PVにみるポルノグラフィティのファンタジー

 先日、フォロワーの方と「ポルノグラフィティの17年間をPVで駆け抜ける会」を実施した。正規の手段で販売されているものを集めるとデビュー曲「アポロ」から2016年の「THE DAY」までのフルPVを見ることができることが発覚したので、せっかくだから見てみようぜ!ということで。
 1日で17年ぶんのPVを駆け抜けると、彼らのPVがファンタジーに満ちていることがわかった。現実っぽい設定のPVはあまりなく、独特の世界観をもったファンタジー性の強いPVが多いのだ。「ファンタジー」の定義?私がファンタジーと思ったらファンタジーです。いつも通り、100%の主観でお送り致します。
 全48作(たぶん)あるので、いくつか抜粋してご紹介します。公式がShort verを公開しているので動画も貼っておく。

 

 

・アポロ

 デビュー曲がいきなりファンタジー感の強いPV。
 1999年の作品なので今見ると古い部分もあるが、文明が(あるいは人類が)滅んだあとの世界のような、不思議な世界観を作り上げている。しかもこの……たぶん今の技術で作ったらもっとデジデジしたものになるんだろうなって思うけれど99年なのでそこまでデジデジしていないところが……むしろいい……古いSF映画を思わせるところが最高。ちょっと画質が荒いのも世界観に合っているように思えてしまう。
 岡野さんの目が少し気だるげで、しかも何も映していないような視線なのがとてもいい。全然笑わないところも世界観とマッチしていて、滅んだ文明にひとりだけ取り残されたことを不満に思っていそうな感じが最高に好き。超好き。


ポルノグラフィティ 『アポロ(short ver.)』


・メリッサ

 ノートの隅っこにメリッサPVのイラストを描く中高生だったみんな~!!!ブログや個人サイトにメリッサPV考察を書く中高生だったみんな~!!!元気にしていますか~!!!私は元気です!!!!!
 沢山の中高生を狂わせたPV。多感な10代でこのPVに出会ってしまったが最後、たちまちポルノグラフィティに魅了されてしまう、蟻地獄(褒め言葉)のようなPV。
 まず、古い本の中の世界のような、異世界感の漂うセット。美しい女性と、屈強な剣士が登場する。そしてボーカルは白塗りの道化師、ギターは黒塗りの騎士、ベースは科学者。もう無理。好き。
 3人とも顔がきれいなので(私は彼らの演奏や人柄だけでなく顔も好きなファンです)、異世界のような衣装も似合ってしまう。なんの違和感もなくファンタジーの世界の住人になれてしまう。
 メンバー全員の「無言の演技」があまりにも秀逸なことにも言及したい。特に岡野さん演じる道化師がすごい。手で作ったハートを左胸に当てる仕草や、優しい笑みを浮かべて花を差し出すところ、そして消えてしまった女性に惑う姿など、どれをとっても素晴らしい。岡野さんの無言の演技はどの作品でもすごいけれど、特に「メリッサ」では一際輝いている。
 これだけ物語性の強い世界観が展開するにも関わらず、どこにも物語のあらすじは書かれていない。PVを見てもわからない。しかしそれゆえに見た者の心に物語を描かせる。このPVを見た者の心にはそれぞれの「ぼくがかんがえたさいきょうのメリッサ」があるのだ。
 ちなみに「メリッサ」のCMでは最後に道化師が花を差し出すカットで終わるものがあった。編集が最高。
 ちなみにちなみにこのPVを撮ったセキ★リュウジ監督はこの後もポルノのファンタジーPVを作りまくる*1。本当にありがとうございます。


ポルノグラフィティ 『メリッサ(short ver.)』

 


・シスター

 ベースのTamaさんが脱退し、2人になって初めてのPV。曲を聴いた時点でこんなに哀愁を誘う曲なのかと驚いたが、PVもなんとなく寂しさを感じさせるつくりになっている。
 暗い色でつくられた世界に、唯一鮮やかさをもたらす真っ赤な木。演奏シーンで新藤さんが持っているのは木でできたギター。コイントスで何かを占い、花を残し、筏に乗って旅立っていく。
 途中には二人が何事かを話している場面がある。音声は入っていないので何を言っているかはわからないが、憂いを帯びた表情で言葉を交わす場面もある。何を言っているのかは公式には発表されていなかったので想像の幅が広がる。
 暗い色彩のなか、暗い表情の2人が、暗い海へ旅立っていく。もう一度言うけれどこれはベースが脱退したあと初めての曲です。最高かよ。物語に物語を重ね、更に大きな物語になっていく。


