘」なのだ。

夜ごと、君に話してた未来についての言葉は、
いくつかは本当になって、いくつかはウソになってしまった。

 「ダイアリー 00/08/26」の歌詞で、文面で見るとちょっと怖いくらいなのに岡野さんのからっとした声があっさり歌うのでものすごくあっさり聴ける。果たせた約束もあれば果たせなかった約束もあって、後者はまたの名を「嘘」という。きっと、今じゃもうどうしたって果たせなくなってしまった約束なのだろう。勿論果たせた約束もあるから、現状のすべてを憂うことはないけれど、時々果たせなかったほうの約束を思い出してしまうこともあるかもしれない。そういう経験は、別に大袈裟なことだけじゃなくて、誰にでもあることなのかもしれない。
 「応答セヨ」の「僕」はまだ間に合う。さあ早く行かなくちゃ。

ダイアリー 00/08/26 ポルノグラフィティ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

 

 

新藤さんの歌詞たる所以

 新藤さんの歌詞のすごいところっていくつもあるのだけれど、この歌詞にもそのすごいところは表れている。すごいところというかもはや好きなところについて語っているだけです。

 

努力を認め、背中を押す

 「応答セヨ」の2番Bメロでは「垂直ジャンプ 0.5秒 20センチ しょぼくてゴメン」と歌いながら、その「しょぼくてゴメン」と言ってしまうような垂直ジャンプでさえ「空に近づいたと言い張っていいでしょ?」と言うのだ。私のような「しょぼくてゴメン」程度のジャンプしかできない人だって、これを聴いたら励まされる。空に近づいたと言い張って、もっと高く飛べるようにと繰り返したくなる。
 また、2番サビでは「いっそ目を閉じちゃって 見たかった世界を心に描こう」と歌う。しんどい現実から目を閉じて見たい世界を思い描くことすら肯定してくれる新藤さん、あまりに心強い。
 めちゃくちゃ個人的な話をするけど、己のポンコツ具合に嫌気がさして「どうしてこんなふうにしかできないんだろう」と毎日悲しくなっているところだった。うまくいかなかったことばかりが重たくのしかかって、またうまくいかないのではないかと怖くなるばかりだった。そんなときに「いっそ目を閉じちゃって 見たかった世界を心に描こう」なんて歌詞を見たら心の支えにならないわけがない。勿論、目を開けたら見たいものは見えないのだけれど、目を閉じたそこにある世界に近づけるように努力しようという気持ちにはなる。少しだけでも前向きになれる。だって理想の世界はどこにもないわけじゃない。目を閉じればあるんだし、そこに近づくことだってできるかもしれない。少しくらいは。
 努力しても届かない頂は、ある。頑張っただけで夢が叶うような世界ではない。だったらきっとすべての人の将来の夢が叶っているはずで、でも現実はそうじゃない。結果を出せなければ努力も無駄かもしれない。でも、それでも、そこにはなんらかの意味が残るんじゃないか、そんなふうな気がしてくる。なりたいものになれなかったけれどそれでも生きている私は、そう思う。

 新藤さんの歌詞は普通に生きている人がその人なりに頑張っていることを肯定するような、そのうえで背中を押すような歌詞が多い。「幸せについて本気出して考えてみた」や「ギフト」、最近でいえば新アルバム『BUTTERFLY EFFECT』収録の「working men blues」もそうだ。中でも「メジャー」という曲が「応答セヨ」と一番近い立ち位置にある曲かなと思う。

自分のメジャーは確かにここにあって
いつだって自己新記録を刻んではいるんだ
派手じゃないけれど 褒められはしないけれど
何度もそれを超えようと もがきながら進んでいく

メジャー ポルノグラフィティ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

 新藤さんの歌詞といえば「アポロ」「サウダージ」「アゲハ蝶」「メリッサ」あたりかもしれないけれど、ファンタジー色の強い歌詞以外にも新藤さんの歌詞のよさは表れているんだよって話です。

 

「流星」「君」「遠い日の僕」

 具体的に結び付ける言葉がなくても歌詞の中でひとつひとつが繋がって物語を生み出しているところが、新藤さんの歌詞のすごさのひとつだ。そういうふうに言葉を配置することにおいて、新藤さんは本当にすごいと思う。私のような素人が真似しようと思ってできることではない。新藤さんの磨き上げられたセンスの賜物なのだろう。
 「僕」が「君」と呼びかける相手が明確に示されないところもこの歌詞の面白いところだ。新藤さんの歌詞にはそういうのが時折あって(先ほど挙げた「メジャー」もそう)、自分自身に呼びかけるようなあるいは聞き手に呼びかけるような箇所にも「君」を使う。だから聞き手の想像が広がる。
 「僕」と対峙する相手として最初に出てくるのは「君」で、次に「流星」で、「遠い日の僕」とつながっていく。この次々に展開していくところがすごく新藤さんだなぁと思う。「僕」の願いを抱いたままの「流星」は「遠い日の僕」とイコールなのかどうかも定かではないけれど、重ねて描かれていることは間違いない。いくつものレイヤーが重なり合って、ひとつの物語を生み出す感じ、ほんと、新藤晴一ってすごいなとしか言いようがない。私が言葉で説明したって野暮なので歌詞見てください!聴いてください!

