それはやっぱりどこまでも行ける切符 ―「できることならスティードで」感想2―

 14の感想は書いたのに続きを書くのすっかり忘れていました。忘れがちなくせに書いておきたいタイプなので書いておきます。とりあえず584回ぶん。

 

 

 

 

Trip5:ブラジル京都(2017年冬号)

 舞台「グリーンマイル」の話題。もはや懐かしい。サブタイトルの通り、「グリーンマイル」という話題を軸にしながらブラジル・京都の二本立てのようになっていて構成のうまさが光る回でもある。

 ブラジルについては実際に行ったわけではなく、ブラジル料理ポン・デ・ケイジョをつくることでキッチンからブラジルへの旅をすることができるという話。「調理」という行為がなかなか苦痛な私からすれば、加藤さんのように楽しめるのはすごいなぁと単純に思う。私が手馴れていないせいもあるけれど、自分の不器用さが如実に出る作業だし、料理をしているあいだは今している作業に必死なので段取りも全然考えられずにパンクしてしまう。昨日も「早く仙豆みたいな最強栄養食が出て、料理は趣味としてやる程度のものにならないかなぁ……」と思いながら人参を千切り(だいぶ太い)にしていた。その後、菜の花を茹でておひたしにするまで耐えられず、帰宅した夫に代わってもらって洗濯物を畳むことにしたが、そっちのほうが圧倒的に楽しく、加藤さんのように料理を楽しめるのは才能のひとつなんだろうなと思った。私にはその才能はないみたい。今のところ開花する予兆もない。

 京都については、こちらは実際に行っている。舞台の公演会場が京都で、そのときの話。お仕事の合間にも京都を堪能しようという姿勢が加藤さんらしいなと思った。私は一人で食事を楽しむということができない(一人だったらいかに安く腹を満たすかしか考えない……)ので、加藤さんのように普段とは違う土地で一人の食事を楽しむのもいいなぁと思う。旅先だと五感も研ぎ澄まされて、いつもなら気にしない会話も耳に入ってきたりするのかもしれない。でも一人だったら安ければいいやって思うから京都でマクドナルドとか牛丼とか食べそう……

 そして後日、食べられなかった「エレベーター」に後から気づくところは思わずくすっとしてしまう。エッセイは「自分がどう考えているか」が書かれている回と「自分の身の回りで起きたこと」が書かれている回があるけれど、今回は後者。私はどちらかというと気楽に読める後者のスタイルが好きだ。(でないと次の回のようにぐるぐると引きずってしまう。それも時には必要だと思うけど。)オチまでしっかりまとまっていて、その意味でもなかなか好きな回である。

 

 

 

Trip6:ニューヨークから世界へ(2018年春号)

 NEWSでニューヨークに行ってグラミー賞の授賞式を見たときの話。洋楽については明るくないのでグラミー賞と言われてもあまりピンとこないが多分すごいものなんだと思う。

 人には語ることと語らないことを選ぶ権利がある。今回のエッセイで「#MeToo」について語ったことに、まぁ加藤さんがネットを中心として起こった運動について知らないわけがないよなと思うとともに、普段この人は語ることと語らないことを選んでいるんだ、と当たり前のことを思った。「脳みそ露出狂」なんて言われることもあるけれど、ちゃんと選んでくれていて、信頼~~~!って気持ちになる。選んで言葉にしてくれているから、安心して加藤さんから言葉を受け取れる。勿論、選ばれて出てきた言葉に対して傷ついたり怒ったりもするけれど、それが「選ばれて出てきた言葉である」という点には安心できる。安心と信頼の加藤シゲアキ

 話が逸れた。エッセイ中に出てくる「タイムズ・アップ」という運動についてはこのエッセイで初めて知った。「#MeToo」と同じくセクシャルハラスメントに対する運動である。グラミー賞でもその運動に賛同する人々の姿が見られ、そこから思考は彼の子供時代へと飛ぶ。小学生の加藤少年が出会った差別と、絶望と、他人任せの期待の話。非常に素直で実直で、しかし誤解のないよう選ばれた言葉で書かれていると感じた。

 なので私もなるべく誤解のないように、かつ素直に書くと、この回に書かれていることは難しくてとても「わかる」とは言えない。書かれている文章とその意味を汲み取ることはできても、それを理解できているとは思っていない。単純にグラミー賞アメリカの話が私の生活圏とはかけ離れていて状況を想像するのが難しいというのもあるし、差別(ハラスメントや蔑視といったものも含む)について語る言葉をもっていないということもある。語る言葉をもたないのは知識がないからで、半端な知識で私が語ったことで誰かが傷ついてしまうのは嫌だと思うから、結果として何も言えることはない、ということになる。「よくない」とか「なくなってほしい」「被害を受けた人が救われてほしい」とは思うけれど、私は私のことで手いっぱいで、それ以上のことを抱えるのは難しい。っていうと「それは私の問題ではない」と切り捨てることになってしまうからそれとはまたちょっと違うんだけど……この話をすると私の自己評価の低さとかそういうのが入ってきてしまうのでこれ以上は割愛するけど(割愛するが結構重要な気がするので個人的に一旦持ち帰って考えます)、手いっぱいであることは確かだ。取り零している問題がただでさえいっぱいあるのに、そこにまた新たな問題を乗せられる余裕がない。なので、考えが上手くまとまらないな。まとまらないけど、エッセイからこんなふうにいろいろと考えることが、エッセイが書かれている意味のひとつだと思う。だって加藤さんのエッセイ読まなかったらこんなこと考えてないだろうし。

 この号が出た直後も、今も、変わらず手いっぱいでいる。

 

 

 

Trip7:時空の旅(2018年夏号)

 「旅する落語」で箱根に行き、そこで見たものや考えたことをつかって落語を披露したときの話。ここでタイトルを「箱根」としないところがいいなと思った。そうやって捻ったことをしてくる面白さ。しかもこれ、「EPCOTIA」にも掛けているでしょ。好き。

 話の主題は落語のために旅をした箱根のことではなく、その「落語」自体だ。加藤さんはかつて一人舞台「こんなんやってみました。」でも自作の落語を披露していて、そのときのことと今回の落語とを引き寄せて語っている。余談だが、この舞台のパンフレットにも加藤さんのエッセイ(散文)が掲載されていて、めちゃくちゃ愛おしくなるのでもし手に取る機会があれば是非見てみてほしい。私は舞台そのものを見たわけではないが、このパンフは宝物だ。

 当時の自分は上手くできていたと満足していたものでも、今の自分が見てみると「お前これでよく満足できたな!」くらいに思えてしまうこともある。年齢を重ねるなかで様々な経験をして、以前よりもレベルが上がったから気づくことが増えたということもあるだろう。ましてや加藤さんのような職業であれば、同年代以上に経験していることが多そうだし。

 そんな加藤さんが語る、かつて落語を披露した自分と今落語を披露しようとしている自分。このときの落語は、すごく勉強してすごく練習したんだろうなというのが見えて、加藤さんへの好感度がめちゃくちゃ上がった。きっとかつての加藤少年が見ていたら(ちょっと斜に構えたところのある少年はきっと素直に「かっこいい」とは言わないだろうが)「いいな」と思ったんじゃないかな。その話を「U R not alone」にのせて紹介するの、本当文章のまとめ方として上手くてさすが!よっ加藤屋!みたいな気持ちになる。

 加藤さんほど人生経験のない私にも、過去の自分に対して「なんでそれでいいって思ってたんだろう」と思ったことがある。短歌だ。このブログを始めてしばらくしてなんとなくやってみたら「おっ私いい感じじゃん」と思ってやり続けているが、初期のほうの作品を見てみたらいや~~~マジで!?ダサ!!!みたいな気持ちになる。いいなと思うものもなくはないけど、単純に「洗練されてない」みたいな感じに見える。そういうのがわかるのは私の短歌に対する感性が磨かれたからだろう。そういう経験って大切だし、加藤さんがそういった経験を積み重ねていってくれるのが勝手に嬉しい。私もそうやって成長していきたいな。

 

 

 

Trip8:小学校(2018年秋号)

 「NEWS2人」で出会った“小学校へ行きたくない問題”を受けて書かれたもの。私の個人的な意見を述べると、小学校へ行く以上にやりたいことがあるのなら行かないという選択肢をとることがあるかなとは思うが、そうでないのなら行ったほうがいいとは思う。加藤さんの言うように「学び方を学ぶため」にも、行っておいて損はないという考えだ。同年代の人間と集団で生活するという行為は、学校に行かないとなかなかできない。良い面も悪い面もあるが、そこから学べることもあるだろう。少なくとも私はあった。

 しかし、どちらかというとこれは親や周囲の大人が子どもに対して無関心なのかな、という印象を受けた。集団で授業を受けるということが苦痛なのであれば、その原因を探る。これは子ども自身ができることではなく、親やその周りの大人だからできることだ。子ども自身が「苦痛に思っている」と思っていることが実は別の原因によるものということもあるだろう。それを見極めるのは、大人の役割ではないかと私は思う。

 「授業の内容がわからない」から苦痛なのであれば「何がどうわからないのか」「なぜわからないのか」を突き止めないと解決方法は導けない。「授業のあいだ、じっと座って話を聞く」のが苦痛なのであれば、もしかしたら子ども本人の意思とは無関係の何かが影響しているのかもしれない。そういった部分は子ども本人ではわからないことが多い。「集団で授業を受ける意味がわからない」ことが苦痛なのであれば、集団で授業を受けることの意味を一緒に考えることもできるだろう。私は集団で授業を受けながら、そこでいかに個性を発揮するか、みたいなことを楽しんでいた節がある。そういう楽しみ方を子どもに提示することも、大人ならできるのではないだろうか。

 私も中学生のころには学校に通うのが苦痛だったけれど、その原因が自分では明確にはわからなかった。周囲に合わせることが苦痛だったのは確かだが、それ自体が原因だったのか、その更に奥に原因があったのかは、当時の私にはわからなかった(今は当時よりはわかるようになっている)。小学生が苦痛の原因に気づけなくても不思議ではないし、気づけないものだと考えた方がいいのではないかと思う。子どもを舐めているからそう考えるのではなく、子どもが生きてきた年数で得られる経験値ではまだ習得できないスキルなのだと思う。勿論、すべての子どもに当てはまることではないけれど。

 子どもの意思を尊重すること・子どもの自由を尊重することと、子どもに無関心であることは違う。しかし、尊重と無関心は実はとてもよく似ているのだ。意識しないと取り違えてしまうこともある。番組に出てきた人たちに対して口を出したいわけでは決してないが、考えることが沢山出てくる回だったな、とは思う。思うことはまだまだあるが、これ以上を言葉にするのはやめておく。

 

 加藤さんは自身の意見を述べつつ、彼が小学生だった頃へと記憶を巻き戻す。一日だけ不登校をした話(ここで「不登校」というワードを使うところが加藤さんらしいな、と思う。きっと幼い加藤少年にとってはただの「サボリ」ではなく「不登校」だったのだろう)や、得意ではなかった水泳の話へと移っていく。

 小学校で学んだこと(=泳ぐときにバタ足をすること)が理論に照らし合わせると正しくない(=バタ足をしないほうが速い)ということもある。しかしそれを実際にやってみたいと思うことはかつてバタ足で泳いだ経験があるからだし、プールの塩素のにおいを思い出すことも小学校のプールで泳いだ経験がそうさせる。理論的な正しさ以外の指標が加藤さんの中にはあるのだろう。きっと私の中にもある。

 

 

 

 

 手に入れてすぐ感想を書くわけではないから、多少は冷静に読めているのではないかと思う。自分があまり冷静な人間ではないということは重々承知なので、このくらいの期間を設けて感想を書いた方がいいのかな……Trip910にも思うことが沢山ある(本当に沢山ある)が、それを今すぐ言葉にするのは一旦待ってみよう。

 今は、考えたことをすぐ言葉に(それもログの残る言葉に)できてしまう時代だ。TwitterなどのSNSでは、投稿ボタンにはもはや「投稿」なんて文字もない。それを「投稿」していることさえ感じさせない。しかしそれらの言葉は確かに「投稿」される。非公開アカウントでもなければ、全世界に向けて発信されている。脊髄反射のように言葉を発してしまわないよう気をつけなければと思っている。そういう意味では、ある程度の回数分がたまってから感想を書くという行為は、頭を冷やすことにも似ているのかもしれない。

 

 ということを考えてみたり、加藤さんの文章から派生して様々なことが思い浮かぶ。今後も様々なことを考えていきたい。ときには意見がぶつかることもあるだろうけれど、それにもちゃんと向き合っていきたい。

 いつか一冊の本にまとまってくれたらいいのになぁ。できればブータン旅行記をつけてほしい……

 

 

小説 TRIPPER (トリッパー) 2019年 春号 [雑誌]

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アイドル短歌まとめ5

 たまったのでまとめ。

 

 

 

 

「あの鳥は」声があまりに弾むので知ってるなんて言えなくなった

 

 

フィクションの君の瞳が潤むときノンフィクションの僕はどうする

 

 

どっちかで迷って戻したTシャツの隣の列のTシャツが僕

 

 

「またいつか」「きっと」「必ず」 約束は果たされる前 美しいのね

 

 

守るためではなく破るためでなく「する」ためだけに約束はある

 

 

ノートには悲しみだけを書き溜める  焼却炉にて成仏しろよ

 

 

「好き」だって認めてしまえば楽になる  楽になるのに  楽になるのに

 

 

嘘ばっかついているから君のこと好きと言っても嘘で済むかな

 

 

愛しても無駄と知っても愛してる、とか言うほうが無駄だと思う

 

 

いつまでも慣れない街だ  いつ来ても僕のいる場所ではない渋谷

 

 

東京の海もいいでしょ  沈むには御誂え向きの暗い海でしょ

 

 

嘘つきといつか言ってやる 君の一言一句を忘れずにいる

 

 

「ここに来て」なんて言えない距離だから「そこにいて」って願わせてくれ

 

 

好きじゃない  好きじゃないって君のこと  好きじゃないって本当だって

 

 

望まれたい欲しがられたい愛されたい  何も叶わない  それでも好きよ

 

 

 

 

 

君が書く癖のある字が好きだった  ライムにも似た香りのする字

 

 

食欲と同じレベルで君のこと求める   23時の空腹

 

 

 

 

 

見つめ合うレーザービームが時を焼く3秒だって永遠になる

 

 

世界には何十億と人がいてそれでも二人きりと言い張る

 

 

 

「美しくあれ」と願った 君の眼に映る世界も明日も私も

 

