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一難去ってまた一難去って一難 ―「トラブルマン」のススメ―

 加藤さんが「影の主人公」として出演しているドラマ「嫌われる勇気」の放送が始まった。番宣にも沢山出たし、見逃してもネットで1週間無料で見られるし、YouTubeにも予告やOP映像が公式で投稿されている。つまりいつでもどこでも青山くんを見放題というわけだ。
 というわけで(?)、青山役で加藤さんが気になり始めた方も元々加藤さんを知っていた方も、加藤さん主演ドラマトラブルマンはいかがですか?という話。

 

トラブルマン」とは

 2010年春クールのドラマ。テレビ東京系で金曜24:12~の枠*1で放送されていた。全12話。
 主演は連ドラ初主演となる加藤さん(放送当時22歳)。映画をメインに活動するSABU監督(ジャニーズ的に言うとV6の「ホールドアップダウン」「ハードラックヒーロー」、手越さんの「疾走」などを撮った監督)が原案・脚本・監督を務める。
 主人公・徳田は保険会社に勤務している。お人好しな性格が災いして、顧客に保険金をおろしすぎたためにクビに。落ち込みながら帰宅すると、アパートの周りには明らかに危ない風貌の男たちがうろついていた。その男たちは徳田と同じアパートに住むやくざの下っ端・尾崎を探していた。徳田は自分の部屋に入ったはずが尾崎と鉢合わせてしまう。そこからあれよあれよとトラブルに巻き込まれていく。
 
 詳しくは公式サイト(まだあった!)とWikipediaをご覧ください。Wikipediaはストーリーがだいたい書いてあるからネタバレを読みたくない人は注意。
 

ドラマ24「トラブルマン」:テレビ東京

トラブルマン - Wikipedia

 

 

トラブルマン」のここがオススメ

1.映画のような撮り方

 SABU監督が初めてテレビ作品を作ったのがこの「トラブルマン」。普段は映画を撮っているので、作りが非常に映画的になっている。12話のドラマというよりも映画を12分割した、というほうがわかりやすいかもしれない。でもやっぱりテレビだからできる、という部分もあって、映画とテレビのいいとこどりな印象。
 たとえば、ドラマの一話が終わって次の話に行くと数日が経ち場面が切り替わっているスタイルはよく見かける。いわゆる一話完結というやつだ。一方、「トラブルマン」は話の区切りでも場面が切り替わることはなく、基本的には「大家さんの部屋」という同じ場面がずっと続いている。
 「トラブルマン」は全12話だが、冒頭から最終話まで、作中の時間では一日も経過していない。昼から夕方くらいしか経っていない。そんなに話の進みが遅いのかといえばそういうわけでもない。前半は一話ずつ、徳田と同じアパートに住む人々の過去の回想が続いていく。最初に大家さんの部屋に住人が集うまで(物語の時間軸の起点)が描かれ、住人たちの抱える過去が暴かれ、それまで黙っていた主人公・徳田の過去が暴かれ、それからクライマックス(再び物語の時間軸に戻る)につながる*2。あまり連ドラ的ではない構造で、映画を12分割した感じ、と言っている意味がわかるだろう。ドラマを続けて観るのが飽きてしまう人でも観やすい。
 そういう構造なので毎週続けて観るよりも全話を一気に観たほうが話がわかりやすい。私もリアルタイムでは数話観た程度で(当時はまだNEWS担ではなかった)、何曜日の何時にやっているのか把握しておらず全話観るに至らなかったわけだが、DVD-BOXを買って一気に観た。たぶん一気に観るほうが合っているタイプの話なのではないかと思う。でも忙しくて一気に観られない!という人でも、ちゃんと次の話へのわくわく感があるので大丈夫。わくわくしながら次の話を見られる時間まで待とう。でも続きが気になって見たくなっちゃうから気をつけて!

