ダイアリー 16/09/06


 9月3日・4日に開催された「横浜ロマンスポルノ'16 THE WAY」が終わった。幸せな二日間だった。ポルノに関しては考察厨ではないつもりだったけれど今回のライブについて、そしてポルノのライブ全般について思ったことを書き残しておこうと思う。
 ※ライブレポではなく感想文なので、詳細なレポが読みたい方は他をあたってください。私が書くのは個人的な感情で書かれた感想文です。

 


 セットはシンプルで、メインステージ(以下メンステ)、センターステージ(以下センステ)、バックステージ(バクステ)、以上。という感じ。装飾があまり施されていないというか、いつものゴテゴテ感がない。今までの横浜スタジアムでのライブは割とセットがコンセプチュアルだったので*1、会場に入って少し驚いた。着席すると「シンクロライト」という光る制御式リストバンドが置かれていた。今回はこいつが使われるわけね、何が来ても驚かないわよ、という気持ちで腕につける。
 今回のライブはいきなりセンステでいきなりアコースティックアレンジ(しかもサポメンつけずに2人だけ)から始まるという予想外の展開。いつも様々な驚きを用意してある「ロマンスポルノ」シリーズだが、今回も驚かされた。一曲目は「ハネウマライダー」。横浜スタジアムでの初めてのライブが「横浜ロマンスポルノ'06 キャッチザハネウマ」だったがゆえになんだか感慨深い。
 パーカッションとキーボードもセンステに登場し、「サウダージ」「アゲハ蝶」もアコースティックバージョンで演奏。絶対に盛り上がる定番曲を新たなアレンジでブチ込んでくるところが安定を求めないポルノグラフィティという感じがしてすごく好き。夏の音楽番組ラッシュで毎年聴いているし今年も散々聴いたのに、アレンジによって曲の新しい一面を引き出していた。
 その後はメンステに移動。お馴染みの曲も新しい曲も久々の曲も入り乱れた感じ。個人的には「ギフト」が聴けたことが嬉しかった。何度もこの曲に励まされたし、8年前に「横浜ロマンスポルノ'08 10イヤーズギフト」でこの曲を聴いたことを思い出す。
 メンステに移動したあたりからポルノのライブ名物ともいうべき照明が大活躍。今回も照明がえぐい(褒め言葉)。照明がえぐすぎてセットのシンプルさも頷ける。これだけえぐい照明だったらセットはシンプルなほうがいい(えぐいはこの場合褒め言葉である)。
 沢山の照明が、曲に合った色で会場を染める。一日目は雨だったしアリーナ席だったのであまりよく見えなかったが、二日目は晴れたしスタンド席だったので照明の美しさと壮大さを体感することができた。
 「敵はどこだ?」では赤い照明や瞬く点滅で、危うい世界観を表現する。「2012Spark」の「LEDが光る信号機 危険を察して点滅している」という歌詞では赤・緑・黄に光って「信号機」を表現していた。「愛が呼ぶほうへ」では優しくあたたかな光が会場を包み込んだ。「Ohhh!!!HANABI」では歌詞にもあるように色とりどりの照明がかわるがわる光ってお祭り感を煽っていた。
 本編ラストは「THE DAY」。今回のライブのサブタイトル「THE WAY」の元にもなっている曲だ。曲の前に、岡野さんがポルノグラフィティのこれまでのことを振り返る。「ポルノグラフィティは21年前、大阪で一歩を踏み出したのが始まりでした」と結成時まで遡る。「ポルノグラフィティのここまでの道のりは皆さんが応援して作ってくれた道です。これからも一緒に歩いてください」(的なニュアンス)のことを岡野さんが喋っているあいだ、メンステ前方についている照明が会場の方へ向けて斜め上に光を伸ばしていた。それがまるで道のようで、ポルノはこれからもどんどん進んでいくんだろうなぁ、と思わせた。
 岡野さんが「両手を掲げてみて」と言うので両手を掲げると、シンクロライトが光った。三万人近くの人が掲げる光がスタジアムを埋め尽くす様子を、上空を飛ぶドローンが映し、その映像がモニタに表示される。シンクロライトの光が消えたと思ったら、今度は「THE DAY」という文字になるように光る。白い光で文字が浮かび上がり、その周りは赤い光。そして流れる「THE DAY」のイントロ。
 曲のあいだ、シンクロライトが激しく点滅する。絶景だった。一日目はアリーナだったのでわからなかったが、二日目にスタンド席から見た景色は絶景だった。あまりにもすごくて、何が起きたのかわからないくらいすごかった。できることならもっと上の方の席から見渡したかった。ポルノのライブは照明がすごいという話はさっきからしつこくしているが、シンクロライトの光でポルノのライブの照明のひとつになったような感じがした。「THE DAY」という曲の世界観を作りだす光のひとつが私。こんな体験ができるなんて思わなかった。もうライブも終わってしまう頃なので腕を挙げるのが痛いのに、この光のひとつになっている腕を下ろしたくない。必死に腕を振り続けた。
 曲が終わったかと思いきや、今回のための追加歌詞が歌われる。