 

ヒナゲシの花が見ている 世界には目のない場所はどこにもないね

 

 

 

 

 

 

 

 

 どういう状況を詠んだものなのかと思うようなものもあると思いますが、フィクションの気持ち(こういうときにこんなふうに思うこともあるよなぁという気持ち)で詠んだものも沢山あるし私個人の感情を込めたものもあるし色々です。好きに想像/解釈してください。

 「なんかわかる」「なんかいいな」みたいな感じになってもらえたら嬉しいです。

ポルノグラフィティ全曲感想3:2002年

 2002年編です。この頃はまだ小学生で、CDが買えるものだとは知らなかったので、最新作はレンタルしてもらってカセット(カセットって!)にダビングしていました。母にその作業をやってもらっていたものの、母はシングル表題曲以外ダビングしない人だったのでカップリング曲の存在を知ったのはもっとずっと後のこと。

 

 

2002.03.06 8thシングル「幸せについて本気出して考えてみた」

038.幸せについて本気出して考えてみた

  作詞:新藤晴一/作曲:Tama

 通称「チェケラ」。新藤さんが提案した。ので私は未だにチェケラと呼んでいる。私の人生を支えた曲。ジャケ写は新藤さんの手書き文字が使われている。「う」の癖の感じとか超好き。

 中学生のとき、今死んだら晴一のギターに生まれ変われるかなぁと考えて橋からぼんやり下を見つめていた。そんな日々だった。笑っちゃうほど古典的ないじめに遭ったときに親から「あなたにも悪いところがあるからそうなる」と言われて、あなたに誉められたくて頑張っていた部分は少なからずあったんだけどなぁ意味なかったなぁと思って家でも泣けないからポータブルCDプレイヤーを鞄に入れて出かけてあてどなく彷徨って「誰だって それなりに人生を頑張ってる 時々はその“それなり”さえも誉めてほしい」と歌われて、私の“それなり”を肯定してくれているように思えた。そのときのことが少しも忘れられないくらい、本当に嬉しかった。救われた、と言って過言ではない。

 誰が誉めてくれなくても私にはポルノがいる。あのときの私を生かしたのは間違いなくこの曲。とかいう重めエピソードはあるが、曲自体はとても楽しい。

 

039.TVスター

  作詞:新藤晴一/作曲:新藤晴一

 チェケラのカップリングでこんな曲を入れてくるところがポルノグラフィティの「ロック」。TVに出て歌うことの葛藤を書いていて、アホみたいにチェケラに肩入れしたあとで聴く「TVスター」、めちゃくちゃ怖い。でも、私に見えているのはバンド(あるいはアイドル、アーティストなど)の一部分でしかないということを思い知ることができるいい機会だとも思う。忘れないように、心に刻んでいたい。

 

040.キミへのドライブ

  作詞:岡野昭仁/作曲:ak.homma

 クラクションとエンジン音から始まる。楽しくてかわいい曲。この曲もすごく好きで、初めてCDを手にしてカップリング曲を聴いたときのことを覚えている。「Swing」「冷たい手~3年8カ月~」みたいな岡野さんの歌詞もいいけど、日常を描いた歌詞もすごくいい。この曲は日常を描いたというにはドラマチックすぎる部分もあるけど、大枠でいったら日常の一部だと思う。岡野さんのこういう歌詞は本当にかわいい。もっと日常に寄ると素朴な感じが出る。

 イントロからずっと楽しくてかわいくて、焦り気味な「僕」もかわいくて、このカップルには絶対にうまくいってほしい!という気持ちになる。

 

 

2002.03.27 3rdアルバム『雲をも掴む民』

 私が初めて手にした(とはいえ当時はレンタルだった)アルバム。それまで「アルバム」というものの存在すら知らなかったので、CDというのは1曲しか入っていないものだと思っていた。こんなにいっぱい曲が聴けるなんて!と驚いた思い出。

 

041.敵はどこだ?

  作詞:新藤晴一/作曲:Tama

 めちゃくちゃ恰好いい。どういうものが楽曲としてロックなのか、私は知識が浅いので語りようもないが、多分こういう曲のことだろうなとは思う。「横浜ロマンスポルノ'16 THE WAY」で披露されたバージョンが死ぬほど恰好いいので、ポルノのポップな面しか知らない人にはぜひとも聴いてほしい。

 この重厚な曲がアルバムの一発目に来ることで、このアルバムの方向性を見せてくれる。アルバム全体が黒を基調にしていることも、ダークでロックな雰囲気と重なる。

 歌詞は「戦争」をモチーフにしていて、こういった社会風刺(あるいは社会で起こる出来事を切り取った)的な歌詞は新藤さんも岡野さんもたびたび書いている。重たくて攻撃的なサウンドと相性がいい。

 

042.ラスト・オブ・ヒーロー

  作詞:新藤晴一/作曲:ak.homma

 「オレ、天使」と並ぶ皮肉ソングだと思っているんだけど、なかなか披露される機会はない。聴きたいんだけどなぁ。新藤さんの書く皮肉って、本人がそう思っているかどうかは別として、考えたくなくて目を背けていたことと向き合わされるような、そんな一面があるように思える。だからちょっと怖い部分もあるんだけど、それをちゃんとフィクションでくるんでくれるところが好き。

 この曲ができて十数年後、「僕のヒーローアカデミア」のOPとして「THE DAY」を書き下ろすことになるとは。ヒーローからヴィランに落ちたキャラがいればぜひともこの曲をテーマソングにしてほしい。

 

XXX.アゲハ蝶(Red mix)

 033.アゲハ蝶 参照

 今回の記事にある過去に感想を書いている曲はこの記事をご参照ください。

penguinkawaii.hatenablog.com

 

043.ハート

  作詞:新藤晴一/作曲:Tama

 壮大なバラード。あまりにも壮大なので私にはいまひとつイメージが掴みづらくもあるのだが、それすらも好き。テーマとなっているのは恋や愛の類かもしれないがそのほかにも「別れ」や「大人になること」など、様々に読み取れる。聴き手の数だけ曲があると常々思っているが、こういった曲は特にそうかもしれない。

 ゆったりとたゆたうようなイントロから静かに始まる。それが大サビに辿り着く頃には大きな波のようになっていて、一曲の広がりとしてとてもドラマチックにできている。

 時々新藤さんの歌詞で具体的に何を意味しているのかわからない部分があるけれど、この歌詞はほとんど全編がそう。なんとなくはわかる気がするけれど、細かなところは想像もつかないというのが本音だ。それなのにこんなに好きなのは「わからないまま好きになれる」ことの証明のようだと聴くたびに思う。

 

044.Aokage

  作詞:岡野昭仁/作曲:岡野昭仁

 ポルノの故郷・因島での高校生男女の一幕を描いた超絶かわいい曲。私もこんな青春を過ごしたかった。優しげなメロディがなんとなくノスタルジックで、全然こんな思い出なんてないのに懐かしい気持ちになる。「キミへのドライブ」の項で岡野さんの日常を切り取った歌詞が素朴でいい、と書いたが、これもそういった曲にあたる。この先も岡野さんの日常楽曲って結構アルバムやカップリングに収録されていくのだけれど、ドラマチックではないぶん飾らない素朴さがあってすごく癒されるというか。

 アルバムを初めて聴いた頃、「Aokage」「クリスチーナ」「n.t.」の作詞作曲が全く同じことに驚いた。岡野さんの日常曲/ちょっと遊び心のある曲/内省的な曲のいいところが出ているラインナップだと思う。

 音源ではサビの高い部分をファルセットで歌っているし、リリース当時もファルセットだったはずだが、2018年に因島から生中継した「しまなみロマンスポルノ'18 THE LIVE VIEWING」ではファルセットではなくなっていた。こわい。

 

045.クリスチーナ

  作詞:岡野昭仁/作曲:岡野昭仁

 初めて車を買ったときの曲。ギターがめちゃくちゃ恰好いい。ギターが美味しい曲ってこういうのをいうのかな。たぶん2003~2004年のツアー「74ers」以来披露されたことはないような気がするけど、今の二人の歌唱&演奏ではどうなるのか気になる。

 浮かれつつ臆病なところもある歌詞と、歌詞に表れている迷いや不安を突っ切っていくかっこいいギターが「車」を表現しているみたいで構造的にもすごく面白いなぁと思う一曲。

 

046.n.t.

  作詞:岡野昭仁/作曲:岡野昭仁

 『蒼天航路』という作品に出てくる「佞言(ねいげん)絶つべし」という言葉からとられたタイトル。

 私にとっては怖いと感じてしまうくらい内省的な歌詞で、聴くとどうしても自分の内部に目が向いてしまう。見たくないものに向き合わざるをえなくなるというか。最近はそこまででもないが、中学生の頃や就活をしていた頃はこの曲を聴くともれなく沈んでいた。中学生のときは「なんだ つまんねぇ こんな 生き方」と思うような大人にはならないぞと胸に誓っていたし、就活をしていた時期も「つまんねぇ」と言ってしまうような生き方に抗う気持ちでいた。しかしいざ30を目前にしてみると、「物腰は柔らかく 感情は出さずに スタイリッシュに振る舞う事」はめちゃくちゃ難しいということに気づく。胸に押し寄せる感情と感動にやられながら生きている私としては、この曲とは重なる部分はあまりないらしい。

 が、それでも最後の問いかけが続く部分は刺さる。

 

XXX.ヴォイス

  036.ヴォイス 参照

 

047.パレット

  作詞:新藤晴一/作曲:ak.homma

 好き!!!!!イントロから楽しくて、思わず心が躍ってしまうし体も動いてしまうし口ずさみたくなってしまう。この口ずさみたくなってしまうメロディにこの歌詞を書く新藤晴一、天才なんじゃない?

 部分的に取り出しても素晴らしい歌詞だけど、一曲として言葉が積み重なっていってこの歌詞が出てくる、という素晴らしさもある。それに何より言葉にこだわりのある人が言う「だって知っている言葉はほんのちょっとで 感じれることはそれよりも多くて 無理やり窮屈な服 着せてるみたい」「もうメロディに身をまかせてしまえ 足りない言葉を探すのは止めて」という言葉は重みがある。こんなにも意味をもった「ラララ」は他にないと思う。

 もし私が初心者向けポルノアルバムを作るなら絶対に入れたい一曲。

 

XXX.幸せについて本気出して考えてみた(アルバムバージョン)

 038.幸せについて本気出して考えてみた 参照

 アルバムバージョンは冒頭に歌詞が追加されている。

 

048.ニセ彼女

  作詞:新藤晴一/作曲:Tama

 歌詞の中で物語が展開して綺麗にオチがつく。「天気職人」や「ドリーマー」なんかもそんな感じだけど、この曲はもはやちょっとした落語みたいだなと思う。ニセモノのような彼女に対して1番では「彼女を返せ!」と言うのに2番では「彼女に戻れ!」と言う。このへんで聴き手は「あれ?」と思う。彼女、ニセモノなんじゃなかったの?って。で、最後のサビ前には「彼女を探せ!」になる。んで「本物はそんな可憐で しおらしくはなかったはず」なんて言って彼女を笑わせるのだ。彼女はニセモノなんじゃなくて、ニセモノに思えるほど普段と様子が違う、ということだった。そして最終的なオチが「なんで怒ってるのかも知ってる」だ。もはや落語でしょこの展開。

 

049.ビタースイート

  作詞:新藤晴一/作曲:Tama

 ライブでやると死ぬほど恰好いい曲。歌詞もめちゃくちゃ恰好いい。

  どうでもいい どうでもいい

  どうしようもない どうしたい どうしよう どうしてもねぇ…

 という歌詞があまりにもいい。似た響きの言葉重ねたってダサくなることもあるのに、こんなにスタイリッシュに仕上げることある?新藤晴一さんならできちゃうんですよ。

 歌詞の表記もいい。全体的にフレーズのひとかたまりが短く、一行のみということも多くて、ぶつ切りな感じがこの曲ももつ雰囲気とも合っている。思考がまとまっていない感じであるとか、ちょっとハードボイルド(っていうの?)な雰囲気とかに合っている。

 個人的には加藤シゲアキさんの小説『傘をもたない蟻たちは』に収録されている「染色」という作品を思い出す。どちらも「月光」がキーワードになっている。

 

050.夜はお静かに

  作詞:新藤晴一/作曲:Tama

 アルバムを締めくくるにふさわしい曲。前のアルバムでは「君に会うために夜明け頃に走り出す」という内容だっただけに、対比的に書いたかのようだなと思う。この曲の「僕」は決して走り出さない。変わらずこの曲の中に、音楽の中にいる。聴き手である私はいろんな日々を過ごすけれど、この曲を聴けば変わらない「僕」に会える。

 夜寝る前、この曲を聴いてからじゃないと寝る気にならない時期があった。イヤホンは使わず、音量を絞ってスピーカーの前で聴く。音楽を通してポルノと会話できたような気持ちになって、ちょっとそわそわしながら眠りに就いていた。まぁまぁ眠れなかった。

 今聴いても「距離や時間はあるけど、ねぇ…」と歌われるとあの頃のポルノが私に語りかけているような気持ちになる。割とハードめな曲が多いこのアルバムで、新藤さんのロマンチストな一面が垣間見える歌詞だ。 

 

 

 

2002.05.15 9thシングル「Mugen」

051.Mugen

  作詞:新藤晴一/作曲:ak.homma

 ワールドカップ(しかもNHK、しかも日韓開催)のテーマソングを担当することになって、サッカーを連想させるワードをひとつも使わず、国をイメージさせるワードもなく、サッカーの「熱狂」を表現するって誰が思いつく?新藤晴一です。こういうところが新藤さんの「ロック」だと思う。

 イントロから爆上がりな曲。観客も一緒に唄えるウォーウォーした箇所は、サッカーでもよくアイーダとかが歌われるのを踏襲しているのだと思う。このイントロで、声も出せて、ブラスが鳴り響いて、盛り上がることが約束されているとしか言いようがない。

 しかし、歌詞は最初からずっと盛り上がっているわけではなく、熱血!というわけでもなく、どちらかというと冷めた視線をもっている。でも「僕」の周りは熱気を帯びていて、「むせかえるほど熱を帯びて吹く風は あなたの髪も揺らしてますか?」の部分を見ると「あなたの髪も」なので「僕」は「熱を帯びて吹く風」に吹かれているのだろうと想像できる。静かで確かな熱狂。言葉の選び方もすごくいいなと、何度見返しても思う。

 このときばかりは小学校でもテレビをつけてくれて、放課後に試合を見た覚えがある。そこで響き渡る「Mugen」。最高。

 

052.Go Steady Go!

