来世はペンギンになりたい

好きなものを好きと言うために生きてる

「美」とSFの世界 ―ふたつの「Skye Beautiful」―


 東京ドームに神様がいた。

 昨年、東京ドームで「Skye Beautiful」を初めて見たとき、神様だと思った。
 天地が開闢される瞬間を見た。あるいは世界が再構築される瞬間を見た。ステージの上、ひとりで踊る増田さんの神々しさはそういった類のものだった。
 『NEWS LIVE TOUR 2015 WHITE』がリリースされ、あのとき見たものを再び見返すことができるようになった。そしたら絶対に「増田さんが神様に見えるのはなぜか」という話を書こうと思っていたが、コンサート映像だけでなくMVまで神様だった。
 あまりにも「Skye Beautiful」が好きすぎて我慢できなかったので、何を見て何を考えたのかを書き記しておく。

 

コンサート版「Skye Beautiful」

 惜しむらくは東京ドーム公演しか行けなかったこと。ドームとアリーナではまた印象が違ったのではないかと思う。しかしドームしか見ていないしドームの映像しか残っていないので、ドームで披露された「Skye Beautiful」について語りたい。

 

 モニタに表示される砂嵐、浮かび上がる「Skye Beautiful」の文字。ゆったりとしたイントロが聞こえ始める。ゆったりとしたシルエットのポンチョをまとった増田さん。最初に見える映像は穴の底から見上げた星空のように見える。
 歌い出しからしばらくは照明の光がゆらゆらとたゆたいながら増田さんを照らしている。
 増田さんの真上から照らす一筋の光は揺らがない。他の照明は細い光がいくつか束ねてあってゆらめいたり、点いたり消えたりを繰り返しているのに、真上からの一筋の光は揺らぐことなく増田さんに降り注ぐ。最初に見えた星空の映像に、ひとつ大きく光る星があったが、おそらくはこの一筋の光はあの星を表現していて、増田さんを照らしているのだと思う。
 「'Cause, everithing's beautiful」という歌詞で曲が動き出す。モニタに光が生まれ(なんて言えばいいのかわからないから実際の映像を見てください)それがはじけると共にそれまで使われていなかった黄色い照明も使われるようになる。白一色だった世界に色が生まれる。
 そしてモニタに大きな翼が映し出される。中央にいる増田さんと重なって、増田さんの背中に翼が生えているかのように見える。ゆっくりと両腕を広げた増田さんの動きに合わせて翼が広がり、増田さんが力強く羽ばたいた瞬間に翼も羽ばたく。そしてモニタに映し出された鳥が飛び立つ。
 注目したいのは、鳥が飛び立った後からは増田さんを照らしていた白い一筋の光がなくなること。穴から抜け出て外へ飛び立ったということを示しているのだろう。
 間奏部分はダンス。赤い照明も使われている。ゆったりとしたシルエットだったポンチョは増田さんが激しく踊ると翼のようにも見える。
 また静かなパートがきて、増田さんの周りにある小さな白い照明がすべて増田さんに向かっている。既に外の世界に飛び立ったのであの一筋の光はもうない。いろいろな方向からの光。
 増田さんの歩くところだけ階段に光が射す。増田さんの歩くところに道ができる。増田さんが道を歩くのではない。増田さんの歩くところが道となるのだ。
 「And now my heart is UNBREAKABLE」という歌詞から激しいダンス&ラップパートに入る。「UNBREAKABLE」と言いながら激しく点滅する光(何度だって言うけど「UNBREAKABLE」で曲がBREAKしているここが好きすぎる)。映像の切り替わりも激しくなるし、照明の動きも激しい(白と黄色と赤)。点滅する光のせいで増田さんがコマ送りに見えて神々しい。最終的に天に向かって両手を広げて黄色と白の光に照らされた増田さんが音が消え光が消え闇に溶けて終わる。あの美しさと力強さを「神」といわずしてなんだというのか。

 流れを書き出してみたが、あまりにも美しい。光も映像もとてもシンプルなのに壮大で、というかあの広いドームに1人で歌い踊っているのに壮大で、見ている者を圧倒する。シンプルだけれども手が込んでいてそこには確かに意味がある。しかし意味を汲み取ろうとする思考を奪うほどに圧倒される。増田さん1人対東京ドーム55000人で、1人が圧勝する。
 DVDに収録されている「Skye Beautiful」にはやたら引きの映像が多い気がするが、ステージ外や上部の照明も含めて見せたいからなのかもしれないと思った。特に前半では真上からの一筋の光の起点から収められている構図が多いように見える。
 また、最初に映った映像では真上の眩しい光の周りにいくつも星があった。増田さんを取り囲むペンライトの白い光はこの星にたとえられているのではないかと思った。だからこそ、客席まで映るような引きのアングルが多いのかも知れない。
 実際に見たとき、まるで何かの儀式のようなパフォーマンスだった、と記憶している。ラップ部分が終わったあとのダンスがまるでその身に神を降ろすような、シャーマン的な動きのようにも見えた。昨年の覚書を見返すと、増田さんが天地を開闢したと書いてある。その印象は間違いではなかったと今でも思う。
 