目の前を遮る 壁のようなREAL WORLD
深い森に分け入るよりも
危険な香りの THE WAY
絡み合うCROSSROAD 幾千の罠 罠
その先に待つ人のために 足を踏み出す
君の THE WAY

 あまりにも心に沁みすぎて涙が出た。
 ライブが終わればみんな日常に帰っていく。そこには楽しいこともあるだろうけれど、つらいことも多い。「ろくでもないこの世界」を生きる「君」に寄り添うような歌詞。ポルノグラフィティの道を振り返る、という話をした後に「君の THE WAY」と歌うところがポルノらしいな、と思った。
 「その先に待つ人」は、私にとっては「自分」だと思う。理想の自分。私は誰よりも私のことが大事だ。だって、私は私だから。私が行動するのはすべて私のためで、他の誰のためでもない。踏み出した先で待っている理想の私のために、歩き出そう。
 曲が終わる。さっきは「THE DAY」という文字を描いていたシンクロライトが、今度は「THE WAY」になる。「THE DAY」に向かって踏み出せ、というポルノからのメッセージだ。メッセージを受け取っているあいだにメンバーはステージからいなくなっていた。なんて美しい終わり方なんだろうと、そこでもまた涙が滲んだ。


 アンコール一曲目は新曲、仮タイトルは「LIAR」。新藤さんの美しい歌詞が活きる、スペインっぽい曲調。歌い出しを聴いた瞬間に売れると確信した。11月9日発売です!
 二曲目は「エピキュリアン」。歌詞に「ロマンスの風」とあるのでセトリ入りしたのだろうか。声を出して盛り上がれるところが楽しい一曲。
 そしてメンバー紹介。4日の公演では新藤さんが「屋内でのライブは客電が消えているから、入ってきた瞬間は上の方が見えづらいけれど、横浜スタジアムでのライブは始まる頃はまだ空が明るいから上の方まで見える。楽しむぞ、という表情がみんなこっちを向いているのが見える」というような話をしていた(うろ覚えだけどそういう感じの話)。ふと、何かのライブ(「PURPLE'S」かな?)で「客席の電気つけて、お客さんが見えない」と言い出した新藤さんを思い出した。
 最後は勿論「ジレンマ」。これがなければ帰れない。シンクロライトもオレンジや赤に光って会場の熱をどんどん上げる。曲の終わりには、岡野さんが「自信持っていけ!胸張っていけ!」と言う。毎回言ってくれる言葉ではあるけれど、こんなに心強い言葉はない。

 

 「最後一曲!ジレンマ!」と煽っていたのに、さらっと「後ろの方に行ってないけぇ今からそっち行くわ~」というノリでバクステへ移動。メンステにサポメンを残し、二人だけでバクステへ。
 二人がバクステへ移動していく様子(アリーナ席の脇の道を堂々と歩いていく)はオープニングの真逆だった。二人で始まったライブは、メンステにサポメンはいるものの二人で終わるという構図になっていた。
 16年前に作ったこの曲のような気持ちでいたいという所信表明だと岡野さんが話した。その時点で、何をやるかわかった。「ダイアリー 00/08/26」。
 曲自体がとても好きだけれど、それ以上にこの曲に込められた想いが好きだった。夢が叶ってメジャーデビューし、「アポロ」がいきなりのヒット、「ミュージック・アワー」はポカリスエットのCMソング、「サウダージ」は大ヒット。そんな彼らが、「近頃じゃTVの中、僕を見かけたりするだろう? そんな僕を見て君は、喜んでくれているかな?」*2と歌う。人気バンドとしての道を歩み始めたことへの不安と、こうありたいという意思が歌われている。メンバーにとっても大切な曲であることが過去のインタビュー記事からも伺える*3
 そんな曲を、「所信表明」だと言って、ライブの最後の曲である「ジレンマ」の後に歌う。そこに込められた意味を考えずにはいられない。
/> また、今回のこの曲はコーラスなしで演奏されていた。にも関わらず、新藤さんも歌っていた。コーラスなしだからマイクはない。横浜スタジアムという広い会場だし、そもそも演奏の音で生の声は届かない。にも関わらず、新藤さんも歌っていた。口ずさむ、ではなかった。会場を見渡して、何かを届けたいという意思をもって歌っているように見えた。どんな気持ちで、どんな意図で歌っていたのかはわからない。でも、たとえ聞こえなくたって歌いたくなるような想いがそこにあったのだろう。
 この曲は「君」への問いかけから始まる。この「君」にはいろんなものを当てはめることができると思っている。私はポルノが(もっというとこの歌詞を書いた新藤さんが)過去の自分を「君」と呼んでいるのだと解釈していた。バンドを始めた頃の自分に向けて問いかけているように思えていた。
 でもポルノのこれまでの道のりを振り返って聴いた「ダイアリー 00/08/26」では、そこで歌われる「君」のひとりに私もいる気がした。ポルノがファンを愛してくれているから、ポルノと共に年月を過ごしてきたからこそそう思えたのかもしれない。彼らを追いかけてきて本当に良かった。
 この「ダイアリー 00/08/26」は新藤さんが2000年8月26日に思っていたことを書いた歌詞だ。その曲を所信表明として演奏したのだから、この曲はきっと「ダイアリー 16/09/03」「ダイアリー 16/09/04」にもなったのだろう。
 岡野さんも新藤さんもすごく楽しそうな顔をしていたのが印象的だった。こんなに楽しそうな顔でライブをする人たちのことを好きで良かったと心から思った。