  作詞:新藤晴一/作曲:Tama

 イントロのベースがめちゃくちゃ恰好よくて好き。歌が入ってくるまではベースが主役にも思える。久しぶりにライブでやってくれないかなぁ。

 歌詞は超ロマンチスト。好きしかない。「自分の事 示す言葉」に関するくだりは「パレット」で歌われている「だって知っていることはほんのちょっとで」のあたりとも同じことを言っているように思える。エッセイ『自宅にて』にもそんなようなことが書いてあった気がするし、新藤さんの根底にある考えのひとつなんだろうな、と思う。

 

XXX.ビタースイート(LIVE!)

 049.ビタースイート 参照

 

XXX.Mugen(Orchestra Version)

 「Mugen」のオーケストラバージョン。ライブ「ラヴ・E・メール・フロム1999」のメドレーのときに披露された。厳か。 

Mugen

Mugen

 

 

 

 038から052までをお送りしました。

ポルノグラフィティ全曲感想2:2001年

 その2です。どの曲もだいたい同じ量で書こうと思っているけれど思わず筆がのっちゃってるときはちょっと長くなるかも。仕方ない。
 あと今更になるけど、全曲「レビュー」ではなく「感想」なので思い出話をしていることも多々あります。この曲にはこんな思い入れがある、という記録みたいなものです。
 

2001.02.28 2ndアルバム『foo?』

024.INNERVISIONS
  作詞:アキヒト/作曲:ak.homma
 アルバムの最初の一曲といえば掴みとなる曲であり、さまざまな趣向を凝らした曲がくるけれど、今回はラップのような「言葉の多さ」で圧倒する。
 「真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ」や「アニマロッサ」などもそうだけど、岡野さんの歌詞って「その情熱をもって命を燃やせ」的な内容を歌っていることが結構あるなぁと感じる。この先とか未来とかじゃなくて「今、この瞬間」を全身全霊のちからで生きろ、と言っているような感じ。ちゃんと数えていないけど、岡野さんの歌詞には「情熱」って言葉がよく出てくるんじゃないかと思う。あるいは印象的に使われているのかな。だからか、岡野さんの歌詞のイメージってどちらかというと赤って感じがする。この曲もそう。
 それと「君は運命を犠牲にして  強烈に誇示できるビジョンや主張するものがあると言えますか?」みたいな表現をさらっと織り込むのも岡野さんだな〜って感じがする。
「運命を犠牲にして」って、そういう強烈な表現ってなかなか使いづらいようにも思えるけど、岡野さんの歌詞にはそういう表現が結構あって、目が覚めるみたいにはっとさせられる。
 
025.グァバジュース
  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ
 タイトルがもう勝ち。どこから「グァバジュース」なんて出てくるわけ?こういう「曲の中身が全然想像できない短いタイトル」をつけさせたらポルノって世界一なんじゃない?って個人的には思っている。
 新藤さんの皮肉たっぷりの歌詞がすごい。いやこんな「僕」絶対ダメなやつじゃん、って思うのにどこか憎めない。絶対そんな……ビルとか蹴ってたら振られるしバスはいちいち誰かの都合で停まるものだし……でも普段からそういうことを考えているんじゃなくて甘いグァバジュースと対比して余計に苦く感じられる失恋をしたからなんだろうなって想像できるところも込みで新藤さんの歌詞ってすごいなと思う。多分もっと普通で、でもちょっと皮肉屋なところのある男の子なんだろうなって……だから振られっちゃったのかなって、そんなふうに思える。まぁただの妄想ですけど。
 それと、この曲のベースの音がすごく気持ちいいなって聴くたびに思う。思わず耳で追いたくなるような感じ。最初のベースの入り方からして最高にかっこいいし、間奏ではキーボード的な音と同じ動きをしているのが超いい。Tamaさんのベースってリズムを刻むというよりはメロディを奏でている感じがして好き。あと、岡野さんの気怠げなのに突き抜けるような潔さをもった歌声が歌詞にとても合っていると思う。気怠げなのに爽快感もある歌声ってすごくない……?
 真夜中のコーヒーショップで振られて、そのまま朝まで過ごして午前5時を迎えてビルを蹴っ飛ばして、バスに乗って家まで帰ろうとしているところなのかな。そんな物語の展開が見える歌詞。この曲に限らず、新藤さんの歌詞には「午前5時」がよく出てくるけれど、おそらく「夜と朝
あいだ」「夜明けが始まるころ、あるいは直前」みたいなイメージなんだろう。
 真夜中にも開いてそうなチェーン店のコーヒーショップにはグァバジュースってメニューはあんまりないようなイメージだけど、どういうお店をイメージして作られたんだろうってずっと気になってる。私が初めてグァバジュースに出会ったのは多分焼肉屋さんだったと思う……オシャレなお店でグァバジュースを飲んでみたい。
 
XXX.サウダージ "D" tour style
 016.サウダージ参照
  この記事内の既に書いている曲は全てこちらの記事(ポルノグラフィティ全曲感想1:1999年~2000年 - 来世はペンギンになりたい)参照
 
026.愛なき…
  作詞:アキヒト/作曲:アキヒト
 「ミュージック・アワー」や「INNERVISIONS」と同じ人が歌っているのかちょっと疑問に思っちゃう程度にはねばっこくてねちっこい歌声。こういう歌い方ができる人だから「渦」とかをシングルで出せるんだろうな……と今更思う。演奏もすごくセクシーに聴こえる。
 いつまでもそばにいたいとかじゃなくて、「もう二度と帰さないで」「二人の時間止めた」と歌っているの、めちゃくちゃ重くて好き。二人が永遠にそばにいて朝と夜を繰り返すことは想像できないけど、世界の夜が朝になっても二人の世界はいつまでも夜かもしれないなと思う。
 この歌詞、「ボク」がどう思っているかとかどうしたいかは描かれているけれど、「キミ」の能動的な言動はひとつも描かれていなくて、「ボク」がいるのは実はまだ「『孤独だ』と自分を蔑んだ  闇に覆われた場所」なんじゃないかと思ってしまう。めちゃくちゃ闇が深くて好きな歌詞。
 
  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ
 ある時期までの岡野さんの歌い方って感情の起伏というよりはフラットな歌声で、楽曲の主人公になるというよりは楽曲の物語を語る人のような歌い方だなぁと思うんだけど、そういう歌い方でこういう曲を歌うと不思議な浮遊感がある。ここしばらく(といっても結構前からだけど)の岡野さんは楽曲をその身に纏うような歌い方って感じ。あくまで主観。最新ライブ「UNFADED」の「キレイゴトじゃないんだよね世の中」、すごいから。
 新藤さんのこういうTHE フィクションみたいな歌詞って本当に好き。聴いてて気恥ずかしいくらいのファンタジーをやりきれるのってかっこいい。岡野さんの台詞が気怠げな口調なのがまた余計にいい。そして多分、これは私の想像でしかないけど、歌詞を書いた人も歌っている人も(曲を書いた人もきっとそうだっただろうと思うんだけど)音楽の力を信じているんじゃないかって思えるところが更に好き。
 『ロマンチスト・エゴイスト』から『WORLDILLIA』のアルバムを概ねリアルタイムで追っていた人たち(私と同世代のアラサー)はそこまで入れ込んだファンじゃなくてもこのへんの曲を知っていることが多くて、この曲もその代表のひとつだと思う。そういうのって改めて考えるとすごいことだよなぁ。
 
XXX.サボテン
 020.サボテン 参照
 
028.Name is man~君の味方~
  作詞:ハルイチ/作曲:ハルイチ
 このアルバムを初めて聴いたのはリアルタイムではなく中学生になってからで(中学生になるまで「アルバム」の存在すら知らなかった)、その頃の私はいわゆる夢見る乙女だったわけで、初恋の人である新藤さんへの恋心を募らせまくっておりまして、そんな多感な時期に聴く「Name is man」、劇薬です。いやこの曲聴いて新藤晴一に恋しないでいられる?無理でしょ?無理ですよ。手の届く範囲にいる誰かに恋をするより「Name is man」を通して新藤さんに恋をするほうがずっと楽しかったし。そういう中学生でした。多分今も恋はしてるけど。
 「グァバジュース」や「オレ、天使」を書いた人とは思えない甘々でらぶらぶな世界観。こんなべたべたなラブソングも書いちゃうなんてと思うけれど、「ラビュー・ラビュー」や「邪険にしないで」などに通じるものがある。普段滅多に書かないからこそ新藤さんの「ずっとずっといっしょにいよう」は致命傷となりうる。「俺は男だから  大好きだなんて言えない」なんて書かれたら死因:恋だってこんなの。「大好きだなんて言えない」って歌詞に書いてる時点で言ってるじゃんと思ってしまって、いまだに聴くたびに心が恋でひたひたになる。
 新藤さんのらぶらぶなラブソングを集めたプレイリストを作ってみたいけど聴いてるだけで口の中まで甘くなりそう。 
 
029.デッサン#2 春光
  作詞:ハルイチ/作曲:ハルイチ
 『ロマンチスト・エゴイスト』の「デッサン#1」に続く2作目。新藤さんのお父さんが亡くなった時期に書かれた歌詞で、その前提をもって聴くととても重たい曲に聴こえるかというと私としてはそうではなく、きちんと「作品」として昇華されていると感じる。プライベートな思いをそのまま言葉にするのではなく、普遍的なものにしているというか。私はプライベートすぎる思いが込められた曲はあまり得意ではないのだけれど、この曲はとても好き。なんていうか、新藤さんならありのままの気持ちを書くのではなく、多少かたちが変わっても言葉を尽くしてより多くの人の心の深くまで届くようにして書くだろうという信頼があるというか。勿論ありのまま感じたままのほうがいいと思う人もいるだろうから、そこは好みの問題だけど。私は現実で起きたつらいことや悲しいことはフィクションの世界に持っていって楽になるタイプだけど、もしかしたら新藤さんもそうなのかもしれないなと思った。
 言葉の数は決して多くはないが、端々まで選び抜かれた言葉で書かれているように思える。「見上げた空も色づきだした花も歌う鳥も  悲しんではくれないね」という歌詞が胸に響く。世界はたったひとりのために悲しんだりしない。じゃないと世界は毎日悲しんでいなければならなくなってしまう。だからこそ、最後の「瀬戸内の海は今日も  きらきらと光っている」という部分が映える。どれほど悲しくても、あなたがいてもいなくても、世界は変わらず美しい。
 具体的な単語は出さないが死による別れが近づいていることを匂わせるような言葉を紡ぎ、最後に「茜さす午後の病室」という言葉が出てきて、あぁやっぱりなと思わせるところに、新藤さんは歌詞を書くのが上手いなぁと感じる。
 
 
030.空想科学少年
  作詞:ハルイチ/作曲:ハルイチ

 近未来的な世界の話をしているけれど、そういう世界における「僕」の話じゃなくて「僕」の頭の中にだけ展開する世界(だと私は思っている)、っていうのが超好き。この曲、曖昧に濁した答えを返されて失恋した男の子の脳内の話でしょ。呼吸をしない犬がもういるからって僕自身がロボットになれるかどうかはわからない。「僕」の思考の暴走の果て、って感じがしてすごく好き。

 「選べれる」「忘れれる」という表現がどうしてもひっかかるんだけど、多分わざとやっているんだろうな。主人公の「僕」が「少年」だからだろうって思ってる。

 「アポロ」や「ヒトリノ夜」などもそうだけれど、歌詞に近未来なイメージを乗せようとすると「街」が出てくるのかな。いずれポルノの歌詞も分析してみたい。好きだよね「街」

 2018年のAmuse fesで急にこの曲をやったので(アミュフェスのテーマが「雨男晴女」で、この曲の歌詞には「雨」があるからやったらしい)びっくりした。ワンマンじゃないからといって気を抜けない。

 
031.Report21
  作詞:アキヒト/作曲:アキヒト
 サイバーな世界観。近未来のデジデジした雰囲気と「強靭な脳内細胞」「わずかでも体温の上昇感じて」といった身体的イメージが両立していて面白い。
 「未来は今」って歌詞がふしぎ。キャッチコピーのように耳にひっかかる。未来は未来だから今じゃないんだけど、力強く歌われると納得しそうになる。もしかしたら「未来は今」のあとに何か言葉が続くのかもしれないし、「未来だった世界は今この瞬間に今になる」ということなのかもしれない。そういう想像をこの「未来は今」という一言に込めちゃうの、すごい。
 
032.夜明けまえには
  作詞:アキヒト/作曲:シラタマ
 夜明けの気配を伝えてアルバムが終わる。締めくくりとしてとても合っているなぁと思う。
 岡野さんの歌詞ってド正論すぎて机上の空論となってしまいそうな理論をストレートにどーんと持ち出してくることがたまにあるんだけど、この曲の「お互い伝えきれない事があるのなら それ以上の時間二人で一緒に居ればいい」もそれ。いやそんな簡単なことじゃないんだよ、なんて言いたくもなるけど、問題の解決方法としてはとてもシンプル。本当にそんなことができるかどうかはおいといて、おいといた結果見えなくなっていたシンプルな答えを提示してくれる。岡野さんの歌詞がストレートとか直球型って表現されるのを昔からずっと見てきたけど、多分こういう部分をいうんだろうな。

 

foo?

foo?