 


2.加藤さん演じる「巻き込まれ型主人公」

 加藤さんにこの徳田という「巻き込まれ型主人公」の役をやらせようと思った人にはA5ランクのお肉の商品券とか贈らせてほしい。あまりにも似合いすぎている。
 現在出演中のドラマ「嫌われる勇気」の青山も蘭子に振り回されていて、その可愛さも相俟って話題となっている。少なくとも私の周辺ではめちゃくちゃ話題になっている。
 多分だけど、加藤さんは巻き込まれたり振り回されたりする役が似合う*3。本人がそういう性格かどうかはおいといて、似合う。絶対似合う。めちゃくちゃ似合う。
 なんていうか、加藤さんってどこかセカイ系の主人公っぽさがあると思う。自分から大きな世界にコミットするような冒険譚ではなく、世界の方から彼のもとにやってくるような感じ。私のイメージする「影の主人公」ポジションは「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョン、「魔人探偵脳噛ネウロ」のヤコ。「巻き込まれ型主人公」だと「いちご100%」の真中淳平とか。作品が偏っていて申し訳ない。でもこのへんのキャラクターのようなポジションが加藤さんには似合うと思う。なんていうか、加藤さんって運命のほうから来るよね……(個人的な見解)
 しかし「トラブルマン」はただの巻き込まれ主人公かと思いきや……!?なところもあるので最終話まで必見。もう7年も前のドラマなのだからネタバレなんて書いてもいいだろうと思うけれど、できればまだ観ていない人にはあまり前情報のない状態で観てほしい(というかこの記事を読んだだけで「トラブルマン」の物語を把握してしまっては勿体ないので記述を控えたい)。たぶん検索すればいくらでも結末なんてわかってしまうし、そもそもさっき貼ったWikipediaを見たらだいたいわかってしまうので、結末を知ってから観たいという場合はそちらをご覧ください。

 


3.B級映画的面白さ

 一言で言おうとするなら、シュールでSFでシリアスでコメディなきみとぼくのセカイ系(B級)、といった感じ。この表現でびびっときた人は是非とも観てほしい。加藤さんとセカイ系は相性が良い。セカイ系という言葉は多様な意味を含むけれど、「若者(特に男性)の自意識を描写」「きみとぼくの世界」みたいな感じの物語のことを指して言っている*4
 あらすじにもならない大枠だけを言葉にすると、現実にはありえない要素を含みながら人間ドラマを描いたうえでなんだかよくわからないしこの先のことも世界のこともわからないけれどきみとぼくがハッピーっぽくなる、という感じ。私はそういう物語がとても好きなのでどっぷりハマった。特にラストシーンのセカイ系っぽさが最高に好き。「きみとぼく」という閉鎖的でミクロな世界を見る限り、この物語は間違いなくハッピーエンドだ。
 エンタメ作品として作られているので説教くさいテーマがあるというわけではないけれど、一貫して「過去にとらわれるな、前へ進め」ということが描かれている。だから徳田はひたすら走るシーンが繰り返されるのだろう。
 登場人物たちは過去に囚われながら生きているし、主人公・徳田は過去にも囚われているしこれから起こるだろうことも危惧している。そんな彼らがいろいろあった末に「過去なんて関係ない、前を向け、走れ!!!!!!!」というところに辿りつく。あまりにも前を見すぎて「とにかく!!!!!!!!!!!!走れ!!!!!!!!!!!!!!」みたいな状況になるけれどそこが面白い。観ていてすごくテンションが上がる。
 