 

 「ダイアリー 00/08/26」の歌詞には「大事な守るべき何か、忘れていたらそっと教えて。」というフレーズがある。ポルノは一度だって「大事な守るべき何か」を忘れたことはないと思う。3人から2人になったりと、ポルノの在り方が変わったことによって、「大事な守るべき何か」の守り方がわからなくなって模索していた時期はあったように思うけれど、忘れたことはなかったように見える。
 じゃあその「大事な守るべき何か」ってなんだ、と言われたら他者にわかるように伝えるのはすごく難しいけれど、私は「」のことだと思う。
 以前、NEWSのコンサートで「君」になれることの嬉しさを書いた(いつまでも「君」でいられるように ―初めてNEWSのコンサートに行った日― - 来世はペンギンになりたい)。NEWSが気付かせてくれた「君」になれる喜びを私に与えてくれる人たちが他にもいる。それがポルノグラフィティだ。私はこの2組がどうしようもなく大好きなのだけれど、どことなく共通点があると思っている。それが「君」を大切に思っている、という点だ。
 ポルノのライブの演出には「君」を大切に思っていると感じる場面が多々ある。アルバムを受けてのツアーではないライブでは特に。
 一昨年開催された「横浜ロマンスポルノ'14 惑ワ不ノ森」。二人とも四十歳(=不惑)を迎えるということでこのサブタイトルがついている。オープニング映像では「惑ワ不ノ森に入ったっきりでてこない男たちが二人、生きていれば今年四十歳」という内容が日本むかし話風に展開する。そしてライブの終盤で「惑ワ不ノ森を抜けた先にいたのは君たちでした!」と岡野さんが叫んでいた。モニタに映し出された会場は、誰もが「楽しい」を絵に描いたような表情をしていた。岡野さんが「君たち」と呼ぶ中に自分が含まれていることが何より嬉しかった。
 今年の春に開催されたファンクラブ限定ツアー「FUNCLUB UNDERWORLD5」は、ポルノからの愛をとても感じるライブだった。ファンクラブ発足15周年記念企画の集大成として実施されたライブでは、ファンからの要望に応えて応えて応えまくっていた。また、会場の景色をバックに記念撮影し、その写真を後日公式サイトのFC会員限定ページで公開する、という試みも実践していた。「君」が今ここにいることを意識した演出のように思えた*4
 ライブの演出だけでなく、一曲一曲についてもそうだ。「ハネウマライダー」の大サビではよく「他の誰かと、いや、今ここにいる君と!」と歌わず会場に向けて叫ぶ。そのたびに「私は今ここにいるんだ」と実感する。いてもいなくてもどうでもいい存在ではなく、ちゃんとここにいる存在として、今ここにいる「君」として迎え入れられていることが嬉しい。ただただポルノが好きで追いかけていただけなのに、ポルノからも大きな愛を返してもらえる。ポルノグラフィティを愛していることとポルノグラフィティに愛されていることがイコールで成り立つ。
 上手くいかない日々に、自分の存在感が薄くなったり曖昧になってしまうことがある。そんなとき、ポルノのライブに行くと、「君は確かにここにいる」と教えてくれる。
 私は、私のことが一番大事だと思う。自己中心的でありたいというわけではなくて、自分のことを大切に思いたいし、自分に関する責任を自分で負うためにも自分を大切に思っていたい。けれど、周りと上手くやれなくて自分がまるで価値のないもののように思えてしまうことがある。一番大事なはずなのに、こんな価値のないものを大事に思うことが果たして正しいのか、と己に問うこともある。だけど、ポルノがファンを大事にしているのを見ると、私もそのファンのひとりとして大事にされているように感じる。誰かに大事にされると、それだけで価値があるように思えて、自分のことを大切にしようと思える。「君」に寄り添うポルノに、私は何度も助けられてきた。