 

 

 
 

2001.06.27 6thシングル「アゲハ蝶」

033.アゲハ蝶
  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma
 何度見返しても新鮮に歌詞がすごい。すごくないときがない。2001年の私もすごいって思ってたし、2019年の私もすごいって思う。たぶん2029年の私もすごいって思ってると思う。死ぬまで思ってるだろうな。
 歌詞は自己犠牲的ともとれるけれど、「アゲハ蝶」の自己犠牲は全然押しつけがましくない。なぜかといったら、そこにちゃんと「僕」の欲望があるから。隠しきれない欲がちゃんと描かれているから。「あなたが望むのなら この身など いつでも差し出していい 降り注ぐ火の粉の盾になろう」という部分は自己犠牲的だが、そのあとに「ただそこに一握り残った僕の想いを すくい上げて心の隅において」と続く。ちゃんと見返りを求めている。私は「あなたのために私は自己を犠牲にしている」という自己犠牲に縛られて生きてきたから、新藤さんの描くちゃんと見返りを求める自己犠牲に信頼をおいている。あなたのためにと言いながらも、それって結局は自分のためでしかないと、私は思う。だから、自分のためであること・自分にもなんらかのメリットがあるから自己を犠牲にすることも厭わないのだという姿勢を見せるこの曲の歌詞には信頼しかない。この曲の端々から「あなたに僕を愛してほしい/あなたに愛されたい」という「僕」の欲望が溢れていて、そこを隠さないところが新藤さんの歌詞の魅力だと思う。「あなたに逢えた それだけでよかった」なんて全然言えないところ、好き。愛されたくて仕方がなくて、それを隠しもしない。
 歌詞が描く世界観がとても壮大なところもすごいと思う。でも決してファンタジーの世界を描いていると言い切れるわけではなくて、さまざまな結ばれない恋を重ねることができるってすごい。現実的なワードを使わないことで、いろいろなかたちの現実と重ね合わせることができる。ポルノがイメソンの宝庫といわれるのはこういうところなんだろうな。
 ポルノの第九とも呼ばれる(この呼び方マジで秀逸)。声を合わせて歌うことが気持ちいいんだってことを教えてくれたのはこの曲。手拍子の揃い方も気持ちいい。以前、「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 惑ワ不ノ森」にて、ファイヤーダンスが始まり南国っぽい音楽が流れてきただけでみんなあの手拍子してたのもなかなかやばいなと思った。まだ何の曲かなんてわからなかったはずなのに「アゲハ蝶だ」とわかってしまうの、すごくない?
 タイトルも秀逸。カタカナと漢字の組み合わせが目を引く。「アゲハチョウ」でもなくて、「揚羽蝶」でもなくて、「アゲハ蝶」。こういう目を引くタイトルをつけることでいったら新藤晴一の右に出る人はいないと思っている。
 
034.別れ話をしよう
  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ
 別れ話を切り出す側のくせに「君の幸せを願うのは嘘じゃない」と言いながら「その唇を その髪を その乳房を 奪う誰かに嫉妬する勝手な僕」って本当に勝手だなって思う。だけどそういう本音を隠さずに歌詞にするところが本当に本当に本当に“信頼”の一言に尽きる。誰の心にもそういう「僕」がいるというか。余談ですがMr.Childrenの「Over」の「いつか街で偶然出会っても 今以上に綺麗になってないで」も好き。そういう正直さというか誠実さみたいなものを重んじるタイプなのかもしれない。
 で、「また巡り逢うには 東京は広すぎる」。ずるすぎ。初めてこの曲を聴いたときに、私が見ている「東京」と新藤さんが見ている「東京」は全然違うものなんだとはっとした。だって面積で言ったら全然広くないのに。でも人が集まりすぎていて、偶然また会うなんてことは滅多なことでもない限りはない。それを「また巡り逢うには 東京は広すぎる」って言ってしまうの、ずるい。
 さらに余談ですが加藤シゲアキさんのソロ曲「氷温」ではテーブルに零した氷が溶けるまでが二人が恋人でいる時間のリミット(別れ話を切り出すのは「僕」のほうなのに)みたいな物語が描かれていて、私の好きな人たちは「この氷溶けるまで恋人でいようよ」みたいなところに物語を見出しがち……と思いました。
 
035.狼
  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma
 熱風というか、暑苦しい風が吹いていそうな曲。あと「男なんてララララ」って歌詞が潔い。よくわからないけれど、「男なんてララララ 女もラララ」って言われたらそんな気がしてくる。あと歌詞の表記と実際の歌で「ラ」の数が違う(歌うと1つ多い)のもなんか恰好いい。
 「最後の恋だとまた見間違ったね」の部分が好き。「パレット」や「サウダージ」もそうだけど、最後だと思ったはずの恋が最後じゃないこともあるし、永遠だと思ったはずの恋が永遠じゃないこともある。そういうところを見せつけてくるような歌詞の正直さが好き。 

 

アゲハ蝶

アゲハ蝶

 

 

 

2001.10.17 7thシングル「ヴォイス」

036.ヴォイス
  作詞:新藤晴一/作曲:本間昭光
 このシングルからクレジットの表記が変わる。
 出逢うべき誰かに逢いたいという、ただそれだけのシンプルなメッセージ。シンプルながらもサビの「ねぇ そうだろ?」が最後だけ「なぁ そうだろ?」になるなど、歌詞のテクニックも光る。大サビの「星を数えるよりは容易く~」のくだりも秀逸。あまりに壮大で、この部分について考えると眠れなくなる。
 編曲もシンプルで、それゆえにそれぞれの楽器の音がよく響く。イントロのピアノの音は、運命の扉を叩くように重たい。ベースは楽曲の背骨のようにまっすぐ通っている。大サビの後に入るギターソロは出逢うべき「君」を探して叫ぶ「僕」の心みたいで、ドラマチックに盛り上がり最後のサビへと向かう。曲の終わりの余韻まで美しい。
 岡野さんの歌声もシンプルで力強い。すごくまっすぐでひたむきな感じがする。歌詞も使われている言葉はシンプルだから、まっすぐさがより胸に迫る。
 「74ers」では一曲目で本編ラストの「愛が呼ぶほうへ」と呼応していたのが印象深い。「僕の名前を呼ぶのは誰?」→「愛が呼ぶほうへ」。この曲は「74ers」での使われ方が最高なので是非見てほしい。
 
037.Swing
  作詞:岡野昭仁/作曲:岡野昭仁
 岡野さん詞曲の楽曲で一番好きかも。歌詞も音も曲も、全部が120%好きな楽曲。この曲を初めて聴いたとき、まだ中学生だったしこの曲に描かれるような出来事は自分の中にはちっともなかったのに、映画みたいな物語が頭の中にぶわーっと浮かんだのを覚えている。歌詞はもちろんのこと、メロディがすごく好きで、五線譜のノートを初めて買ったときにピアノでメロディを拾って楽譜に起こしたことも、私の中ではとても鮮烈な記憶として残っている。今まで「歌詞に惹かれる」ことはあっても「メロディに惹かれる」経験はあまりなくて、とても衝撃的な出来事だったんだと思う。
 とはいえ歌詞も好き。どこが好きか抜き出すこともできないくらい隅々まで好き。きっととても愛し合っていたはずなのに、そういう時間を過ごしたはずなのに「結局ふたりは空っぽだったね」という言葉で納得しようとしているところがめちゃくちゃしんどい。
 あと楽器の音もすごく好きで、特に「ゆらゆらと揺れるあの虹も」のところのベースがめちゃくちゃいい。それまでベースの音にそこまで気を配って聴こうとしたことがなかったんだけど、この曲のここのベースの音が私のベース観を変えたと言っても過言ではない。それまで「ベース」という楽器のことをろくに知らなかったし意識的に聴こうともしていなかったので、どういう音を出しているのか全然わからなかった。この曲で突然「ベースってこういう音だったんだ!」と気づいて、それから他の曲もベースが聴こえるようになったのを覚えている。
 ジャケ写の虹とも合っていて、もはやシングル表題曲なんじゃないかと思えてくるほどの名曲だと思う。「UNFADED」ツアーで披露されてすごく嬉しかった。
 
XXX.ライオン(LIVE!)
 007.ライオン 参照
 この頃のライブ音源、今とは全然歌い方が違うのでなかなか貴重。 
 
 024から037までをお送りしました。名曲しかない。

色褪せない曲たちのこと、夢の景色 ―ポルノグラフィティ「UNFADED」感想―

 幕張2日間、横浜2日間に行きました。レポではなくて個人の感想です。

 

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推しのムライさんです。かわいい。

 

00.Opening

 オペラのような歌声。なんとなくDice are castツアーを思い出す。すごくどきどきする始まり方で、薄い膜が取り払われたらそこにポルノがいるの、恰好よすぎる。

 

01.オレ、天使

 何から始まるんだろうと思ったけど!これか!

 “色褪せない”とタイトルに掲げながら、「音楽なんてそんなもんか」って歌ってしまうの恰好よすぎる。ポルノグラフィティというロックバンドの姿を見た、と感じた。「音楽なんてそんなもんか」って歌いながら、今から自分たちのやる曲が色褪せていないか確かめてくださいよ、なんて。自信しかないんだなと思ってにやっとしてしまう。

 今回のツアーは「ポルノの楽曲が色褪せていないか、みなさんに答え合わせをしてもらうような」というコンセプトであるという。答え合わせをするにはまず、問題提起が必要だ。その問題提起となる楽曲がこの「オレ、天使」である。でももう問題提起の時点で「色褪せてねえんだわ!!!」という気概が伝わってきちゃって完敗です。

 今回は言わない台詞を脳内で再生させていると、最後の「人生」のあたりで岡野さんが「UNFADED!」と被せてくる。これ、死ぬほど恰好よくて。色褪せてしまうものを語る台詞に、「Today is UNFADED!」を重ねてくるの本当に恰好いい。言い方からタイミングから何まで全部死ぬほど恰好よくてチケット代の元がとれてしまい、今後は従量課金制にしてほしい。ちゃんと払わせて。

 

02.A New Day

 久しぶりの「言うなー!」。いつ以来だ……?

 改めて聞くとすごく上がる曲だなと思った。私事ですが結婚式で弟と中座するときに使った曲で、私のライブ初日も横に弟がいたのでなんだか感慨深く思いました。

 横浜1日目は初ポルノの方をお連れしたのだけれど、この「言うなー!」のところでポルノファンがとても楽しそうな様子を見て涙が出てきたと言っていて、そうなんです楽しいんです……と私も泣きそうになった。

 

03.幸せについて本気出して考えてみた

 ポルノのライブに行くようになる前、いつかこの曲をライブで聴くんだと思っていたことを思い出した。何度も何度も聴いたけど、やっぱり好き。

 死にそうだった中学生のころ、何度もこの曲に励まされた。「それなり」さえも誉めて欲しいって歌詞に、私の「それなり」も誉められた気がした。あのとき死にそうだった私は、ポルノに支えてもらって、死なないままでここにいる。

 

04.東京ランドスケープ

 全然記憶にないけどSWITCH以来だったりする?どっかでやったかな?

 私のライブ初参戦がSWITCHで、幕張1日目もSWITCHのTシャツを着ていたので遠いところまできたものだと14年くらいの時を思った。14年も経ったの……

 生まれてこのかた東京に住んでいるので、東京にやってきた人たちの気持ちはたぶん理解しきれない。私にとって東京は戦う場所じゃなく暮らす場所だから。でも、ポルノがまだまだ東京で戦おうと思ってくれているような気がして、すごく嬉しかった。

 

05.ジョバイロ

 数多のラテン曲に押されいつのまにかライブ定番から消えてしまったジョバイロが!!!おかえり!!!!!

 確かにほかのラテン曲に比べると曲自体の盛り上がりが大きくはない(おたくは大いに盛り上がるが)感じもする。「アゲハ蝶」や「オー!リバル」は客も一緒に歌えるし。「ジョバイロ」はそういう意味での盛り上がりには欠けるけれど、でも聴くとやっぱり好きだなと思う。改めて歌詞の美しさを味わいながら超絶楽しく手拍子した。サビ前の手拍子超楽しいよね。

 

06-1.ヴィンテージ

 これも久しぶり。多分ライブで聴いたことがあるとは思うけどもうとっくに十年選手になってしまったので前がいつだったのか覚えていない。キーボードのアレンジがめちゃくちゃカッコよくてみなちんに惚れた。

 

06-2.Swing

 生で聴けたら成仏できるリストの筆頭だった曲(しかし今さっき調べたらポカリツアーでやったっぽくて、いや私太るほどポカリ飲んで当てて行ったじゃんよ!と思った。あのときは「やばい曲しかなかった」ということしか覚えてない)。今回絶対やるだろうなって確信していた。なので幕張1日目は「おかしいなやらないのか……」って気持ちだったけど2日目は「ほらね!!!!!」って思った。謎の強気。でも絶対やるって思ってた。ほかの聴きたい曲はなくてもこれだけはあるってわかってた。

 岡野さんの楽曲のなかで多分一番好きなんじゃないかと思うくらい好き。たぶん一番好き。この曲と出会ったときのことは未だに覚えている。中学生になってCDを買うようになり、持っていないシングルを集めていたときのこと。ヴォイスはそのなかでも最後に手に入れたもので(カップリングがこの曲とライオンのライブバージョンで、新規曲として聴けるのがこの曲だけということになるので優先順位は低めだった)、この曲を聴いて衝撃を受けた。何がどう衝撃だったのかわからないけれど、鮮烈なイントロと「僕は揺れた」と歌う歌詞に夢中になった。

 ただ、「ゆらゆらと揺れるあの虹も」のところのベースが音源とは違う感じに弾いていたように思えて、あのベースが好きで好きでたまらない私としては若干の物足りなさもあるものの、絶対聴きたい曲だったので聴けてよかった。絶対聴きたかった。

 後ろの映像も、虹は出さずに波とかで揺れる感を表現しているのが素敵だなと思った。

 

07.前夜

 ぜひともライブで聴きたいなと思っていた曲。初めて聴いたときはじーんときてしまって少し泣いた。この曲が始まると、モニター左側に岡野さん、右側に新藤さんの姿が映し出されて、「旅立ちの前夜」を超えて二人とも今ここにいるんだなって思ったら胸がいっぱいになってしまう。エモエモ演出すぎる。サビでは真ん中のモニターだけになるのもまたいい。ずるい。エモ。

 

08.ビタースイート

 照明がわけわかんなくて恰好いい。変態か?なんであんなに動くの?んで岡野さんが歌い出すと定位置に戻る感じもなんなの?岡野さんの声が支配してんの?ときめいちゃうでしょそんなの。

 声の迫力というか音の圧みたいなものがすごくて、こんなに恰好いいものを聴いていいのか?って思うし「前夜」と「ビタースイート」の振り幅がすごい。なかでも「前夜」「ビタースイート」はどちらも夜のイメージなのにかたや明けていくための夜、かたや沈むための夜、って感じがして好き。

 「前夜」~「ビタースイート」~「ライオン」/「DON'T CALL ME CRAZY」~「Zombies are standing out」のロック曲ゾーン。ポルノの今のロックを凝縮した感じがして、お茶の間でしか聴かない人とか昔のポルノしか知らない人絶対聴いて!!!って叫びたくなる。このツアーからどこかを抽出して見せるなら私はここかな。

 

09-1.ライオン

 こないだやらなかったっけ?と思ったけど私の「こないだ」がFUNCLUB UNDERWORLD5であったことに気づく。全然こないだじゃないわ……。

 デビューアルバムから持ってきた曲も全然色褪せてない(しかもこの曲自体はデビュー前からある)ってすごいよね。

 

09-2.DON'T CALL ME CRAZY

 照明が変態。特に横浜アリーナはこのツアー最大の会場だったこともあり、幕張で見たときよりも照明が変態だった。

 

10.Zombies are standing out

 トゥーランドット!!!!!誰も寝てはならぬ!!!!!から始まる。最高。

 「ビタースイート」からこの曲までの流れがあまりにばっちり合いすぎていて怖い。頭の中に手を突っ込んで脳をがしがし揺さぶるような曲たちが並んでいてアドレナリンがどばどば出る。

 「Hands come out underground」のところあたりでみんな手を挙げはじめるので、まるで地面から手が現れたかのよう。ステージはアリーナよりも高いところにあるから、まさしく「Hands come out underground」みたいな光景に見えるんじゃないかな。

 

11.見つめている(昭仁弾き語り)

 鳥の鳴き声が聞こえてきて、岡野さんがひとりになる。岡野さん曰く「ゾンビからの小鳥。ポルノの振り幅すごいね!」。

 なんでこんな歌詞書いたんじゃろう……と言いながら歌ってくれた「見つめている」。歌詞ヤベェなとは思っていたけど本人から言われるとなんだか笑ってしまう。ずっとヤベェなと思ってたけど好きな曲だよ。

 

12.夕陽と星空と僕(昭仁弾き語り)

 正直この曲はオケも含めてめちゃくちゃ好きな曲なので、できれば音源に近いアレンジで聴きたかった気持ちもある……でも弾き語りもよかったよ!