ポルノグラフィティ 『シスター(short ver.)』

 


ネオメロドラマティック

 SFPV。車のCMソングだったということもあってか、車がびゅんびゅん走る近未来の街が描かれている。エッジの効いた歌詞と曲調ともぴったりのPV。たぶん全編CGで作られているが、2人がその世界観にばっちり合っているのがすごい。全然浮かない。元々がこういう世界の住人なんじゃないかって気さえしてくる。
 それにこのPVには物語がない。何も語られない。唐突に近未来の世界が展開するけれど、そこで何かが起こる、ということもない。唯一物語的な動きがあるとしたら、真っ白ななかに時計がいくつも浮かんでいる場面だろう。それぞれが時計に触れる場面があるが、その意味は語られない。世界観の設定も何もかも説明がないまま、映像は進んでいく。
 見ている者を置いてきぼりにするようで、むしろ「ここには一体なにが隠されているんだろう」という気持ちで世界に引き込む。何も語られないからこそ、そこに物語を見出したくなる。そんなPV。
 曲の疾走感と映像がすごく合っているのも見どころ。


ポルノグラフィティ 『ネオメロドラマティック(short ver.)』

 


Winding Road

 まるで絵本のような世界観のPV。まず、罠にかかって倒れたたぬき(岡野さん)のカットから始まる。この時点でこのPVがただごとじゃないことだけはわかる。
 うさぎの少女がきつねとたぬきに出会い、仲良く遊ぶ。3匹はかくれんぼをすることになり、じゃんけんに負けたうさぎが鬼となってきつねとたぬきを探す。きつねはすぐに見つかったが、たぬきは……!?
 岡野さんがたぬき、新藤さんがきつねという配役(?)もすごくわかる。
 他のファンタジー路線PVに比べると物語はわかりやすい。しかし、物語は決して明るいものではなく、「どこかで掛け違えたボタンを外せないままになった」2人を描いた歌詞を思わせるような、分かり合えない関係性を描いたようなつくりになっている。


ポルノグラフィティ 『Winding Road(short ver.)』

 

・Love too, Death too.

 わけのわからなさが万華鏡のように襲い来るPV(としか説明できないから今すぐ映像を見て)。今敏監督の「パプリカ」のパレードのシーンみたいというか、とにかくわけのわからないものが沢山出てくる。ベスト盤「PORNO GRAFFITTI ACE/JOKER」の直前シングルということもあり、トランプっぽい要素が散りばめられている。また、メンバーの意向で「極楽浄土」をモチーフとしているらしい。もうとりあえずこの時点で全然わからないと思うから一回映像見て。
 個人的には「渦」のPVと近い気がする。「渦」はひたすら暗い方向にわけのわからないものを並べた感じだけれど、この曲のPVは明るい(というか色合いが強い。極彩色)わけのわからないものを並べたような感じ。是非「渦」のPVも合わせてご覧ください。
 このわけのわからなさの中で、青を基調としたスーツを纏ったポルノの2人が際立つ。どれだけバックでわけのわからないものが蠢いていようと、2人は2人として確立している。最初から最後まで全然何もわからないけれど、圧倒的な美と迫力に気圧されること間違いなしなので絶対見てほしい一作。


ポルノグラフィティ 『Love,too Death,too(short ver.)』

 


今宵、月が見えずとも

 新藤さんの恰好良さが爆発しているPV。他のPVは割と岡野さんを中心に見てしまうけれど、このPVの主人公は新藤さんっぽく見える。
 いやこの新藤さん、あまりにも恰好良すぎて無理。このシングルが発売した当時*2PVをフルで見ることのできる期間があって、めちゃくちゃテンションが上がりながら何度も見た記憶がある。また、このシングルのディスクを外したところなどにPVの画像が使われていて、「ここの晴一がマジでやばいから!」というのを説明するためだけにCDを学校に持っていって友達に見せたりしていた。
 このPVも物語が展開するようで何もわからない。街を彷徨う岡野さんと部屋で煙草を吸いながら椅子に腰かけモニタを見つめる新藤さんの対比。部屋に黒いどろどろしたものが侵入してくる様子も描かれているけれどその黒いどろどろがなんなのかもよくわからない。最高。全然わからないからこそ、世界観でなぎ倒す感じが最高。
 とにかく新藤さんが美しいから見てほしい。特に目元のアップがやばい。右目だけのアップも左目だけのアップもあるけどどっちもやばい。「美しすぎるギタリスト」って呼びたい。何を考えているのか全然読み取れなくてやばい。でもなんかこう……内なる炎みたいなのが強くある感じが……するようなしないような……。新藤さんの真顔って強い意志が感じられて、こういう世界観のPVにぴったり。とにかくやばい。新藤さんがひたすらずっと恰好いい。見て。いいから見て。