 全体的にB級っぽいつくり(手を抜いているわけではない。B級っぽい)になっていて、現実にはなかなかありえない要素をキーとして話が進んでいく。若干の脚本の破綻(というほどでもないけれど、都合よく展開する部分)はあるにせよ、「こういうB級っぽい話にはそういうのもあるよね」で受け入れられる程度のものだ。むしろこういうタイプの物語では、きちんと筋が通っていて、起こる事象すべてに説明がつく時点で興ざめしてしまうだろう。探そうと思えばこの物語には穴なんていくらでもあって、でもそれはあえて空けてある穴なのだ。だから穴がそこにあろうがなかろうが関係ないし、「そこに穴があります!」と言うのはナンセンスなことだろう。そういうものを真面目に作っているから面白い、というものだ。「トラブルマン」はそういう類の話だと思う。
 「ドラマを見る」という行為の主導権は本来見る側が持っているものだが、いっそそれを手放して「ドラマを見る」という行為の主導権をドラマに握られるくらいの気持ちで見るとより楽しめるかもしれない。B級っぽさ、あるいは深夜ドラマっぽさを狙っているんだろうなと思う部分も多々あるので、そういうものが好きな人にはうってつけのドラマだ。
 しかしこれをゴールデンタイムで放送しても、まだ理性の残っている時間帯ではどこか白けてしまっただろう。普通の時間帯のドラマでは決してできない、深夜枠だからこそできる面白さが詰まっている。

 


4.加藤さんの演技

 連ドラ初主演となる加藤さんの演技もみどころ。演技の良し悪しはわからないので語りようがないが、少なくとも加藤さんの演技はこのドラマに合っているように思えた。
 加藤さんの状況に「巻き込まれる」、あるいは状況に「置いていかれる」という演技がすごく好きなのだが、このドラマはそのオンパレード。ちなみに他の登場人物は概ね徳田に対してぐいぐいくるので、とにかく困った顔を浮かべる場面が多い。「え?」と訊き返すときの声のトーンや「勘弁して下さいよ」とでも言いたげな顔がめちゃくちゃいい。そのあとに取り繕ったように「ははは……」と笑う顔もいい。笑ったところで何も解決していないところも含めていい。ちょっと委縮していて言いたいことを言えずにごまかす感じもすごくいい。
 また、アパートの住人たちの過去に触れることで徳田が過去を思い出すフラッシュバックが挟まれることがあるが、そのときの徳田の顔の憂いがすごくいい。加藤さんの持ち味(?)ともいえる憂いが活かされている。「あ、こいつ何かあるな」と思わせる表情をしている。
 全体的に「巻き込まれる」「置いていかれる」というスタンスの徳田だが、終盤には自発的に行動をとることになる。今まで一方的に流されるままだった徳田と、感情を発露し状況の主導権を握る徳田の対比がとても鮮やか。
 加藤さんの、急激に感情を発露する演技もすごく魅力的だ。ひとりの人間が抱えきれる量を超えた感情が、涙や叫びとなって現れている気がする。2016年の24時間テレビスペシャルドラマ「盲目のヨシノリ先生~光を失って心が見えた~」でも、加藤さん演じるヨシノリ先生が、見が見えなくなったことに対して叫ぶ場面がある。あの良さに繋がるものがこの「トラブルマン」の中にもあるように見えた。
 それと徳田はひたすら走る。第一話オープニングで走っているし、エンディングでも走っている。走るのは得意ではないということはこの時点で既に「走魂*5により実証済だし今見ると「変ラボ」の加藤さんも頭をよぎるが、速さはともかく懸命に走っている姿はなんだかぐっとくる。
 それと、ピンポイントだけど9話の徳田のモノローグがめちゃくちゃいい。映像として映っているのは無表情な徳田だが、心の中ではどんな顔をして喋っているかが容易に想像できる。表情のある声をしていて、すごく好きだなと思った。もしかしたら加藤さんは声の仕事も向いているのかもしれない。というか私が聴きたいので是非やってほしい。

 

 