 幕張のときはやっぱりいい曲だなぁくらいの気持ちで聴けていたのに、横浜では岡野さんの声がちょっと掠れ気味で声の切実さが増していて、こういう切ない曲に合いすぎていてすごく胸に響いてちょっと泣いた。おたくはすぐ泣いてしまうね。

 

13.didgedilli

 別冊俺にも楽譜が載っていたのでやるかなと思っていたけどやってくれた!曲の終わりで新藤さんが客席を指さすんだけど、死ぬほど恰好よくてまた恋に落ちた。

 

14.カメレオン・レンズ

 客席(通路)の上にも照明があって、曲が始まるとともに客席が照らし出される。思わず見回してしまう。この場にはこんなにも沢山の人がいるんだと改めて認識する。これだけの人が同じものを見ているのに、目に映ったものが「同じもの」とは言い切れない。すっと伸びた幾筋もの光は交わらない。それがなんだかこの曲を表しているようで、ぞっとするほどきれいだった。

 モニターの映像もきれい。リズムに合わせ記号が弾けるんだけど、ありのままの真実など誰も見ていやしないから、どれが真実かなんてわからないしどれも真実じゃないのかな、私が見たいように見たかたちでしかないのかな、とか色々思った。

 2018年の私はこの曲に支えられていたと言っても過言ではない。「ありのままの真実など 誰も見ていやしない」。このフレーズが私の周りをぐるぐると舞っていた。同じものは見られないし、正しいものも見えない。だからこの感想文に書いてあることだって別に客観的な真実ではないです。私が見て私が感じた、私のフィルターを通して見たライブの話。でも、誰かが表現したもののなかに誰の意図も含まれていないことなんてないんだよな。私に見えるのは私の月。あなたに見えるのはあなたの月。重なり合う月食の夜は来るのでしょうか。

 

15.海月

 モニターに映し出されるミズクラゲがきれい。いろんな色に光ったりする映像で、この映像以外にも「色」を強調するような映像が印象的だったので「UNFADED」というテーマがここにも活きているのだと思う。

 最近、映画「ファースト・マン」を見たこともあって、宇宙についての本をよく読んでいる。そのなかには生命はどのように誕生したのかという話もあって、最初の生命のこと考えると本当に眠れなくなっちゃうほどくらくらするんだけど、「海月」を聴いているとそんな「生命」に思いを馳せてしまう。

 

16.フラワー

 この曲の照明、黄色やピンクなどの色合いで花っぽいなぁと思っていたら、スタンド席で入って照明が花のかたちをしていると気づく。アリーナでは見られない光景。

 力強すぎて聴いてると心がもっていかれすぎてダメになりそうになるくらいパワーに満ちた歌。

 「海月」「フラワー」ってどちらも「生命」の曲で、作詞者がそれぞれ岡野さんと新藤さんで、それぞれが考える「生命」があらわれている気がする。作った時期は知らないけど発表された時期は近いし。

 「海月」は生命そのものがうまれてから今までに思いを馳せるような曲で、生命は円環を描くもののように表現されていて、歌われているのは生命がうまれたとされる海。いわば種としての生命というか。一方「フラワー」は(映画のタイアップだからということも大いにあるが)人間の生命について焦点をあてたうえで「花」を描いていて、人間の命に焦点をあてているから描かれる命は一本の線のようで、歌われているのは花が根差している大地。この円環の海と直線の大地というコントラストがめちゃくちゃポルノグラフィティだなって思って胸がいっぱいです。

 

17.オー!リバル

 「この曲のイントロは顔が大事じゃけぇ」と言い、めちゃくちゃいい顔でイントロを弾く新藤さん。わかる。わかるよ。顔、大事だよね。自分で笑っちゃうところも満点。かわいい。照れて口元を覆っちゃったり、下唇噛んでこらえてたり、いや……ほんと……顔がいいんだわ……福山さんの魂をおろそうとしてたけど、そんなことしなくても顔がいいんだよ……

 「アゲハ蝶」に代わる合唱曲になるのかなって感じの合唱。歌声でひとつになることの気持ちよさを知っちゃってるから、思いっきり歌っちゃう。

 

18.ジレンマ

 最後じゃない……!?戸惑いつつも、ラジオで「ジレンマいつやるか問題」の話をしていたので納得はした。やってくれないよりは本編に入れてくれたほうが全然いい。

 

19.パレット

 これもなんとなくやるような気がしていた。前に披露したのはDAYS OF WONDERのときだったか。あのときはだいぶアレンジが加わっていたので、原曲に近いアレンジで聴けたのが嬉しい。アレンジされてるのも嬉しいけどね。

 最近この曲の話をすることがあって、改めて聴いたのだけれどやっぱりいい。

今 永遠の恋などと表現して

新しい恋に出会ったとしたら

君は さぁどうしよう

 ってフレーズが、やっぱりすごい。だってそうだよね。これが永遠の恋かどうかなんてわからないもんね。でも、永遠って思っちゃった瞬間は永遠なんだよな。永遠だって思った「君」の気持ちに嘘はないのもわかる。恋じゃなくても「これが最後だ」「永遠だ」って思うことってある。確かにある。でも、それを外側から見て「さぁどうしよう」と思っちゃうのもわかる。それをこんな、簡潔で詩的な言葉で表現しているの、やばい。改めてやばい。新藤晴一ってやばいんですよ。

 

20.サウダージ

 「サウダージ」「アゲハ蝶」「メリッサ」って結局聴きたい。結局。どんな曲が聴きたいだろうって考えたときに、全然やっていない曲を聴きたいと思うこともあるしド定番曲もやっぱり聴きたい。そんな欲もばっちり満たしてくれる。

 個人的には「パレット」「サウダージ」の曲順がすごく好き。先ほど引用した「今 永遠の恋などと表現して」のくだりと「あなたのそばでは永遠を確かに感じたから」って呼応しているように見える。「サウダージ」の「私」にとっては確かに永遠だったんだろうな。結果として永遠じゃなかったんだけど、でも永遠だと思った瞬間が確かにあったんだよな。

 

21.ハネウマライダー

 ね、結局聴きたいんですよ。タオル回したいんですよ。

 新藤さんがギターを弾きながら客席のほうに身を乗り出すようにして歌っているの、本当に好き。マイクもないしコーラスしているわけでもないのに歌っていて、その口元が笑っているようにも見えて、楽しいんだなぁって伝わってくる。私も楽しいよ、と思ったら、個人的最終日だった横浜2日目はライブ終わるの寂しすぎて泣いてた。こんなに楽しい時間が終わっちゃうなんて。

 

22.∠RECEIVER

 これだけたくさんの曲があるなかで最後に一体何を持ってくるんだろうと思っていた。2010年の∠TARGETの一曲目を飾り、2011年のつま恋ロマポルでアンコールの最後に披露された「∠RECEIVER」。

 私が生で聴いたのは2010年以来だが、岡野さんの表現力の進化がすごくて、私の記憶の中の「∠RECEIVER」とは全然違う曲のように感じられた。声の圧というか、説得力がすごくあった。それはきっと、ボーカリストとして磨きがかかったということも勿論あるけれど、それ以上に岡野さんが人生を歩んできて得たものでもあるのだと思う。ものすごく響いた。

 正直なところ、世の中のいろんなものから目を背けて生きている身としてはこういう曲は重い。でも、目を背けて生きる私を叱り飛ばすんじゃなく、自然と顔が前を向くように、そうやって背中を押してくれるような曲なんだと、このツアーで改めて思った。災害とか戦争とか、それだけじゃなくて世の中に問題ってたくさんある。本当にたくさんある。私が知らない問題だってきっとたくさんあるんだろう。そういった問題に対して、私は何もできない。何もできなさすぎて死んでしまいたくなるくらい、何もできない。

僕たちがコントロールできることはほんの少し

ほとんどの出来事には関われないとしても

この星の裏側でも僕たちの足下でも

起こりうる出来事から逃げない受信者(∠RECEIVER)でいたい

 何もできないとしても、それでも受信者(∠RECEIVER)でいること。たとえば、災害について書かれた本を読んで考える。それもまた受信者(∠RECEIVER)でいるということなのではないかと思う。積極的に声をあげたり行動を起こしたり、そういうことができればもっといいとは思うけれど、要は心のもちようなんだろうな。まずは受け止めることから始まる。

 たとえ私が何かを思ったところで何も変わらないとしても、それはおかしいよって思うことにはおかしいよって思っていたい。表明しないとしても、そう思っていることだけは心に刻んでいたい。

 私は自分に自信がないし、卑屈になっているわけではなくて自分には何もないなと思う。仕事もできないし、仕事以外のことに長けているわけでもない。昔は勉強ができたけど、大人になったら定期テストも受験もないから勉強できたって意味ないし。周りへの合わせ方とか空気の読み方を学んでこなかったけど、社会に出て必要なのはそういうものだったって気づいた。私が培ってきたことなんて意味ないんだって気づいた。元々自信なんてなかったけど、社会に出てからさらにぼろぼろに打ち砕かれた。そこから反骨精神みたいな感じで頑張らなきゃいけなかったのかもしれないけど、私はもう折れちゃったんだよな。折れたままどうにかやってる。だからただでさえない自信がもうかけらもないわけ。

この目よ 虚構を射よ この耳よ 意志を聞け

迷いを打ち消すのは綿密に練り上げられた 自信(CONFIDENCE)

 私には自信なんてないけど、代わりにポルノグラフィティと生きてきた20年という月日がある。初めて自分の意志で好きになった音楽。初めて買ったCD。初めて入ったファンクラブ。初めて行ったライブ。全部ポルノ。私の人生はポルノグラフィティとともにある。彼らに励まされながら一緒に歩いてきた時間は、それだけは、確かにある。生きてきたんだよなぁ私。そう思ったらめちゃくちゃ泣いてしまった。

 

 この曲の前に、岡野さんが「色褪せないもの、色褪せてはならないものを手の中に握って、一緒に進んでいこう」みたいなことを言っていて。そしてモニターに映し出されている映像も、最後には手の中に「UNFADED」って書いてあって。私たちの手の中にもきっと今日のライブのことが握られている。

 1曲目の「オレ、天使」には(今回は入っていないが)「これだけ俺が親切に正しい道を説いてやっても、今生きてる人間って100年後には誰もいないんだよなぁ。かくも儚きかな、人生」という台詞がある。

 それに対して「∠RECEIVER」は、ひとりの人間がこの世界に対してできることを描いている。あまりに無情なこの世界に、色褪せていく人生に、ひとりの人間ができること。100年後には誰も生きていないとしても、いまこの「私」にできること、いまこの「私」が生きていることの意味。色褪せないもの・色褪せてはならないものを握りしめて生きていくこと。問いと答えのようなセトリだな、と思った。

 

 ポルノのライブって背筋が伸びるというか、いつも足元を見て歩いているのにライブの帰り道は少し上を見ながら歩いてしまうような、そんな気持ちになる。顔を上げて歩いていけるって思える、そんなライブ。

 

 

 

 

EN1.タネウマライダー

 歌い終わり、岡野さんが「タネウマライダーとは……あいつのことだー!」と新藤さんを指さす。新藤さん「僕の歌詞の黒歴史です」。でもまぁ「∠RECEIVER」と同じ人が歌詞書いたとは思えなくて毎度驚く。横浜ロマポル'06の1曲目がこれだったっけ?二度とやらないと思っていたけどこういうかたちで復活することもあるんだね。

 

EN2.ライラ

 ライブの最後が「Please say yes, yes, yes」だったとき、なんで「ジレンマ」じゃないんだよって不完全燃焼どころかその日の良かったライブも台無しになるくらいしんどい気持ちで泣きながら帰ったことがある。なので新藤さんがラジオで「ジレンマをやるかどうか」というような話をし始めたときにすごくどきっとした。またあのときみたいな気持ちにはなりたくなかった。

 しかし、本編中に「ジレンマ」をやり、初聴きの瞬間から数多のポルノのおたくを狂わせまくった「ライラ」を最後にもってくるという大技をかましてきたポルノ。今まで以上の満足感を味わって帰ることができました。

 「ライラ」はロシア風民謡っぽさを取り入れた楽曲であり、歌詞はとある酒場が舞台。どんな大きなハコだとしても、「ライラ」をやればそこは酒場なのである。照明が赤白青の三色で切り替わってるときにはめちゃくちゃロシア感じた。

 ソロ回しではギターのtasukuさんやキーボードの皆川さん、そして新藤さんが好きに弾く。新藤さんはWOWOWのカメラが入っているからサポメンに「権利関係で大人がすっごく怒るからダメです!」って言ったくせに「Ultra Soul」を弾き、我々も「Hey!」する。新藤さんのそういういたずらっこな部分に何億回目かの恋をしました。しんどいからやめてほしい。

 この「ライラ」、ライブにふさわしいなぁとすごく思う。「歩き疲れたら帰っておいで」って歌詞を聴くと、人生に歩き疲れたらポルノのライブが私の帰る場所なんだって思う。へとへとな状態でたどり着いても、ポルノのライブは私を迎え入れてくれる。しかも「懐かしい歌など唄いましょう」っていうのも特に今回のライブにぴったり。全部新曲のライブなんてなかなかないだろうし、それぞれが思い出を抱えた「懐かしい歌」がきっとどのライブにもある。