ポルノグラフィティ 『今宵、月が見えずとも(short ver.)』

 


瞳の奥をのぞかせて

 今まで紹介したPVほどファンタジックではないが、現実世界から離れているという意味ではファンタジーなPV。
 よくわからないオブジェが置かれた部屋に2人が入ってきて、楽曲が始まる。少し不気味というか、心の奥底をそっとなでられたような感じがする。淡々と演奏は進む。
 途中で、2人がトマトを食べるシーンがある。同タイミングで、同じくらいの量を口に運ぶ。何を意味しているのかはわからないけれど、「食事」という行為がもつ生とか死みたいなものを連想する。それが同タイミングで行われている。演奏シーン以外は基本的に「同タイミング」というこだわりが描かれているように見える。他にも、演奏シーンで手元のアップや口元までのカットを多用したりして目を映さない図が多く使われている。目は口ほどにものを言うというが、その肝心な目を映さない。
 目隠しを2人同時にほどく場面もあるが、「瞳の奥をのぞかせて」というタイトルにもかかわらず目隠しをしているところもいい。結局は、瞳の奥などのぞけない。何を考えているのかなどわからない。だからこのPVに描かれている何もかもがわからなくたって仕方がない。誰も、自分以外の誰かの心の奥底などわからないのだから。
 なんだかとてもフェティシズムに満ちていて、どこかエロティックで、でも何もわからない。それもまた一種のファンタジーではないだろうか。


ポルノグラフィティ 『瞳の奥をのぞかせて(short ver.)』

 


この胸を、愛を射よ

 どう見ても東京の街並み(汐留とお台場方面の2か所)だってわかるのにファンタジー感が強すぎて異世界に見えるPV。プロントも見えるし、レインボーブリッジも見えるのに異世界。ポルノグラフィティの異世界力、半端ない。
 巨大な四角(四角以外にどう表現していいのかわからない。立方体?)に腰かけながらギターを弾く新藤さんはまるでスナフキンのようにも見えるし遠くを見ながら歌う岡野さんはRPGの主人公みたいに見える。
 新藤さんが倒れている女性をお姫様だっこで助けたり、岡野さんが泣いている女性を抱きしめたりする。しかし、ひとりの女性に対する愛しさというよりはもっと壮大な愛みたいなものが見えてくるPV。ていうか女の人を抱きしめているのに全然現実味がないのがすごい。ものすごいファンタジー力。圧倒的にファンタジーなので是非見てほしい一作。
 ちなみに新藤さんがリップシンクしているシーンもある。勿論歌声は岡野さんなので、なんだか不思議。


ポルノグラフィティ 『この胸を、愛を射よ(short ver.)』

 


・EXIT

 岡野さんの手に炎が宿り、新藤さんの手にも炎が宿るPV。
 歌詞にモチーフとして使われている「地下鉄」のホームが描かれているけれど、それも日本のよくある地下鉄の駅ではない。どこか遠い国の地下鉄だ。岡野さんは壁にもたれ座り込んだまま歌い、新藤さんは地下鉄のホームを彷徨う。
 そして岡野さんの手に炎が宿る。岡野さんの立つ場所も燃えている。たぶん、実際の炎というよりは心象風景とか不思議な力みたいなものを表現しているんだと思う。光に手を伸ばした新藤さんの手にも同じ炎が宿る。
 冷静に考えて、この「EXIT」という曲はそこまでファンタジックな曲ではないので(新藤さんの歌詞センスが光りまくってるけどファンタジー要素が盛り込まれているというわけではない)、別にこんなにファンタジーなPVでなくたっていいはずだ。だけど手に炎が宿ってしまうような、どファンタジーの世界観。控えめに言っても最高以外の言葉が出てこない。
 新藤さんがギターを叩き壊す場面があるけど、あれは偽物なのでご安心ください。


ポルノグラフィティ 『EXIT(short ver.)』

 