 

MV版「Skye Beautiful」

 結論から言うとこのMVに描かれているのは「神が誕生し地上に降臨するまで」の物語である。私にはそう見えるというかそうとしか見えない。考察というよりはただの妄想でしかない……。

 

 何もない空間で落ちていく増田さんの映像から始まる。時折アップでリップシンクしている映像になる。このとき、増田さんの表情は特になんの感情も表現していない。無である。まるで人形のようにも見える。
 増田さんが落ちていく空間には何もないし、増田さんもなんの感情も表現しない表情をしている。キーワードは「」。なにもないのである。この空間には増田さんという「器」以外なにもない。多分この増田さんの中にはまだ何も入っていない、と思わせるような無の表情。
 このなにもない空間に増田さんは生まれた。なにもない、SFアニメでありそうな異空間といった雰囲気。沢山の光の線がある。もしかしたらこの線は増田さんが落ちていくことを意味する(線が上に動いている+下から風が吹いているように見える=増田さんが落ちているように見える)ためだけにあるのかもしれないが、他の意味も含まれているように解釈できる。これらの線は「世界に関する情報」がかたちになったものであり、増田さんは落下して「世界に関する情報」のそばを通過することで情報を得る。何言ってんだこいつって顔はしないでほしい。そういうSFの世界に見えてしまう。
 'Cause, everithing's beautiful」で、ずっと無の表情だった増田さんが何かに気付いたように目を開ける。落ちる速度が上がる。世界の情報を与えられたがゆえに己が神であることに気付いたのだ。覚醒。神が覚醒した瞬間である。それまでは「器」だけだったものが満ちて自我を持った。今までは落ちているだけだったのが、覚醒して以降は意識を持って下に向かって飛んでいくようなポーズになる*1
 それからまた一度、意思とは関係なくゆっくりと落ちている映像に戻る。これは神の葛藤を描いているようにも見える。意思を持って地上へ降りるべきなのか、まだ漂っているべきなのか。しかし神は地上に降りることを決める。途中で映る黒服の男たち(ダンサー)は神の眷族であり、地上で神を待ちうけている。増田さんが降臨した瞬間、地上には光が溢れる。
 降臨した神はそれまでのシーンとは打って変わって激しいダンスを踊る。そして最後の場面では従えたダンサーたちの手によって千手観音のごとき重厚な神々しさをまといながら、神は手を差し伸べる。
 
 気になるのは、この神は救いをもたらすのか破滅をもたらすのかというところ。降り立った先が暗く重たい雰囲気なので、どうも手放しに「救い」とは言い切れないような感じがある。もしかしたら世界を滅ぼすために地上に降り立ったのかもしれない。そんなことも思わせる。
 MVはCGとの組み合わせで出来ている部分が大半を占めていることもあって、どうしてもSF的な物語を展開させたくなってしまう。
 
 

ふたつの「Skye Beautiful」

 「And now my heart is UNBREAKABLE」から始まるダンスパートの振付が違うことからも、ふたつの「Skye Beautiful」は同じものではない。似て非なるものである。
 
 コンサート版は、MV版は。向かう方向が逆になっている。
 歌詞を見てみると「Reach for the skye(翼/空)」「Reach for the stars(星)」「Reach for the light(光)」「Stay Beautiful and このまま let's go FLY!」というように、なんとなく上方向をイメージしたくなる単語が並んでいる。歌詞との関連性はコンサート版のほうが濃い。
 また「skye」という単語だが、ゲール語(アイルランド等の言語)で「翼」という意味があるらしい。「wing」ではなくわざわざ「skye」を使っているのには何か意味があるのだろうと思うけれど、「sky」とかけていそうなことくらいしかわからない。というわけで「Reach for the skye」には翼と空の両方の意味があるのではないかと思う。そう考えるとよりコンサート版のほうが歌詞との関連が強いように思える。
 MV版には「翼」に関連するものは特に登場しないようにも思えるが、ダンサーの顔を隠している部分が鳥のくちばしのようにも見える。だとしたら彼らの服は黒いので、コンサート版での白い翼とは対になる。コンサート版ではダンサーがいなかったのがMV版ではいるというのも対照的だ。
 同じ曲なので物語が動くところ(「'Cause, everithing's beautiful」の後と「And my heart is UNBREAKABLE」の後)は同じだ。それは変更のしようがないのだろう。盛り上がる部分の動きは同じままで、そこにふたつの対になるイメージをあてはめた感じがする。
 コンサート版では飛び立つイメージで、MV版では降り立つイメージ。真逆でありながら、しかしどちらも雰囲気は近い。
 増田さんはMVのメイキングで「本当の自分なんてわからない」と話している。「これしかやりたくないというものはない」。真逆の方向へ向かうふたつの「Skye Beautiful」のことを考えると、増田さんの話していた内容がすっと頭に入ってくる。ふたつの「Skye Beautiful」から共通するものを取り出したら、増田さんの描きたいもの(それが本当の増田さんとまでは言わないけど)があるのではないかと思う。両者に共通している「」がそれだ。表現したいものの本質はどちらも変わらないのだ。