 そう考えると、この曲がライブの最後にくるのってぴったりじゃんと思う。単純にめちゃくちゃ楽しいし。歩き疲れたとしても帰る場所があるんだって思うだけで安心できる。またこの先、歩いていかなきゃいけない。それでも私には帰る場所がある。ライブという非日常は、帰る場所にもなりうる。

 個人的にはこの曲のことは「人間賛歌」だと思っているので、そういう意味でもライブにぴったりだなぁって思った。

 速くなる手拍子とライララライララライララライララライライライの歌声。「ジレンマ」以上に宗教みが増している。これが私の宗教!!!!!と高らかに叫びたくなる。これが私の宗教です。

 

 

 

 

 

 

 アンコールの挨拶で、岡野さんが「20年続けてこれた理由(秘訣)は、とインタビューで訊かれることもあるけれど、それはみなさんが『ポルノの新曲を聴きたい』『ポルノのライブに行きたい』と思ってくれて、それが僕らに届いて背中を押してくれたからです」というような話をしていた。

 なんかもう、胸がいっぱいになってしまって。

 中学生の私は死にたかった。永遠に続く地獄みたいだった。私を支えていたのは、ポルノグラフィティの存在だった。新曲が出るからとりあえずそこまでは生きよう、ライブがあるからそれまでは生きよう。本当に、そういう気持ちでいた。死にそうになりながら生きていた私の、「ポルノの新曲を聴きたい」「ポルノのライブに行きたい」という声も、もしかしたらポルノに届いていたのかもしれない。そういう声が彼らの背中を押しているんだと思うと、いや、そんなの、幸せじゃないですか。

 擦り減って擦り減ってぼろぼろのぺらぺらになりながらもどうにか生きていた頃に私が発していたSOSも、きっと届いていたんじゃないだろうか。その答えが、彼らの楽曲でありライブだったんじゃないか。そんなの、幸せじゃないわけがない。

 新藤さんも、「因島から出てくるときに夢見ていた、ギターを持ってステージに上がったらたくさんの人がいて、自分らの音楽で熱くなったり楽しんだりしてくれているという光景が今まさに見えている」という話をしていて、ねぇ、そんなの泣いちゃうじゃん。新藤さんの夢の景色に、私もいるなんて。20年ちょっと前の新藤少年が夢見た景色の中に私もいるなんて。大好きな人が見る夢に私がいるんだよ。幸せすぎて泣いてしまった。私には夢なんてないけど、大好きな人の夢が叶って、そこに私もいられるなんて、そんなの幸せでしかない。

 急遽横浜2日目のチケットを取ったんだけど、取ってよかったって思った。正直幕張1日目の時点ではそんなに思い入れのあるライブになると思っていなかったんだけど、回数を重ねるにつれ今までのライブで一番終わりたくないライブになった。

 

 

 

 

 

・余談:選曲の意味を想像する

 あれが聴きたかったこれが聴きたかった、はいくらでもある。多分20曲ちょっとじゃおさまらないからライブ1回分以上あるので、全部聴くのは不可能だ。だからか、むしろ満足感の高いライブだったと思う。ていうか回数を重ねるごとに満足度が増した。

 一体どういう意図でこの曲が選ばれたのか、と思うものもある。ていうか新曲以外はそう思う。一曲一曲、選曲の意図が聴けたらいいのに。どういう思いで選んで、ファンに届けたいと思ったのか、知れたらいいのに。

 個人的な解釈だけれど、過去のライブのメインとなる曲を意図的にピックアップしたのかな、とちょっと思った。

  オレ、天使→Cupid(is painted blind) 

  ビタースイート→BITTER SWEET MUSIC BIZ

  ∠RECEIVER→∠TARGET

 このあたりはツアーのフラッグ的な役割のある曲だったのかなと。そういう曲って意味を持ってしまって他のツアーではやりづらくなったりするから入れたのかなぁと思ったけど「オレ、天使」はちょくちょくやるよね。ちょくちょくってほどでもないか。「カメレオン・レンズ」があって「ブレス」がなかったのは「ブレス」が直近のライブであるしまなみロマポルでのフラッグ的楽曲だったからだろう。前回のツアーBUTTERFLY EFFECTでは希望の曲コーナーがあったからか、今回は応援歌的な色合いは薄めだったのかも。

 あと、選曲の意図はわからないけれど、流れとしてキーワードがリンクしている曲は結構あるように思えた。

 「前夜」→「ビタースイート」:夜

 「海月」→「フラワー」:生命

 「パレット」→「サウダージ」:永遠(の恋)

 とか。意図的に並べたのかはわからないけど。面白いよね。

 

 今回のツアーでやった楽曲の発表年をまとめてみた。

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 5年ごとに区切ってみるとこんな感じ。

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 初期(3人時代)に偏っていることがわかる。半分が3人時代の楽曲。色褪せていないかどうか答え合わせをするようなライブだから、そうなるのもわかる。

 単年でみると2018年が一番多い。カップリング曲は名曲ぞろいなのにアルバムツアーでは埋もれがちなので、「カメレオン・レンズ」「ブレス」といった最近のカップリング曲がちゃんと聴けたのが嬉しい。新しい楽曲を多くやるっていうのは楽曲が色褪せていないかどうか、というより「ポルノグラフィティ」が色褪せていないかどうかを問いかけている感じにも思える。前に夏フェスによく出ていた年に「過去のヒット曲をやれば盛り上がるけど、懐メロバンドではないので」というようなことを言っていて、なんとなくそれを思い出した。

 過去の曲が少しも“古くない”ってすごいと思う。初期の曲をこれだけやって、全然古くない。半分以上が「ポルノグラフィティ」のキャリアを二分割した前半につくられた曲なのに。全然古くない。むしろ過去の曲を“今”やることでアップデートされている。数年前にポルノ自身がポルノを再発見するという意味合いで「ポルノルネッサンス」なんて言っていたけど、その完成形みたいなライブだった。

 本当に、“今”やる「∠RECEIVER」とかとんでもなくて。2009年~2013年までのあいだの楽曲って今回「∠RECEIVER」しかないんだけれど、それだけこの曲に思い入れとか訴えたいことが詰まっていたのかな、と思う。そのせいかリリース当時よりもずっと完成度が高いというか、心に訴えかけてくるものがあった。まさに「UNFADED」だなぁ。色褪せない。色褪せないどころか、新たな色を獲得していく。

 

 

 

 全体として、ポルノからの愛を感じるツアーだった。相思相愛!

 東京ドームが楽しみすぎて仕方がない。ヒット曲たくさんやるって言ってたし、私のように人生がどっぷりポルノに浸っている人じゃなくても、人生のどこかにポルノグラフィティがいる人には是非来てほしいライブになると思う。きっと一般でもチケット取れるから是非来てね!

 

 これからも、ポルノグラフィティが見る夢の景色に、私もいられますように。

ポルノグラフィティ全曲感想1:1999年~2000年

 ポルノグラフィティが20周年を迎えるまでになんかしたい!!!という気持ちが溢れたので全曲感想マラソンします。発表された順に個人的な主観200%の感想をまとめておくつもりです。最近の曲は感想記事を書いているから被る部分もあるけど。

 1年ごとにまとめようとしたら1999年が1枚しかないから2000年も併せてまとめました。今後のまとめ方は気分次第です。見切り発車です。

 ライブバージョンやアレンジされて再収録された楽曲については感想書くかもしれないけど、アルバムバージョンやオフボーカルトラックは省略します。ナンバリングは基本的に同タイトル曲で1としてカウント。Wiki見たらわかりそうなことはあんまり書いてないです。主観なので。

 

 

 

1999.09.08 1stシングル「アポロ」

001.アポロ

  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma

 言わずと知れたポルノグラフィティデビュー曲。今聴いてもとても新鮮だし、何度聴いても「僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう アポロ11号は月に行ったっていうのに」という歌い出しで目が覚める。当時9歳だった私の自我も目覚めた。

 この曲はこういう意味ですなんて言い切ってしまうのは野暮なのでしないけど、「この街がまだジャングルだった頃」=太古の昔→「アポロ11号」=「僕らが生まれてくるずっとずっと前」→「腕時計」「地下を巡る情報」=現代→「アポロ100号」=未来という時代の変遷を描くことで変わらぬ「愛のかたち」を浮き彫りにするこの作詞の技術のすごさは何度考えてもすごいってことだけは何度だって伝えたい。「時代が変わっても愛に翻弄されてることは変わらないんだね」って言っちゃえばそれだけのことだけど、それをこんなに壮大に書くっていう、このすごさ。

 映画「ファースト・マン」に新藤さんが「アポロ」の歌詞を引用したコメントをしたことでファンが沸いた。いい映画でした。ちなみに2019年はアポロ11号月面着陸50周年だそうです。


002.ロマンチスト・エゴイスト

  作詞:ハルイチ/作曲:Ryo

 新藤さんの結婚が発表された日、朝からずっと泣き続け、金のない私に友達が500円を握らせてくれ、この曲をひとりでカラオケで歌って泣いたのが昨日のことのように思い出されます。「僕の前じゃ無理して笑わなくていい」という歌詞にあなたのせいで泣いてるんですけど!!!とキレ散らかしていました。「ひとつ咳をして踵ならして歩こう」と思ってカラオケを出ました。

 という個人的な思い入れのある曲。それまで失恋の曲ってドラマを見るみたいな聴き方しかしてこなかったけど、失恋したときのために失恋ソングがあるんだなって身をもって知った。

 「身を焦がすような恋にも憧れるけど 傷つくことにはひどく敏感な君さ」という歌詞を要約した言葉が「ロマンチスト・エゴイスト」だと思うんだけど、こんな美しい言い換え表現あります?って未だに思う。新藤さんの歌詞はこういう言い換えの表現も巧み。 

 

アポロ

アポロ

 

 

2000.1.26 2ndシングル「ヒトリノ夜

003.ヒトリノ夜

  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma

 アニメ「GTO」のOP。歌詞の意味などろくに知らず、帰り道に大声で歌いながら帰る小学生だった。「アポロ」でポルノが気になっていたものの、小学生だしパソコンも携帯もないし調べる手段もないなか、あの歌声となんだかかっこいいカタカナのバンド名を再びテレビで見かけ、この人たちだ!と思ったのを覚えている。

 90年代ってCDが売れてミリオンヒットが多発していた時代で、まだそういう時代のなかにいるバンドが「100万人のために唄われたラブソングなんかに 僕はカンタンに思いを重ねたりはしない」って、なかなかロックで恰好いい。心の弱い部分を「性感帯」に喩えるの、どうやったら思いつくんだろう。

 PVはおねえさんにビンタされたり首を吊る縄が揺れてたり頭を撃ち抜く真似をしたりと、おたくが好きなものが詰め込まれている。好き。

 ライブ映像「FUNCLUB UNDERWORLD5」ではインディーズ版も披露している。「今のバージョンの方がいいってみんなも思うと思うよ」って言いながらもファンの願いを叶える企画だからとインディーズ版を披露してくれる優しさ。


004.ジレンマ

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 ライブの最後といえばこれ。ポルノのファンクラブ「love up!」もこの曲の歌詞から引用されたもの。

 AメロBメロではチャラついた男を描きながら、サビで唐突に「愛のために~何ができる」「愛の前に~ひざまずけ」と歌われる内容の規模が大きくなる。「僕」と「お前」の駆け引きを通して、「愛」という大きなものに至る。普段ライブで聴くときはバカになってるしアホになってるし悔いなく騒ぐので精一杯だから歌詞を意識することってあまりないけど、この軽薄さと切実さが両立している感じがいいなと思う。

 

ヒトリノ夜

ヒトリノ夜

 

  

2000.03.08 1stアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』

 歌詞やクレジットがメンバーの手書き文字。新藤さんの文字の癖が好き。


005.Jazz up

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 ポルノグラフィティというバンド名を地で行く曲。1stアルバムの一発目にこれを入れるってなかなかパンチが効いている。結構なド直球。小学生の頃に友達がこのアルバムを録音したテープ(テープ!!!)を貸してくれたことがあったのだが、1曲目だけ抜け落ちていた。テープに録音してくれたお父さんの検閲に引っかかったんだろうと推測される。ので、中学生になってアルバムを買ったときにびっくりした覚えがある。

 一曲通してチャラい男を歌ってもいいのに、二番でかつての自分を思い返しちゃう(しかもそこだけ他とメロディの毛色が違う)のがポルノの良さ。都会ではなく田舎に生まれ育った俺、っていうのが新藤さんの中にはあるんだろうなぁと勝手に思ったりする。


006.Century Lovers

  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma

 初期の新藤さんの歌詞には「街」が多いんだなって今思った。この記事で紹介しているなかでも5曲(アポロ、ヒトリノ夜、Jazz up、Century Lovers、ライオン)に登場する。どこか無機質な「街」は声高に「恋愛」をうたい、迷い込んだ「僕」を責め立てる。この頃の新藤さんの目には「街」が印象的だったのかな。初めて渋谷に行ったときは目が回りそうだなぁと思ったけど、そんな感じだったんだろうか。

 「最初からハッピーエンドの映画なんて 3分あれば終わっちゃうだろう?」という皮肉の効いたフレーズが好き。「最初からハッピーエンド」だったらねぇ、「エンド」なんだからざっとあらすじに触れて3分程度で終わっちゃうもんなぁ。互いの思いがうまく伝わらなかったりすれ違ったりして、やがてハッピーエンドに至るからいいわけで。多分この歌詞に刺されたおたくは少なくないと思う。

 この曲の前にやる煽りの「Everybody Say!」「Fu! Fu!」(いつのまにか「Before Century」と名付けられてて誰うまと思った)だけやって別の曲がくるパターンが最近は多い。確か5周年ライブ「purple's」のDVDの副音声で「C&Rやった後別の曲きたら面白いよね」と話していたのが定番化したっぽい。


XXX.ヒトリノ夜

 003.ヒトリノ夜 参照


007.ライオン

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 いつ聴いても恰好いい。歌詞も曲もいいし岡野さんの若くて少しざらっとした感じの歌声もすごく合っている。音源でもいつ聴いても恰好いいけど、ライブでもいつ聴いても恰好いい。岡野さんの突き抜ける歌声と「見下している傍観者たちが ずっと愛を搾取してるから」のフレーズの相性が良すぎる。