 また、新藤さんは言う。「ポルノグラフィティは2人だけのものじゃない」と。沢山のスタッフやライブのサポートメンバーが関わって生み出されるのが「ポルノグラフィティ」だ、という意味にも捉えることができるが、私の解釈は違う。それだけではない。
 ポルノグラフィティの曲に、お二人の言葉に、私は気持ちを重ねすぎている。きっと私の思う「幸せについて本気出して考えてみた」は思い入れがありすぎて本来の曲とは違うものになっていると思う。そういう曲が他にも沢山ある。そもそも「何度も助けられてきた」と言ってしまう時点で、こんな文章を書いている時点で、いろんなものをポルノグラフィティに押し付けてしまっている気もする。私だけでなく、そういうファンは多いのではないだろうか。そういう人のことも含めて、「ポルノグラフィティは2人だけのものじゃない」。更に新藤さんは言う。「やりたいことだけやっていればいいわけじゃない」と。その言葉は少し悲しくもある。やりたいことをやるために始めたバンドだろうに、そんなふうに思わせてしまうことは、やはり悲しい。
 でも、それはポルノがファンを思うがゆえの言葉であるとも思う。ファンを愛しているからこそ、「やりたいことだけやっていればいいわけじゃない」。やりたいことだけやってくれていいよという気持ちと、私の思う「ポルノグラフィティ」でいてほしいという気持ちが拮抗する。でもいつも、後者が勝つ。人生でとてもつらかった時期に支えてくれたのはポルノの楽曲だった。だから、今更私が信じてきたポルノグラフィティを変えたくない。「やりたいことだけやっていればいいわけじゃない」という言葉は、そんな私の気持ちへの許しでもあると思う。許された事に安心して甘えながら、私は今日もポルノの曲に気持ちを重ねる。


 ライブ本編の最後に「君の THE WAY」と歌うポルノ。ひとりひとりの「君」が作りだす光。ポルノはどこまでも「君」を大事にしているなぁ、と改めて思うライブだった。

 

 私が見てきたポルノグラフィティは、「君」と歩いていく道を常に模索しながら歩いてきた。時に迷いながらも、「君」を大切に思う気持ちはずっと変わらない。私がそっと教えてあげなくても「大切な守るべき何か」をずっと守ってきた。
 そうして一緒に歩いてきた道を、これからも一緒に歩いていけることを、私は幸せに思う。

 

 また、今回のセトリは新しくファンになった人でも知っている曲が多く並んでいたように思えた。もしかしたら「オー!リバル」「THE DAY」というふたつのアニメ主題歌からポルノに興味を持った人に向けた部分があったのかもしれない。デビュー17周年を目前にして新規向けのセトリを組めるバンドはそうそういないのではないだろうか。改めてポルノグラフィティのすごさを思い知らされた。
 そんな幸せを感じるし新規でも楽しめるライブ「横浜ロマンスポルノ'16 THE WAY」がWOWOWにて10月29日に放送されます!!!是非ご覧ください!!!!!

 

ポルノグラフィティ 横浜ロマンスポルノ'16 〜THE WAY〜|音楽|WOWOW

 

 

 ちなみに10年前の「横浜ロマンスポルノ'06 キャッチザハネウマ」の感想文がまだとってあったので見てみたら、「グラヴィティ」のところの感想に

それから、この曲の途中からライヴの終わりまでずっと思ってたこと。
私は愛されてる。
私個人だけじゃなくて、私もあなたも。
あの会場にいた人すべて、いいや、彼らを愛する人すべて。
そのひとりひとりを、彼らは愛してる。

という文章が残っていた。文体が痛いけど、よくよく考えたら今回の感想と大差ない。今回も愛されてると思った。10年前と同じように。10年前と同じ気持ちをライブで感じられることを嬉しく思う。愛されてるって最高だね!

 

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*1:06はサーキット、08は工場、14は森がモチーフになっていたが、今回はそういうモチーフはなかった

*2:ポルノグラフィティ/歌詞:ダイアリー 00/08/26/うたまっぷ歌詞無料検索

*3:『ワイラノクロニクル』参照

*4:ちなみに「FUNCLUB UNDERWOLD4」では、ライブに参加した人々の名前をスクリーンに映し出す、ということもやっていた」