5.主題歌

 主題歌はみんな大好き「BE FUNKY!」。曲だけを聴いても「前へ進め!」という強いメッセージが伝わってくるが、ドラマと併せて聴くとまた感慨深い。徳田が走っている映像とともに流れる「BE FUNKY!」の疾走感は清々しくて、さっきまで頭の中を支配していた嫌なことも吹き飛んでしまいそうな感じがする。
 歌詞も「トラブルマン」の内容を反映したものになっている。「悩んでないでススメヨ」とか「難解な人生もいっそタノシメ」とか、これらの歌詞は聴き手に向けたものでもあるし、同時にドラマの主人公・徳田に向けた言葉のようにも思える。
 更に言うと、個人的には加藤さん自身「BE FUNKY!」がものすごく似合うと思っている。「こんな輝く世界 止まらない 期待・愛・未来」なんて歌詞があって、しかも加藤さんがそのパートを歌っていることに何度も感謝している。そのせいで多重に意味が重ねられて加藤さんと「トラブルマン」と「BE FUNKY!」のどれもが愛おしく思えて仕方がない。

 


6.いいからとにかく見て

 あとなんかもう加藤さんのビジュアルが最高。長めの前髪と明るすぎないけど暗いわけでもない茶髪は、作家イメージ*6の強い今ではなかなか見られない。「結局最後は顔かよ」って感じだけどとにかく恰好いいしかわいい。DVD-BOXは5枚組で、各ディスクに加藤さんの顔(どれも最高)が印刷されているからそれを見るだけでも楽しい。まずBOXを開けたときに見えるディスク1からもう既に恰好よさとかわいさで体力が削られる。その後もディスクを入れ替えるたびに加藤さんの顔を見ることになる。しかもどれもいい瞬間を切り取った写真なのでもう最高。
 7話・8話あたりから怒濤の徳田のターンが始まるが、現在の徳田と過去の徳田のギャップも良い。現在の徳田はスーツ姿(ネクタイなし)で周りの人には敬語で話すし一人称は「僕」だが、過去の徳田は彼女と話している場面が多いため砕けた口調で話すうえに一人称も「俺」だし私服。大家さんの部屋ではどこか委縮したままの徳田が回想シーンでは柔らかく笑う場面もあって、いろんなギャップがぐさぐさと刺さりまくる。
 他にも様々なポイントがあるけれど、転んで地面に倒れたり返り血浴びたり殴られて口の中切れたり自分の頭に銃構えたり、とにかくおたくの性癖に刺さりそうな加藤さんがいっぱい見られるから是非!!!

 

 

トラブルマンDVD-BOX

トラブルマンDVD-BOX

 

 

 最終話のクライマックスの「なんかよくわからんけどハッピー!」って気分が最高。何がどうハッピーなのかよくよく考えるとわからないような気もするが、とりあえず世界は救われたし、NEWSの「forever」が流れる中で描かれる彼らはどこか晴れ晴れとしている。未来はたぶん明るい。一難去ってまた一難去ってまた一難去ってを繰り返し、いつかは明るい未来がくるのだ。
 とにかく、いろいろあるけど最終的にはいい感じになるからハッピー!って気分。ハッピー!元気のない日は最終話を観ようって思うくらいにハッピー!(この記事を書くために全12話観終わった感想)(あくまで個人の感想です)(ハッピーには個人差があります)(深夜に観終わりました)

 

 以上、是非とも「トラブルマン」を見てくれ!!!という話でした。「トラブルマン」はいいぞ!!!

 

*1:「勇者ヨシヒコ」とかの枠

*2:2話~6話あたりはアパートの住人たちの過去話。7話あたりから徳田の話になるので、前半で飽きずに後半まで見てほしい。特に8話から怒涛だから!!!

*3:そういえば「パパと娘の七日間」の健太先輩も、入れ替わったパパと娘に振り回されていたし、舞台「中の人」も巻き込まれていた

*4:セカイ系の話になるとよく出てくる「きみとぼく/社会領域/世界の危機」にも当てはまらなくはない

*5:かつて放送されていたレギュラー番組

*6:加藤さん的には黒髪&前髪分けてデコ出しが作家イメージなのだろうか。作家として表舞台に出るときはだいたいそんな感じ