 日常を思わせるようなワードが少なく、非日常(「トランペット吹く男」)や比喩(「サバンナ」等々)で飾っていて、でも実は聴き手にも見えている景色と重なっている。多分、この曲で言う「サバンナ」は「街」のことで、「街」を闊歩する若い女の子たちが「レディ・ライオン」、知った顔で「街」や「ライオン」について語る人たちが「見下している傍観者たち」なんだろうなぁ。そしてさんざん女の子たちをライオンに見立てていた「僕」もまたたてがみを揺らすライオンである。

 「EXIT」とかもそうだけど、新藤さんの歌詞でたまに出てくる比喩によるレイヤー構造がすごい。現実に見えている世界と現実によく似た別世界がきれいに重なっている。比喩ってポイントで使われることもあるけど、新藤さんは世界をまるごと被せてくるような比喩も得意なんだろうなぁ。どんなふうに世界が見えたらそんな歌詞が出てくるんだろう。


008.憂色~Love is you~

  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma

 歌詞の表記は漢字が開かれている部分が多く、それがまたこの曲の「僕」と合っている。普段なら絶対「おしかえす」も「あとさき」も「うけとめて」も漢字にするだろうに……というところがめちゃくちゃ好きな曲。「キミ」を失ってしまいそうな状況で弱っている「僕」感が歌詞の表記からも感じ取れるってすごいよね。

 ピアノを使ったゆったりとしたバラードで、本間さんの切ないメロディが際立つ。イントロのピアノの時点でもう名曲だってわかる曲。

 「耳が痛くなるくらい」からの1フレーズは、新藤さんが夢の中で書いた歌詞を起きてから書き起こしたものだって昔テレビで本人が言ってた。ロマンチックが過ぎる。


009.Heart Beat

  作詞:ak.hommma/作曲:ak.homma

 オリジナル曲でメンバー以外が作詞しているのは「Heart Beat」「マシンガントーク」の2曲だけ。

 中学生でまだライブには行けず、DVDなどで見ているだけだった頃はこの曲が恨めしく思えていた。だってライブで超楽しそうなんだもん。音源で聴いてもあの楽しさは私のものにならない。だからちょっとこの曲を避けていた時期もあった。が、2度目のライブだった2005年の「SWITCH FINAL」でこの曲を披露してくれてめちゃくちゃ楽しくて、やっぱりこの曲はライブがいい!と思ったのを覚えている。

 ライブで歌われる「ボクらはいまここで出会うため生まれてきた」はずるい。そういうことをポルノに歌わせちゃう本間さんもずるい。「ボクらが退屈と矛盾を退治してあげる」という歌詞もあるし、ポルノにはこういう存在になってほしい、という本間さんの気持ちが込められているのかもしれない。


010.マシンガントーク

  作詞:ak.hommma/作曲:ak.homma

 イントロを聴いたらぶち上がり、体が自然とモンキーダンスをし出す曲。首や腰を痛めないように気を付けたい。でも楽しい。ボーカルは首を痛めたことがあります。

 歌詞の物語ではマシンガントークなのは「キミ」なのに、歌詞自体がマシンガントーク的に言葉数がめちゃくちゃ多いというところがツボ。個人的には「冷めたコーヒーで渇きを潤し Please Please Tell me all about YOU」の言葉のハマり方がすごく好き。無駄なく音に言葉がのっている感。

 余談だが恋愛系のゲームなどで「キスで黙らせる」描写が出てくるとどんなに真剣な場面でも絶対にこの曲がよぎる。困る。


011.デッサン#1

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 歌詞の内容は、岡野さんの失恋を新藤さんが歌詞にしたもの。実際にあった恋愛をうつしとるように書くから「デッサン」。きっと軽い恋愛じゃなく、こんなに重苦しい空気になるほどの恋をしていたのに「僕の何を知ってる?」って問うの、めちゃくちゃしんどい。

 「空の高いところで生まれた雨粒が 僕の足元に落ちて、今はじけて消えていった。」という情景描写の歌詞がすごく良くて、恋が生まれて消えたことを喩えているようでもあるし、あるいはその「雨粒」はもしかしたら「僕」の涙の比喩なのかもしれないし、様々な想像をかきたてる。様々な想像をかきたてながらも、茫然と立ち尽くす「僕」の姿が浮かんでくるのはきっと共通しているんじゃないかと思う。

 「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 惑ワ不ノ森」で披露されたバージョンが劇薬レベルにやばいのでCD音源だけじゃなくてそっちも聴いてほしい。キーがめちゃくちゃ高いので半音下げたバージョンで披露されることもあるけど2014年は原キーで歌っていて、しかもギターソロもすごくロマンチック。2014年のあの日、新藤さんに何度目かの失恋をして号泣したのをよく覚えています。そんな思い出ばっかりです。


XXX.アポロ(New Apollo Project Version)

 001.アポロ 参照


012.ラビュー・ラビュー

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 とてもおしゃれでかわいらしい曲。光のポルノ。

 新藤さんにしては歌詞もストレートで、特にひねくれたところもなく、この二人の世界は圧倒的に光に満ちている……と確信できる歌詞。曲がおしゃれだからシンプルな歌詞になっているのかもしれない。ポルノは曲が先にできていて、新藤さんは曲を呼ぶ歌詞を書く人だし。言葉で飾るよりこのおしゃれかわいさに似合う歌詞にしたのかもしれない。

 ストレートなうえに状況が想像できそうなリアルさもある歌詞なので、新藤さんの手書き歌詞にどきどきする。


XXX.ジレンマ(How To Play "didgeridoo" Version)

 004.ジレンマ 参照


013.リビドー

  作詞:アキヒト/作曲:ak.homma

 ポルノグラフィティにおける岡野昭仁初作詞作品。「ナンセンスな日常だ躁鬱」とか「刺激的過ぎるほど安住」とか、言葉の並べ方に思い切りがあって今聴いても新鮮に感じる。「刺激的」と「安住」が結びついているの、なかなかないと思う。感覚的というか、直感的というか。新藤さんの歌詞が「僕の外側にある世界」を描いているとしたら、岡野さんの歌詞は「僕の内側にある世界」を描いているような印象。勿論それぞれ違ったタイプの歌詞を書くこともあるけれども、わかりやすく印象をたとえたらそんな感じ。

 べったりとへばりつくタイプの歌い方をしていて、爽やかにハキハキ歌うだけが岡野昭仁ではないとこの時点で示している。ねちっこくてじめっとしていて、昔はそんなに好きじゃなかったけど最近聴いたらめちゃくちゃ好きになってしまった。個人的には絶対に「欺瞞」って言ってない「欺瞞」が好き。


XXX.ロマンチスト・エゴイスト

 002.ロマンチスト・エゴイスト 参照

 

ロマンチスト・エゴイスト

ロマンチスト・エゴイスト

 

 

 

2000.07.12 3rdシングル「ミュージック・アワー

014.ミュージック・アワー

  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma

 PVも楽しく、ライブも楽しく、音源でも楽しい一曲。イントロや間奏のギターの跳ねるような音が特徴的で、こんな曲で楽しくならないわけがない!自然と心が跳びたがる。ライブ終盤にきたとしても体が動く。翌日は筋肉痛必至。

 ポルノグラフィティというバンド名ではあるものの、爽やかお兄さんな曲である。爽やかでポップでキャッチーという、ポルノの得意路線のひとつを確立した曲かもしれない。ていうかデビューからしばらくは強い曲だらけなのでどれもこれも路線を確立する曲なんだけど。

 音源だと岡野さんの歌声にどことなくちょっと気怠さもあってかわいい。ライブに行くと全力すぎるほどの全力で走り回りながら歌う。「ミュージシャンも張り切って」の部分は、もう長いこと「ミュージシャンもコレ張り切ってまんねんコレ〜!」的に叫んでいる。よくわからないけれど岡野さんがとても楽しそうで最高。個人的には「"BITTER SWEET MUSIC BIZ"」や「幕張ロマンスポルノ'11 DAYS OF WONDER」で披露されたオシャレかわいいアレンジが好き。


015.PRIME

  作詞:アキヒト/作曲:シラタマ

 岡野さんの内省的な歌詞が昔は苦手だった。自分のことを歌われているようで苦しかった。もう冒頭の「貧相なプライド抱え込んで」の時点でしんどい。「こんな僕はいらない」って歌われてもその通りすぎてそりゃあ私が一番わかってるんだ……って長いこと思っていた。なのであんまりこういうタイプの曲のことを冷静に聴けている自信はないんだけど、1番Aメロの「シャワールーム冴えない顔が  映るガラスを叩き割って  赤い花撒き散らして  こんな自分を葬り去ってやる」の描写がすごく鮮烈。シャワールームの鏡(に映った自分の顔)を殴って拳から赤い血が散る様子を、自分の外側から描写するような、こんな錯乱状態みたいな行動をとても冷静に鮮やかに描写していて、それがちょっと不気味にも思えるところがすごく好き。あとシャワールームの話をしていてサビでは「脱ぎ捨てて」って歌詞につながるのもいい。

 ライブでやるとめちゃくちゃ楽しい。ウォウイェー!


XXX.Century Lovers(LIVE!)

 006.Century Lovers 参照

 今とは煽りのコールが違って絶妙にダサい(好き)。

 

ミュージック・アワー

ミュージック・アワー

 

 

 

2000.09.13 4thシングル「サウダージ

016.サウダージ

  作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma

 ポルノにラテンといえばこれと「アゲハ蝶」みたいなところある。ストリングスもモリモリで、単純にバンドメンバーだけでは出せない音も使っているところが幼い私の心にはめちゃくちゃ刺さったんだと思う。使われている楽器の音が多いと豪華に聴こえるし。

 言葉数が多いが、ハキハキ歌う岡野さんの歌声。シングルだとそんなに感情的ではないところも新鮮。このあっさりした歌い方のおかげで、それぞれに勝手に思いを重ねたりできるんじゃないかなと思う。これがライブになると情念的なものがこもってるバージョンになって聴きごたえがすごい。

 あともうとにかく歌詞。「恋心」に呼びかけるようなフレーズが印象的だしどこを切り取っても美しさしか出てこない。「甘い夢は波にさらわれたの」なんて詩的なフレーズ最高じゃない?ロマンチックの極みじゃない?これだけロマンチックに恋が終わってしまったことを歌いながら、でも「繰り返される  よくある話   泣くも笑うも好きも嫌いも」なのがつらい。こんなにつらい気持ちが歌われているのに、「繰り返される  よくある話」だなんて。「あなたのそばでは、永遠を確かに感じたから」もやばい。それが永遠でなかったことはもう証明されてしまっているのに、それでもあのとき感じた永遠をまだ忘れられずにいるの……しんど……こういうしんどさを書くのが新藤晴一です。そして「サウダージ」という言葉をもってくるセンスよ。短くて覚えやすいキャッチーな単語でありながら、よく意味がわからないという点がフックになる。このセンスが新藤晴一です。「アポロ」がそもそもそうだし、「シスター」「メリッサ」「ジョバイロ」みたいなのもそう。カタカナの短いタイトルの強さ=ポルノみたいなところあると思ってる。

 ライブで披露される間奏やアウトロのギターソロ(アレンジによってはイントロにあるときも)は、まるでギターが泣いているみたい。私は新藤さんのギターを「吟遊詩人のギター」と呼んでいるんだけど、新藤さんのギターはただの楽器じゃなくて「歌声」をもっている。「私」の恋心の切実さが表現されたようなギターの音色は何度聴いても色褪せることがない。この曲のギターは、後悔だとか悲しみだとか寂しさだとかが入り混じって沈みゆく夕日みたいで、いろんな感情が滲んだ音色だと思う。

 ちなみにシングルの歌詞カードは手書き文字で手紙調に書かれている。憧れすぎて私も写経した覚えがある。 


017.見つめている

  作詞:アキヒト/作曲:アキヒト

 岡野昭仁初詞曲。こういう歌詞でテンションが概ね一定の歌い方をしているのが余計にやばさを感じる。もっと感情的だったらまだなんか……救いようもある気がするけど……そんなにテンションの変化がないのがまた……やばくていいんですよ……

 タイトルが「見つめている」なのもいい。ど直球に怖い。「キミ」が「ボク」のこと知ってるのかどうかもわからないような思い込みで突っ走る感じも怖いんだけど、個人的にめちゃくちゃ怖いなと思うのは「ボク」が具体的な行動を起こしていないところ。「胸に飛び込んでおいで」って言うくせに「ずっとボクが  見守ってあげるから」だし、「思い切って  好きと言えばいいさ」も「キミ」にそう言っているわけで、つまり告白だって自分からする気はなさそう。自分からは何も具体的な行動を起こさず、本当にただ「見つめている」のが怖くてクセになる。しかもそれをこの爽やかな声で爽やかに歌っちゃうっていうのがポルノの強みのひとつ。


018.冷たい手~3年8カ月~

  作詞:アキヒト/作曲:シラタマ

 「Search the best way」とは歌詞・アレンジが異なるが曲自体は同じ。昔はあんまりよくわからなかったけど、3年8カ月付き合って別れるって結構な密度の時間を過ごして、それでも別れることになってしまったんだなって思うと聴いててちょっと落ち込んでしまう。「冷たい手」とタイトルにあるが、「錆び付いた二人の空気が軋んで熱をもってしまった」「僕ら二人だけで温めたストーリー」など、どちらかというと熱に関するワードが印象的に思える。あったかければいいわけじゃなく、温度を維持することも大事なんだなぁと染み入る。「乱れた心拍数」も、かつては心地よいドキドキだったのかもしれないけれど今はそうじゃないものになってしまったと思うととても悲しい。

 どこを切り取っても綺麗な歌詞だけれど、あえていうなら「あんなに注ぎ込んだ愛の結末  救われないのならば溢れて還らないでいい」という部分が好き。コップには許容量があるのに、きっとこの二人はそれを見て見ぬ振りして愛し合ってきたんだなって。なかなかライブでは披露されないが名曲。

 

019.Search the best way

  作詞:ハルイチシラタマ/作曲:シラタマ

 おたくが死ぬ曲。作詞に唯一Tamaさんが参加しており、しかも友と別れてそれぞれの道を歩んでいく歌詞になっていて、Tamaさんが抜けたときにこの曲を聴いて号泣していた覚えがめちゃくちゃあるどころかいまだに忘れられない。1番の作詞がTamaさんで2番が新藤さん(だったはず)。そう思うとサビの歌詞の呼応とか考えてまたしんどくなる。「その先でいつか君に逢えたなら」と「その途中もしも君とすれ違っても」、しんどくない?私はしんどい。