 増田さんの思う「美」を表現としてわかりやすい形にするとSFっぽくなるのだなぁと「PeeKaBoo...」以来ずっと思っている。コンサートでの照明の使い方といい、なんとなくSFっぽい。SFっぽいというか、現実にはなかなか存在しないというか、人間を超越したところにあるような感じがする。
 「PeeKaBoo...」は未来の世界(あのサングラスと衣装の感じが未来感ある)、「Remedy」は技術が高度に発達したディストピア社会(伊藤計劃の『ハーモニー』のように医療の発達した社会のイメージ。愛や恋の類が「病気」とされる世界)、そして「Skye Beautiful」が自然(星、空、翼等)と神(どことなくアニミズムぽい)。どれもそれぞれにSF的な要素がある。ステージ上の演出の仕方にもSF感がある。かつ、どれもダンスが美しい。増田さんのダンスは「THE 身体」という感じ(伝われ)。増田さんという存在をこれでもかというほど見せつけてくる。体の大きさ以上に大きく見える。そういうダイナミックさは人間の身体だからこそ出せるもののはずなのに、人間を超越したものをそこに見てしまう。
 人間を超越したものを人間の身体が表現しているところに、増田さんが表現しようとしている「美」があるのかもしれない。
 
 正直このふたつの「Skye Beautiful」の違いから見えるものを考えたところでそこに意味なんて何もないのかもしれないし全部こじつけにすぎないのかもしれないけれど、ていうかこじつけだろって思うけれど、ふたつを見比べて、増田さんは自由の翼を手に入れて飛び立っていったけれど確固たる意志で地上(=ファンの眼前)にいることを選んだのだというように感じた。
 コンサート版は最後も天を仰いで両手を広げていて、「上」という方向が意識されていたように思える。MV版は最後は手を差し伸べる。差し伸べられた先にいるのはMVを見ているファンだ。手放しに救いとはいいきれないあの少し妖しげな雰囲気があるのは、アイドルが絶対の存在ではなくて見る者によって救いにも毒にもなるような、そんな印象も受ける。しかしとにかく増田さんは翼を手に入れ飛び立ったにもかかわらず、それでも手を差し伸べてくれる。増田さんのやりたいことは地上(=ファンの眼前)にあるのだろうか。できることならその手を救いと捉えていたい。
 「思うがまま」「感じるままに」というような「ありのままであること」を示す歌詞が見られるこの「Skye Beautiful」。いろいろなものを脱ぎ捨ててもなお増田さんは手を差し伸べてくれるのかと思うと、彼がアイドルであるということを思い知る。コンサート版で見せた翼は、MV版でなくしてしまったわけではない。アイドル増田貴久は翼などなくても飛び立てるのだ。
 増田さんに対してあまり情報をもっていないしどういう人なのか掴みきれないところがあるから軽率に重ねた考察はあまりしないようにと思ったけれど、そんなことを思った。
 
 自分がなぜ増田さんのソロにこんなに惹かれるのかと考えたら、曲の恰好良さは勿論のこと、増田さんが見せてくれる「」のSF性が理由のひとつだ。にわかの域を出ないがSFが好きで、増田さんのソロを見ると更にSFが好きになる。この曲の演出が最も似合う小説や世界観はどれだろうかと考えてしまう。そうやって考えることで曲に対する考えも深まる気がする。
 歌=人間の声とダンス=人間の身体を以て、人間を超越したものを表現する(しようとしているのかわからないけれど結果的にそう見える)、その美しさに惹かれる。これはNEWSでは増田さんだから出来ることだと思うし、他のグループにも(というか他のアーティストにも)なかなかいないのではと思う。できることならもっとSF詳しい人に増田さんソロの映像を見てもらって考察してもらいたい。
 まだQUARTETTOツアーには入っていないので「LIS'N」がどんなふうになっているのかはわからないけれど、期待を裏切らないことだけは確信している。
 
 
 
 
 
 
 
 
 あと増田さんのものづくりを見られるのほんと贅沢すぎるからみんな通常盤買ってメイキングを見たほうがいいぞ!!!

 

 

*1:増田さんともなれば武空術も使えるんだ……と思った