 

スターゲイザーとスターライダー

 上に挙げたようにポルノの歌詞っぽさを思わせるフレーズが並んでいても、「応答セヨ」が間違いなくポルノの歌詞ではない。それをもっとも強く感じるのは、「スターライダー」というフレーズだ。端的に言えば、ポルノは「星に乗る」というイメージではない。このイメージは、この曲を歌うのが関ジャニ∞だから出てきたものだと思う。

 ポルノの歌詞にも「星」は何度か出てくる。頻出というわけではないが、新藤さんの書くロマンチックな歌詞に使われることが多い。いくつか挙げてみるとこんな感じ。

この場所がどこだろうと見上げれば輝く星
その下で君を思えば 悪くない夜になる
不安を数えた指に温もりが灯る
 「瞬く星の下で」

星降る夜空に朝日の幕が下り
静かに消えたのは甘い幻
 「ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~」

開けはなったままの天窓に 煌めいてる星々は決して
ひとつとこの手に落ちない それならばそっと窓を閉めましょうか
 「瞳の奥をのぞかせて

一度壊れた愛は戻らないと
綻びのないルールがある
星が全部ほら空から落ちる
 「ルーズ」

 ポルノの歌詞に出てくる新藤さんの「星」は、主人公を見守るものであると同時に決して手が届かないものでもある。届かないというか、届かないことは悲しいことだけれど、届かないからこそ優しく見守り行く手を示してくれる存在であるように見える。決して触れてはならない神様のような、そんな存在なのではないだろうか。だから星が落ちてこない「瞳の奥をのぞかせて」も、星が落ちてくる「ルーズ」も、どちらも明るくはない。
 ポルノの歌詞に「星」が出てくるときに「星に乗る」というようなイメージは使われない。なんとなくだけれど、ポルノが星を見上げて歩いていく二人だからではないだろうか。新藤さんは「自分は普通だ」「自分は中途半端な常識人だ」と語る。普通だという認識があるから、星には手が届かない=星を見上げて、一歩ずつ歩いていく人というイメージになるのではないかと思う。新藤さんのエッセイ集『自宅にて』や15年目のライブ「ラヴ・E・メール・フロム 1999」のオープニングでも描かれているように、そしていまだに新しい挑戦をし続けているように、ポルノは今も夢を見続けている。そんなところも星を見上げるというイメージと重なる。
 「幕張ロマンスポルノ'11 ~DAYS OF WONDER~」というライブのロゴには、星空の下を歩く二人が描かれている。きっとこんなふうに、星を見上げながら歩いていく二人だから、「星に乗る」というイメージは今まで使われてこなかったのだろう。

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 ていうかもうこれはイメージの話なので言葉を尽くして解説したところで伝わらない人には伝わらないから仕方ないんだろうけど……ポルノって自分たちのことをとても客観的に冷静に見ていて、そうやって地に足つけて、でも星をめざして夢を見ながら、そんなふうに歩いていく人たちだから19年目も現在進行形でいられるみたいなところあるじゃん……?そういうことです。ポルノグラフィティスターゲイザー
 一方で、関ジャニ∞というのは強力なアーティストパワーを持った存在(と新藤さんがラジオで語っていた)である。関ジャニ∞という勢いのあるアイドルが歌うということを考えたとき、流星に飛び乗る「スターライダー」というイメージが当てはまったのではないかな、と勝手に思っている。勢いがあって、輝いていて、星にだって手が届いて飛び乗っていけるような。おそらく今回も曲が先にあったのだろうし(ポルノは常に曲先で歌詞を書いている)、この曲のもつ疾走感や爽やかさとも合うイメージが「スターライダー」だったのではないかと思う。

 

 これほどにポルノっぽさをもっていて、新藤晴一のハンコが押されていながら、でも絶対にポルノではない。そういうバランスでもって歌詞が書けるのも、新藤さんのすごいところです。本当すごい。
 何がすごいかってこれだけポルノっぽさを出したりポルノでは出てこないであろう表現を使って「他アーティストへの提供」という部分を強く意識させたりする歌詞でありながら、おそらく(というか絶対)映画「泥棒役者」の内容を反映した歌詞になっているところ。まだ観ていないから具体的な話はできないけれど、新藤さんがドラマやアニメや映画のタイアップの歌詞を書くときの寄せすぎず離れすぎずのバランスが良すぎるので、おそらく今回もそうだろうということ。そちらはいずれ書くかもしれない映画の感想に含めたいと思います。

 

 

 そんなすごい新藤さんのすごい歌詞はポルノの新アルバム『BUTTERFLY EFFECT』でも発揮されているので是非!個人的なおすすめは「MICROWAVE」「夜間飛行」です!

 

BUTTERFLY EFFECT(初回生産限定盤)(DVD付)

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