・THE DAY

 メリッサのPVを考察していた勢に今すぐ帰ってきてほしいくらい壮大な物語を秘めたPV。お願いだから心当たりのある人は今すぐにTHE DAYのPVを見て!!!!!
 岡野さんが触れると、機械が動き出す。その機械は「自分では進化を止めることができない機械生命体」で、絶え間なくかたちを変えて巨大化し続ける。途中で機械と同じ赤い光を胸に宿した少女が出てくるが、彼女と新藤さんを同じ角度で撮ったり走り出すところをシンクロさせたりと、意図的に重ねている。走りだした少女はどこへ行くのか。進化を止めることができない機械生命体はどうなるのか。
 正直、全然わからない。あの機械は、あの少女は、そしてこのPVにおけるポルノの2人の役割とは。何も説明がなくて全然わからないけど壮大な物語が詰まっていることだけはわかる。これだけわかれば十分だ。さぁみんな、「ぼくのかんがえたさいきょうのTHE DAY」を発表し合おうぜ!!!という気分になる。
 2003年のポルノグラフィティには「メリッサ」という最強のPVがあった。そして2016年のポルノグラフィティには「THE DAY」という最強のPVがある。


ポルノグラフィティ 『THE DAY』(Short Ver.)

 

 

 おそらく、ポルノとポルノの曲で何かを作ろうとする人たちは、ポルノとポルノの楽曲にファンタジーな世界観を見出してしまうのだろう。抽象的で文学的な歌詞に合わせて映像を作ろうとすると、クリエイターたちの創作意欲を刺激するのかもしれない。
 あんまりメンバーの顔のこと言うと怒る人もいるかもしれないけれど、3人でも2人でもとにかく全員顔が恰好いいからこそ似合う世界観だなと思うPVもある。ていうかあれだけ顔が恰好いいんだからただ演奏するだけじゃなくていろんなことしてみたくなるよね……って思ってしまう。野原で空を見上げてたって、森の中に佇んでたって絵になるような人たちだもんね……(「ヴォイス」「音のない森」PVをご覧ください)。
 しかも全員「無言の演技」がすごい。演技自体が上手いか下手かは素人の私には正直よくわからないけれど、世界観に溶け込むのは抜群に上手いと思う。現実世界のどこを探したっていなさそうなくらい、それぞれのPVの世界観に馴染んでいる。特に岡野さんの「無言の演技」はやばい。なんて繊細な表情をするのだろう……。本当に「メリッサ」がやばいから絶対見てほしい。新藤さんは黙って真顔でいても「彼は何かを訴えようとしているのでは……」と思わせる表情がすごくいい。「渦」と「2012Spark」とか特に。意思の強い目というか。
 そういったパワーのあるPVを多数つくりながら、歌って演奏している本人たちは「わしら」「~じゃけぇ」という広島弁を決して失わないギャップも好き。推させてくれ~~~!!!って気持ちが爆発する。
 他にも「音のない森」で森の中を彷徨っている(しかも雨降ってる)PVとか、「オー!リバル」の2人が沢山いるPVとか、CGを一切使っていないにもかかわらずSF的雰囲気が漂う「2012Spark」とか能面が繰り返し吹っ飛び続ける「アニマロッサ」とか逆再生で羽根が舞う「A New Day」とか、紹介したいファンタジーなPVはいくらでもあるけれど、どうにか11作に絞った。10作にしたかったけどおさまらなかった。
 長々と書いたものを読み直してみたら「最高かよ」「やばい」「とにかく見て」しか言ってないけど、それが本音です。


 たった4分程度の映像に物語が詰め込まれていたり、逆に物語がちっともなかったりする。ていうか全然わからないもののほうが多い。でも、何が起きているのかわからなくても、何が描かれているのかわからなくても、目を奪う作品で見た人を少しでも「気になる」という気持ちにさせれば勝ちだと思う。ポルノグラフィティのPVにはそういった作品が多い。

 ポルノグラフィティのPVは見る者の心に物語を想起させる。人を饒舌にする。誰もが語り部となることを許されたような、そんな気さえする。
 きっと新曲もそういうPVになるんじゃない?だってアニメ「パズドラクロス」の主題歌なんだから!きっとファンタジー!とまだどんな曲か発表もされていない新曲のPVに思いを馳せたい。

 あなたの好きなPVはどれですか?

 


 おまけ
 どのPVがどのディスクで見られるかを一覧にしました。シングル初回盤で見られるものもあるけれど、優先順位としてPV集>アルバム>シングル初回としました。間違っていたらそっと教えて。

f:id:penguinkawaii:20170620220048p:plain

 

 

COMPLETE CLIPS 1999-2008 [DVD]

COMPLETE CLIPS 1999-2008 [DVD]

 

 

 

*1:この記事で挙げたなかでは他に「シスター」「Love too, Death too.」「この胸を、愛を射よ」「EXIT」もセキ監督

*2:たぶんサイトジャックか何か。かつてポルノがシングルを出すと、ソニーミュージックのサイトをジャックしてPVがフルで見られるというような企画があった