 私は割と感情に身を任せて生きている人間なのだけれど、「アクセルを踏み込めばオイルがエンジンに流れ込む」という単純な構造をよしとしているから、みたいなところがめちゃくちゃある。どんな選択肢も「正しいも間違いもない」と思っているけど、それもこの歌詞の影響。未来まで待ちぶせしてしまうくらいに光のにおいする方走って行きたいし、運命が僕を追いかけるくらいに清潔な衝動に正直でいたい。そう思って生きています。

 アコギの爽やかな音と爽やかなコーラスの声が、停滞して止まった時間を歌う「冷たい手」と同じ曲にもかかわらず、夢を追いながら未来へ向かうまっすぐな若さを思い起こさせる。 

 

サウダージ

サウダージ

 

 

2000.12.06 5thシングル「サボテン」

020.サボテン

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 シングルでは初のメンバーによる詞曲。イントロのバスドラの音でもう優勝が確定する。勝ちでしょこんなの。勝ち確定の音でしょ。さらには間奏で爽やかなギターの音が冬の空の澄んだ空気みたいに響く。勝ちでしょ。何の勝負だか知らないけど勝ちです。ドラムの音も爽やかで気持ちいい。あと間奏のベースも好き。

 歌詞には「雨」が出てくるけれど私としてはあんまり雨の印象のある音ではなくて、音源で聴く限りは冬の晴れた空が思い浮かぶ。だから最後に「薄日が射してきた」ところで納得がいくというか、この恋がまるごと上手くいくかはわからないけれど悪いほうには転ばないような、そんな気がする。

 小さい頃は歌詞の意味もよくわかっていなかったけれど、聴けば聴くほど味が出るというか大人になればなるほど沁みてくる曲。でも小さい頃も小さい頃でこの曲の歌詞を書き出してみては「側」を「そば」と読むことを知り、「顧みる」や「口実」の意味を知ったりした。言葉を知ることの楽しさを教えてくれた、私にとってはすごく大切な曲。


021.ダイアリー 00/08/26

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 おたくが死ぬ曲。「横浜ロマンスポルノ'17 THE WAY」で二人の所信表明として披露されたときには号泣するしかなかった。めっちゃ泣いた。あのとき聴いたこの曲の「君」は、ギターを持って島を出た新藤少年であり、ポルノの曲をずっと聴いてきた私たちでもあると、そんなふうに思えた。泣いちゃうよね。

 2000年8月26日に考えていたことを歌詞にしたからこのタイトル。メジャーデビューからもうすぐ1年が経とうとしている頃に、新藤さんはそんなことを考えていたんだ、と何度でも感慨深く思う。確かに叶った夢もあるだろうし、思っていたのと違うかたちだったりもするんだろう。それに折り合いをつけて、でも大人になりすぎないでやっていこうとする新藤青年の素直な気持ちが描かれているし、きっと新藤さんだけじゃなくほかのメンバーにも重なる部分があったんだろうと思う。

 「夜ごと、君に話してた未来についての言葉は、いくつかは本当になって、いくつかはウソになってしまった。」というフレーズは、きっと新藤さんの考える「夢」についての根源なんだと思う。ほかの歌詞にも出てくるし、歌詞じゃなくてエッセイなどにも見られる。私の人生のサビみたいな部分なのでここが好きって話は何度も繰り返しちゃうけど許してほしい。

 どうか、できるだけ長く、Guitarを離さずにいてくれますように。できるだけ長くのあいだ、彼のGuitarが夢を描くペンでありますように。


022.いつか会えたら

  作詞:ハルイチ/作曲:ハルイチ

 新藤さん初詞曲。短い曲だしアコースティックだしシンプルな歌詞だけど、この曲に詰まっているものは決して少なくない。冬の寒い空気と体温のあたたかさを連想するような曲だなぁと聴くたびに思う。そういう情景を連想させるだけのものがこの曲に詰まっているということだろう。

 いろんな解釈ができるけれど、個人的には「君」はもうこの世にはいない人なのかなぁと思う。そう考えると「いつか会えたら」というフレーズがとても重たくて、切実な祈りのようで、希望によく似た絶望みたい。


023.サボテン sonority

  作詞:ハルイチ/作曲:シラタマ

 「サボテン」の歌詞違い。アレンジもこっちのほうがゆったりしているというかおとなしいというか、鬱屈としている雰囲気。こっちは雨が降っている感じがする。

 歌詞が過去形になっていて「サボテン」を知っているからうまくいかなかったこの二人の物語を聴くと胸がちくちくする。新藤さんの歌詞って女性目線(「私」の歌詞)だとすごくうっとりするようなものが多いけど、男性目線(「僕」の歌詞)だと時々蹴り飛ばしたくなるような男の人のことも結構あって、「サボテン」より「サボテン sonority」の「僕」のほうが蹴り飛ばしたいなと思う。でも好き。「小さな花を見せたい」なら追いかけなきゃダメじゃん……そういうとこだよ……でも新藤さんの書くこういう男の人ってとっても魅力的だから困る。

 

 

サボテン

サボテン

 

 

 

 

 これナンバリング間違えたら終わるなぁと今一瞬間違えてて思いました。もうこの時点で023まであるの……

 9月8日までに全部終わりますように!終わる気はあんまりしないけど!飽きたらやめるかもしれないけど!

WORLDISTAブックガイド

 始まりますねWORLDISTAツアー!

 WORLDISTAとは直接関係ないですが、VRや仮想世界を扱った作品を100%の主観で集めました。遠征のおともなどにどうぞ。例によって私が国内作家ばっかり読むので国内作家中心のラインナップです。

 

 

『断片のアリス』伽古屋圭市

・あらすじ(Amazonから引用)

狂った VR 内の殺人ゲーム 予測不能の脱出ミステリ。雪と氷に閉ざされた現実世界から離れ、人々は生活のほとんどを VR システム ALiS の中で過ごしていた。傷つくことのない穏やかで平和な仮想空間で。しかし突如、椎葉羽留は囚われた。痛覚も“死”も存在する恐怖の VR クラスタに。ログアウト不能の狂気の館で、連鎖する殺人。そしてたどりつく、この創られた世界の真相と、彼女の正体とは !? 衝撃の結末に驚愕する VR 脱出ミステリ。

 VR×脱出×バトロワ×ミステリ。VR世界に「閉じ込められる」系の話。聴き手が『WORLDISTA』に閉じ込められたり出られなかったりするのかどうかはわからないけど、VRを扱った話では定番(?)ではあると思う。ここに挙げている本のなかでは一番ライトで読みやすい(が、読みごたえも十分にある)。さすが新潮社文庫nex。

 現実世界は荒廃し、人口も激減している。人々はVR空間である「アリス」にログインし、そのなかで仕事や勉強をしたりして生活している。主人公・羽留はいつものように「アリス」にログインするが、突如ログアウトのできないフィールドに強制転送され、閉じ込められる。指示通り「赤エビ亭」という宿屋にたどり着くと羽留と同じような人たちがいて、今度は「赤エビ亭」に閉じ込められ、さらには殺人事件が起こり――という内容。設定はもりもりだけどどれもちゃんと活かされている。

 なぜ閉じ込められたのか?ここはどこなのか?誰か閉じ込めたのか?どうすれば出られるのか?誰が殺したのか?などなどいくつもの謎が読んでいるうちに浮かび上がる。ひとつが解決されて次へ、というかたちではなく、謎ばかりが積みあがる。そしてそれらが転がるように解けていく終盤はめちゃくちゃ面白い。そんなのありかよって思ってしまうような答えも、そこに辿りつくまでに綿密に練られた文章を読んでいるから納得してしまう。この、それまで何気なく読んできた文章に納得させられてしまった感じも読書の醍醐味のひとつだ。

  

断片のアリス (新潮文庫nex)

断片のアリス (新潮文庫nex)

 

 

 

 

『グラン・ヴァカンス ―廃園の天使―』飛浩隆
『ラギッド・ガール ―廃園の天使Ⅱ―』飛浩隆

・一作目のあらすじ(Amazonから引用)

仮想リゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。謎の存在“蜘蛛”の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける―仮想と現実の闘争を描く『廃園の天使』シリーズ第1作。

 人が訪れなくなって千年の時が経った仮想世界が突如壊され始める。こわいけものフレンズ。人が来なくなった仮想世界で、仮想世界にもともと設定されているAI(NPC)たちはどうしているのか?という話。もうこの時点でわくわくする。

 文章でありながらとても視覚的で、しかし視覚的でありながら読み手の想像力にその視覚的描写を委ねている。選び抜かれた言葉は美しく世界を規定するが、美しさの基準が人によって異なるように見える世界も異なる。夏の区界の情景はある程度共通しているとしても、蜘蛛が世界を襲うさま/蜘蛛とAIが戦うさまは想像力によってさまざまなものが見えることだろう。ということもあって、「想像することがみちしるべ」という今回の合言葉(合言葉?)にふさわしいうえに、仮想世界を扱った作品なので選んでみました。

 ただ、なかなかにひどい話で読み終わった後はTHE絶望って感じなので好き嫌いは分かれるかもしれない。なんていうか「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語」や舞台作品の「TRUMP」シリーズってめちゃくちゃ絶望するんだけど、絶望の質でいったらああいった作品たちと近いかも。絶望したい人は是非。個人的には超好き。

 『ラギッド・ガール』のほうは続編で、『グラン・ヴァカンス』では打ち捨てられた仮想世界のなかの話だったけれど、その仮想世界がどのようにして作られたか・どのようにして打ち捨てられたか・その背景に何があるのか、といった話が描かれている。『グラン・ヴァカンス』で味わった絶望が絶望でつくられていることが補強されてもうどう読んでも絶望なんだけどめちゃくちゃ美しい。どちらも人の感情を揺さぶって増大させるような作品で、私は頭の中が感情でいっぱいになりました。

 人を選びそうだけどすっごく面白いので、私が加藤さんと友達だったら間違いなく薦めている作品。でも友達じゃないからな~。 

 

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

グリフォンズ・ガーデン』早瀬耕

・あらすじ(Amazonから引用)

東京の大学院で修士課程を終えたぼくは、就職のため、恋人の由美子とともに札幌の街を訪れた。勤務先の知能工学研究所は、グリフォンの石像が見守る深い森の中にあり、グリフォンズ・ガーデンと呼ばれていた。やがてぼくは、存在を公表されていないバイオ・コンピュータIDA‐10の中に、ひとつの世界を構築するのだが…1992年のデビュー作にして、『プラネタリウムの外側』の前日譚、大幅改稿のうえ26年ぶりに文庫化。

 VRの話ではないが、現実世界と仮想世界というモチーフを扱っている作品。

 現実の世界と有機素子ブレード(バイオコンピュータ)の中につくられた仮想的な世界との境界が揺らぐさまが描かれている。今読んでいるのは現実の話?それとも有機素子ブレードの中の話?境界が曖昧になる。「世界」が揺らぐ。現実の世界と仮想的につくられた世界と、自分はどちらにいるのか。「世界」とはなにをさすのか、「世界」はどこにあるのか。そういう話。有機素子ブレードとかバイオコンピュータとか、そういうもののことはあんまりよくわかんないけど全然面白い。

 物語は「PLYMARY WORLD」と「DUAL WORLD」の二層構造で進む。「PLYMARY WORLD」が現実の世界、「DUAL WORLD」が現実世界の主人公がつくった仮想世界。私やあなたは「世界」に存在している?そもそも「世界」は存在している?そんな哲学的な問いが読んでいるうちに浮かんできて、なんだかちょっと怖くなる。もしかしたら私がいるこの世界も誰かがつくった仮想世界で、私が私と認識している私も世界とともにつくられたAIじゃないって証明なんてできなくない?なんて考えてしまったり。怖い。

 『WORLDISTA』を聴いていて、あのアルバムが描く現実世界/仮想世界の対比であるとか「世界」がどこにあるのかということを面白いと感じた人だったらきっとこれらの作品も楽しめるのではないかと思う。あと加藤さんはきっと好きだと思うので、加藤さんの近くの人がこの本を知っていたら是非薦めてください。頼んだ。

 

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

プラネタリウムの外側』早瀬耕

・あらすじ(Amazonから引用)

北海道大学工学部2年の佐伯衣理奈は、元恋人が友人の川原圭の背中を、いつも追いかけてきた。そんな圭が2カ月前、札幌駅で列車に轢かれて亡くなった。彼は同級生からの中傷に悲観して自死を選択したのか、それともホームから転落した男性を救うためだったのか。衣理奈は、有機素子コンピュータで会話プログラムを開発する南雲助教のもとを訪れ、亡くなる直前の圭との会話を再現するのだが。恋愛と世界についての連作集。

 『グリフォンズ・ガーデン』と連続する世界の話として書かれているのがこの作品。話は独立しているのでどちらから読んでも問題ない(私はこっちから読んだ)。『プラネタリウム~』は連作短編集なのでこっちのほうが読みやすいかも。

 『グリフォンズ・ガーデン』同様、現実と仮想の境が揺らぐ。ちょっと詳しく紹介すると、この作品の仮想世界には腕時計型のウェアラブル端末でアクセスするかたちになっている。姿かたちを「見る」ことはできない。しかし見えなくとも、仮想世界のなかには「ある」。そういう部分の描写もすごくいいし、それぞれの短編が誰かしらの恋愛と関わるかたちで描かれているのでSF以外の要素にも読みごたえがある。

 現実の世界で死んでしまった大切な人がなぜ死んでしまったのか知りたい。だから仮想世界に彼を蘇らせてその日彼が辿った道のりを明らかにする(表題作「プラネタリウムの外側」)。そんなことできちゃうのかよ、という感じはするけれど、とても論理的に説明されているのである程度はできるんだろうなと納得してしまう。そんな感じの話が詰まった連作短編集で、どの話も現実/仮想が揺らぐ。今読んでいるものはどの世界?

 論理的な一方で、ロマンチックでもある。感情が揺さぶられる、という意味でとてもエモーショナルでもある。最初と最後の話に仕掛けられたギミックも面白く、いろんな観点から楽しめる作品。

 

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

 

 VRをモチーフにした小説といえば「ソードアート・オンライン」シリーズみたいな印象あるけど未読なもので……申し訳ない……

 VRおよび仮想現実的なものが登場する小説を集めたけど、VR(仮想空間)って視覚的にインパクトがあるから漫画/アニメ/映画のほうが強いんだよな~!誰かWORLDISTAムービーガイド作って!俺はガンダムで行く!

 

レディ・プレイヤー1(字幕版)